呪術師の復讐編
第一章
悲劇の村
シャルルは半刻の間目を閉じ平和というものをかみしめていた。
「このような感覚を味わうことはとても良いものか、あるいは・・・」
などと年にあっていないようなセリフを言っていた時、先ほどと違って山城はドアをノックしてきた。シャルルは目をゆっくり開き、声を出した。
「入って良いですよ」
山城は静かにドアを開けて部屋に入ると同時に「失礼します」と言った。
シャルルは山城に目を向けて尋ねた。
「準備は出来ましたか?」
山城もまたシャルルに目を向け「もちろんですとも」と力のある返事をしてきた。
「隊長についていく者のリストも作っておきました。これがリストです」と山城は懐から一枚の紙切れを取り出しシャルルに手渡した。
シャルルは手を伸ばし「ありがとう」と言い紙を手にした。そこに書いていたのは意外な人物だった。
「山城、これはどういうことですか?」
山城は少しにやけていたがすぐに素に戻り返事した。
「その者が隊長を命がけで守りきると啖呵を切っていました」
シャルルは呆れて、もう一度紙に書かれている文字の意味を理解しようとしたが、どうも上手くいかなかったらしく、ため息を漏らした。
すると山城は全く関係ないことを言いだした。
「オッと、いけませんよそのような若いうちにため息なんかしては。老けるスピードが速くなりますよ」などと冗談めいたことを言ったが、シャルルは山城の言葉をすっかり信じてしまったらしく、机の引き出しから常備備えている手鏡を取り出し自分の顔を見ている。この鏡はシャルルの父が誕生日プレゼントとして送ってきてくれた宝ものだ。
父親は戦いを止めるように言ってくることはしなくなったが、それでも少しは女の子らしく身嗜み(みだしなみ)ぐらいしっかり整えるようにとプレゼントしてくれたのだった。
その鏡に映る自身の顔は朝と変わらず可愛らしい女の子の顔しか映っていなかった。
シャルルは「はっ」として鏡を机に置き山城に視線を向ける。山城は笑いをこらえるために口を手で覆っていた。それを見たシャルルは顔を赤らめて山城を怒鳴った。
「山城また騙したな。そんなに私をだまして面白いのか!?そうなのか」
山城は手をどけて言った。
「それはもちろん」
シャルルはまた怒鳴った。
「それもこれもお前のせいだろうが、いつも、いつも私を辱めてこの髭オヤジが、だいたいこれは何よ。なんで隊長と副隊長が遠出しなくてはいけないのよ。普通はどちらかが残るものでしょうが」
シャルルが怒っているのは自分をおもちゃとして扱った男への怒り・・もあったが、実のところ紙に書いてあった名前に対しての怒りもあった。
そうシャルルの言っていることは正しい。普通なら隊長格は別行動が鉄則なのだ。片方に隊長格が偏った場合もう片方の戦力は一気に下がり、敵の奇襲などの対処がおろそかになる。その危険を承知であるはずの山城が、このようなリストを作り出すこと事態、すでに笑えない冗句(じょうく)だ。
山城は先ほどと違って真面目な表情をしている。
「もちろん、隊長が言いたいことは承知しております。しかし、今回は隊長と警護団の団員だけでは荷が少し重いのです」
シャルルは少し落ち着いてきたらしく、山城の言っていることの意味を頭で考えていた。しかし、答えは出てこなかった。仕方なく山城に理由を尋ねることにした。
「なぜ、私と団員だけで荷が重いと判断するのか教えてもらいたいわね」
すると山城は背負っていたリュックからある一冊の本を取り出した。その本の表紙には『吸血鬼の歴史』と記されていた。
「吸血鬼?」
シャルルは意外なワードが出てきて目が点になっている。吸血鬼はここ精霊界で一、二を争うぐらいの力を持つ種族だ。しかし、いたとされるのは相当昔だったと教科書に書かれていた。彼らの存在はこの精霊界の存続に関わるということで、吸血鬼たちを滅ぼすために戦まで起きたと言われている。
「吸血鬼は確か・・・・・そう思い出したわ。四百年前に『流血の荒野』で一族もろとも浄化され、遺体すら残されなかったと聞いているけど。その荒野には聖水を作り出す泉を女神フリエールが作り出したとか・・・」
山城は本を持ちながら隊長の歴史話に耳を傾けている。
「そして、その時に作り出された泉は今では観光スポットとして年賀ら年中観光客の足が絶えないとか」
山城はシャルルに対して拍手をした。
「お見事です。それがこの町の西にある王国『メッカ』にある、フリエールの涙という名前の噴水というわけです」
シャルルは拍手をした山城に目を細めて行った。
「あのね、これくらい常識でしょ」
山城は首を振ってシャルルの言ったことを否定した。
「いいえ、常識も知らないものが今多く出ております。それはこの平和がもたらしてしまったのでしょう。平和の中で生きる者たちにとっては過去の戦いは遠い別次元のように思われているのでしょう。現に『流血の荒野』を知っているものは極わずかでしょう。自分たちの先祖が命の炎を燃やしながら戦い、吸血鬼を滅したというのに・・・」
山城は少し寂しいような仕草をしている。シャルルは頬に手を当てて肘を机に立てて山城が発する言葉一字一字を聞き逃さずに聞いている。
シャルルにも思い至る節があった。最近の団員は平和ボケしすぎて弛(たる)んできている。中には警護団を止める者までいた。
理由は「こんな平和な日々が続く時代に警護団がいるのかよ」などと言って止めていくものがいた。
「確かに、平和すぎるのも駄目なのよね」
その一言を漏らしたシャルルに山城は優しく語ってくれた。
「しかし、貴方は忘れていなかった。ご先祖様が血反吐(ちへど)を吐き家族や友人、仲間の死にしっかり向き合いそれに耐えて、勝ち取った平和なのです。だから、シャルルさんはもっと堂々と胸を張って自慢していいと思います。常識ではなく彼らの苦労を汲み取ったのですから」
シャルルは山城の言葉を聞き終わったら窓の方を見ていた。空は先ほどと同じく雲一つない青空だ。今は昼食の時間帯が過ぎてから少し経っている。だから、近くの公園には子供たちの笑い声が絶えない。ベンチには子供の母親らしい女性達が会話に花を咲かせている。
「山城の言う通りかもしれないしれない。みんな嫌なことを忘れようとしているのね」
山城はシャルルにこう言った。
「それが我々人間の良いところであり、悪いところでもあるのです」
「・・・」
シャルルは椅子から立ち上がり、傍らに立てておいたサクリファイスを持ち出発するのであった。
「私の背中、任せましたよ、山城」
「はい、しかと任されました、隊長」
二人は馬小屋へ行った。そこにシャルルと山城はサイハテ村までの足を確保する。ふと、シャルルはあることに気付いた。
「いくら平和だからと言っても、やっぱり心配だわ。団員だけで対応できるのかしら」
すると山城は「心配ありません。万が一のことを考えて腕の立つ友人を招待しておきました」
シャルルはワイバーンの背に乗ろうとしていた時にいきなり予想外のことを言われたので、ズルッと落ちそうになったが、ワイバーンが頭でキャッチする。
「ありがとう、フリード」
シャルルがフリードと呼んだワイバーンは以前群れと離れ離れになってしまい、弱り切って倒れているところをシャルルが偶然通りかかり、介抱した。ワイバーンが完治するまでの一週間シャルルはずっと傍にいた。そのため、ワイバーンは完治してもシャルルの元を離れることはしなかった。そこで仕方なく警護団で面倒見ることにしたのだった。
「山城、後ろに乗ったらしっかり捕まって下さいね」
山城は馬の手綱と同じ綱を持って衝撃に備えた。
「私は準備できました」
シャルルは後ろを振り向き親指を立てて笑顔を見せた。
「行くよフリード、場所はここから二百キロ離れたサイハテ村」
「きゅるるるるる」
フリードは羽を上下に羽ばたかせて、上昇した。
「そういえば、腕の立つ友達って誰?」
山城は風で乱れた髪を気にしているらしく、片手で髪の毛をいじっている。
「山城、片手だけだと振り落とされるわよ」
「問題ありません。それより隊長こそ、髪すごく乱れていますよ」
山城に言われて初めて髪が風で乱れていることに気付いた。
「早く言ってくださいよ」
「申し訳ありません、気づいていると思いまして」
背中で言い合いが始まったのでフリードは困り、仲裁に入ろうとした。
「きゅるるるる(ケンカしないでください)」
シャルルはフリードが何を言っているか大体は理解している。
「ごめんね、フリード。後ろにいる副隊長が、気が利かないものだから」
山城は頭に手を置き「申し訳ありません」と心がこもっていない話し言葉で詫びた。
「きゅる、きゅる(完全に遊ばれている・・・)」
「フリード、何とかあのおじさんにきつい言葉、言ってよ」
フリードは少し考えたが、シャルルの扱いが変わるには、シャルル自体が気づいて直すしかない。たとえフリードが助言しても実行しないと何も始まらない。
「・・・・」
山城はフリードが困っているのに気が付いたらしく、シャルルにこう言った。
「隊長がもう少し大人らしい立ち振る舞いをすればいいのですよ」
これが火に油という言葉がピッタリな余計なひと言だ。
「・・・それは私が子供っぽいってこと・・」
山城は即答した。
「ええ、それはもう、子供の鏡と言っていいほどですよ」
シャルルは腰に携えていたサクリファイスを鞘から取り出した。
「ここで真っ二つになりたいのかしら、や・ま・し・ろ?」
サクリファイスを天に向けて今にも山城に切りかかろうとしたとき
「キューー」
フリードが大声でシャルルに合図を送った。
頭に血が上っているシャルル。しかし、そこは警護団の隊長に抜擢されるくらいの冷静さを備え持っている。シャルルは剣を腰の鞘に戻し、フリードの頭の方に体の向きを変えた。
「どうしたのフリード」
「きゅー、きゅるるる(下を見てください)」
シャルルはフリードに言われた通りに下を見た、フリードの前方に何やら白い煙が立っていた。
山城も前方に目を向けると先ほどと違う声色でシャルルに言った。
「隊長あの煙の立っている所に、サイハテ村があります」
シャルルは目を細め、煙の出どころを見た。その煙いは煙突から出ているものだった。
「山城の言う通りですね。やっと着きましたか。フリード村の近くに泉があるはずよ。そこに着陸して」
「きゅう!!(はい)」
フリードはシャルルの言いつけを守り、泉に向けて進路を変えた。
「山城、ちょっと離れた所に降りるわよ」
山城は小さく頷いた。
「ええ、その方が良いでしょう。あの手紙が我々を敵視する者たちからの罠だったら危険ですからね」
しかし、シャルルは首を横に振った。
「それは無いわよ。あの手紙から必死さが伝わってきたから」
山城は顎に手を当て、「なるほど」とシャルルの方を向いた。
「何かしら?」
シャルルは首を横にして山城の方を見た。
「隊長は成長なさっていると、感心しているのです。確かにあの手紙には罠などは有りませんでした。隊長の優しさは弱い物を助け出すために無くてはならないものです。しかし、その優しさが、あだになることもあるので用心してください」
「ええ、そうしておくわね」
シャルルはフリードの方を向いて、こう言った。
「あなたは待ちに帰って、町を襲う悪い奴から守ってあげて」
「きゅる(はい)」
フリードは羽を羽ばたかせて、先ほどと比べ物にならない速さで飛び去って行った。
「流石はワイバーン、私たちというお荷物が居なければ、音速に近い速さを出す。もう見えなくなりましたね」
「あの子は親に捨てられたのよ」
「はっ?」
山城は条件反射で返した。
「後で知ったの・・・いいえ、本当はあの子と初めて会ったあの夜。あの子の傷は自然に出来たものではない。どうやら、生まれつき羽が周りのワイバーンと異なっていて、片方の羽が小さかった。だから、友達もできず。そして親にも見捨てられた・・・」
「しかし、フリードの羽は・・・」
「あれは私の師匠に頼んで、飛龍の秘薬を使って羽を両方とも同じにしたのよ」
「・・・そうだったのですか。さぞつらいでしょうに・・・」
シャルルは首を振って山城の言葉を否定した。
「辛いわけないわよ。あの子の小さい頃の記憶は私が改善しておいたから」
山城は驚いたような顔をしてシャルルの方を向いた。
「記憶を改善したとは・・いったい」
シャルルは山城に背を向け泉の方を向いていた。
「簡単なことよ、嫌なことは記憶の奥底に隠しただけ・・よ」
山城はシャルルの肩に両手を置き、体を自分自身の正面に向き返した。
「あのこの記憶を消したのですか?」
山城は普段の温和なオーラから一変して険悪なオーラを放っている。
シャルルは山城の表情に少し恐怖を感じた。
「私がそのようなことをすると思う?」
山城は下を向いて呟いた。
「いいえ、しかし、もしそのようなことをしたら・・・」
「・・・あなたの嫌いなことはしないわよ。それに・・・記憶を消して彼女自身の生きざまを踏みにじるようなことはしない」
山城はシャルルの肩から手をどかして三歩下がり姿勢を正した。
「我々の隊長はそのようなことはしません」
「行くわよ、山城」
シャルルはサイハテ村へ続く道に足早に移動する。
「隊長」
山城は隊長を呼び止める。
「何?」
「先程の無礼をお許しください」
頭を下げている。
「あなたたちの隊長はそのような行為で怒るとでも思った」
「・・・」
「つまらない詮索してないで早くいきましょう。私が一番許せない奴は平和を脅かす輩たちよ。それ以外に怒りを覚えることは無い」
シャルルはそう言って獣道へと入って行った。
そのあとを山城は追っていく。
(流石は我らが隊長様です)
サイハテ村に着いた二人が見た光景は悲惨なものだった。建物の破片が地面に散らばっている。更に、地面に大きな穴が開いていた。そしてその他にとても気になることがある。
「山城気づいている?」
「はい隊長。村人が居ませんね」
(そうまだ日は上っているのに屋外に人っ子一人いない。
普通なら子供や夕食の買い物などで婦人たちの会話などがあってもいいと思うのだが・・・)
シャルルは右手を顎の下に置き考えている。
山城はいつまでも村の入り口に立っているわけにはいかないと考えた。
「隊長とりあえず村長の自宅へ行きましょう。情報が少ない中で吸血鬼退治をするのはかなり危険だと思います」
「そうね、山城の言うとおりね。村長の自宅へ行くわよ」
サイハテ村の東側に他の建物と明らかに大きさが違う建物がある。山城は目の前の建物を指差している。
「隊長あれが、サイハテ村の村長が住んでいる建物ですね」
「そうね・・・それにしてもどうして村人に合わないのかしら?」
「それは村長に聞いた方が早いでしょうね」
「それもそうね」
シャルルは村長の家のインターホンを押した。
中から村長の召使という少女が扉を開けてシャルルたちを家の中に招き入れた。
召使は大広間にシャルルと山城を連れて行った。そして、その部屋の椅子に座らせて村長が来るまでそこで待つようにと言われた。
大広間には骨董品の数々が飾られていた。
「ほう、なかなかこっていますね」
山城は展示されている骨董品に目を移していた。
「山城、そういった壺や花瓶なんかに詳しいの?」
山城は髭に手を当てながら展示品を次々見ていく。
「ええ、こういったものに多少興味があるもので・・・!!」
山城はある壺に目が釘付けになった。
シャルルは山城の動作に気付いた。
「どうしたの山城?」
「ええ、この壺・・・」
「??その壺がどうかしたの?確かに他の壺と違って妙な異彩を放っているような気がするわ・」
「その壺はある獣の骨を焼いて作ったものなのですよ」
声の方を向くと杖を片手に立っている老人が先ほどの召使を従わせていた。
「始めまして警護団の方々。私がこのサイハテ村の村長のピエールと言います」
二人は村長に頭を下げてあいさつした。
「始めまして、私が警護団の隊長のシャルルと言います」
「同じく副隊長の山城と申します」
挨拶を済ませ、大広間にあるソファーに座り、先ほどの召使が紅茶を入れてテーブルの上に置く。村長は召使の入れた紅茶を飲む。
「うむ、うまい」
「お褒めの言葉、ありがたく思います」
召使は頭を下げ持ち場に戻っていく。
二人も紅茶を飲む。紅茶の香りが口いっぱいに広がる。シャルルは良い茶葉を使用していると思いながら飲んだ。
そしてティーカップを置き村長に手紙に書かれていた事件について聞き始めた。
「村長さん。事件について教えてもらいたいのですが」
村長はシャルルの方を向き、頭を縦に傾け紅茶がまだ少し入っているティーカップを置く。
「事件が起きたのは三週間前からです。ちょうど世界中で注目した赤(せき)月(げつ)の月が現れた日の次の日からです」
「なんですって!!」「なんですと・・・」
二人は同時に声を発して驚いた。
三週間前
月夜の晩いつもなら月の優しい光が地上を照らして夜道に迷わぬように人々を照らしていた月がその日だけ様子が違った。
地上を赤月が覆ったのだった。その日から警護団の仕事の量が多くなった。
大人しかった獣たちが突然狂暴になり旅人を食い殺すという事件が数件起こった。
また、いきなり発狂するものまで出た。
そのせいで、「「終末だ」とか「世界の終わりが近づいている」などと、噂まで出始めていた。そんな中この村で起きた子供たちの殺害・・・関係ないわけがないという村長の見解に二人は頷いた。
「最初に犠牲になったのはこの村で鍛冶屋をやっているナックルの長女がベットの上でミイラのように干からびている姿を母親が発見したのです。このようなことが七回起きました。そしてこの間亡くなったのが、農家を営んでいるハーマルの長男です。夜になっても帰ってこなかったので村の者数人で探したのですが同じようになっていたのを、村の近くにある泉のところで見つけました」
山城は腕組みをして村長が言っているのを黙って聞いている。シャルルは手を口の前で動かさず固まっている。
山城は疑問に思うことがあるので村長に聞いてみた。
「その農家の長男だけが・・・違う場所で発見されたのですか?」
村長は山城が尋ねてきた疑問に対して答える。
「はい、ハーマルの息子のドルだけは泉の前で亡くなっていました」
「そうですか・・・」
村長は答えると手をギュッと握り悔しそうな声を出した。
「ドルは優しい子で大人になったら親孝行してやるんだと言い放っていました。しかも、村人の目の前で・・・」
シャルルはまだ手を口に当てて黙り込んでいる。
山城は「目の前で?」と聞いた。
「はい、ハーマルの奥さんは当時流行(はや)っていた病にかかり亡くなったのです。しかし、ハーマルは腐らずにドルを男手ひとつで育て上げました。そして、村で行われる村祭りで神輿の上でこう宣言したんです。『おいらは将来、ここまで育ててくれた親父を楽させるためにありとあらゆる方法を駆使して、親父に恩返しするんだーー。親父今まで俺を育ててくれてありがとう』と言っていたのです」
『・・・』
二人は黙り込んでいた。
「この村では神輿の上で夢を願うとそれが実現するという言い伝えがあるのです。それを聞いたハーマルは涙を見せないように
祭り会場から立ち去っていました。この村はそんなに大きくはないので、近所づきあいが盛んなのです。だから、私たちはハーマル達親子の手伝いをしてきました」
村長の眼もとから光るものが流れている。
「だから・・・ドルの夢を打ち壊した輩を退治して頂きたいのです。そして、未来ある若者たちを殺した殺人者にこのわしがけりの一発でも入れなければ、この怒り抑えられません」
シャルルは村長が流した涙を見て誓う。
「村長。私ヨークヒルズ警護団の隊長であるシャルル・J・リヴァイアが必ず卑劣な犯人を捕まえてここに連れてくると誓います…必ず」
そう言うとシャルルはソファーから立ち上がり大広間を後にした。
大広間には山城と村長だけが残った。
「・・・頼もしい隊長さんですね」
「ええ。私たちの隊長ですから」
山城はシャルルの後を急いで追う。
外は夕日が一日の終わりを告げるかのように大地をオレンジ色に染めている。
第一章
悲劇の村
完
次回
吸血鬼現る
月の明かりが地上を照らさなくなったとき、魔の根源が目覚める
ここまで読んでいただきありがとうございます。
なかなか小説というものは難しいものです。
自分の頭に出てきている理想をそのまま小説に反映するのにかなり時間がかかりました。
続編が遅れて申し訳ありませんでした。
これからも精進していきます。
次回をお楽しみください
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プロローグの続きです
プロローグを読んでからこちらの作品を見たほうがいいです。