No.571015 覇王少女アインハルトStrikerSrineさん 2013-04-29 03:31:35 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:3446 閲覧ユーザー数:3369 |
――サラバ!(* ̄ー ̄)〇グッ☆エッΣ( ̄□ ̄)――
戦火に焼かれ、荒れ果てた大地。
草木などとうに枯れ果て、生えているのは墓標代わりの剣や槍。
そんな終末を体現した世界の片隅で語る二人の存在。
「――クラウス、今まで本当にありがとう」
少しばかり傷付いた戦装束に身を包んだ少女が、感謝の想いを込め、その言葉を口にする。
少女の心を表したかのような映えを魅せる金の髪が揺れ、神秘的な存在感を醸し出す紅と翠の瞳が決意を訴える。
そして片腕の傷を抑えて跪きながら少女を見上げる青年『クラウス』に告げる。
「……だけど、私は行きます」
その言葉にクラウスは負けじと、少女とは異なる彩りの瞳に己の意思を込める。
まるで憤慨するように……否、まるで脅えるように。
「……待ってくださいオリヴィエ! 勝負はまだ……!」
そう、彼らは戦っていたのだ。己の意思、相手への想いを拳に込めて。
その結果はクラウスと少女『オリヴィエ』の立ち位置が物語っている。
一つの結果、一つの結末。
己が信念を貫き、相手を制したのはオリヴィエの方。
「あなたはどうか良き王として、国民とともに生きてください」
一足跨げば踏み越えられる筈の距離なのに、触れることができる間合いなのに、その差はまるで断絶しているかのよう……。
「この大地がもう戦で枯れぬよう……青空と綺麗な花をいつでも見られような……そんな国を――」
儚い笑顔を浮かべ、オリヴィエは未来を、そして希望を謡う。
自身が叶えられない夢を、終わりの後に訪れる始まりを託す。
そして自らは終わりへと向かうため、クラウスへ背を向ける。
「待ってください! まだです!! ゆりかごには僕が――!」
絶望へと向かうオリヴィエの背に向かってクラウスは叫ぶ。
それは自分の役割だ。自身が背負う結末だと……だが、オリヴィエを留めるには至らなかった。
「オリヴィエ!! 僕は――!!」
右手で
傷口から血が流れるのも気にせず、痛みを忘れたかように必死に、ただただ必死に手を伸ばす。
だけど伸ばした手は何も掴まず。そして何より跪いたまま足は一歩も動いてくれなかった……。
――そして『彼』の絶望はそこで途切れ、朝という始まりで『彼女』の物語が動き出した。
――ャバイョ━━<(ll゚◇゚ll)>━━ッッ!!!!!――
「……いつもの夢、いつもと同じ結末、そして変わらない始まり……」
目を覚まし、ベッドからゆっくり起き上がりながらぼやく。
「クラウス、あなたは……」
今しがた見た夢の登場人物クラウスに向け、複雑な思いを込め……溜息を付く。
なんとなく気に入った骨董品の時計の短針が数字のⅧを指している。
長針もまたⅧを指している気がする。
「ふぅ……少し落ち着きましょう。今に始まったことではないのですから」
そう呟くながら窓、日が差す方へ向かい空を眺める。
窓から見える蒼空は夢に見た戦火で覆われた
そして空を見上げて落ち着かせた心を持って、
されど骨董品の時計は一切合切無駄なく切実に現在時刻を指していた。
敢えて付け足すならば今日は平日、私ことアインハルトは今年で(精神年齢はともかく)8歳、とある学院の初等科に通う女の子である。両親は共働きであり、2人とも朝が早いのであしからず。
……まぁ、ここまでくれば見えてくるだろう。
「
魂の叫び、慟哭、呪詛の混じりあった憎しみの言霊が部屋に虚しく木霊する。
碧銀の髪が天を衝き、色彩の異なる瞳が絶望に染まった……ような気がする。
――あぁ、完全に遅刻コースである。
――ヽ(゚ロ゚; )ギャアア!!ΞΞ\( )/ΞΞギャアア!!( ;゚ロ゚)/――
あれから急いで着替えと洗顔を済ませ、学院へ走った。
正に日課である覇王流の修行が活きた瞬間だった……元はと言えばそのせいで遅刻しているようなものだが……。
朝食は摂れなかったが、お弁当は用意されてあったため、お昼までは何とか持つだろう。
そして一限目の授業も半ばの時間に『St.ヒルデ魔法学院』へ無事にたどり着く事ができた。
「はぁはぁ……はぁはぁ……ふぅ……」
初等科の入り口で息を整える。
記録を取っていれば中々の好タイムとなったであろうが、理由が理由なだけにそんな感傷はない。
(とりあえず職員室に、先生にも遅刻の旨を伝えなければ)
何食わぬ顔で二限目より授業を受けれるほど、いい性格はしていない。
……ちなみに自宅から一報入れれば良かったと思ったのは少し後だった。
――壁|Д`|┛チラッ ≡ |*´Д`| (小声)オハヨォゴザイマスゥゥ↓↓――
「……そういえば一・二限目は体育でしたか」
職員室で先生に笑われながら怒られた後、真っ直ぐ教室へ向かった。
だが、教室から声が聞こえないことから今日の時間割を思い出した。
……言い返せば時間割を忘れるくらい焦っていたということだ。
(ちゃんと前日に用意しておく習慣で良かった……)
急いでいたし焦っていたが忘れ物がないのは僥倖だった。
皆が戻ってくるまで自習していようか、と思い教室のドアを開ける。
「……おはようございます」
そして誰もいないだろうが、律儀に挨拶をしてから入室する。
だが……。
「……あぁ、おはようございますアインハルトさん。今日の一・二限目が体育の時間でよかったね。今日はどうしたんですか? まさか、下水道から這い出てきた
誰もいないと思っていた教室から挨拶に対する返事が返ってきた。
独り言とか、
声の元を追ってみると一人の少年……クラスメイトがいた。
――【クラスメイト】ヽ(^∀^*)と申しまつ♪――
「……おはようございますフューネさん。なんですかその例えは?」
変な例えを持ち出し挨拶をしてきたクラスメイトに挨拶を返し、視線を向ける。
肩ほどまでの金の髪。
瞳の色すら確認できないほど目が細く睫毛が長い……そう、傍から見ると盲目のような印象を与える。
そして少しばかり不健康そうな白い肌。
名をフューネ・パープルロート……一応は男子生徒。
病弱設定で体育を休み、教室で電子書籍を読みふけっているサボリ魔。
今日も今日とて文学に勤しんでいる。
まぁ、文学といっても決して褒められた類のモノでは……否。グラビアなど決して文学とは認めない。
「なに、近々そんなことが起こるかもしれないと、そう思って適当に言ってみただけ……まぁ、真っ当な理由で遅刻したのかという比喩と受け取って」
要はイヤミだ、と彼は堂々言い切った。
夢とか先祖の無念とかはともかく、結果として寝坊なので強くは言えず、顔が少々引きつった。
「相変わらず謎の多い事柄を喩えますね……もし仮にそのような事件に遭遇した場合は、警防署に連絡しますのでご安心下さい」
遅刻の理由は言わず、別に貴方には迷惑をかけませんのでほっといて下さい、と視線で訴える。
「ふぅ、どうでしょうか? 大抵の人間は突発的な事態では反応が遅れるものですよ?」
視線を電子書籍から微塵も動かさず、彼は一般論を述べる……もはや遅刻うんぬんは関係ないだろう。
確かに彼の言う通り、非常時においては訓練でも積んでいない限り、それが一般論だ。
だけど……彼の言うことはどことなく認めたくない。
「……救命が第一です。ならば自ずと為すべき事は体が反応します」
なので反論しつつ、彼の隣席に座り、三限目の予習を始めることとする。
すると彼が、ふむ、と声を上げ、こちらに視線を向ける。
本当に見えているのか? と激しく疑問を抱くところだが、どうやら先の
「――何をまじめに語っているのですか? 適当に言ってみただけだと初めに述べたでしょう?」
貴女バカですか? という蔑む視線を感じた。
握っていたペンをへし折ってしまった私の憤りは、決して間違いではないと思う。
――(。・ω・。)ノシ━オ━ツ━カ━レ━サ━マ━…☆彡――
五時限目終了の時間が迫り、教師が授業を切り上げる。
今日の2年生の授業はこれでおしまいだ。
皆、後片付けをして放課後の予定を話しながらHRを待つ。
(……今日は朝練ができませんでしたから、その分を取り返さなければ)
自身も今朝の失態を思い出し、放課後のスケジュールを考えながら帰りの仕度をする。
……それと同時に教室に入った時のやりとりも思い出し、手が止まってしまった。
その元凶はというと……。
「……すぅ、すぅ……」
隣でないとわからないくらい小さな寝息を立てて堂々と寝てやがった。
ただし、姿勢はきっちり前を向きながら……普段から目が細いため、まったく違和感が感じられない。
(いいご身分ですね……これで成績が良いのだから世の中は不公平極まりないです)
はぁ、と溜息を付きながらも、自身の仕度を済ませた後、彼を起こすことにする。
朝のやりとりでイラッとしたのは事実だが、生憎と精神年齢はそこまで低くない。
「……授業は終わりましたよ」
軽く肩を突きながら声をかける。
「……ん? ふぁぁ……おはようございます。まったく自主性を重んじるのは結構ですれど、区切りを示す意味でチャイムくらい欲しいものですね」
目覚ましになるのに、と呟きながら学院の制度に文句を言いつつ、体を伸ばす彼に呆れた視線を送りながら、会話を続ける。
「……自主性は多いに結構、むしろ、そんな体たらくでは将来苦労するのでは?」
存外にだらしない、と伝える。
そもそも学校にチャイムなんて概念は私たちの生まれる前に廃止されているだろうに、そう思っていると彼がこちらを向いた。
……本当に起きているのか怪しい目の開き具合に少し呆れたのは内緒だ。
「なに、自主性の全てを否定しているわけではないし、重んじているからこその態度であり、力の入れ処を自身でコントロールできている……ならば問題ないでしょう?」
「えぇ、貴方に話すだけ時間と労力の無駄だということを再認識しました」
好きなことをやって生きている人間の気持ちなんて理解できない。
(だって私には『好きなこと』なんてないから……在るのはきっと『義務』と……)
思い浮かぶ映像は血まみれに枯れ果てた古戦場。
刀槍類が並び立つ墓標群。
未来を託し、死を、終焉を選び、去っていく少女……。
そしてそれを止められなかった『
「――アインハルトさん? もうHRが始まりますよ。妄想に想い耽るのは後にした方が良いですよ」
……オリヴィエとの思い出を妄想と一蹴された。
まぁ、今思い出すことではなかったし、そもそも彼に話したところで理解できるとも、共感できるとも思わない。
(そう、真実は私の中に在る……これは私の問題。私だけの問題なのですから……)
私はきっと難しい顔をしているだろう。
少なくとも彼にはそんな空気が感じられたのだろうか、ふむ、と口癖のような前置きを置く。
この口癖は彼が何か変なことを言う前兆だ。
付き合いは短いが、からかわれ続けたせいか、なんとなく理解できる。
しかも、彼のことだから敢えて空気を読まない気がする。
(ふん、そう何度も好き放題に言われるままではありません。そうです、受け流せばいいのです。そもそも変に反応するから彼が調子に乗るのです!)
万全の心構えで待ち……受け流す。
覇王流にもそんな技があった気がする……きっとこれは、その技の修練なのだ。
と、バッチコーイな心意気で彼の台詞を待つ。
「――ありがとうアインハルトさん。そもそも、起こしてもらった御礼を先に言うべきでした」
「えっ? あっ……」
受け流しに失敗した。
とりあえず、覇王流の道は険しい……ということにしておこう。
先生が来たので彼は前を向き、私から視線を外した……が、彼の横顔が笑っていやがった。
――||'ェ')ノ|Ю マタ明日!――
HRが終わったので帰宅することとする。
先ほど決めた予定通り、午後は覇王流の修練に当てるつもりだ。
「ではお先に失礼します。同じ失態を繰り返すつもりはありませんので心配なさらずに」
一応、律儀に隣の彼にも挨拶を、そして今日のような遅刻はしないと宣言しておく。
「あぁ、明日は病院で休みます。なので気にしないでいいですよ?」
人の決意を台無しにするような台詞だった。
どうしてこの人は、と若干顔を引きつらせながら席から立ち上がる。
「……絶対に遅刻しませんから」
少しばかり怒気を込めて返す。
彼は飄々とそれを受け流し、ふむ、と口癖の前置きをする。
「何も原因が寝坊だけだとは限らないでしょうに。もしかしたら人助けの結果、病院にお見舞いに行って……とか?」
相変わらずぶっ飛んだ発言をする彼に言葉は返さず、一礼して教室から出る。
さぁ、今日の溜まりきった鬱憤を拳に込めて修練しなければ……。
――⊂´⌒∠;゚Д゚)ゝつ <ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!――
所詮、予定は未定。
世の中そんなに都合良くいかないものである。
(1時半程度のタイムロスですか……結局、朝錬の分が丸々潰れましたね)
ふと、帰路の最中に母親から通信端末にメールがあったのだ。
内容は『クリーニングに出していた制服(冬服)を取ってきておいて』と。
結果、レールウェイに乗ってサードアベニュー近辺まで、少しばかり遠回りすることとなった。
季節は6月、衣替えを済ませたのがついこの間のことで、時期的にもそろそろだとは思っていたが……。
(……はぁ、今日の運勢とやらはかなり悪い気がします)
そんなことを考えながら、とぼとぼとレールウェイのステーションを目指す。
時刻はもう15時を回るところ、以前より人通りが少ない通りを歩く。
「これ以上は何もありませんよう『――ガランッ!』……なんでしょうか?」
が、ついつい口に願望を出しながら歩いていると、少しばかり違和感のある音が耳に入った。
音源を捜して周囲を見渡すと、それらしい路地裏が見当たった。
(……路地裏? あまり良い予感はしませんが……)
直感的には微妙、付け加えるなら今日の運勢も微妙。
しかし、まじめな性分か気付いた以上は無視できない。
(少し様子を窺うだけです。あまり時間も取りたくないですし……)
周囲に人がいなかったことも助勢し、内心で言い訳をしつつ路地裏に入って音源を捜す。
「マンホールの……蓋? あれが先ほどの音源でしょうか? それにしても……」
音源を見つけたのはいい。
だが、新たな謎が浮かぶ……あれは一体なんのために開いているのだろうかと?
むしろ勝手に開いたらホラーの領域ではないか……今は昼間だが。
(あぁ、そういえば……)
ふと、クラスメイトが朝に変なことを言っていたな、と思い出した。
(ふぅ、早々に幼子が出てくるものですか……いえ、むしろ出てきてたまりますか。本当にいい加減極まりない人です)
と、心の内で彼の言動について呆れながら見ていると……本当に這い出てくる何かが現れた。
「……えっ? こっ、子供? えっ、えっ……えぇぇぇぇ!?」
最初に出たのは這い出てきた
そして最後は……マジでマンホールの中からボロ布を纏った幼女が這い出てきたという事実に対する驚愕。
――新暦75年6月、古代ベルカの君臨した王同士の歴史的邂逅は……路地裏から始まった。
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息抜き作品。アインハルトでStrikerSを再構成。
続きはいつか書く。いや、書きたい。
ちなみにつり乙は、衣遠兄様の華麗な一日のせいで色々と設定(案)が崩れてしまったため、アッチはプロット見直し中。