第二章 『三爸爸†無双』 其の二十七
本城 赤一刀寝室 (時報:桂花五人目 妊娠三ヶ月)
【赤一刀turn】
う~ん・・・もう朝か・・・・・・。
うう、流石に真冬の朝は冷えるな。
暖かい布団から出たく無くなる・・・・・。
うん?なんだ?いつもより布団の中が暖かいぞ。
それに何やら温かくて柔らかい物が・・・・・。
これはまたシャオがベッドに忍び込んで来たか?
まったく、しょうがないなぁ・・・。
シャオはまだ俺が眠ってると思ってる筈・・・ちょっと驚かせてやろうかな♪
ちょっと薄目を開けてシャオが何してるか確認を・・・・・・・・あれ?
「うわああああああっ!!シャオが縮んだっ!!」
「シャオおねえちゃんじゃないもん!ぴんれんだもんっ!!」
「え?・・・・・・・
俺の混乱が落ち着くよりも先に、布団から更にもう一人顔を出した。
「おはようございます。おとうさま。」
「
そして更に・・・。
「爸爸・・・おはよう・・・」
「ととさま、おはよう♪」
「ちちうえ、おめざめ?」
「こんな所に居たっ!あんた達!爸爸の部屋に入っちゃダメって言ってあるでしょっ!!」
勢い良く開け放った扉から入って来るのは、今度こそ間違いなくシャオだった。
背が伸びて体つきも蓮華に追いついたシャオが肩を怒らせてこっちにやって来る。
「ぴんれんも爸爸をおこしてあげたかったんだもーん。」
冰蓮はそっぽを向いて口を尖らせていた。
雪蓮の子だけあって気の強さは娘達の中で一番なんだよなぁ。
だけどここは父親として冰蓮の態度はビシッと叱らなければ!
「冰蓮!そんな言い方しちゃダメ・・・だろ・・・・・・」
う!冰蓮が悲しそうな顔に!
「でも、起こしに来てくれたのは嬉しいぞ♪」
「一刀っ!!」
「うはいっ!」
シャオの怒声に思わず飛び上がって正座しちゃったよ・・・。
「ちょっとこっち来て!」
シャオに腕を掴まれ・・・わあ!待って待って!落ちる落ちる!ベッドから落ちる!!
「(一刀!この子達はお姉ちゃん達に黙ってここに来たのよ!)」
「(ああ・・・なんかそんな感じだったな・・・)」
ベッドから落ちる前に、何とか床に足を着ける事が出来た。
「(蓮華お姉ちゃんなんか蓮紅が居ないって青ざめちゃって大変なんだから・・・)」
「(ええ!?)」
「(それに子供達が示し合わせたみたいで、大半が朝起きたら居なくなってたの。)」
「(それじゃあ今頃緑と紫の所もこんな感じか・・・・・)」
「(今日は運良く一刀たちが一人で寝てたから良かったけど、ちゃんと言い聞かせないとしてる最中に部屋に入って来ちゃうわよ!)」
それはマズい!プロレスごっこってベタな言い訳も使えないのに!
「シャオおねえちゃんがまた爸爸をひとりじめする!」
「冰蓮!お姉ちゃんは一刀と大事な話しをしてるの!黙ってなさい!」
我儘姫の新旧対決だな・・・・・・いやいや!傍観してる場合じゃない!
「シャオ、落ち着いて!冰蓮もお姉ちゃんや媽媽達の言う事をきかないとダメだぞ。」
「だってぇ・・・・・・媽媽たちばっかり爸爸たちをおこしにいくんだもん・・・ぴんれんたちもおこしにきたいんだもん・・・・・」
駄々を捏ねるのは冰蓮だけど、見れば後の四人も同じ顔をしている。
媽媽の真似がしたい、仲間外れな感じがする、それにヤキモチって所かな?
俺だって可愛い娘達に起こしてもらえたら本当に嬉しいんだが・・・・・。
ん?廊下から激しい足音が・・・。
「蓮紅!」「冥龍!」「宴!」
蓮華、冥琳、祭さんが怖い顔で部屋に飛び込んで来た。
子供達は・・・・・布団の中で丸くなっている・・・・・。
そして、
「烈夏ぁっ!!」
思春が現れると同時に大喝一声。部屋の中がビリビリ震える。
布団をかぶっていても分かる程、震えているのが一人・・・・・烈夏はそこか・・・。
最後に雪蓮が悠然と部屋に入って来て、寝台に近付いて行く。
「冰れ~ん♪言う事を聞かない子はお尻ペンペンするって言ってあるわよね~♪」
優しい声と笑顔で言ってるけど、戦場に居るようなプレッシャーが雪蓮一人から放たれていた。
「しぇ、雪蓮・・・あまり手荒な事は・・・」
俺が堪えきれずそう言った瞬間に子供達が布団から飛び出した。
が・・・・・。
あっさり母親達に捕まった。
「蓮紅!あなたって子は心配かけてっ!」
「ごめんなさぁい!おかあさまー!」
「宴!母の言う事が聞けぬ子はお仕置きじゃ!」
「わあぁん!ごめんなさい!媽媽ぁー!」
「冥龍!お前の考える事は私にはお見通しだ!」
「ゆるしてぇ!かかさまぁー!」
「烈夏・・・・・・往生際が悪いぞ・・・」
「あぅあぅあぅあぅ・・・・・・」
思春・・・・・烈夏の手を掴んでそこまで凄まなくても・・・・・あ。
ああ~・・・・・烈夏が恐怖のあまりお漏らししちゃったよ・・・・・。
雪蓮と冰蓮は・・・。
「ごめんなさいも言わずに逃げ出そうとしたわね♪」
あんなプレッシャー掛けられたら、普通逃げるって・・・・・。
「ご、ごめんなさい・・・媽媽・・・・・・」
「十発追加♪」
「いやああぁん!ごめんなさいいったのにいいぃぃ!」
ジタバタ暴れる冰蓮を、雪蓮はいとも簡単に脇に抱えた。
そして部屋の中で子供達のお尻を叩かれる音と泣き声の大合唱が始まった・・・。
この状況なので子供達を弁護する事も出来ず、居た堪れない気持ちでシャオに向き直る。
「事前に決めておけば子供達が起しに来ても問題無いんじゃないか?」
「朝から元気なそれを子供達に悟らせない事ができるならね。」
シャオの視線の先は俺の股間。
ごめんなさい。不可能です。
本城 医務室
【小蓮turn】
「もう!あの子達のお蔭で今朝は散々だったわ!」
怒りの治まらない私は華佗を相手に愚痴を言ってしまう。
「今朝の騒ぎはそういう事か。道理で今日は楽進が助手に来ない理由だ、あっはっはっはっ♪」
「笑い事じゃないわよ!雪蓮お姉ちゃんの躾が甘い訳じゃないのに、何で冰蓮はあんなに生意気なのかしら!?」
「孫尚香、君がそれを言うのか。」
むぅ、華佗がまだ笑ってるぅ・・・。
「孫紹の場合は君に甘えているんだろうな。」
「甘えるならもっと素直に甘えて欲しいわよ。四つになったばっかりだっていうのに、この先不安だわ。」
あんなツンツンした態度取られたら、相手が子供でも頭にくるわよ。
「まあまあ、それよりも診察を始めるから気を落ち着かせてくれよ。」
「気分が昂ぶってると胎児の氣を探りづらいんだったわね・・・・・ちょっと待ってて・・・」
目を閉じて深呼吸っと・・・すぅ・・・はぁ・・・。
「もう・・・大丈夫。」
「よし、行くぞ!はぁあああああああああ!母の胎内に宿りし光よ!神の恵みし児の命!我にその姿を示さん!!胎児恵光おおおおおおおおおおおっ!!」
掛け声は大きいのに放たれる氣は包み込む様に優しい。
五年以上も毎月続けてると、コレも何だか儀式みたいに感じてくるなあ。
今日は朝からケチが付いたし、期待出来ないわよねぇ・・・・・。
「視えたっ!孫尚香!おめでとう!」
「え!?」
「懐妊だ♪」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・うっそぉ・・・」
本城 皇帝執務室
【赤一刀turn】
「俺の所には蓮紅、烈夏、冰蓮、冥龍、宴の五人だったけど、紫と緑の所は?」
「俺の所は
「俺の所は
三歳以上の子が全員で決行したのか。
「孫呉は祭さん以降、暫く間が空いたからとは言え何か負けた気がする・・・・・」
「いや、赤はむしろラッキーだろう・・・蜀は愛紗、紫苑、桔梗、翠、白蓮がカミナリ落として、たんぽぽと麗羽と七乃が引っ掻き回して、桃香と美羽が長々説教してる横で恋が黙って恋々を睨んでたんだぞ。」
とてもカオスな状況だったんだろうな・・・・・・。
「曹魏は孫呉と似たような状況だったが・・・・・桂花がな・・・」
そう言って珍しく被っていた帽子を取ると、その下から見事なタンコブが現れた。
「「済まない、紫・・・・・今度飯を奢るから・・・」」
きっとまたあの花瓶で殴られたんだろうな。
「かーずと・たちっ♪」
「「「ん!?」」」
声に振り返るとシャオがピョンと跳ねるように部屋に入って来た。
それに合わせておっぱいも弾む。
早朝とは正反対に超ご機嫌だ。
「「「シャオ!ついにか!?」」」
「えっへっへ~♪シャオもこれで媽媽になれたよー♪」
ダブルピースでの笑顔の報告に、俺たちも心の底から喜びが湧き上がって来た。
「「「ありがとう!シャオ!」」」
俺たちの胸に飛び込んでくるシャオを受け止め、強く抱きしめる。
「お姉ちゃん達に負けない、立派な母親になるね♪」
「シャオは料理や裁縫の修行を頑張ったもんな。」
その甲斐有ってシャオの料理は華琳が認めるレベルにまで達している。
「それもだけど、今は蓮華お姉ちゃんの記録を越えるのが目標なの。」
「「「蓮華の記録?」」」
はて?何か張り合う様な物が有ったっけ?
「出産に掛かる時間をお姉ちゃんより短くしてみせるわ!」
拳を握り締め、瞳に炎が燃えている。
「「「・・・・・・別にそこは張り合う必要は無いと思うけど・・・・・」」」
「私はお尻も大きくなったでしょ♪お姉ちゃん達に負けてないって所を証明してみせるんだから♪」
シャオが俺たちの手をお尻に導いた。確かにこのお尻ならば雪蓮、蓮華、シャオと三人が並べば『美尻の三女神(ノルン)』と呼ぶに相応しい・・・・・・・はっ!
「「「と、とにかくそんな張り合う必要無いから元気な赤ちゃんを無事に産んでくれ!」」」
「どうしたの?そんなに慌てて・・・・・・・あ~、私のお尻触ってその気になっちゃった?」
「「「イヤイヤイヤ確かにそんな気分になりかけはしましたが妊婦になったばかりで安定期はまだまだ先のシャオにそんな事しちゃうと胎児にも影響が有る訳でしっかりと我慢が出来た筈の北郷一刀さんたちは小悪魔な微笑みで誘惑されても全然大丈夫だったりしたりなんかしちゃったりしちゃう訳ですよ!!」」」
「一刀・・・・・何言ってるか分かんないよ?」
「「「と、とにかくみんなに報告だ!蓮華と雪蓮の所に行こうか!?」」」
俺たちは場を誤魔化すのと己の情動を霧散させるべく、シャオの手を引き出発を促した。
そんな俺たちの情けない行動だったが、シャオはご機嫌な笑顔で
「うん♪」
と、言ってくれた。
翌日
房都 街中
【小蓮turn】
「「「それじゃあ、まずは西の市に行こうか。」」」
一刀たちとシャオの四人で西部側の市に向って歩いて行く。
途中、顔見知りの人達が会釈や挨拶してくれるのを笑顔で返してのんびりと。
「最初はやっぱり服屋からよね♪それから宝飾のお店を見てぇ♪」
今日は思いっきり楽しまなきゃ。
昨日、冥琳に一刀たちの事、外史の事を教えて貰った。
今まで通りに一刀たちに接する事が、一刀たちの幸せだって言うのならシャオはそうしてみせる。
それが妻として、一刀たちを援ける事になるんだもんね。
まあ、子供を身篭れたって思い出す度に足取りが軽くなっちゃうんだけどね♪
「おじさん、こんにちは~♪」
お馴染みの服屋ののれんをくぐって挨拶をすると、店主のおじさんがいつもの様に笑顔で出迎えてくれた。
「これはこれは、孫尚香様。ご機嫌麗しく。」
「「「親父さん、今日もお世話になるよ。」」」
「これは陛下。お三人ともお揃いで・・・・・新しい意匠の図案もお持ちした方がよろしいですかな?」
一刀と一緒に来ると、おじさんが職人の目に変わるのよねぇ♪
「おや?今日は孫策様もご一緒でございますか?」
「「「へ?」」」
「何で雪蓮お姉ちゃんが居ると思ったの?」
「いえ、孫紹様がご一緒なものですから・・・・・」
そう言っておじさんが手のひらで示した先に・・・。
「こんにちは!おじさん♪」
「「「「冰蓮っ!!??」」」」
学園に居るはずの冰蓮が何で・・・・・。
「ああ!あんた、お城から後をつけて来たのねっ!」
「シャオおねえちゃんが爸爸たちをまたひとりじめするんだもん!」
全然悪いことをしているって自覚が無いのね・・・・・さも当然って顔してるわ・・・。
昨日、あれだけお尻叩かれても全く懲りてないなんて・・・。
「「「冰蓮・・・・・一応訊くけど、媽媽にお出かけするって言ったか?」」」
「媽媽にいったらダメっていうからいわなーい。」
「「「やっぱり・・・」」」
一刀たちもげんなりしてるし。
私はしゃがんで冰蓮に目線を合わせる。
「あのね冰蓮。あんたお城に戻ったら、また媽媽にお尻ペンペンされるのよ。」
「え?・・・・・え?」
はあぁぁぁ・・・・・この子ったら本当にそこまで頭が回って無い・・・思い付いたら即行動って、雪蓮お姉ちゃんの子らしいわ。
「しょうがないわね。今日は私と一緒に居ていいわよ。媽媽には私が怒らない様に言ってあげる。」
「「「いいのか?シャオ・・・」」」
「(一人で帰すなんて絶対できないし、その辺の警備兵に預けて城に戻すのも一刀たちは出来ないでしょ。連れて戻って時間を無駄にするくらいなら一緒に居た方がいいわよ。)」
「「「(シャオが納得してくれるなら、俺たちとしては嬉しいけど・・・)」」」
「た・だ・し!大人しくいい子にしてないと、すぐにお城に戻って媽媽にお尻ペンペンしてもらうからね!」
「う、うん・・・」
取り敢えず納得はしたみたいね。
「それから一刀。この埋め合わせは後日しっかり貰うからね!」
「「「・・・・・承りました・・・」」」
三十分後
【冰蓮turn】
つまんない。
爸爸たちシャオおねえちゃんとばっかりおはなしして、ぴんれんとあそんでくれないんだもん!
「ねえ爸爸ぁ~、おなかすいたぁ。」
「うん?冰蓮、お姉ちゃんのお買い物が終わったら、すぐにご飯にするからもうちょっと我慢しような。」
「やだやだやだぁっ!爸爸たちシャオおねえちゃんとばっかり!爸爸たちなんてだいっきらい!ぴんれんおうちかえる!」
【小蓮turn】
「冰蓮!待ちなさい!」
手を伸ばして呼び掛けるけど、冰蓮はそのまま走ってお店を出て行ってしまった。
私も慌てて後を追いかける。
店を出る前に一刀たちを確認してみると・・・・・あ~、固まっちゃてるわ・・・・・。
「孫尚香様!何事がございましたか!?」
店を出た所で兵が駆け付けて来た。
この顔、北郷親衛隊ね!
「冰蓮はどっちに行ったのっ!?」
「あちらです!インテリが追いかけていますので見失うことは無い筈です!」
「私も後を追うから、あなた達は一刀たちをお願いっ!」
「はっ!畏まりましたっ!!」
私は兵の示した方角に走り出す!
【尻好きturn】
孫尚香様が走り去る姿を堪能・・・いや、見送ってから服屋の中にオレ達が入ると、北郷様たち三人が居た。
顔面蒼白で髪の毛もまっ白になり目も虚ろ。
「「「パパタチナンテダイッキライパパタチナンテダイッキライパパタチナンテダイッキライパパタチナンテ・・・・・・・・・・」」」
「こりゃダメだ。さすがの北郷様たちも復活には時間が掛かりそうだ・・・・・」
【小蓮turn】
もう!人が多過ぎよ!
避けて走ってたら時間が掛かりすぎるわ!
こうなったら・・・。
「ハッ!!」
地面を強く蹴って建物の屋根に跳び上がる。
その勢いのまま屋根伝いに走り抜けた。
「あの走ってる蜀の兵がインテリね・・・スゴイ・・・あの足捌き、思春や明命に匹敵するんじゃないの?」
普段はそんな風に見えないのに・・・一刀たちの親衛隊に選ばれるだけは有るって事ね。
で、彼の前方に冰蓮が居る筈なんだけど・・・・・居た!
ちょっと!あの子何してるのよ!?柵の隙間から入り込んで!
ああっ!ダメッ!冰蓮!その先は池!
氷が張ってるから分からないの!?
「ダ、ダメエエエエーーーーー!!」
あ・・・・・氷・・・割れない・・・・・・ふぅ・・・冰蓮が軽いからか・・・。
あの子、氷の上から何か拾い上げて・・・白い・・・仔猫?
とにかく氷の上から連れ戻さないと・・・・・マズイ!氷にヒビがっ!!
「孫尚香様っ!!」
インテリが池の縁で屋根の上に居る私を見上げてる。
彼の体重じゃ氷に上がれない。
私だって・・・・・もう!成長した体が仇になるなんて信じられない!
どうする?どうする?どうする?
あっ!そういえば以前、貂蝉と卑弥呼、それに華佗が水の上を走ってた!
確か氣を足から放って・・・・・私にあそこまで氣を扱う事が出来る?
いや!やるのよ、小蓮!
思い出せ!氷を割らない様に優しく・・・・・華佗のあの内に熱く外に静かな氣の流れを!
「冰蓮!動かないでっ!はあああああああああああああぁぁぁあああっ!!」
あの子は猫を拾ってからその場を動いていない。
動かないんじゃなくて、動けないんだ。
氷にヒビが入ったのに気が付いて竦んじゃってる!
「シャオおねえちゃあぁぁぁん!」
私は屋根から柵、土手、そして氷の上へ!
よし!いける!
手を伸ばし冰蓮を抱き・・・・・・・・あ・・・。
氣を放ち過ぎた!氷が割れる!
「冰蓮っ!!」
なんとか抱き上げ、割れる氷を蹴る様に上に跳び上がる。
で、でも、次はどうしたら・・・・・。
「一刀おおおおおおおおぉぉぉぉ!」
「ぱぱああああああぁぁぁ!」
空中で冰蓮は猫を守りながら私にしがみつき、私は冰蓮を守る為に抱きしめる。
「「「シャオッ!!冰蓮っ!!」」」
その声に振り向くと一刀たちが『飛んで』来た。
そのまま空中で抱きとめられ土手まで飛んでいき、一刀たちが下になる形で地面にぶつかった。
「「「ふぅ・・・・・タイミング、ビッタリだ・・・シャオ、冰蓮、怪我は無いか?」」」
「・・・私達より一刀たちの方がスゴイ事になってるんだけど・・・・・」
私のお尻の下で一刀たちが泥まみれになっている。
「ぱぱ・・・ぱぱ・・・爸爸ぁうあああぁぁああぁん!」
冰蓮が一刀たちに抱きついて大声で泣き出した。
一刀たちは地面に横たわったまま、笑顔で冰蓮の頭を撫でる。
「「「冰蓮はその仔猫を助けたかったんだな・・・いい子だ、冰蓮♪」」」
「一刀・・・・・一体どうやって・・・」
私の問いには笑顔のまま無言で指を差した・・・・・その先、池の対岸に。
「雪蓮お姉ちゃん!思春!祭!」
野次馬の中に三人の姿を見つけた。
「「「放り投げてもらったんだ♪」」」
「もう・・・本当に無茶するんだから・・・・・でも、ありがとう、一刀♪」
「ぴ・ん・れ・ん~~~~!」
「ひぅ!」
お姉ちゃんが仁王立ちで冰蓮を睨んでいる。
「お姉ちゃん!冰蓮を許してあげて!」
間に割って入って冰蓮を抱きしめた。
「いいの、シャオ?あなた、一刀たちとのデートを邪魔されたのよ?」
「邪魔なんかじゃないよ・・・むしろ思い出に残る物になったし・・・・・それに、冰蓮が付いて来なかったらこの仔猫も死ぬところだったんだから。」
子猫は迷い込んで氷の上に居たみたいで、寒さで動けなくなって鳴いていたらしい。
冰蓮はその声が聞こえたと言っている。
今は冰蓮が抱いて温めてあげたからミーミーと声を出し始めていた。
「冰蓮、あなたとこの仔猫は今日、運命の出会いをしたのよ。私が周周と善善に出会った時みたいに・・・・・しっかり世話をしてあげなさい♪」
「うん、シャオおねえちゃん!」
「世話の仕方は恋媽媽に教えてもらいましょう♪」
動物の世話をすれば、冰蓮のワガママも少しはましになるかもしれないしね。
「間違っても明命媽媽に聞いちゃダメよ。下手するとその子を取られちゃうから!」
この場に明命が居なくて良かった・・・・・でも、明命ならもっと上手に仔猫を助けたんだろうな・・・でも、この仔猫は冰蓮と先に出会った。
きっと、これがこの仔猫の天命なのでしょうね。
「それじゃあ、お城に帰ってお風呂入ろうか?」
「おふろ?」
「仔猫を温めてあげないといけないし、あなたも私も冷えた上に汚れちゃったし、それに爸爸たちも泥だらけだからね。一緒に入ろう♪」
「うん♪」
いつもこれだけ素直なら可愛いのに。
「「「え?一緒に入るの?」」」
「デートは中断しちゃったけど、今日は一日中一緒に居てくれるんでしょ。場所がお風呂に変わっただけなんだから気にしない♪」
「ちょっとシャオ!冰蓮が一緒に入るんだからあっちは禁止よ。」
もう、お姉ちゃんったら・・・信用ないなぁ・・・。
「分かってるって・・・あ、そうだ!お姉ちゃん達も一緒に入ろうよ!」
「え?いいの♪」
「雪蓮様・・・そこで食いつかないで下さい。」
「まあ、そう言うな思春。儂は体が冷えてきたので小蓮様のお気遣いを素直に頂くぞ♪」
「お、お気遣いと言うのであれば・・・断るのは却って失礼・・・・・」
思春だって本当は一刀たちと入りたいくせに。
「それじゃあお風呂に向けて出っぱーつ♪」
私は右手を突き上げて歩き始めた。
【赤一刀turn】
「「「そりゃ家族でのんびり風呂に入りたいとか思ってるけど・・・昨日から我慢の連続でもう限界近いんだけど・・・この状況で風呂に入っても何も出来ないなんて・・・・・・・・超生殺しなんですけど・・・・・」」」
そう呟いたが、女性陣は何も言い返してはくれなかった。
しかし背後から
『死ねばいいのに・・・・・・』
そんな北郷親衛隊の声が聞こえて来る・・・・・。
十ヶ月後
本城 医務室 (時報:桂花 六人目 二ヶ月)
【赤一刀turn】
「「「ほら、冰蓮。」」」
シャオのお見舞いに来た冰蓮を新しい妹、
初着にくるまれシャオの隣で眠る蕾蓮を、冰蓮がソ~っと覗き込んだ。
「やっとあえたね、らいれん。ぴんれんおねえちゃんですよぅ♪」
生まれたばかりの蕾蓮がもぞもぞと体を動かした。
「ふふ♪蕾蓮も冰蓮お姉ちゃんに会えて嬉しいって♪」
出産の疲れが見えるが、シャオの顔はとても安らいでいる。
「えへへ♪そうかなぁ?」
冰蓮はあの日以来、シャオに対して突っかかる事が少なくなり素直に甘える様になった。
仔猫の世話をする事が、いい情操教育となっているのかも知れない。
医務室の扉が開き、蓮華と雪蓮を先頭に孫呉のメンバーとその子供達が入って来た。
「「シャオ、お疲れ様。」」
姉二人の言葉にシャオは微笑んで頷く。
「雪蓮お姉ちゃんには勝てたけど、蓮華お姉ちゃんには負けちゃったなぁ。」
「「「本当に張り合ったのかよ。」」」
俺たちは呆れて苦笑した。
「「一刀、何の話?」」
「出産に掛かった時間だよ。」
「シャオったら・・・元気な子を産めたのだから、それで良いじゃない。」
蓮華も呆れているが、雪蓮は違った。
「やだ、そうなの?それじゃあ次は蓮華の記録を私が塗り替えて見せるわ♪」
雪蓮の発言に冥琳がこめかみを押さえ溜息を吐く。
「何を言ってるんだ、雪蓮。そう云う事は身篭ってから言え。」
「冥琳の言う通りですよ、姉さま。私だって早くもう一人欲しいのに・・・・・(あ!でも私の記録を超えてくれれば尻神とか呼ばれなくなるかも・・・)」
ん?蓮華が何か考え始めたぞ?
「そうですねぇ~、蓮華様自身が記録を更新する可能性の方が高そうですしね♪」
「え?穏・・・それって・・・」
「経産婦の方が初産より出産時間が短いのは普通ですよぉ。桂花ちゃんがいい例ですよね~♪」
「そ、そんな・・・・・私はいつまでも尻神とか呼ばれ続けるって事なの・・・・・」
何故か打ちのめされてる蓮華を他所に、シャオと雪蓮の言い合いが始まっていた。
「いくら雪蓮お姉ちゃんでもこればっかりは負けられないわ!」
「私だって負けないわよ♪」
「(もう!媽媽も、しゃおれん媽媽もしずかにして!らいれんがなきだしちゃうでしょ!)」
シャオと雪蓮は冰蓮に言われて背中を丸めて小さくなる
「「ごめんなさい。」」
しかし、二人の顔は笑っていた。
ホント、冰蓮の情操教育は大成功みたいだな。
「一刀さんたち~。さっきから口数が減ってますけど、一刀さんたちの頑張りに全てが掛かっているんですからね~♪」
解ってるよ、穏・・・・・・・・だからこうして身の安全を確保する為に大人しくしてたんです!
何で俺たちって絞られるときと我慢させられる時の差がこんなに激しいんだ?
あとがき
なんだかお尻の事ばかり書いていた気がします。
小蓮の一人称を『私』としてあるのは仕様です。
一部、わざと『シャオ』と言わせている部分も有りますが。
身体の方は尻好きの守備範囲に入るほど成長しています。
兄者と弟者の守備範囲に入るのも間近でしょうw
一刀チルドレンから今回は
雪蓮の娘の冰蓮に活躍してもらいました。
かなりの行動派ですが、まだ四歳なので後先をまるで考えていません。
今後のトラブルメーカー候補の一人ですw
インテリが今回も隠された能力を発現しました。
ただし、ロリが絡まない限りこんな事はできません。
ロリを見て変身するヒーロー・・・・・・最低ですねw
作中に出せなかった蕾蓮の名前
孫仁です。
これは三国志演義での孫尚香の名前です。
正史では孫夫人、京劇で孫尚香
孫仁という名前も、正史では孫夫人の兄の孫郎の別称だそうです。
ややこしいですねw
《次回のお話&現在の得票数》
☆ニャン蛮族 31票
という事で、次回は美以・ミケ・トラ・シャムに決定しました。
以下、現在の得票数です。
音々音 31票
明命 27票
星 27票
猪々子 26票
亞莎 24票
真桜 24票
春蘭 23票
華雄 23票
璃々 23票
二喬 21票
沙和 21票
穏 20票
斗詩 20票
稟 20票
季衣 16票
霞 15票
紫苑② 8票
桂花② 8票
思春② 7票
冥琳② 6票
鈴々② 6票
雪蓮② 5票
風② 3票
音々 3票
凪② 1票
小蓮② 1票
翠② 1票
※「美以と三猫」「大喬と小喬」は一つの話となりますのでセットとさせて頂きます。
②は二回目を表します。
一刀の妹と息子の登場回は以下の条件のいずれかを満たした場合に書きたいと思います。
1・璃々以外の恋姫全員のメイン話が終了した時
2・璃々のリクエストが一位になった時
3・メイン二回目の恋姫がリクエストの一位になった時
4・華琳のリクエストが一位になった時
※条件に変更があった場合、あとがきにて報告致します。
リクエスト参戦順番→猪々子 穏 亞莎 ニャン蛮族 明命 斗詩 二喬 春蘭 音々音 華雄 稟 星 璃々 真桜 季衣 冥琳② 霞 沙和 思春② 紫苑② 鈴々② 桂花② 風② 雪蓮② 凪② 音々 小蓮② 翠②
過去にメインになったキャラ
【魏】華琳 風 桂花 凪 数え役満☆シスターズ 秋蘭 流琉
【呉】雪蓮 冥琳 祭 思春 美羽 蓮華 七乃 小蓮
【蜀】桃香 鈴々 愛紗 恋 紫苑 翠 蒲公英 麗羽 桔梗 白蓮 月 朱里 雛里 詠 焔耶
子供達一覧
1)華琳の長女 曹沖(そうちゅう) 眞琳(まりん)
2)桃香の長女 劉禅(りゅうぜん) 香斗(かと)
3)蓮華の長女 孫登(そんとう) 蓮紅(れんほん)
4)思春の長女 甘述(かんじゅつ) 烈夏(れっか)
5)愛紗の長女 関平(かんぺい) 愛羅(あいら)
6)風の長女 程武(ていぶ) 嵐(らん)
7)桂花の長女 荀惲(じゅんうん)金桂(きんけい)
8)雪蓮の長女 孫紹(そんしょう) 冰蓮(ぴんれん)
9)冥琳の長女 周循(しゅうじゅん) 冥龍(めいろん)
10)祭の長女 黄柄(こうへい) 宴(えん)
11)恋の長女 呂刃(りょじん) 恋々(れんれん)
12)紫苑の次女 黃仁(こうじん) 露柴(ろぜ)
13)紫苑の三女 黃信(こうしん) 崔莉(ちぇり)
14)蒲公英の長女 馬援(ばえん) 向日葵(ひまわり)
15)翠の長女 馬秋(ばしゅう) 疾(しつ)
16)麗羽の長女 袁譚(えんたん) 揚羽(あげは)
17)桔梗の長女 厳逹(げんたつ) 竜胆(りんどう)
18)凪の長女 楽綝(がくりん) 濤(なみ)
19)七乃の長女 張路(ちょうろ)八倻(やや)
20)天和の長女 張甲(ちょうこう) 九蓮(ちゅうれん)
21)地和の長女 張大(ちょうだい) 四喜(すーしー)
22)人和の長女 張吉(ちょうきつ) 一色(いーそー)
23)炙叉の長女 迷当(めいとう) 直(なお)
24)白蓮の長女 公孫続(こうそんしょく) 白煌(ぱいふぁん)
25)秋蘭の長女 夏侯衡(かこうこう) 鈴蘭(すずらん)
26)月の長女 董擢(とうてき) 春姫(るな)
27)桂花の次女 荀俁(じゅんぐ) 銀桂(ぎんけい)
28)朱里の長女 諸葛瞻(しょかつせん) 龍里(るり)
29)雛里の長女 龐宏(ほうこう) 藍里(あいり)
30)詠の長女 賈穆(かぼく) 訓(くん)
31)焔耶の長女 魏覚(ぎがく) 焔香(えんか)
桂花の三女 荀詵(じゅんしん) 丹桂(たんけい)
桂花の四女 荀顗(じゅんぎ) 連翹(れんぎょう)
桂花の五女 荀粲(じゅんさい) 黄梅(おうめい)
桂花の六女 荀淑(じゅんしゅく) 來羅(らいら)
春蘭の長女 夏侯充(かこうじゅう) 光琳(こうりん)
A)鈴々の長女 張苞(ちょうほう) 爛々(らんらん)
B)流琉の長女 典満(てんまん) 枦炉(ろろ)
C)小蓮の長女 孫仁(そんじん) 蕾蓮(らいれん)
D)美羽の長女 袁燿(えんよう) 優羽(ゆう)
※アルファベットは仮順です
引き続き、皆様からのリクエストを募集しております。
リクエストに制限は決めてありません。
何回でも、一度に何人でもご応募いただいても大丈夫です(´∀`)
よろしくお願い申し上げます。
【今回のマヌケ晒し】
本城 皇帝執務室
【赤一刀turn】
「俺の所には蓮紅、烈夏、冰蓮、冥龍、宴の五人だったけど、紫と緑の所は?」
「俺の所は
「俺の所は
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得票数30の小蓮のお話です。
懐妊確認当日、翌日、出産直後となります。
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