No.567559

呪術師の復讐

ある村で子供が殺されるという事件が起きた。子供は干からびて発見されたという。この事件がきっかけで運命の歯車が動き始めた。
誰が何のために殺したのか。犯人を見つけ出すために警護団の隊長が動く。

2013-04-18 23:27:51 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:312   閲覧ユーザー数:312

プロローグ

ここは精霊界。この世界には様々な種族がいる。人間を始めほとんどの生き物は人語を話し、日常を平和に暮らしていた。これもその地に存在している警護団の尽力があってのものだ。

ある日、東に位置する町『ヨークヒルズ』の警護団に一通の手紙が伝書鳩によって運ばれてきた。差出人は『ヨークヒルズ』の更に東に位置する村の村長からだった。

伝書鳩管理局の一人が手紙を見ると顔を青ざめた。その様子を見た犬耳の女性局長は心配そうに尋ねた。

「どうしましたか、具合でも悪くなりましたか?」

手紙を読んだ人間の青年は局長に素早く近寄り、

「これを読んでください」と局長に手渡した。

局長は青年の焦り方が尋常でないことは普段の様子を見ていれば一目瞭然だ。局長も急いで文面に目を通した。読み終わった局長は席を立ち職員を押しのけ、急いで警護団の隊長がいる四階へと足早に移動する。

局長が去った後その場は沈黙していた。青年は局長の机の前で全身震えさせながら立っていた。そこに彼の二歳年上の先輩が駆け付けた。

「おい、どうしたしっかりしろ」

しかし青年は先輩の声に反応しなかった。先輩は急いで医務室に運ぶことにした。

(・・・よほどショックな文章だったのか?・・・詮索は後回しだ)

「誰か手を貸してくれ」

先輩と近くにいた職人数人で青年を医務室へ運んだ。

 

一方階段を駆けあがり少し息を荒くしながら局長は警護団の部屋に入る。

「失礼します、伝書鳩管理局局長のミル・グレンジャーです。警護団隊長に急ぎの要件があってまいりました」

警護団のメンバーはミルの尋常ではない様子に少し戸惑っていた。そこに筋肉が盛り上がっているいかにも肉体派的な人物がやってきた。警護団副隊長の『山城(やましろ)徳(とく)塞(そく)』だ。

「これは局長殿、どうなされました」

ミルは山城に先ほどの手紙を渡すべく、右手をポケットに入れ手紙を引き抜く。

「これを隊長に読んでいただきたいと、伺いました」

山城は「失礼」と一言、言ってからミルの持っていた手紙を手に取り読み始めた。

「・・・・・・」

山城の眉間にしわが入った。兵士たちは驚いていた。よっぽどのことがない限り、このような表情をすることがないからだ。

山城はミルに顔を向ける。

「要件は承知した。局長は持ち場に戻り通常の職務を全うしてくれ。この件はこちらで対処する」

山城は言い終わるとミルに背を向きその場を立ち去った。

ミルは山城の背に一礼して、警護団の部屋を後にした。

 

山城は隊長室のドア前に立ち、ドアをいきなり開ける。

隊長と呼ばれる少女は大口を開けてシュークリームを食べていた。口の周りにはクリームが付いていて、愛らしかった。少女は顔を真っ赤にして怒りはじめた。

「入る時ぐらいノックしなさいよ、ルーキーだからってなめないでよね。減給するわよ」

 

しかし、少女の声に耳を傾けずに隊長の机の前まで小走りする山城は右手に握りしめた手紙を隊長の机に置いた。少女は「何よこの手紙、また両親がお節介でも掛けたわけ?」

隊長宛の手紙は、故郷の両院から来る手紙が多い。この若さで町の警護団の隊長を任されたのだから、いろいろと心配して、ちょくちょく手紙を出してくるのだ。

山城は首を振り「手紙を読んでください」と表情を変えずに言った。少女はシュークリームを机の上にあった包装紙の上に置きティッシュで汚れた手と口周りを綺麗にしてから、山城が持ってきた手紙に目を通す。内容はこうだ。

[私は東の山岳地帯にある村『サイハテ』の村長をやっております。その村で子供が連続で殺されるという事件が起こっています。その子供たちの遺体がミイラのように干からびているところを、起こしに行った両親が見つけました。そのような事件が八回も起こってしまいました。我々にはもう打つ手がありません。早くしないと新たな死人が出てしまいます。お願いします。この事件の犯人を捕まえるか、退治して頂けませんか。]

 

村長の必死さが感じられる手紙に目を通した少女は先ほどと雰囲気が変わり山城に視線を移し命令を下す。

「半刻したら、この村に私が出向く。各々(おのおの)支度するように」

山城は「了解しました」と言い、右手を胸の前で掲げ急いで出て行った。

残された少女は椅子に座り窓の外を見ていた。「外は快晴で平和そうなのに、同じ空を見ているサイハテの住人にとって、この空はとても悲しすぎる」

机に置かれていた食べかけのシュークリームを見た少女は「食べる気が失せた」と言い、掌の上に乗せると、青白い炎が勢いよく放出されシュークリームは跡形もなく消え失せた。彼女の名は『シャルル・ジャック・リヴァイア』先祖代々、王に仕える剣士の血を継ぐ娘だ。

今は昔のような血生臭いことは無くなった。だから両親の考えとしては[戦う場所は戦場ではなく、家庭を持ち、子を育て、血を絶やさないことだ。つまり、結婚して幸せな家庭を築き上げることこそが、お前にとっての戦うべき場所なのだ]と言っている。

しかし、シャルルには家庭を持つということにさほど興味はないらしく、それよりも戦場に出向き強い相手と戦うことの方が好きらしい。

シャルルは敵からも見方からも恐れられていた。なぜなら、戦いが終わった後には、戦場で切り倒した相手から浴びた血が彼女の体のいたるところに付着していたからだ。それも尋常じゃないほど。そこで彼女には二つの名が出来てしまった。『流血の剣姫』と・・・・

シャルルは幾多の戦場を生き抜いてきた。その功績で十六という若さで警護団の隊長という地位を獲得した。それもこれも日々の鍛錬が実ったと言いたいが・・・実は彼女が携えている剣のおかげでもあるのだ。彼女が持っている剣はリヴァイア家の地下に眠っていた最古の剣。この剣を知るためにリヴァイア家の書庫を調べつくしたこともあった。そこで分かったのはこの剣の名だけであり、誰が作り、どういった経緯でこの剣が作られたのかは不明のままだ

剣の名は『サクリファイス』。(生贄)という意味を持っている。

 

シャルルはサクリファイスに目を向けていた。

(あなたはどうしてできたのか・・目的も使命も無いなんて、生まれてきた意味がない・・・)等と心の中でつぶやくと何時ものようにサクリファイスが話しかけてきた。

(私は使い手のあなたが望む出来未来に向けて力をお貸しするだけです。目的と使命は貴方様が私に与えてくだされば、私の生まれてきた意味が生じると思います)

シャルルは口を閉じたまま「ふっ」と笑った。

(それもそうね、それじゃ今回はその未来を奪った憎き殺人鬼を処刑するために連行もしくは、その場で切り倒す)

サクリファイスは(イエス、マイマスター)と返事をした。シャルルは目を閉じたまま自室の椅子に座りこみ半刻が過ぎるのを待った。

サイハテ村でいったい何が起こったのか今のシャルルには見当もつかないだろう。

全ては大いなる憎悪を持った者が招いた悲劇。

そしてこれから起きる残酷な結末にシャルルはどう立ち向かうのか・・・

 

次回悲劇の村をお楽しみください

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

初めて投稿するので緊張しまくりました。

これからも時間を見つけて投稿していきますので応援よろしくお願いします。

 


 
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