午前の授業が終わるチャイムが鳴り響き、教室内の生徒が背伸びをする。
「ようやく授業が終わったか」
「購買に行こうぜ」
教室内に喧騒が広がる中、刹那達も立ち上がる。
「やっぱ授業はだりぃな」
「普段から勉強しないからだよ、トモちゃん」
智樹とそはらが毎度の如く言い合いをするが、刹那は教室の扉をジッと見ていた。
「おかしいな」
「どうしたんですか?」
「リインの気配が感じられない。いつもならとっくに乱入してくる頃だ」
刹那が違和感を感じながらイカロスの問いに答えると、教室の扉が乱暴に開かれた。その先には、息が絶え絶えになった教師が居た。
「工藤刹那は居るか!?」
「どうしたんですか?」
嫌な予感を感じた刹那は教師の下へ素早く歩み寄る。
「お前の妹が急に高熱を出して倒れた!! 今、救急車を呼んでる!!」
★★★★★
「先生、リインの様子はどうなんですか?」
病院に着いた刹那はやや掴みかかる形で義妹の容態を医者に尋ねる。
「今の段階では、何らかのウイルスに感染しているとしか言えません」
「そうですか……」
無力感を噛み締めながら吐き出された医者の言葉に刹那はやりきれない表情で答える。失意のまま退室し、出口まで向かうと受付に大勢の『人』が集まっていた。
(やけに多いな……)
受付を眺めていると、患者だろう『人物』達の共通点に気がついた。たいてい、普通の人間に比べて耳が長かったり、尖っていたりするのだ。
「刹那!! リインのどうだ……何だ、こりゃあ!?」
遅れて病院に到着した智樹はその光景を見て驚く。
「皆、
「分からない」
刹那は応答しつつ携帯を取り出して電話する。
「もしもし、フィリップか?」
『君が聞きたいのは、神族や魔族の間に流行っている謎の流行り病のことだろう。既に調べはついている』
フィリップはいつも通りに淡々と述べていく。
『使われたのは、バイラスの記憶だ。幸いなことにまだ死者が出ていないが、それも時間の問題だ』
「バイオテロのつもりか……!! ふざけた手を使いやがって!!」
刹那の手がワナワナと震える。
『安心したまえ。既に照井竜と十六夜咲夜が犯人を追っている』
★★★★★
冴え渡る青空の下、ビルの屋上に顔を隠すようにフードを被った男が現れた。男は辺りをキョロキョロしながら貯水槽へと近づいていった。辺りに誰も居ないことを確認した男は貯水槽の蓋を開けようとした。その時、手元に銀のナイフが飛んできた。
「次は当てるわよ」
「警察だ。大人しく投降してもらおう」
照井が男を捕縛するべく距離を詰めようとしたところ、ソルジャーフォルスTタイプの部隊がアンカーを使って屋上に上がってきた。あくまで隠密行動中の護衛を想定している為、数はそこまで多くない。
「変…身!」
「変身」
《HENSHIN》
《CAST OFF》
変身を完了したカブトRとアクセルはソルジャー部隊を迎え撃った。
「後ろは私に任せて」
「頼りにしてるぞ、十六夜」
アクセルはエンジンブレードを構えて敵陣へと斬り込んでいった。ソルジャーTも剣を構えようとするが、もう遅い。次の瞬間には、眼前まで迫っていたアクセルが敵を1人斬り倒した。続けざまにカブトRが的確な援護射撃でソルジャーTを撃ち抜く。
機先を制した2人は場所の狭さをものともせずにソルジャーTをあっという間に壊滅させた。
「後はお前だけだ」
《ENGINE:MAXIMUM DRIVE》
男は未だに変身していないが、心を鬼にしてアクセルはエースラッシャーを放つ。会心を期して放たれたA字型のエネルギー刃が逃げ遅れた男へ迫る。
《PUNISHER:MAXIMUM DRIVE》
しかし、刺々しくも洗練されたボディの赤いライダーが間に割り込んでエースラッシャーを相殺した。
「パニッシャーか!? 助かったぞ」
「早く行け」
パニッシャーは無愛想にそう言うと、アクセル達の前に立ちはだかった。
「パニッシャー……アロガンス側のライダーか」
「あいつが刹那を……!!」
カブトRは弟弟子を傷つけたパニッシャーに敵意を向ける。
「下劣な悪魔に仕える犬か……よくもおめおめと社会を歩けるものだな」
「お嬢様への侮辱は許さないわ!! 今すぐ撤回しなさい!!」
「落ち着け、十六夜」
熱くなりかけたカブトRをアクセルがなだめる。
「悪いが、お前たちと構っている暇はない」
「待て!!」
アクセルとカブトRは肉薄しようとするもパニッシャー達はその前に姿を消した。
「転移系の能力者ね……」
「厄介だな」
「いったん刹那達と合流して情報を整理しましょう」
「先に行っててくれ。手掛かりが無いか調べてからそっちに行く」
アクセルはカブトRに頷くと、携帯で警察署に居る部下たちを呼び寄せるのだった。
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[そらのおとしもの~天使と仮面騎士の物語~]
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