No.566009

KVP:5匹目

5話目となる今回は、少し短めとなっています。
しかしやっとあの方たちのちゃんとした登場話となりますので、よろしくお願いします。
また、表現やセリフなどの間違いや、アドバイスなどがありましたら、是非よろしくお願いします。
それでは、どうぞ

2013-04-14 12:19:21 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:509   閲覧ユーザー数:496

:荒野

 街を出発したその少女たちは、泥棒が逃げたとされる森の近くへ来ていた。

 兵を森に沿って、一定の間隔をあけて配置している所を見るに、どうやら虱潰しに捜索を行うよう

だ。

 森の左隅の方から、黒髪の少女が馬に乗り、中心の本陣とみられる所へと駆けて来た。そして、同

じく馬にまたがり、左右に縦ロールさせた金髪を、風にたなびかせている少女のそばへ到着すると、

馬から降り、素早く臣下の礼をとって報告をす

る。

 「華琳様!兵の配置が終わりました!」

 続いて、傍に控えた短髪の少女が報告を始めた。

 「華琳様、戻った斥候の報告によると、盗人は男4人、蛇行しながら逃走しつつも、おおよそ南に

逃走中とのことです」

 「そう、ならすぐに出るわよ。春蘭!」

 2人の報告を聞いたこの軍の大将である少女――華琳は、すぐに出撃の号令を出した。

 「はっ!銅鑼をならせ!捜索開始!」

 グァン!グァン!グァン!

 黒髪の少女――春蘭の命令を受け、一般兵が銅鑼を鳴らし始め、それを合図に一列に並んだ兵が動き出した。

 しかし、動き出したところで全員が歩を止めさせられた、いや、それどころか、数人は後ろへ飛ば

されていた。

 何故なら、遠くで空が割れるような音が響いたと思えば、全員を突風が襲ったためだ。

 「何ッ!?」

 「ぐっ!?」

 「ッ!?」

 咄嗟に、馬上の二人は馬に踏ん張らせ、黒髪の少女は前傾姿勢になって突風に耐えた。

 「くっ!」

 少女達は歯を食いしばり、ただ風が収まるのを待つしかない。

 木々が軋み、突風で舞いあがった砂が肌を叩き、それが痛いと感じるほどの突風だった。

 

 

 程なくして風は収まり、砂埃も次第に薄まっていった。

 「華琳様!御無事ですか!?」

 春蘭は風が収まったのを感じると、すぐさま主である華琳に駆け寄った。

 華琳が、けほけほと咳きこみながら顔を上げる。

 「ええ、大丈夫よ春蘭。それにしても、今のは一体何だったの?」

 「分かりません、私も何がなんやら」

 何が起こったのかが分からず、二人が周りを見回していると

 「華琳様」

 と、後ろから華琳を呼ぶ声があった。

 「何、秋蘭?」

 それは短髪の少女――秋蘭のものだった。

 馬が踏ん張り切れなかったのか、後ろに少し押されていたようだ。

 「音がした時、山の方が一瞬光ったのが見えました、恐らくその現象によるものかと・・・」

 「それと華琳様、先ほどから微かにですが、風に乗って何かが焦げたような匂いもします」

 「何ですって?」

 この時華琳が、二人の話を聞いて一番に連想したのは、いつか書物で読んだ山が火を噴くという噴

火であった。

 しかし、噴火をその目で見たことのないだったが、それとは違うモノだと否定した。何故なら、肝

心の火が見えないからだ。

 あれだけの音と突風があって、火が見えないというのは不自然である。

 それに、春蘭は微かに焦げくさいと言ったが、それは恐らく、鼻がよく利く春蘭だけが感じた事

だ。

 華琳や秋蘭も、それを聞いた後でも、言われてみればという感覚でしかない。

 触れれば一瞬で火だるまになるという、噴火で噴出してくる溶岩が出てきていれば、火も煙も匂い

もするだろう。

 だが、それらが一切ない、という事は噴火ではないというのはおそらく間違いない。

 (まさか妖が出たとでも?それこそ馬鹿馬鹿しいわね)

 華琳は元々、妖怪や占いなどを信じず、むしろ嫌う所があった。

 (これだけの威力を持った兵器を発明できる技術も、国もないはず・・・)

 「考えていてもしょうがないわね。春蘭、すぐに被害の報告と、2、いえ3列に隊列を変えさせな

さい、秋蘭は斥候を放って情報の収集をお願い。隊列を組み終え次第、再度出撃するわよ!」

 「「はっ!」」

 二人が、与えられた自分の仕事を行うため、それぞれ離れて行く。

 「・・・?」

 一人残った華琳は、なんとなく空が気になり顔を上げるが、そこには鳥一羽いない。

 華琳は気になったのだ、出立の前に見えたあの流星がもしかしたら、と。

 「・・・ふんっ、馬鹿らしい」

 だがそんな自分を鼻で笑い、頭を振って頭から追いだす。

 「華琳様!隊列の組み換えが完了しました!」

 と、そこへ兵達への指示を終えた春蘭が戻って来た。

 考えるのを一旦止め、現実に思考を戻す。

 「ん、御苦労さま春蘭。それでは、行きましょう」

 「はっ!全軍出撃だ!ネズミ一匹見逃すな!」

 春蘭の号令を受けて、再び銅鑼が鳴らされ、捜索が再開された。


 
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