9月28日
張任殿、太史慈殿、龐徳殿に誘われてと言うか半ば連行されるようにしてまた飲みに行ったが、
「一刀様に抱いて戴きたいのですがどうすればよろしいか」
と切り出されて酒を噴いてしまった、いずれ言い出すのではとは思ってはいたが。
私自身がどうこう出来る訳ではない為一刀様の御心と運次第ではないだろうかと答えたが、彼女等によると私の方で口添えする事となっていたらしい、何時そのような話になっていたのだろうか?どうしたものやら判らず、考えるので今日はお開きにして頂きたいとお願いしたところ次回の約束をさせられてしまった。
9月29日
太史慈殿について相談しようと思い子敬に会ったところ、
「うん、(太史慈には)『仲達の言う通りにすれば大丈夫』って教えておいたから♪」
と言い、片目を瞑って舌を出す仕草が可愛い年でもないだろうと言ってやりたかったが溜め息をつくにとどめた。
一方子孝様にお会いして龐徳殿の件をご相談させて頂いたところ、
「いいじゃないの纏めて一刀様に面倒見てもらえば」
と事も無げに仰り、それは余りにも色々すっ飛ばし過ぎではないでしょうかと申し上げるとじゃあそれなりに手順踏んでやりなさいな、一刀様の退路を断つのは手をまわしといてあげるからと面倒臭げに仰られて追い出されてしまった。
張任殿、太史慈殿、龐徳殿は知る限り皆誠実で見目も麗しく、一刀様に不釣合いとは思わないが幾らなんでも荒っぽすぎはしないだろうか。
9月30日
張任殿らの件について子丹御嬢様に御相談してみた。
「仲達も偉くなったわねぇ、ちょっと前までは右手が一刀様の代わりだったって言うのに…人の心配なんかする様になったのねえ、私は嬉しいわ」
とはあんまりではないだろうか。
彼女等が余りにそういった事に知識が少なく、世間からずれているのには困ったものですと溜息を吐くと、何故か部屋中の同僚らが無言で手に手に鏡を持って私の周りに集まってきた。御嬢様は『仲達ごめんねぇ、私の教育が悪くてごめんねぇ』と妙に真剣味の無い表情で謝ってこられるし、一体何だったのだろうか?
10月2日
一刀様の地方巡幸計画の移動計画書が完成した。
魏からは李典殿の輸送車に李典殿、于禁殿が一刀様と同乗。
予州の宿場で予め凪、文遠殿、稟様、仲徳様が待機し、夜は稟様、仲徳様が担当し翌朝凪と文遠殿が翌々日没までの到着を条件に休憩自由として騎馬同乗で寿春へ移送。
寿春では夜担当の袁術殿、張勲殿の他に甘寧殿、周泰殿、蒋欽殿が待機しており、水路を御伽と漕ぎ手を交代しつつ建業まで移送。
建業巡幸後、孫策様・周瑜殿が楼船で江夏まで送り、孫尚香殿と一泊の後公孫瓚殿が襄陽へ送り水鏡女学院の視察等をされた後、呂布殿が長駆永安へ送る。
永安では諸葛亮殿、龐統殿が迎え、翌朝厳顔殿、魏延殿が成都(何故か蜀からの文書では性都と誤植されていた)まで送る。
成都巡幸の後、漢中までを劉封・関平、その後西涼馬家らの各馬に同乗し休憩を交えつつ王都まで帰還。
上記に加わらない寵姫の方々は巡幸前後の後宮の日程で優先する。
閨房の回転が下がる(自分の番が来ない)ことには寵姫の方々から有形無形の反発が非常に強く、「たまには旅行先で」という希望とも合致し多数の寵姫を方々へ配置する費用をかけてでもこのような形に落ち着くこととなった。
完璧ね…あの馬鹿ち○この寝る暇どころか乾く暇も無いわ、と詠様が妙な感心をされていた。
10月4日
賞与が支給されたので、自室用の化粧台を購入した。
最近、妹達に共用の化粧台で髪を梳いている時間が長すぎると責められており、部屋には細い姿見しか無かった為だ。
一刀様の事を考えながら髪を梳いていると時を忘れてしまう。
10月5日
化粧台の前に長く座るようになり、自分の容姿に多少関心が出てきた。
明日は一刀様へ御予定の報告に上がる日なので、なるべくは一刀様のお心に適う髪型としたいと思い一刀様から拝領した髪留めでさまざまな髪型を試してみたが、どのようなものがお好みなのだろうか?
考えていたところ公孫瓚殿の事を思い出し、彼女は非凡な魅力を備えているようなので、明日は彼女のように後ろ髪を縛って出勤してみよう。
10月6日
一刀様に新しい髪形をお褒め頂いた!知らなかったが、『ぽにーてーる』という髪型らしい。嬉しくて涙が溢れ、書類を読み始めるのに少し時間を要してしまい一刀様が詠様に『仕事前に仲達褒めるのやめてよね』と怒られてしまった、私のせいなのに申し訳ない。
流石は公孫瓚殿だ、明日参考にさせて頂いたお礼を言いに行こう。
10月7日
朝のうちに公孫瓚殿の元へ伺おうとしたところ一刀様が私の職場へ来られ、少し二人で話したいとの事で廊下へ出たところ、
「あのね、大変申し訳ないんだけど普段の仲達さんみたいに髪を下ろして貰えないかなぁ、元の仲達さんの髪型もすっごい可愛いからさ。あのポニーテールも可愛かったんだけどちょっと褒めたら色々まずいことになっちゃって…本当にごめん、仲達さんはどんな髪型してても可愛いから!髪留めは使っても良いよ、というか使ってくれると嬉しいな」
と仰られた。一刀様のお言葉に否やは無い、明日からは改める事とした。
すると昼過ぎに今度は公孫瓚殿が私の職場へ見え、やはり二人で話をされたいとのことだったので廊下に出ると、
「あのさあ司馬懿さん、こんなことわたしがお願いするのは筋違いなんだけどさ…申し訳ないんだけどその髪形…止めて貰えないかなぁ…?それわたしのほんとに数少ない特徴なんだよ、司馬懿さんならどんな髪型したって可愛いよ、一刀がべた褒めするのも分かるくらい美人さんだし頭もいいしおっぱいも大きそうだし。わたしなんかなんの特徴も無くて一刀だけがあたしのこと名前忘れたり間違えたりしないのはこの髪のおかげで識別してるのかなって思うんだよ、すまないけど頼む、この通り!」
といきなり拝み倒された。
驚いたが、元々この髪型は貴女を模倣したものであり、先程一刀様よりこの髪型を止めるよう御指示頂いたので明日からはしない予定であると答えた。すると彼女はほっとしたようで今一度謝られて帰られようとしたが、呼び止めて「私は貴女を女性として尊敬している、もし迷惑でなければ御懇意にさせて頂き女としての魅力を磨く為今後も参考にさせて頂きたい」と申し出ると目を丸くされていたが、照れながらも承知してくれ、真名を交換させてもらった。
尊敬出来る友人が増える事は良い事だ。
10月8日
今日は髪を下ろして髪留めを前髪につけて出勤してみたところ、詠様が私の顔を見て暫らく難しい顔をされた後に一刀様の元へ連れて行かれた。
私を前に一刀様と詠様で
「どう思う?これだと七乃が……」
「いや髪の色も長さも全然違うし…」
「でもあの娘も意外と気にしいだから…」
と何か小声で話されていたが、話し終わると一刀様がお手づから髪留めを耳の脇につけなおして下さり、これが一番仲達さんに似合ってるよ、とっても美人だと仰って下さった。
結局今までと余り変わらないが、これからはこの髪型にする事とした。
一刀様御自ら髪型を整えて頂ける娘がどれだけ居るだろうか。幸せ過ぎて今夜は眠れそうにない。
10月10日
決裁書類を一刀様のお部屋へ持っていこうとした所一足前に馬騰殿、詠様、孫策様が一刀様のお部屋へ入って行かれたので室外で待つこととした。
なんらかのお話を一刀様とされているようで、
「うちの碧…そうよ、龐徳。あの娘の気持ちを弄んでくれたみたいだけど?」
「張任生殺しにしてほったらかしとか、仕事止まって困るなんてちょっと考えれば分かるわよね?あの子あんたの百倍仕事出来るのよ?行政の長としてどう責任取るの?」
「わたしの親友誑かしてくれてヤリもせずにポイ捨てって聞いたんだけど、どういうつもりかちょっと聞かせて欲しいのよ?」
等と話されている声が聞こえていたが、暫くすると御三方が各々一刀様の印が押された証文らしきものを手に「あれももういい年なんだから早いところ頼むわ」「優しくしなさいよ」「一人が難しければ手伝うから言ってね」等と言いながら意気揚々と部屋から出て行かれた。
部屋に入ると、一刀様が頭を抱えながら
「そんなつもりじゃなかったんだ…それにそういうもんじゃないと思うんだ…」
と呟かれていた。
何があったのだろうか。
10月12日
次回の展示会の事務担当者の一人に子敬、元直とともに指名され、事前会議の為一刀様のお部屋に伺った。お部屋には他に馬岱殿、孫策様、妙才様、仲徳様、袁紹殿、月様が集められており、一刀様より今回の総合企画は曹操様ではなく一刀様御自身が行うとお話しされた。
今回の主題は『今まで想像されなかった可愛さを引き出す』ということだそうで、「もでる」は魏延殿、馬超殿、張遼殿、文若様、元譲様、甘寧殿、華雄殿、文醜殿を予定している。しかし全員共打診さえしていない状態であり、今日集まった事務方以外の担当者に説得してほしい、一刀様自身も協力は惜しまないと語られ、今回は並々ならぬ情熱を持って意匠制作されることを語られた。
仲徳様より、もでるの面子から方向性は理解しましたけど稟ちゃん、周瑜さん、詠ちゃんあたりはいいんですかと質問されたところ、もでるに加えるか悩んだが普通に似合っちゃいそうなので今回は外したとのことだ。
また孫策様が説得にあたっての報酬を一刀様へ要求され、一刀様は説得成功後の御支払いをお約束された。すると妙才様と馬岱殿が原資なしで事を成すのは難しい為説得の最中と完了後に分割払されたいと求められ、一刀様はそれに苦笑いされながら御承諾され、馬岱殿は「やっぱり『せいこう』報酬が無いとねぇ~」とにやりと笑われていた。
一連のお話の中で御報酬が何であるかという事が全く話されておらず、予算見通しが分からなかった為にその御報酬は幾ら程度のものなのでしょうかと質問させて頂いた。すると何故か全員からかわいそうなものを見る目つきで見られ、一刀様が再び苦笑いと共にある意味只みたいなものであるので予算上の心配は不要であると仰った。
いまいち要を得ず、後々困るような事でなければよいのだが、仲徳様の頭の上の人形が「おう仲達ちゃん、これが『この世で只より高いものは無い』ってモンの典型なんだぜよく見ておけよー」と言っていたのが妙に引っかかった。
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その後の、とある文官の日記です。