あともう少し。
しかし彼の目には焦りの色も恐れの色もない。
残り少なくなった時間を持て余し、導師イオンはあまりにも短かった今までを思い返していた。
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『もし僕がいなくなったら、君は気づいてくれるかな?』
前にこんな質問を彼女にした事があったっけ・・・
確か返ってきた答えは・・・
『いなくなっちゃいや!』
・・・・・
・・・・・答えになってないよ、アリエッタ
自然と笑みがこぼれる。
しかし、その笑みは瞬く間にため息にかき消される。
「・・・・・・・・・あぁ・・・・・・・・・・・・・」
あの時彼女が『気づく』と言ってくれたのならば、もう少し晴れた気分でこの時を迎えられていただろうか・・・
開け放したままの窓から入ってくる雨が自分の頬を濡らすのも気に止めず、彼はさらに物思いにふけった。
「・・・君はきっと気づけない。」
僕が消えた後。
アリエッタが『導師守護役』でなくなった後。
君が追いかけるのは何体目のイオンかな?
少なくとも0体目(僕)ではないね・・・
自嘲気味な笑みを浮かべながら、自分に言い聞かせるように呟いてみる。
「でも・・それでいい。」
「本当の僕は今日死んで、この世界からいなくなるだなんて・・・・
・・・
彼女が可哀想だから。」
「君は何も知らなくて良いんだよ。」
(アリエッタ)
「・・・僕の守護役」
もう二度と呼ぶことのない名だけを頭に残し、物思う事をやめる。
そして彼は静かに目を閉じた。
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オリイオのお話・・・