No.563665

【童話】『動物園』

黑克さん

とある父子の会話。【絵本】用に書いたもの。【挿絵】はまだない。

2013-04-07 13:29:35 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:384   閲覧ユーザー数:384

 

「お父さん、キリンさんは何で首が長いの?」

 

「キリンはね、仲間を探していたんだよ。

知っているかい?迷子になったら動かずにいた方が良いって。

キリンは動かなかったけれど、仲間を探したくてしかたなかった。

遠くを見たい、遠くを見たいと願っている内に、

キリンの首は何時の間にか伸びていたんだよ。」

 

 

「キリンさんは仲間に会えたのかなぁ?」

 

「どうだろうね」

 

「お父さん、じゃあ、ゾウさんは?

何でゾウさんのお鼻はあんなに長いの?」

 

「それはね、匂いを嗅ごうとしたからだよ。

小さな穴から良い匂いがしていてね。

ゾウは中に入れないけれど、匂いだけでも嗅ぎたかった。

そうしている内に鼻が伸びたんだよ。」

 

 

「良かった。ウソをついたからじゃないんだね」

 

「そうだよ」

 

「お父さん、このトリさんは何で飛ばないの?」

 

「トリはね、キラキラしたものが好きだったんだよ。

だからこのペンギンというトリも、海のキラキラが大好きで

氷の上や、水の中からから何時もキラキラを眺めているんだよ。

他のトリは太陽や星がキラキラ光るのを見て、

もっと近くで見たいと思ったんだろうね。

ずっと空を眺めていたら何時の間にか空を飛んでいたんだ!」

 

「そうかぁ。

じゃあ、ヒトは?」

 

 

「ヒト?」

 

「ヒトはどうしてお空を飛べないの?

どうしてお鼻が長くないの?

ねぇ、どうして?」

 

「ヒトは―――貪欲だから色んなことを願ったんだよ。

遠くを見渡せるように見張り台を作ったし、

良い匂いを何時でも嗅げるように香水も作った。

空に憧れて飛行機を作り、

月に焦がれてロケットを作った。

ヒト自身には力がなくても

何でも出来るように色んなものの力を借りた。

ヒトは何も出来ないけれど、何でも出来るんだよ。」

 

「出来ないのに出来るの?

変なのー」

 

「ふふふ。

父さんにもまだ出来ないことが沢山あるけれど、

色んなことを学んだよ。

お前も色んなことを学ぶだろう。

何でも一人でこなせるようになる。

けれど、忘れてはいけないよ

ヒトは何でも出来るけれど

独りじゃ何にも出来ないってことを。」

 

 
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