「お父さん、キリンさんは何で首が長いの?」
「キリンはね、仲間を探していたんだよ。
知っているかい?迷子になったら動かずにいた方が良いって。
キリンは動かなかったけれど、仲間を探したくてしかたなかった。
遠くを見たい、遠くを見たいと願っている内に、
キリンの首は何時の間にか伸びていたんだよ。」
「キリンさんは仲間に会えたのかなぁ?」
「どうだろうね」
「お父さん、じゃあ、ゾウさんは?
何でゾウさんのお鼻はあんなに長いの?」
「それはね、匂いを嗅ごうとしたからだよ。
小さな穴から良い匂いがしていてね。
ゾウは中に入れないけれど、匂いだけでも嗅ぎたかった。
そうしている内に鼻が伸びたんだよ。」
「良かった。ウソをついたからじゃないんだね」
「そうだよ」
「お父さん、このトリさんは何で飛ばないの?」
「トリはね、キラキラしたものが好きだったんだよ。
だからこのペンギンというトリも、海のキラキラが大好きで
氷の上や、水の中からから何時もキラキラを眺めているんだよ。
他のトリは太陽や星がキラキラ光るのを見て、
もっと近くで見たいと思ったんだろうね。
ずっと空を眺めていたら何時の間にか空を飛んでいたんだ!」
「そうかぁ。
じゃあ、ヒトは?」
「ヒト?」
「ヒトはどうしてお空を飛べないの?
どうしてお鼻が長くないの?
ねぇ、どうして?」
「ヒトは―――貪欲だから色んなことを願ったんだよ。
遠くを見渡せるように見張り台を作ったし、
良い匂いを何時でも嗅げるように香水も作った。
空に憧れて飛行機を作り、
月に焦がれてロケットを作った。
ヒト自身には力がなくても
何でも出来るように色んなものの力を借りた。
ヒトは何も出来ないけれど、何でも出来るんだよ。」
「出来ないのに出来るの?
変なのー」
「ふふふ。
父さんにもまだ出来ないことが沢山あるけれど、
色んなことを学んだよ。
お前も色んなことを学ぶだろう。
何でも一人でこなせるようになる。
けれど、忘れてはいけないよ
ヒトは何でも出来るけれど
独りじゃ何にも出来ないってことを。」
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とある父子の会話。【絵本】用に書いたもの。【挿絵】はまだない。