No.562060

201304022355

かなたさん

ときめきメモリアルGirl'sSide 3rdStory 大迫先生×バンビの、大迫先生お誕生日おめでとうございますSSです。
バンビの名前は小波美奈子です。 大迫先生、お誕生日おめでとうございます!

2013-04-02 23:25:52 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:489   閲覧ユーザー数:489

 

カチカチと時計の針が回る。

普段なら気にもとめないその音が聞こえてくるたびに緊張する。

あと、5分。

 

もう一時間も前から画面が変わっていない携帯電話を握りしめる。

自分でも怖い気がして、ちょっと笑う。

でも。やっぱりできるだけ先に送りたい。

あと、4分。

 

……あ!

でも、もしもう寝てたらどうしよう。

明日も学校あるし、迷惑だよね。

なんで今まで気付かなかったんだろう……。

うぅ……。

どうしよう。

どうしよう。

あと、3分。

 

メールだけだし、良いかな?

すぐ返事がくるとは思ってないし。

あ、でも、もし迷惑だったらどうしよう。

先生は絶対に「迷惑だ!」とか言わない人だけど、でも気になる。

うーん。

あと、2分。

 

ってもう時間がないっ。

迷惑だったかどうかは先生に聞いてみないと分からないし。

寝る前には音切ってる可能性もある。それなら、迷惑にはならない、と思う。

よーっし。送るぞっ。

気合を入れて携帯をじっと見る。

あと、1分。

 

関係が変わって、先生と生徒じゃなくなって。

先生の誕生日を「柔道部一同」や「生徒一同」ではなくお祝いできるということが、本当にうれしい。

……だからって日付が変わるのを狙ってメールするとか、こう、気合入れすぎじゃないかとは思うけど。

 

カウントダウン開始。

10, 9, 8, 7, 6, 5, 4, 3, 2, 1, 0、送信!

 

ってあれ?

メールの画面じゃなくなって……る……?

 

「あれ?」

思わず声をあげる。

画面に表示されている名前は、あの人のものだ。

慌てて携帯を持ち直そうとして、間違って変なところを押してしまう。

「あー!」

最低だ。

先生からの電話、消しちゃった。

一瞬泣きそうになるのをこらえて、自分からかけ直す。

「もしもし?」

聞こえてくる声がいつもの声でほっとする。

「ご、ごめんなさい!」

「ハハハ、気にするな! そういうこともある。すまん、夜遅くに」

「え、いえ、全然問題ないですっ。それより先生、どうしたんですか?」

「ああ、いや」

あれ? なんだか珍しい。先生がはっきり答えないなんて。

「何か、ありました?」

「そういうわけじゃない」

ますます不思議だ。どうしたんだろう?

「なんだか、少し変ですね」

「そうか?」

「はい。なんとなく、ですけど」

「まあそうだな」

ハハハ、と軽く先生が笑う。

その声が好きだなとシミジミ思う。

そう思ったら、自然に次の言葉が出てきた。

「でも、先生の声が聞けてうれしいです。お誕生日、おめでとうございます」

返事がない。

「……あの? 先生?」

「小波」

しばらくして先生が言う。

「はい」

また、少し間があく。

「"先生"は無しで、もう一回言ってくれないか」

「え」

思いもよらなかった言葉で、つい変な声をあげてしまう。

「ああ、いや。すまん! 変なことを言ったな! もう夜も遅い、明日のために寝るのも大事だ!」

それじゃあまたな、と言って電話を切りそうな先生を慌てて止める。

「ま、待ってください」

ゴホン。軽い咳払いをして、気持ちを落ち着ける。

改めて思う。

名前で呼ぶのって、すごく緊張する。

「お誕生日、おめでとうございます。……その」

その、ともう一度言って、口の中でモゴモゴと続きを言う。

絶対に聞こえてないって。ちゃんと、言わないと。

大きく息を吸う。

「力、さん」

息を飲む気配がした、気がする。

「あぁ」

そこまで言ってしまえば、あとはもう言いやすい。

「本当におめでとうございます。こうして電話で、力さんの声が聞けて。その、貴方にお祝いが言えて、本当に嬉しいです」

心からの言葉を重ねる。

「……そうか」

聞こえてくる声が嬉しそうで、ますます嬉しくなる。

メールをするかどうか悩んでいた。

最初にお祝いの言葉を伝えたかったけど、それが迷惑になってしまうのは嫌だったから。

だから、先生から電話がもらえて、話すことが出来て、本当に嬉しい。

 

と、ここまで考えてようやく一つの可能性に気づく。

「……あの」

「ん? どうした?」

「もしかして、時間、待ってました?」

日付が変る瞬間にメールを送ろうとして、出来なかった。先生からわたしに電話がかかってきたからだ。

それはつまり。

「そうだな。ハハハ、おまえに祝って欲しいと思ってな」

笑う声はいつもより高く聞こえて、もしかして先生が照れてるのかな、と思うとそれがすごくドキドキする。

どうしよう。

お祝いするのはわたしなのに。嬉しくてたまらない。

先生がわたしにそんなことを言ってくれるなんて思わなかったから。

「お、お祝いします! 全力で!」

「ありがとう、美奈子」

落ち着いた声で自分の名前を呼ばれて、思わずベッドの上に転がりたくなった。

携帯越しとはいえ、耳元で名前を呼ばれるのはやっぱりドキドキして、嬉しくてたまらない。

そこから先生が「そろそろお開き」と言うまで、ずっと他愛のない話を続けていた。

いつものような、話を。

お互いにいつもとは――いままでとは少し違う呼び方で。

 

お誕生日、おめでとうございます。

また少し年齢は離れてしまうけれど。

また少し貴方との距離は縮んだことが、すごく、嬉しいです。

 

 
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