「Plastic emotion なぜに信じる事をやめたの、受難と夏の空に残した傷跡、今日ここを去って そう分かってるよ、決して手に入らないものを探しに行くのさ~」
「真夜中の風、ポケットの中のアメ、彷徨う俺…」
海水浴場の熱い浜辺の上で正座をし、なにやら奇妙な歌を口ずさむ計五人の男子、彼らは夏の日が照る中でラップ調の音楽を口々に流しながら計五人の阿修羅のいる状況から必死に現実逃避をしていた
まあ、あれだけ、いともたやすくおこなわれるえげつない行為をされればトラウマになるのも致し方ないといえる、しかしながらここまでくるとかえって泣けてくる、ジョースターの伝統の発想的戦法とはいったいなんだったのか…
彼らのそんな状態を見かねた周防は男子たちに厳しい態度を示す女子陣にそろそろ許してやるか?と相談を持ちかける、まぁ、折角海に来たのに彼らをこのままにしておくのもしのびないと思ったのだろう
それが好機と言わんばかりにナンパ対決の主犯とも言われる今鳥と、花井をその気にさせた仗助がそれに縋るような表情を浮かべて彼女たちに弁解しはじめる、見よ我らが主人公であるこのジョジョの姿をッ!
「お願いしますよォーお姉さん方!うわ!こんなとこにこんな美人達がいるなんてッ!俺らの目はゲロ以下みたいだったようだぜッ!今鳥!」
「そうだよなぁ!仗助ちゃん!俺らこーんな可愛い女の子達ほっぽり出して何してたんだろォー!」
白々しいにも程があるこの二人のやりとり、なんというかもう藁にも掴むような必死さがいかにも滲み出ている感が歪めない、まぁ、あれだけのお仕置きを食らえばこんな風にもなる、熱い砂の上で一条からのジャーマンスープレックスは正直殺されるかと彼らは思った
反省したところをできるだけ彼女たちに見せてこの熱い砂浜の正座の地獄から許してもらおう、かれらの思いはこの時だけ面白い程にシンクロしていた、というよりもこれ以上は身体が持ちそうにないというのが本音である
周防はそんな必死で弁解するように自分に縋ってくる口達者な二人と後ろに控える三名の戦犯に眼をやり仕方ねぇなと言って彼らに向ってこう言った
「まぁ、反省してるみたいだし今回だけだかんなぁ、オメーらがナンパしたお姉さん達に私たちが頭下げたんだぞこのトンチキども」
「仗助君たちってサイテー!やっぱり男の子ってこんなのばっかなんだぁ!」
「…ぐ、返答しようもございません」
そういって天満の軽蔑する様な物言いに泣きたくなるような表情を浮かべる仗助、だが今回は反論できないし明らかに自分たちが悪い、せめて何かしらの汚名を返上することをしなければ彼女の自分たちへの評価は間違いなくド底辺のままだろう
とはいっても自分らになにか彼女らにすることは特に思い浮かばないのが現状、パシリか何かを率先してやるか? いや、そうなった時はあの金髪お嬢の暴政が幕を開くことになる、お茶を買って来いと言われるだけで京都の緑茶の原産地まで行かされかねない…それに先日の事もあるし自分はできるだけそんな役回りにはまわりたくないというのが仗助の正直な気持ちである
仗助は更にこの時、頭をフル回転させて、こんな悲惨な状況を作り出さない方法を考え始める、記憶を辿ってゆけばこういったことは必ず光明として道を示してくれる
そういえば水着と言えば…先日、プールに行ったときに彼らは自分と億泰にナンパ避けの為に同行させ、そこで競泳対決とか意味が分からないことになって『全員泳げない』、という事を目の当たりにした
ん…?全員泳げない? 海水浴場に折角来ているのに?
…これだ!これなら名誉挽回!汚名返上のチャンスとして申し分ない!男子は恐らく全員が泳げるのに対して彼女たちは泳ぐことができないのだ!
仗助はこの自分の思いつきはここにいる男子達の救済に絶対的な自信があった、そうこれならもしかすると自分が天満に泳ぎを教えて、そのまま愛の告白にまで持ち込むことができるチャンスと化すかもしれない
(…名付けて、水泳を教えて仲良くなろう作戦! 俺ってやっぱ天才かもしれねぇなーッ!)
ネーミングセンスの無さはこの際あえて突っ込まないことにしよう、何はともあれとりあえず彼女たちに自分たちが何を教えるのかと言うのはコレで決まった、あとは彼女たちに自分が考えたこの作戦を口頭で伝えるだけである
「あのよー、そういえばオメーらって全員カナヅチだったよなー」
ギクリ、と仗助に指摘された女子たちは瞬時に自分たちが仗助と億泰とプールに行った時の事を思い出し身体が反射的に固まる、そう言われてみれば自分たちが誰一人として泳げないのを競泳の時に仗助と億泰に盛大に暴露したのを彼女たちは思い出した
しかも、その時に彼女たちは仗助に貸しを作っていることもついでに思い出したようである、形勢はコレで五分と五分、大体、仗助たちはあの時ちゃんと任された仕事はしたはずなのに天満の余計なひと言によって事がややこしくなったのだ、好きな人を利用するのはちょっとばかり心が痛むが仗助はしめたと内心でガッツポーズをした
「そ、それがどうしたって言うのよリーゼント」
「あれれー?あの時は俺以外が泳げないせいで実質三対一の状況で勝ったんッスよー?あれは貸しということでしたよねぇ?」
「なるほど…それなら仗助君に君たちは貸しがあるということになる訳だ」
「…くッ!こいつらなかなか頭が切れてやがる!」
仗助の言葉に便乗するように話を繋ぐ花井に思わず顔をしかめる周防
彼女たちをうまく言いくるめた彼らはこうして内心で互いにグッジョブと言い合う、とりあえず彼女たちと対等の立場に持って行った仗助と花井のナイスコンビネーションといったとこだろう、ナンパ対決の成果はどうやらこういったとこでも発揮されるらしい
続けて仗助は念を押すように彼女たちにこういった提案を挙げはじめる、
「そこで、折角海に来たんだから、俺らがそれぞれ付きっ切りで個人的に泳ぎ方をレクチャーするってぇ事で今回の件は互いに水に流すことにしませんか?その方が皆、楽しめると思うんッスけどねー?」
仗助はあくまでこの時女性たちの機嫌を損ねないように自分が妙のとこにいる間に占い屋、もとい修理屋をしているときに身に着けた最低限の営業スマイルを彼女たちにふりまきながらそう言った、
うまい! と男子達は心の中で口を揃えてそう思った、口先の魔術師、ネゴシエイター、駆け引き上手と様々な褒め言葉が彼らの心の中で仗助に向って送られる、まぁ、これもそもそもナンパなどに走らず彼女たちの到着を待っていれば済む話であったのだが…
女性陣、彼女たちはとりあえず全員でしばらくの間、話し合い仗助の挙げた話について検討することにする
そうして話がまとまったのか、彼女たちの中からゆっくりと周防が砂浜で並んで正座をしている彼らに対してそのことについての返答を返した
「わかったよ、そういうことで今回の事は皆チャラにしてやるよ」
「よっしゃあーッ!流石姉さん!話が分かるッ!仗助よくやったぜオメーは大したもんだー!」
「…まぁ、こんなもんっスよー」
許しを得た発言を彼女から頂き、思わず嬉しそうに相方である仗助の背中をパンパンと叩く億泰、こういったとこで頭が働く仗助とは杜王町に居た頃からの長い間柄であるためにこういう時はホントに役に立つ奴だと彼は改めて認識させられた
スタンド使いとの戦いにおいても自分は仗助と一緒なら無敵だと自分は思う、なんやかんや言っても自分の家で兄と一緒に敵対した時からの付き合いだ、自分と仗助はやっぱり相性が良いのだろう
そんなこんなで周防達から泳ぎをレクチャーするという事で許しを得た仗助達は早速、誰が誰を教えるのかと言う事になった、まぁ、それぐらいでナンパの事が許されるのなら軟派な今鳥やもともと人に教えることが好きな花井的にも安いものである
このことで仗助は自分の中にある策略をひそかに用意していた、それはなにをかくそう仕込みアミダくじ
これによって、個人的に泳ぎを自分が教える相手が思い人である天満になるという戦法、こういったところは誰譲りなのか、本当に抜け目がない
仗助はこの時は心を躍らせていた、これで彼女との距離もグンと縮まりあわよくばいい雰囲気に持って行けれるのではないかと、そう、自分がまさかその仕込みをミスっている事に気付ていなかったこの時までは……
しばらくして、無事に仗助のアミダによってメンバーが綺麗に分かれ、仗助は現在、海に身体を浸けて泳ぎをレクチャーすべくある人物と対面していた
「…どうしてこうなった…」
「なによ、なんか文句あるわけ?」
そう彼は神の悪戯かはたまた偶然か、先日、間違って告白したあの金髪お嬢こと沢近愛理の指導をすることとなってしまっていた、当初、天満と自分と一緒になる筈だったアミダは一本線を書き間違えていたのだマヌケめッ!
そうして、偶然にも彼女とペアになってしまったという訳である、仗助は思わず新手のスタンド攻撃かなんかだろと思ってしまった
ちなみに他のペアは高野と億泰、花井と周防、奈良と天満、一条と今鳥、と言った具合である、せめて周防か一条が良かったと仗助は心の中で涙を流さずにはいられない、よりにもよってこの金髪ツインテール暴力娘と一緒とは…
まぁ、しかしながら人間は時に開き直ることも大切である、仗助は諦めたように彼女に対してその手を差し伸べた
「まぁ、不本意ッスけど、この間のアレもあるし、今日は俺がアンタに教えてやるっスよ…ほら、手握ってください」
「あら、アンタ意外に紳士なのね口は悪いけど」
そういって仗助の手を掴む沢近、仗助はやれやれと言った具合に彼女を先導し少しずつ深い場所に向って泳ぎ始める、仗助が女性に対して紳士的なのはおそらく家計的なアレでだろう多分…
いざと言う時の為に彼の海パンのポケットの中には海の家の破片が入っておりいつでもクレイジーDの能力で浜辺に戻ってこれるという寸法だ、まぁ効果範囲は左程期待はできないが保険というとこだろう
彼は息継ぎの仕方を彼女に丁寧に一から教えながら、どうやったら前に進んで泳いでいけるのかというコツを徐々に馴らしてやった
「そうそう、そうやって泳ぐんっスよ」
「ぷはぁ、ち、ちょっとまって息が続かない」
「…しょーがないっスねぇ、ほら浮いてる自分にしがみついてください」
そういって、泳ぎ疲れた時は自分の身体にしがみつくように促す仗助、泳いだ彼女はそういって掴まるように促す仗助の身体に自分の身体を密着させ、水中から顔を出してゆっくりと呼吸を整える
仗助はその間、彼女の腰に手を回し彼女が水中に顔を浸けないようにと配慮を施した、スタイルのいい沢近の身体に触れること自体男子達からしてみればうらやましい事ではあるのだろうがそこは仗助、まったく気にしない彼の中で例えるなら丸太を水中の上に支えているようなものである、大変失礼な事であるが…
それとは裏腹に仗助に身体を密着させられているうえに支えて貰ってる沢近は自分の腰に手を回し支えてくれる仗助に対して心臓をバクバクさせていた
(やばいやばいやばい!コイツの心臓の音が聞こえる…!しかも近いし!それにこいつ確か私にこの間、告白してきたのよね?それってやっぱり好きって事なのかしら)
顔を真っ赤にさせていろんなことを頭の中でグルグルと考える沢近、彼女は海の中に身体を浸けているというのに目の前にいる仗助の腕の中がとても温かく感じてしまった、なんというか落ち着くという表現が一番しっくりくるだろう
しかしながら、いつまでもそうしてられる訳ではないそこらへん大概鈍い仗助は自分の身体にいつまでもしがみつく彼女に対してこう言う
「あのーお嬢よォー!あんまひっつかれっと俺も泳ぎ難いっス、まぁ、そろそろいい時間帯だし一回休憩入れましょうか」
「え?あ、あうん そ、そうねごめんなさい」
彼女は仗助の言葉にハッと自分を取り戻し、彼の言葉に納得したように頷く、いつまでも泳いでばかりは健康に悪いし休憩を入れようと言った仗助の言葉は彼女的にも納得いくものだった
仗助はすぐさま自分のスタンドであるクレイジーDを発現させ、その能力を海の中で発現させる
「そういえば、アンタのこれ見るのこれで二回目ね」
「そういえばそうっスね、お嬢は一回、てん…塚本の家で見せましたっけ?…ってぇちょっと離れすぎっスねクレイジーDの能力のパワーじゃあこの距離は二人は無理そうっス 仕方ないから泳いで帰るんで俺に掴まってください」
「え、う、うんわかったわ」
そういって仗助の肩に腕を回して彼の背中に乗る沢近その顔はなにやら照れくさそうに赤くなっている、
ムギュという柔らかいものが背中にあたったような気もするが多分気のせいだろうと仗助はあえて突っ込まずに彼女を背中に乗せたまま泳ぎ何事もなかったように浜辺へ戻っていった
浜辺へ着くと元の自分たちの差しているパラソルになにやら人影が見える、二人は不思議そうに顔を見合わせるとそのパラソルの元に足を進めた、そのシルエットから女性だという事はわかる
「あり?周防じゃあねーッスか何してるんっスか? 花井さんに泳ぎ方習ってたはずじゃあ…」
そう、それは花井に泳ぎを教えてもらっている筈の周防の姿であった、彼女は日に当たらないようにパラソルの下で体操座りをしなにやら遠くを眺めていた、仗助の言葉に反応した彼女は事情を戻ってきた彼らに説明し始める
「アイツなら勝手に暴走してレクチャーにすらならなかったよ、1秒間に10回の呼吸ができるようにするってとこで無理だと悟った」
「何、その無理難題…」
「…それ、別のものが使えるようになるための呼吸法っスよ、何やってんですかあの人」
なんで、泳ぐための呼吸法じゃなくて波紋戦士をつくるための呼吸法を教えてるんだと思わず頭を押さえる仗助、そりゃ女性に対して無理難題と言うものだ、肝心の花井本人はいまだ海の上で物凄い勢いで周防をほったらかしに一人で泳いでいる
しかしながら、泳ぎのレクチャーを受けた筈の彼女がこのまま泳げないままと言うのもなんだか自分が挙げた事柄なのに申し訳がない気がする、仗助は一人皆の帰りを待つ周防に対してあることを提案し始めた
「それならよォー、周防の泳ぎ俺が見てやるぜ、教える奴が二人三人増えても大したことねぇしよー」
「…仗助があたしに泳ぎ方教えてくれんの?ホントか!!」
「ちょっとあんた何勝手に、まぁ別にいいけど…」
仗助の思わぬ言葉に喜びを露わにする周防に対し、なにやら二人だけのレッスンがなくなった事に不満げな表情を浮かべて言葉に出す沢近、仗助は周防に手を差し伸べて早速泳ぎに行こうと座っていた彼女を立たせる
まぁ、たしかに折角海に来たのに一人だけこんな場所にいるのもあまり関心できないと沢近も感じていたために仗助の気遣いに口を出すことはできない、けれども、自分だけ教えてくれていた彼を周防から取られるのもなにか知らないがモヤモヤする
ひとまず、さっき泳いだ沢近は休憩と言う事で浜辺のパラソルの下で待つことになり、仗助と周防は二人だけで海の中にへと入っていった
教え方はさっきと同じで、仗助が深いところまで連れてゆき泳ぎを教えるというやり方だ、周防はこういった事に関する物覚えがいいのかメキメキと仗助が教える泳ぎ方を吸収し上達してゆく
「そうッス、いやーやっぱ周防は呑み込みが早いっスね! 教える方からしてもやり甲斐があるッスよ」
「ぷはぁ、いやいや、仗助の教え方が上手いお蔭だって!ゴメンちょっと息続きそうにないから身体、掴ませて貰うな」
そういって海中に身体を浮かしている仗助の身体に自分の身体を密着させる周防、しかしながら先ほどの沢近とは違いこちらは自己主張が激しい大変立派なモノをお持ちであるために仗助の身体に密着するたびにやわらかいそれが仗助の胸板、もしくは肩に毎回押し付けられる
天満が幾ら好きだといっても仗助も男である、柔らかいそれが毎回当たるのにはどうも意識せざる得ない、だが、そのことを口で伝えるのは彼女の尊厳を傷つける気がして仗助はこの悩ましい状況をあえてスルーするという方向に持っていくことにした
上達も早いし、彼女の場合すぐに泳げるようにもなるだろう、とそういった仗助の思惑もある
そんな事を考えてるうちに、泳ぎ慣れてきた彼女は急に仗助の身体から離れてちょっとだけ自分で遠くまで泳いでみたいと言い出し始め、仗助の身体から手を離し沖の方に泳ぎ始めた
「あ、ちょっと、そんないきなり遠くに泳いだりしたら!」
「大丈夫だってほら!…ッ!」
そういった矢先の事だった、彼女は急に足が硬直する感覚に襲われ海中に浮いていた筈の身体が上手く動かない錯覚に襲われた、そう水温の変化によって足が攣ったのである、泳ぎ慣れたとはいえこの経験が初めての彼女はパニックに陥りもがく様に海中にへと沈んでゆく
それを見ていた仗助は慌てて離れた彼女のところに泳ぎだす、とはいっても泳ぎが上達した彼女との距離はそこそこ離れていたためにパニック状態になった彼女の元へは直ぐにつくとはいかなかった
彼女はそうこうしているうちに水中にへとその身体を落してゆく
(息が…できない…足も張ったように痛いし、何コレ…)
嗚呼、自分はまた溺れているんだろう、意識がドンドンと遠のいてゆく
そんな仗助から離れて溺れた彼女が息が持たないともう諦めようとした時だった、彼女の身体が誰かから引き寄せられる、彼女は閉じかけていた瞼を再びあけてその姿を目で確認する
そこにいたのは溺れていた周防を助けようと潜ってきた仗助の姿だった、彼は周防の身体を自分の方に寄せると次の瞬間、酸素が無くなった彼女にそれを与えるため信じられないような行動をとる
ズキュウウウウウウウウウウウウウウウン!!!
それは、彼女の頬を両手で固定してなんと海中の中でキスをしたのだ、潜ってきた仗助は溺れていた彼女にそうやって自分が含んだ酸素を徐々に分け与える、仗助からいきなりキスをされた周防の頭の中はこの時海中の中にいるというのにオーバーヒートしそうなほど様々な物事が飛び交っていた
(え? えええええええ? 今、なんで私仗助からキスされてんだ!あれ?そういや私溺れたんだっけ? で、でもキスって!)
頭が覚醒した周防はどうやら自分が仗助にキスされているという現実に直面して訳が分からないと言った心境のようだ、ちなみにこれは彼女にとっても仗助にとってもファーストキスとなるというのだから驚きだ
しかしながら、人命が掛かっているとなれば仗助にとってそんなもの屁でもない、むしろそんなつまらない事で彼女を溺れさせて死なす方が数倍目覚めが悪いという奴である
彼女に口移しで酸素を分け与えた仗助は彼女を抱き寄せたまま水面へと浮上する、海中から二人とも顔を出すと仗助は溺れていた周防に心配したような表情を浮かべてこういった
「ぷぁ! もう何やってんっスかー!溺れ死ぬとこだったんッスよー!あんま調子のってこれ以上深いとこ行くのは危ないんッスから!」
「…ご、ごめん…心配かけて…」
仗助の言葉にお詫びの言葉を述べる周防、しかしながらその表情はリンゴの如く赤くなっていて、身体はまるで子犬の様に丸くなって縮こまってしまっている
そんな彼女の様子を見ていた仗助はやれやれと言った具合に深い溜息を吐くと一度、浜辺に戻ろうと彼女に述べて、先ほど教えた沢近同様に自分の背中に掴まるように彼女に促す、足を攣っている彼女にこれ以上負担を掛けまいとした仗助なりの心遣いだろう
顔を赤くした彼女は黙って頷き仗助の背中に掴まる
(あ、コイツの背中ってこんな温かいんだ…)
「んじゃ、ちゃんと掴まっといてくださいね」
仗助は一言彼女にそういうとスイスイと周防を背中に乗せたまま海を泳いでゆく、正直彼的には天満に教えるはずだった水泳を二人に教えてもうなんというかクタクタだ、まぁ、唯一の救いは彼女たちが思いのほか自分が教えたとおりに従ってくれた事ぐらいだろう
浜辺に帰った仗助は足を攣った周防を背負って沢近が待つパラソルにへとどうにか辿りついた、沢近は直ぐに周防の様子がおかしい事に気づき、仗助に何があったのか問いかけ始める
「ちょ、ちょっと!なにがあったのよ二人とも」
「何って…周防が足攣って溺れたんっスよ、んで、俺が助けたんッス」
「ホントに!ミコト大丈夫なの?」
「…仗助からキスされた…」
ピシリとこの時、沢近の空気が固まった、主に原因は分かっている周防が呟いたこの一言が恐らくの原因であるだろう、彼女はなにやらゴゴゴゴゴ!といった擬音が聞こえてきそうな程の雰囲気を醸し出し、同じく周防の一言によって固まっている仗助の方に振り返った
明らかに誤解、確かにキスはしたけれどもそれはあくまで仗助が彼女の人命を優先した結果である、しかしながら、乙女である彼女たちにとってみればキスをされたという事柄の方がよほど重要であるらしい
仗助の方に振り返った彼女はとっても笑顔であった、しかしながらその笑顔が余計にこの後、仗助を待ち受ける出来事に関して不気味さを醸し出していた
「いや!待てお嬢ッ!これには深いわけがあるんっスよー!」
「仗助君?悪いけどここから質問はすでに、、、拷問に変わっているのよ…さて、何が違うのかしら」
なにやら、沢近から『スゴ味』という奴を仗助はこの時感じた、こいつはやばい、どのぐらいやばいかというと、落ちつけ…………心を平静にして考えるんだ…こんな時どうするか……2…3、5…7…11…13…17……19。落ちつくんだ…『素数』を数えて落ちつくんだ…『素数』は1と自分の数でしか割ることのできない孤独な数字……とかいう某神父と同様の心境になるぐらいにやばい
というより落ち着けるわけがない、こんな状況で落ち着けるとしたら悟りを開いた坊主か賢者ぐらいだろう、生憎、自分はただのスタンド使いであってそれ以外は普通の男子高校生なのだ
………かくなるうえは
「逃げるッ!やっぱ最後はジョースター家秘伝のコイツに限るぜッ!」
「逃がすかッ!このドアホッ!」
「タコス!!」
だが、逃げようとしたのが既に感づかれたのか、既に沢近からの見事な回し蹴りによって仗助の後頭部に沢近のしなやかな足が炸裂、
仗助はその後、悲しきかな沢近による質問と言う名の拷問にかけられ、皆が戻ってくる間に小一時間、熱い砂浜の上で正座をさせられる事になった
その間、沢近から質問を質問で返すなあーっ!!疑問文には、疑問文で答えろと、学校で教えているのか?などというとんでもない事を言われたりした結果、仗助の身体は旅館に着いた時にはもうボロボロであった
こうして、楽しい海水浴の一日はなにやら新たな波紋を呼びそうなそんな予感をさせるものとなったのだった
………TO BE CONTINUED
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市杜王町に住む東方仗助、虹村億泰はある日を境に空条承太郎からある高校に転入し、スタンド使いの捜査を頼まれることになる、杜王町から離れての高校生活に不安を抱える仗助はそこで一つの出会いを果たしてしまった、そうそれはスタンド使い同士が引き合うような運命のように…
ラブコメにジョジョという無茶な設定ではありますが楽しんでいただけたらなとおもいます