No.560177

機動戦士ガンダムSEED白式 20

トモヒロさん

20話
遅いし、短い…最近PSO2を遊びすぎたせいだ…きっとそうだ…vita版からなのに総プレイ時間250時間になっちゃったし、もう準廃人レベルか?

2013-03-28 19:48:50 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3772   閲覧ユーザー数:3618

砂漠の虎

 

砂漠の中にある街。そこで一夏は大量の荷物を担いで、前を歩く劾と箒にヨレヨレとついって行く。

俗に言う荷物持ちだ。しかし、劾の方は一夏とそう変わらない荷物を持ちながらも、その表情は涼しそうだった。

 

「はぁぁ…、これで最後かぁ」

「だらしないぞ一夏」

「そんな事言ったって…箒、あの量だぞ?よく劾は平気だな…」

「これくらい造作もない」

 

劾は汗一つかくことなく淡々と購入した荷物をバギーに詰め込む。

 

「俺はこれから、市場へ行って食糧を調達してくる。その間お前達は街中でも見て廻ってくるといい」

 

そして、荷物を積み終わると、バギーのエンジンを付け、一夏と箒にそう言った。必要最低限、お金の入った財布を一夏に投げ渡し劾はさっさと何処かへ消え失せてしまった。

コレは劾なりのお節介だったのだが、無論一夏がそんな事を気付く筈もなく、“ただ、箒と暇を潰してこい”程度に捉えているようだ。箒も箒で今の状況がデートである事に気付き、軽くパニック状態だった。

 

「ん?どうした箒、顔が赤いぞ?」

「な…?!、何でもない!ほ、ほら、もうすぐ昼だ、あそこの店に行くぞ!」

「あ…あぁ、そうだな」

 

箒に半ば強引に連れ込まれた一夏は店のテラスに腰掛け、店員を呼んでケバブを注文する。

 

「そう言えばケバブってトルコ料理だったよなぁ…?、って事はここって西アジアなのか?」

「いや、だいたいココは北アフリカらしい。それに別段外国料理なんて珍しくないだろ」

 

他愛ない話をしていると、ウェイターが二人分のケバブと、赤と白のボトルを持ってきた。

「……なぁ、箒」

「何だ…」

「この二つのソースボトル…何だと思う?」

「赤い方はケチャップかチリソースだろ…白い方は知らん」

 

そこで、一夏と箒の視線は謎の白いソースボトルに集中する。マヨネーズにしては白過ぎるし、フレンチドレッシングは肉料理にはかけないのではないだろうか?

 

「それはヨーグルトソースだよ」

 

すると、横から声が聞こえた。そこには、褐色肌のハワイアンシャツを着た男が立っていた。そして男はヨーグルトソースのボトル持ちながら語り始める。

 

「ここら辺じゃ、ケバブにヨーグルトソースをかけて食べるのが常識なんだよ、君たち」

「へぇ〜、じゃあコッチの赤いのは?」

「あー、ダメダメ!ケバブにチリソースなんて邪道じゃないか!」

この時、箒は何か変な奴に絡まれたと思っていた。何故この男は食べ物くらいで熱く語っているのか…。

箒はバカバカしく思い、チリソースをケバブにかける。

 

「って!おい!君は何て事を…?!」

「ふん、私の食べ物を私がどう食べるか私の勝手だ。はむ…、うむ、うまい!」

 

男が唖然とする横で、箒は上機嫌にケバブにかぶりつく。男は信じられないとでもいうように手で顔を覆う。確かにあれだけ食べ方を熱弁しておいて、全く無視されれば、そうなるだろ。一夏は少し罪悪感があったので、ヨーグルトソースに手を伸ばした。

 

「はは…、じゃあ俺はコッチの方にしてみようかな」

「お!彼氏君の方は分かってるじゃないの!やっぱりケバブはヨーグルトソースが一番!」

「かッかか彼s…ッごほ、ごほ?!?!」

 

男はニヤニヤと、初々しい反応を見せる箒を見て楽しんでいる。その際、箒は焦ってむせた。

一夏からみれば、箒は怒っているように見え、弁護してやろうかと思ったが、過去からの経験上やめておく。そうすると、一夏の女友達は決まって機嫌を悪くするからだ。余計な事に口を挟むとろくな事がない。ある意味この時の一夏の判断は正しかったのかもしれない?

過去の二の足を踏むものかと、一夏は心の中でニヒルに笑った。

 

「お、こっちもなかなかうまいな!箒も食ってみろよ、ヨーグルトソース結構いけるぜ!」

 

そう言って一夏は食べかけのケバブを差し出してくる。

一夏は無意識にやっているのだろうが、箒からすればこれは一夏と関節的にキスするチャンス。箒は一瞬にして真っ赤になり、まんざらでもなさそうに獲物へ目をやる。

アロハシャツの男は「ヒュー、彼やるねぇ」などと言いつつ、事実ヨーグルトソース信者が増えてくれる事を期待していた。

 

その時…

 

『青き清浄なる世界の為に!!!』

 

その怒鳴り声と共に銃声が町中に響く。

一夏達は何事かと思い、身構える。

そこには、拳銃やマシンガンを携えた“一般人”が辺り構わずこちらに突っ込んで来るのが見えた。

一夏はそれを見てさらに混乱する。あの人達は、何故平気でこんな事ができるのか、一夏には理解できない。しかし、その疑問は次の瞬間晴れた。

 

『コーディネーターは滅びろ!』

『宇宙の化け物から地球を護れ!!』

 

そうか…、彼らは、

彼らの動機を理解した刹那、一夏は腹の底から怒りが込み上がってくる。

彼らもまた。コーディネーターとナチュラルを隔てた考えを持った人達。

そして、ここでさらに一夏に疑問が浮かぶ。

この人達はいったいどうやって今この場にいる人達を見分けているのか?一夏達がいるテラスにはまだ逃げ遅れた人達がいると言うのに、彼らはかまわず向かって来るではないか。

 

(まさか…ナチュラルも関係なしに?!)

「伏せろ君たち!!」

 

アロハシャツの男はそう叫びながら。いきなりテーブルを蹴り倒す。

刹那、真上のビルが爆発し、細かな瓦礫が降ってきた。幸いにもビルは崩れなかったが、もし崩れていたら、自分達を含め、多くの犠牲者がでていただろう。いや、今もなお少なからず犠牲者はでた。ナチュラル、コーディネーター問わず。

そこで一夏は箒の安否に気が付き、横には小さく震える箒がいた。いつもならけして見せない弱々しい女の子の姿だ。箒は怯えておる。それもそうだ。自分だって最初はそうだった。ただ無力に命のやり取りしてこなかった自分がいきなり他者から命を脅かされることなど無かったのだから。あったとしても、それは無人機や暴走機。明確な人の殺意などなかったそれが今は、目の前に、そして直に伝わってくる。

そして一夏は向こうの物陰に隠れている男を一人見つけた。その男は、銃をこちらに向けている。正確には一夏達の後ろにいるアロハシャツの男にだが、何にしてもこのままでは最悪自分達は巻き込まれ、箒に弾があたってしまうかもしれない。

その時の一夏の行動は早かった。

 

「辞めろぉお!!」

 

一夏は無謀にも丸腰でその男に駆け寄る。男は、一夏の事など眼中になかったのか不意を突かれ一夏の接近を許してしまう。一夏も伊達に剣道をやっていたわけではない。踏み込み、近くにあった壊れて棒状になったテーブルの足を広い、銃をはたき落とす。そして続けざまに二撃目、それは男の額へモロにヒットし、その男の意識を刈り取った。

 

 

そして、街の銃撃戦がおさまった頃、そこにはテロの失敗を物語る人のしかばねが転がっていた。

その中には、一夏が気絶させた男も混ざっている。

一夏は目の前で直に人が殺される場面を見るのは抵抗があったが、別にその人達に同情などする事はなかった。

 

「一夏…」

「……箒か、無事でよかった」

「あぁ…この人達は…?」

「さぁ、俺も分からない。こんな事起こったの始めてだから…」

 

「君達、ブルーコスモスを知らないのか?」

 

そこにいたのは、あのアロハシャツの男、だがその手にはマシンガンが握られている。

 

「ブルーコスモス…?、それに貴方の…その銃は?」

「ん?あぁ、コレは…」

「隊長ぉーッ!!」

 

突然現れたザフト兵の一人に一夏はギョッとする。

 

「隊長!ご無事ですか?!」

「あぁ、大丈夫だ。そこの彼に助けられたからね」

 

そう言って、アロハシャツの男は被っていた麦わらハットとグラサンを外す。

 

「さっき君は僕が誰か…そう言っていたよね?僕は…アンドリュー・バルトフェルド。ここら辺じゃぁ『砂漠の虎』ってので通ってる」

 

バルトフェルドが浮かべ余裕の笑みに、一夏は身体を強張らせる。


 
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