No.560156

京子誕生日SS1

初音軍さん

誕生日ということでそれに沿った話を簡潔に書いてみました。ちょっとでも二人のドキドキ具合が通じてくれればいいですがw

2013-03-28 18:36:02 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:566   閲覧ユーザー数:527

 

 

 普段あまり一日というのを意識しないで過ごすが今日はまた別である。

仲間達が一斉に私を祝ってくれるかと思い急いでごらく部の入り口を大きく開けた。

 

「たのもー!」

 

 みんなでだらだら過ごす部屋に入ると一気にテンションが上がる予定だった

私の気持ちがストンッという音をしながら落ちていく。そこには結衣が退屈そうに

本を読んで時間を潰している姿しか見なかった。

 

「あ、京子」

「なんで結衣だけなんだよ~」

 

「失礼な、私だけじゃ不満なのか?」

「当たり前じゃん」

 

 あかりやちなつちゃんにも、ちやほやしてもらいたかったのにこれじゃ退屈すぎる。

 

「仕方ない、帰るか」

「あ、じゃあ私も帰るから一緒にいくよ」

 

 私が回れ右をして帰ろうとすると、後ろから結衣が声をかけてきて駆け足で私の

隣を歩く。結衣も私の誕生日のこと忘れているのだろうか。

 

 それっぽい話題をしてこない辺り、ありそうで寂しい。幸せ予定の一日が

一気に苦痛に染まっていく。

 

「そうだ、私買い物あるんだ。京子一緒に来てくれない?」

「えぇ~、なんか今日はそんな気分じゃないんだけど」

 

「好きなの買ってあげるし、好きな料理作ってもいいけど」

「よしまかせろ!」

 

 そんなことで振り向かせられるとは我ながら単純にできていると思っていた。

何だかんだで結衣と一緒にいると安らぐ自分がいるのを感じていた。

材料を選び終わってから結衣は私に好きなのを籠に入れておいてくれと

言った後に少しの間、私の前から離れていった。

 

 こんな機会はそうそうないから私はあまり手出せなかったお菓子などを

籠に入れてみた。美味しいかわからないけど結衣のお金なら失敗しても

怖くはない。

 

 そんなことを呟いたらチョップを首に決めてくる結衣も今はいないから

安心である。

 

「ふふ~ん。ポテチョの納豆味~」

 

 本当に勝手に色々入れてしまってから、大丈夫か不安になってきたが

まだ結衣は帰ってこない。さすがに少し遅いなと心配になってきた所で

小走りで戻ってくると、籠の中を見て驚いていた。

 

「悪い、遅くなっ・・・。なんだよ、この量は!」

「テヘペロッ!」

 

「テヘペロじゃなくて・・・本当にこんなに食べれるのか?」

「任せろ!」

 

「そっか・・・。ならこれでおしまい。これ以上は買わないぞ」

「本当に買ってくれるの!?」

 

 結衣とは思えないほど太っ腹である。

 

「なに、欲しくないの?」

「いえ、欲しいです。結衣さまぁぁぁぁ」

 

「拝むな!」

 

 苦笑しながら手を合わせて擦る私にツッコミを入れると、さっさとレジまで

持っていって清算した。レジ袋に買ったものを入れながら結衣の顔を窺うと

どこか嬉しそうにしていた。何かいいことがあるのだろうか。

 

「今日泊まりにくるだろ?」

「そりゃ、これだけ買えばね」

 

「服貸すから真っ直ぐうちに来ない?」

「いいよ!」

 

 好条件に私は即座に決めて結衣の家についてから家に連絡をした。

すぐにOKの言葉をもらったので堂々と結衣の家に泊まれることになった。

まぁ、いつも泊まってるからわかりきった結果なのだけれど。

 

 結衣に言われて料理の手伝いをしてはいたがいつもより豪華そうな材料に

興味が強くなる私は何を作るかを聞くと、私の好きなものばかりで楽しみが

一層増した。

 

 出来上がった料理を運び、いただきますと言ってから最近の同人の進行具合とか

ミラクるんの話とかをほぼ一方的に結衣に話していると軽くあしらういつもの光景。

だけど食事が一段落ついて結衣が食器を流し台に持っていって私はテレビを

眺めていた直後に異変が起こった。

 

 異変とはいっても、いつもと違う、すごくびっくりするくらいのものだけど。

 

「京子、誕生日おめでとう」

「結衣!?」

 

 食器の片付けをしてると思っていた結衣がケーキが入ってる箱を持ちながら

私の誕生日を祝う言葉を言う。すっかり忘れていたのかと思っていたから

胸から湧き上がるような感覚がして、嬉しかった。

 

「忘れてるかと思ってたよ」

「そんなわけないだろ…こんなことで泣くなよ」

 

「泣くわけないだろ!」

 

 でも、じわっとした感覚があるから完全に否定できなくなる。

私は結衣に見られないように背を向けて指で目に溜まる水を掬って弾いた。

 

「本当はあかり達にも祝ってほしかったんだけど、私がお願いして後日

祝ってもらうようにしたんだよ」

「お前の仕業かよ!」

 

 おかしいと思っていたけど本気で忘れられていたら悲しいから触れなかったのに。

私はわざと怒ったような顔をして結衣に迫ると両手を前に出してまぁまぁと言う結衣。

 

「私が京子とこの日を過ごしたかったから…後黙ってたのは悪かったよ。

サプライズのつもりだったんだ」

「そっか」

 

 嬉しい表情を見せたくなくて結衣の胸に頭を当てて体重をかける。

そして背後に手を回して結衣にくっついた。

 

 一瞬戸惑う様子を見せるも、結衣も同じように私に抱きついてきた。

彼女の胸の音が聞こえてくるようだ…どくんどくんと。

 

 私も同じような音を出していることだろう。やけに二人の吐く息が

熱く感じるんだ。あまりに心地の良いその状況に私は離れたくない気持ちが強くなる。

 

 それからどっちかがアクションを起こして照れながら離れ、一緒にお風呂に

入った。ふざけてお湯をかけたり、他愛の無いおしゃべりをしてはいたが

私達はどこかお互いを意識していた。

 

 いつもより、結衣が愛おしく感じた。

 

 時間になって寝る時に布団を並べて寝るが寂しく感じた私は結衣の布団に

もぐりこんだ。

 

「ちょっと、京子…」

「寒いんだよ…」

 

「しょうがないな~」

 

 背中にしがみつくように抱きつく私を一度離して正面を向いてキスをしそうに

なるほど距離が縮まる私達。

 

 結衣は苦笑しながら愛おしい眼差しを私に向けてくる。

私も同じような眼差しで彼女を見ていた。

 

 形容しようがない、他には好きという気持ちしかわかない。そんな単純な思考が

延々と眠くなるまで続いた。

 

 何を話しているかも覚えていないほど、一緒にいること自体が幸せだった。

今日という日を送れて私は幸せ者だ。

 

 そして、翌日もあかりとちなつちゃんにお祝いされて嬉しかったけれど、

結衣と一緒に過ごした濃厚な一日とはまた違った嬉しさだった。

みんなと過ごすのも楽しいけど、たまには好きな人と一緒に静かに過ごすのも

悪くはないと思えたんだ。

 

お終い

 

 


 
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