あのドタバタしたプールの一件から二日ほど時間が経ち、ここは塚本天満のお宅
東方仗助と虹村億泰は無事に彼女達から軟派男たちを退け、その仕事の対価にがんばったお礼としてこうして彼女の家に御呼ばれしたのだ、いわゆるお泊り会というやつである
仗助と億泰は硬派だと皆わかっているために、その話が挙がった時は嫌悪感を出す人は周防達の中で誰一人としていなかった、ついでに花井を呼ぼうかという話も上がったがあいつはダメだと周防からストップが掛かったその理由は…
「姉さん…皆さんのお茶持ってきたよ…」
「おー!!八雲~ありがとう~」
この娘、塚本天満の妹、矢神高校きっての美人で男子からの人気ナンバーワンの女子生徒塚本八雲がいるからだ、花井はなんでもこの八雲の事が好きすぎてストーカーまがいの馬鹿と学校でも評判であるという
まぁ、呼ぶことができないのもそれならわかる、というよりむしろ危ないいろいろと
そんな、天満宅にお邪魔になっている億泰と仗助だが周防達がガールズトークがあるとかなんとかで現在一階に男二人だけで残されていた、まるで隔離みたいな扱いである
それでも仗助は天満の家に御呼ばれしたことであるために気持ちは有頂天、そんな細かいことは一切気にしたりはしない、むしろ杜王町では億泰と男二人だけで絡むことが多かったためにこっちの方が気持ち的に楽である
「しっかし~美人だったよなァ~八雲ちゃん…ホントに姉妹かよォ、なあ仗助?」
「ん~…そうかー?俺はどっちも可愛いと思うけどな~、大体人は見かけじゃあねぇだろ中身だよ、な・か・み! その点天満ちゃんは別格だーッ!!」
どうだこのやろうと言った具合に天満と八雲を見比べる億泰に自分の持論を話し、どこかドヤ顔の仗助、まぁ、彼の場合はちょっと感性がずれているのだろう、仗助を生んだのにも関わらず、未だに美人の母である東方朋子、そして、あの美しい美貌と圧倒的にグラマラスな物理教師で従姉の同居人である刑部絃子と一緒に時間を過ごしていればそれはずれてしまうのも仕方ないと頷ける
だが、それにしても古風といえる物腰と大和撫子を連想させられる塚本八雲の美貌とそのおしとやかさは億泰的に見たら別格である、人気ナンバーワンといわれるのも何となく頷ける気がした
そんな、二人はとりあえずそれとは別に新たに手に入ったスタンド使いの情報を周防達が二階で駄弁っているうちに互いに交換してしまうことにした、彼女たちをむやみにこちら側に引き込むのはあまり得策ではない、変に危険を招くことになる
こういう話はこういった身内だけで余裕があるときにするのに限るのだ、
とりあえず仗助は同じクラスの冬木武一が自分たちと同じスタンド使いであること、そして、親父の写っている謎の写真というのが現在、あのスタンド使いを増やす弓と矢を所持していることを億泰に伝えた
億泰は神妙な面持ちで仗助の話を聞いていた、その表情はいつもおちゃらけているそれではなく、なにか複雑な感情が込められたものである。
「…ようやくだが仗助、これで少しは進展したなァ~」
「…あぁ、後は弓と矢を持ってる写真を確保さえできれば、なんとかなるかもしれね~ッ!」
億泰の言葉を肯定するように頷く仗助、早く例の女性失踪事件の犯人を捕まえなくては余計な犠牲者を出してしまうだろう、なるべく早急に弓と矢は見つけなければ問題事が増える一方だ、スタンドを悪用する輩が出てきてしまうかもしれない
ふと、その時だった、二人はピタリと話すのをやめて互いに目を合わせアイコンタクトをする
背後からなにやら奇妙な気配を感じる、誰かが今まさに自分たちが会話を交わしているところに居合わせたのだろう、新手のスタンド使いか何かもしれない…
「…誰だッ!!」
すぐさま、仗助、億泰の両者ともスタンドを展開させて気配を感じ取った背後にへと瞬時に振り返る、射程圏内を計算して億泰のザ・ハンドがいつでも空間を削り取りいけるような臨戦態勢までとっている
「あ、あのその…すいません…」
後ろを振り返り声を出す仗助の言葉に身をビクリとさせる人影、
その反応と言葉で仗助たちはスタンドを仕舞った、どうやら先走った自分たちの勘違いだったらしい、彼らの視線の先には驚いたようにお茶が乗ったお盆を持ったまま硬直する塚本八雲の姿があった
さしずめ、気を利かせて差し入れにお茶でもと持ってきたのだろう、仗助たちはそれを理解したのである
「すまねぇなァ~妹さん気を使わせちまって…」
「いえ…大丈夫です…それでそのさっきのあれは…」
笑顔でお礼を述べる仗助、だがしかし、次に口を開いたお茶の乗っているお盆を持っている塚本八雲のその言葉に仗助と億泰の顔つきが一気に変わった
そう、おかしいのだ、普通に考えて彼女の言動からして見えるはずのないものが見えている、自分たちの出したスタンドという存在が塚本八雲には見えていたというのだ、一般人ではその存在自体知覚できないというのに…
仗助は彼女に確認するかのように、もう一度、クレイジーDを八雲の前で発現させて自分のスタンドが見えているのか訪ねる
「…え、妹さん、こいつが見えてるのか…」
「…え、あ、はい…、なんだかすごい大きな人が…」
仗助の言葉にはっきりした口調で応える八雲、この時点で彼女が一般人である彼女の特異性が億泰、仗助の中で確定された、そう見えているのだ塚本八雲には彼らのスタンドというものの存在が知覚できている
こいつはヤベぇ、何か知らんがこの子はもしかすると新手のスタンド使いというやつではないだろうか
仗助と億泰は先ほどとは違い警戒心を高めていた、もしも彼女がスタンド使いだというのならいつのまにか自分たちに対するスタンド攻撃を既にされている可能性がある、塚本天満の妹とはいえ敵でないという確証はないのだ
仗助はスッと立ち上がり、改めて確認するように八雲に近づき彼女の肩を強く掴んで真っ直ぐな瞳を向け、再度、彼女に確認する
「それじゃあ妹さん、アンタもスタンド使いってぇ事じゃあ…」
「あ、あのえっと…」
「八雲~、新しい和菓子欲しくなっちゃったから降りてきちゃった…」
しかしながら、不運か神様の悪戯か…仗助が八雲の肩を掴み、問いただすそのタイミングは本当に悪かったのだろう、丁度そのとき和菓子を取りに二階から降りてきた天満は仗助に肩を掴まれ見つめあっている二人の姿を偶然にも目撃してしまった
これはどうみてもあれである、仗助と八雲がなにやら見つめあって、逢引きをしているような…まぁこれは天満による勝手な視点の違いによる解釈のものであるのだが、少なくても彼女にはそう見えた
「…八雲、仗助君…これは…」
「や、違うんだよ~ッ塚本!仗助はただ…」
仗助のこの行動に対して仲介には入り慌てたように弁解を述べる億泰、
だが、仗助はそんな億泰の言葉よりもこの塚本八雲の事が優先事項だったのだろう、天満の姿が見えていなかった仗助は次にとんでもないことを口走っていた
「妹さん…ちょっと付き合ってくれ…」
「え…?あの、それってどういう」
「言葉通りッスよ…とりあえずこいつは人目につかないとこで二人で話さないとなァ~…ってぇ!!」
急に言葉に詰まり、何かに気付いた様にいきなり声を上げる仗助、先ほどまで真剣な表情で八雲に語りかけていた彼の視線の先には彼女の姉、塚本天満の姿があった
億泰は馬鹿野郎と呟きながら問題の種である仗助のそのテンパりようを見て頭痛のする頭を思わず抑えた、スタンドの話が聞かれていたら一体どうするのかと、しかもその慌てようじゃあ彼女への弁解が余計にやっかいなものになると言わざる得ない
だが、しかし彼女はそんなスタンドとかそういった次元の話ではないとんでもない勘違いをしていた…、それはもう盛大に、彼女には仗助が自分の妹に勢いよく告白しているように見えたのだ、どうしてそうなるのかは全く不明であるが…
「…ま、まさか、じょ、仗助君が八雲の事が好きだったなんて…」
「…へぇ~なんだなんだぁ~!なんだか知らない間にかおもしろいことになってんなぁ」
「「…へ?なんだそれ?」」
ものの見事に天満の言葉に眼をまん丸くしてシンクロして声を上げる仗助と億泰の二人
しかも、その誤解に追い打ちをかけるように二階で話していた筈の周防たちまで一階に降りてきてそれはもう完全にカオスな空間と化していた、おまけに変な誤解を降りてきた彼女達はそのまま解釈してしまっている
そして、言葉を溢した仗助は改めて自分が立たされている状況と天満が今の自分の状態を見て何についてそういった言葉を言ったのか少しだけ考えることにした
確か、自分はさっき…塚本八雲にちょっとだけ付き合ってほしいと言った、そんでもって人目につかないとこで(スタンドについての)話をしようとまで言った…と思う
それらから綺麗にまとめて導き出される誤解の答えは、『八雲、付き合ってくれ…人目のないところで二人っきりで話がしたい』という風に彼女たちは勝手に暴走してその結論に至ったのであろう
仗助の顔色がドンドンと青ざめてゆく、自分は好きな人の前で他の女の子に告白したという事になる、しかもよりによって彼女の妹にだ、こいつは思った以上にヤバい状況だと仗助は悟った
仗助は急いでとりあえずなんでそうなったしと言う事しかできない天満の複雑な誤解を解こうとする
「違うッスよ~!これはそうじゃあないんッス」
しかしながら、そんな弁解もあまり意味をなさない、挙句の果てには、天満と周防からな照れなくてもいいのにーと茶化され言われる始末である、なんだこれは…
最後の頼みの綱という事で億泰にアイコンタクトを送る仗助、しかいながら、そこは億泰、仗助は彼の事を馬鹿であるという認識をすっかりと忘れていた
億泰は何だか煽るような口調で訳の分からないことを言い始める
「…仗助…童貞力を限界まで高めろッ!!」
「…この状況でお前は一体何言ってやがんだ?」
億泰の言葉に首を傾げる仗助、それはそうだ、そもそも童貞力ってなんだよと言いたい、しかも下ネタじゃあねーかと丁寧な突っ込みをプラスして、案の定、童貞と言う言葉を聞いたとたんに周防達の空気がフリーズした、…どうしてくれる
だいたい、こんなところで何をカミングアウトしているのだ、この馬鹿は、余計に気まずくなったじゃあねーか、と仗助は場の空気を更に意味不明にした億泰に頭を抱えた
これでは埒があかん! 仗助はとりあえず優先的に話がある八雲の右腕を力強く握りしめた
そうして、天満からまるで背を向けて逃げるように塚本宅から飛び出す仗助、その隣にはなされるがままの八雲、彼女は急な仗助の行動に戸惑いつつも、察しのいい彼女は先ほどの仗助が言っていた事柄を思い出しとりあえず抵抗はしなかった
それを見ていた周防、天満は面白げにその背中を見送り、晶は先ほど空気を凍らせた億泰の後頭部に強烈な一打をおみまいし彼を気絶させながら、興味深そうな表情を浮かべていた
「おいおい! 塚本!仗助の奴、八雲ちゃん連れて行っちまったぞ!」
「愛の逃避行って奴ね、仗助君と八雲って案外やる~」
「それにしても追わなくて大丈夫なの?」
八雲が連れられて行ったというのに能天気な言葉を交わす天満と周防に突っ込みを入れる晶、しかしながら、天満は何事もないように晶の返事に二言で応える
姉としてそれでいいのかと思われる返事だが、別に仗助が八雲を連れ出したことに嫌悪感はないようであった
「まぁ、仗助君だしね…そこまで心配はいらないと思うよ」
「確かになー、アイツ変に硬派なとこあるから心配いらねーとは思うけど」
「童貞だしね」
容赦のない晶の言葉で顔を真っ赤にする二人、年頃の女の子がそうホイホイと使っていい言葉ではないはずなのだが、いつもポーカーフェイスの彼女はこの際、気にしていないような口ぶりであった
しかしながら、仗助の謎の信頼感、これが所謂、紳士な貴族であるジョースター家の血を引く仗助によるものであるのだろうが流石と言わざる得ないだろう、(恐らく、億泰の意味の分からないカミングアウトのせいでもあるのだろうが…)
そんなこんなで塚本宅から逃げ出した仗助と八雲の二人について三人が下で騒いでいると二階の階段から下の騒ぎが気になったのか待ちくたびれた沢近が降りてきた
「おっそーい!!、下でさっきから何、騒いでんのアンタ達!」
「おう、沢近か!!実はな…」
そういって、お前が居ない間に面白そうな事が起きてるぞといった表情を浮かべる周防、そんな周防は言葉を溜めて、実に愉快そうな沢近の反応を期待して言葉を紡ぐ
「仗助が八雲ちゃん連れて逃げた」
「…はぁ?」
とりあえず、意味の分からない状況を説明をされたところで思わず声を上げる沢近、彼女はなぜそうなってしまったのかという経緯を詳しく目撃者である周防達から聞き出し始める
そうして、よりにもよって誤解であるその話を周防と天満からすべて聞き終えた沢近は仗助の意外な一面について、少し考えてみることにした、別に仗助の事を気にしているわけではないがなんというか連れ出すといった意外に積極的な面もあるのだなと…
(あいつが…天満の妹の事をねぇ、なんか意外…)
転入初日からなんだか破天荒な奴だと思っていたが、まさかここまでとは思ってみなかった、というよりなんで自分はあの仗助についてこんなに考えているんだろう
(まぁ、なるようになるわね、もう考えるのめんどくさいし)
いい加減な事を心の中で溢す沢近、しかし、誤解と言うのは一度膨らむと面倒なものである、
ここにはいない仗助はそんなことを一切知ることなく、後々にこういったいざこざは大きな波紋を呼ぶことを知る由もなかった
………TO BE CONTINUED
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市杜王町に住む東方仗助、虹村億泰はある日を境に空条承太郎からある高校に転入し、スタンド使いの捜査を頼まれることになる、杜王町から離れての高校生活に不安を抱える仗助はそこで一つの出会いを果たしてしまった、そうそれはスタンド使い同士が引き合うような運命のように…
ラブコメにジョジョという無茶な設定ではありますが楽しんでいただけたらなとおもいます