第9話 アヴニールのシャチョさんとポンコツ魔法使い
「ねー!なんで!?アヴニールは悪い会社だって分かったのになんでそこの仕事なんかするのー?」
俺達はシアンの母の定食屋を後にして、待ち合わせ相手:アヴニールのお偉いさんこと依頼主に指定された森の中へと来ていた。
いきなり不満をぶつけるのが最近のねぷの行動だ。
「理想だけじゃ食べていけないでしょ?
ご飯も仕事も好き嫌いしてたら立派な大人になれないってコト。しゃんとして、依頼主が来たわ」
と、俺も今朝方こんな風に返されたのだ。
心境は俺もねぷと同じで手伝うのはいやだが、飯の為だから仕方ないと諦めた。
ノワールは結構簡単に承諾していた。
「.....」
無言で森中から現れたのは4、50歳ぐらいのおっさん。
このおっさん、なんか雰囲気がいやだな...
「はじめまして。アヴニールのサンジュさん、です?
モンスターをやっつけにきたコンパとねぷねぷとあいちゃんとノワールさんとソウジさんです!」
「....まぁ、社の者が頼んだなら仕方がない。
私が市外のプラントを視察する間に周辺のモンスターを一掃してもらいたい」
「くれぐれも。モンスターを逃して施設に被害を与えるような真似だけはしてくれるな。
...では、後は任せる」
サンジュという男は颯爽とこの場を後にした。
「あの態度、人にモノを頼むものじゃないわよ」
「だな。あれは普通にむかつく」
「なんか、かんじ悪いです....
きっとシアンさんの時と同じで、子供だと思ってあなどってるです。失礼しちゃうです!」
コンパが頬を膨らまし怒っている。
「あれはどちらかというとそういう類の物じゃないんじゃないか?」
「私たちを甘く見てる以外にも何かありそうね」
俺とノワールはそれ以外の可能性を探っていた。
アイエフは「そんな難しいことじゃないわよ」と少しだけ笑いながらそう言う。
「まーこんぱとねぷ子が一緒じゃ、そう見られるのも仕方ないかもね」
「....あいちゃんだって人のこと言える身長と胸じゃないです....」
その瞬間アイエフの笑顔が究極に引きついたのは言うまでもない。
「終わりか...」
最後に現れたモンスターは今までは少し違い厄介だったが、新たに加わったノワールとねぷの連携によりあっさりやられてしまった。
今回の戦闘は非常にフォローされた部分が多かった。
で、終わったころにはみんながみんな俺のフォローで非常に疲れていた。
いや、今日に限って急に腹痛を起こしてしまったのは...俺のせいではないぞ?
「そうじさんって....まるで...あ!ま、魔法使いさんですぅ!!」
コンパが急に俺へのフォローのつもりか?呼び名らしきモノを付けてくれた。
魔法使い....確かに魔力で武器を作り出すからそうなのかな...
すると、ねぷが半眼で俺のほうを指差して
「でもさ、どちらかというとポンコツ魔法使いの方が似合ってない?」
「ごふっ!?」
精神ダメージが大きすぎたのか、何故か俺の腹に鳩尾らしき衝撃が走った。
腹を押さえよろよろしていると、今回の仕事の依頼主がやってきた。
「視察は終了した。...モンスターの駆除も終わったか。
この辺りのモンスターは全部倒したんだろうな?」
「大丈夫っ!ボスっぽいのも倒したからしばらくは怖がって近づいて来ないよ!!」
ねぷが堂々と仁王立ちしてそう告げる。
サンジュは相変わらず険しい顔で少し考えた後、口を開いた。
「そうか....だが、もしモンスターが施設に傷一つつけるようなことがあれば...今後一切、
君達に仕事は頼まん」
その言葉を聞いてか、こんぱが慌てた口調で
「そ、そんな大げさですぅ。壊れても、すぐに直せばすむじゃないですか...」
そういった瞬間、サンジュがより表情を険しくさせ怒りをはらんだ声を発してきた。
「....何も分かっておらんな。
対して役に立たん人間の分際で機会を軽んじるなど、おこがましい.....!!」
「人に機械ほどの精密さがあるか?人に機械ほどの正確さがあるか?」
そんなサンジュの態度にコンパが目尻に滴を浮かべ
「そ、そんなこと言われても、わかんないですぅ。わたしは機械じゃ、ないですからぁ」
声が震え始めてしまった。
そんなコンパを見てか、俺以外のパーティーがサンジュに鋭い視線を送る。
サンジュはそれでも構わず話を続ける。
「そうだな。君は機械ではなく不完全な人間だ。
いつどこで、ミスをするか分からない。だが私は人間だからと言ってミスを許すつもりはない」
「ミスをして当たり前。それが人間なら私は迷わず機械に仕事を頼むだろう」
「君達にも。次から我が社の仕事を受ける際には、
それくらいの危機感を持って、やってもらいたいものだな...」
サンジュは表情を変えることなく、去っていった。
コンパは我慢していたのか、嗚咽を漏らしながら俺に抱きついてくる。
「な、なな、なんでわたし...あんなにおこあえたで...です...ですぅ...すん。
わたし、なにか、わるいこと、いったですか?」
「泣くな泣くな。お前は何も悪くないんだから」
コンパを宥めながら頭を優しく撫でる。
「っていうか大人げないわね。...女の子をおどすなんて......!!」
コンパは俺の服で涙を拭い、しかし身体は離さずくっついたままでアイエフに向かって言う。
「わ、わたしが....機械をバカにしたとか思われちゃったんです、きっと」
ノワールも表情を険しくさせたままサンジュの去っていった方向を見て
「機械をバカにされたっていうか、人間をバカにしてるって感じだわ、アレは!」
思いっきり人のことを「アレ」と言っていた。
ねぷは落ち着いているなと思って見てみると、肩をぷるぷるとさせ
「わたし今からサンジュに倒しに行くよ!!わたしのコンパを泣かせた代償は大きいよ!!!」
「ちょい待ち!って、変身するな!!」
すぐに変身したネプテューヌを止めようと彼女の腕を引張ったところ━━━━あーら、不思議。
いつの間にかクール系美少女と癒し系美少女が俺の腕の中に収まっているではありませんか!
まあ...今のは不可抗力と言い訳させてください。
さすがにこの二人の胸の存在感は━━━━俺の理性が吹き飛ぶ。
「す、すまん」
とりあえず、二人から離れ俺は
「先に宿に帰っとく!!!」
恥ずかしさのあまりに全力でその場をあとにするのであった。
その後二時間以上かけて到着した宿でノワールとアイエフに説教をされましたとさ。
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お仕事を頼まれた一行は食堂から直行でクライアントの元へ向かった。だが、そこにいたのは悪徳?企業アヴニールの社長であった!
そのとき、ソウジはッ!!