No.557337 少年達の挽歌 蜂起編 第五話2013-03-20 21:43:14 投稿 / 全3ページ 総閲覧数:691 閲覧ユーザー数:649 |
第五話 学園攻防戦
五十嵐裕也少佐は疲れでIS学園の制服を着たまま寝ていた。
すると外から突然爆発音が聞こえ、飛び起きると即座にクローゼットを開ける。
そこには9mm拳銃ことグロック17と十七式7.56mm狙撃銃その他弾薬や装備があった。
すぐに制服の上から装備を次々と装着し、グロック17に弾倉を差し込んでスライドを引いて装填してホルスターに仕舞い、次に十七式狙撃銃のレールに暗視装置を取り付け、最後に銃弾を装填。
この間にも外から銃声が増えて、本格的な銃撃戦が始まった事に気付いた。
十七式狙撃銃を持ち廊下に出ると、銃声に気付いた生徒達が廊下に出ていた。
彼女達は五十嵐の装備を見て、不安に駆られた。
「すぐにシェルターに向かえ!各クラス長並びに班長は誘導しろ!」
指示を出すと生徒達は動き出し、俺はすぐに織斑先生のいる職員室に走る。
職員室に入ると教師達が外を見て何が起きているのか探ろうとしていた。
「五十嵐、また襲撃か?」
彼の姿に気付いた織斑先生が問いかけたが首を振って答えた。
「わかりません、ですが何かが起きているのはわかります。すぐに生徒の避難を!」
「分かった。」
五十嵐が出て行こうとすると先生は焦って呼び止める。
「お前は何処に行く!?」
「これから学園の警備に当たります。」
「何を言っている、二日前に大怪我したばかりだろう。」
確かに臨海学校襲撃事件の時に全身に怪我を負ったばかりだった。
「大丈夫です、大した事ありません。では生徒の避難を!」
「おい!」
五十嵐は職員室を飛び出すとすぐに正門に走る。
途中、無線機に繋がっているイヤホンマイクから強襲中隊長市村大佐の声が聞こえた。
《市村だ!敵は警察署を制圧して、駐屯地に殺到している!》
「こちら五十嵐、敵は?」
《わからん!だが敵は戦いに手馴れた奴らだ!》
するとイヤホンから銃声が聞こえ、途絶した。
「くそ!」
五十嵐は正門に着くと警備詰所に入った。
詰所やその周辺には襲撃を警戒して既に土嚢を積んだ陣地を作り、一台の十五式装輪装甲車が配置されていた。
「少佐!」
中に入ると当直部隊である警備中隊第二小隊の小隊長村田少尉が敬礼していた。
俺は彼や部下達に説明した。
「現在IS学園島全域で武装勢力が重要施設を攻撃してくる。じきにここにも来るはずだ!」
すると外から何かが風を切る音が聞こえ、段々と近づいていることに気付いた。
「伏せろ!」
そう言って伏せようとした時に砲弾が着弾して、地面を振るわせた。
左腕に大きなガラス片が突き刺さり、すぐに引き抜くと血が溢れ出した。
しかし怪我の事はどうでもよくなり、頭は敵の武装のことを考えていた。
砲撃音からどう考えても迫撃砲だとわかるが、この国にある犯罪組織が迫撃砲を持っている事は聞いた事が無くさらにフランス軍特殊部隊だとしたら手間が掛かりすぎている。
砲弾が着弾するたびに破片が室内や外にいる兵士に降り注ぐ中、五十嵐は傍にいた兵士に命令した。
「すぐに自動迎撃警備システムを作動させろ!フルオートだ!」
自動迎撃システムとは学園の周囲にある森の中に多数の無人銃座があり、フルオートモードだとセンサーが探知した物体なら何でも銃撃するシステムだ。
そのためこれが作動すると警報が島内に全域に通達され、学園内からは一歩も出れなくなるがこのような時には頼りになる装置だった。
すぐに専用のタブレットを取り出して、兵士は暗証番号を入力して生体認証を行う。
すると画面に拒否されたことが表示され、兵士が何度やっても出来なかった。
「少佐!自動迎撃警備システムが作動できません!」
「何が起きているんだ!くそ!」
すると砲撃音が途絶え、体を起こし十七式狙撃銃を構え動ける隊員と共に外に出る。
雨が五十嵐の体を打つ中、彼は周りの惨状を目のあたりにした。
所々に着弾で出来た窪みがあり、詰所は破片と爆風でボロボロになっていた。
「突撃!」
すると森の方から大声が聞こえると、森から一斉に三十人ぐらいの武装した人が飛び出してきた。
すぐに安全装置を外して三点バーストに切り替えると片っ端から銃撃して行く。
二十発入り弾倉はすぐになくなり、装填する間に刀を持った男に一気に間を詰めた。
顔は暗闇で見えなかったが、敵は日本語を使っていることに気付いた。
振り下げてきた刀を十七式狙撃銃で受け止めると、男は銃を蹴り上げた。
腰にあるグロック17を引き抜く暇もなく体を横に転がして突き刺しを回避して立ち上がる。
相手の攻撃を回避しながらどのように倒すか考えるが、思いつかなかった。
すると刀を一気に振りかざして袈裟切りをしてきた。
身を反らせるが刃は制服を薄く切り、左胸から右脇腹にかけて斬られ傷口から出血する。
その瞬間に一気に突っ込み男の体を突き飛ばすと一気に乗りかかり首を絞める。
すると相手は抵抗してもがき苦しむ。
だが敵の仲間が俺を銃撃して、銃弾が右肩を貫き首を絞めるのをやめると振り返ってホルスターから出したグロック17で9mm拳銃弾を銃撃した男の眉間に二発撃ち込んだ。
その時に首を絞められていた男は近くに転がっていたコンクリート片を掴み、五十嵐の側頭部を殴りつけた。
衝撃で地面に倒された五十嵐は頭から血を流して意識が朦朧としていた。
そこを男が日本刀を拾い、斬りつけようとした時兵士が十七式小銃で男の手を吹き飛ばした。
男は吹き飛ばされた手を見たあと周りを見て、仲間に命じた。
「総員撤収!」
敵は森から銃撃する分隊支援火器の援護の下、森に消えて行った。
すぐに村田少尉が駆けつけた。
「少佐!大丈夫ですか!」
少尉が意識を確認している間に二人の隊員が建物に少佐を運び込み、衛生兵が手当てをする。
消毒液を傷口にぶっかけると包帯で傷口を防ぐ。
五十嵐は治療が終わったと見ると立ち上がる。
「少尉、敵はまた攻勢をかけるはずだ。だがここに来るのはおとりのはずだ。俺たちをここで引きとめ何処からか抜け道を使ってくるだろう。俺はシェルターの方を見に行きたい、何名か貸してくれ。」
「了解しました!」
五人が呼ばれるとそいつ等と共にシェルターの方に歩いた。
幸い上半身は怪我をしていたが、足は怪我をしていないので動けた。
数分間歩くと突然殺気とこちらを見られていると感じた。
すると前を歩いていた兵士が頭を撃ち抜かれ脳漿と血がレンガが敷かれた道にばら撒かれた。
森の中から狙撃銃特有の発砲音が聞こえた。
「散開!狙撃だ!」
俺は撃たれた兵士の体を盾にして、単発に切り替えると狙撃スコープを覗く。
すると発砲音と共にマズルフラッシュが光ったのが見えた。
そこに銃口を向け一発発射すると森の中から木々が擦る音と地面に落ちる音が聞こえた。
その時、五十嵐は学園周辺の地形を思い出して敵の伏兵がどのように向かっているのか予測した。
「ついて来い!森の中に入るぞ!」
四名の兵士と共に森の中に入ると土は雨でぬかるみ踏むと少し足が取られた。
それと空から降る雨を見て笑みを浮かべた。
「これなら足音は聞かれないな、急ぐぞ!」
「了解!」
小野寺は二十人の隊員と共に林の中、学園周辺に張られたフェンスに沿って移動していた。
雨で足元がぬかるんで移動するのに苦労する。
すると先頭にいた兵士が止まるようにハンドサインを送り、全員が一斉に身を屈めた。
フェンスの向こうには学園の緊急時に使われるシェルターの入口が見え、数人の警備兵が周辺に土嚢を積んで防衛体制を固めていた。
部下に命じてフェンスを切るように命じる。
一人の兵士がペンチを取り出し、フェンスを切り始めた時だった。
暗闇から一発の銃弾が高速でその兵士の頭を貫いた。
銃声が周囲に響きわたり、警備兵もこちらに気付いて銃撃をしてきた。
「応戦しろ!」
すぐに小野寺は八九式小銃を構え、敵に三発撃ち込むと木の陰に隠れる。
敵は応戦して銃弾が一発木の幹に当たり、木片が周囲に散る。
「くそ!」
五十嵐は外すと暗視装置を覗き次の目標を見つけ出し狙撃する。
木の陰から出て来た敵兵の右腕に撃ち込み、倒れたところで頭を吹き飛ばす。
次に木の陰からはみ出した足を狙撃して無力化させる。
「こいつら戦争経験者か・・・つらいぜ。」
五十嵐は一旦木の陰に隠れ、空になった弾倉を捨て新たな弾倉を差込みボルトを引いて装填する。
狙撃位置を特定され敵の汎用機関銃が集中的に銃撃してくる。
一気に飛び出すと近く木の陰に隠れる。
さっきまでいた木は銃撃に耐えられず折れていた。
陰から少し出て十七式狙撃銃を構え、汎用機関銃の射手を探し出して狙撃した。
小野寺達は数では圧倒していたが、五十嵐の狙撃に抑えられ学園側からも銃撃されて不利な状態にいた。
「一旦引いて態勢を立て直す!」
「了解!」
小野寺はそう命じると味方の援護射撃の中、学園から部下たちと共に撤退した。
五十嵐は敵が撤退したのが分かると部下に深追いしないように命じて、シェルターに向かった。
シャルロット・デュノアは織斑一夏と共にシェルター内の職員室に入った。
二人は外で何が起き、それがISの仕業なのか確かめに来たのであった。
「織斑先生、敵は誰なんですか?ISだったら俺が・・・」
一夏が織斑先生に聞くと先生は言葉を遮って答えた。
「わからん、だがISではないのは確かだ。安心しろ、今外では五十嵐達が守ってくれている。」
それを聞いたシャルロットは驚いて言った。
「裕也くんは外にいるんですか!?」
「ああ、私が引き止めようとしたが走って行ってしまった。」
すると部屋の外から教員の声が聞こえた。
「君、大丈夫かね!?」
「問題ありません。」
教員に対して答えた声の主が五十嵐だと気付いたシャルロットは無事だと思い喜んで飛び出した。
だがそこにいた五十嵐の姿を見て絶句した。
IS学園の白い制服は上半身が切られボロボロになり、頭や腕それに臨海学校で負った傷から出血して白い制服は彼の鮮血で染まっていた。
五十嵐はシャルロットの横を通り過ぎ、職員室に入る。
「「五十嵐!?」」
彼の姿を見た織斑先生と一夏は同時に声を出した。
「五十嵐大丈夫なのか?」
「すぐに医師を呼べ!」
二人が心配して声を掛け、医師を呼ぶと彼は大声で叫ぶように言った。
「大丈夫です!作戦行動に支障はありません!」
職員室は彼の声で静かになった。
五十嵐は周囲を見渡すと報告した。
「現在敵の攻撃を防いでいます。敵は同じ日本人だと思われ、ISの使用は確認されませんでした。部下からの報告では学園島全域で敵は国の施設を片っ端に襲撃して防衛体制を固めています。」
「・・・増援の有無は?」
学園長が質問する。
「知っている限りでは習志野の第一空挺師団の一個中隊が学園への降下、また機甲兵力を海底トンネルから送り込み、空から戦闘ヘリと戦闘機が上空哨戒、さらに周辺海域に横須賀の第一戦隊が警備に当たります。」
「相当な兵力だな。」
「はい、ここは日本の象徴でもありますから。では任務に戻ります。」
彼が振り返ると一夏が叫んだ。
「おい!まだ戦うつもりなのか、そんな体で?」
「軍人だからな。」
「軍人だからなんだ?死んだらどうするんだ?お前の事を思ってる人を残していくのか。たとえばシャ・・・。」
そこまで一夏が言うと五十嵐の言葉が遮った。
「俺は国の為に戦っているだけだ、国の為に死ぬのなら構わない。第一ここに入学したのも俺の意思ではなく国の命令で来ただけだ。それに俺みたいな人殺しにお前や普通の人と同じ人生は歩めない、あるのは死のみだ。」
そう言うと五十嵐は部屋を出て、シェルターから出ようと歩く。
すると右足に床に座り込んだシャルロットが抱きついて、泣きながら引き止めようとした。
制服に彼の血が付くが気にしなかった。
「裕也・・・もういいよ。増援が来るなら彼らに任して・・・ね、もう戦わないで私の為に。」
五十嵐は彼女の言葉に耳を貸さず、足に力を入れてゆっくりと彼女の腕から足を引っ張り出した。
「俺は戦わなくてはいけない、それが義務だ。」
彼はシェルターを出ると部下を率いて行った。
そして数分後に床に座り込んだシャルロットの耳に銃声が微かに届いた。
Tweet |
|
|
1
|
0
|
追加するフォルダを選択
日韓戦争から四ヶ月、小野寺達“臨時兵”は自分達の置かれた状態に不満を持っていた。
冷遇する政府、周囲からの冷たい目、毎日のように見る戦場の夢が彼らを待っていた。
だがある士官の発案で世界に自分達の存在を知らしめ、対等な立場を得る方法が発案された。彼らは人生の後輩達に同じ経験させない為にもこの作戦に参加して、蜂起した。