No.556125

真恋姫†夢想 弓史に一生 第七章 第五話 

kikkomanさん

どうも、作者のkikkomanです。

投稿が遅れてしまってすいませんでした。

ちょっと大人の付き合いがありまして………帰ってきたのが朝だったんです……。

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2013-03-17 13:38:40 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:1856   閲覧ユーザー数:1702

~聖side~

 

 

 

「にゃはは~……お兄ちゃんは強かったのだ~…。」

 

「そう言う鈴々も強かったぞ。あの一撃一撃の重さには流石に苦戦した…。大陸広しと言えど、鈴々程の武将はそうはいないだろう。」

 

「そうなのか!? 鈴々、強いのか!?」

 

「あぁ。間違いなく強いな。」

 

「へへへっ。お兄ちゃんに褒められたのだ。」

 

 

 

試合が終わり、気絶した愛紗を背負いながら鈴々と話をする。

 

対峙していた時は、その猛獣のようにギラギラしていた目に、武に生きるものとしての力強さを見たが、こうして普通に話しているときは、年相応のあどけない少女にしか見えない。

 

 

これがこの世界での張飛翼徳なのだと思うと、やはり信じられない……。

 

 

 

 

「次やるときは絶対に負けないのだ。」

 

「あぁ。次を楽しみにしてるな。」

 

「約束だよ、お兄ちゃん!!」

 

「あぁ、約束だ。」

 

 

 

鈴々と口約束ではあるが再戦の約束をする。

 

これから先、鈴々が何処まで強くなれるか……俺がその助けになれるなら、なってあげたいと思ったからだ。

 

まぁ、天下に名を轟かせる猛将の素質を持つ鈴々なら直ぐにでも強くなれると思うが……。

 

 

 

「聖さ~ん!! 愛紗ちゃ~ん!! 鈴々ちゃ~ん!!」

 

「おっ…。桃香たちのご到着だな。」

 

 

 

先ほどまで離れたところで俺たちの戦いを見ていた桃香たちは、試合が終わったのを見てこちらに駆けつけていた。

 

 

 

「お疲れ様でした、聖さん。」

 

「あぁ、本当に疲れたよ……。二人相手は楽じゃないね……。」

 

「あははっ……二人を相手に出来ること自体凄いんだけどね……。愛紗ちゃんは大丈夫?」

 

「あぁ、今は気絶してるだけさ…。ちょっと当たり所が悪かったからな……。」

 

 

 

後ろを覗くと、まだ愛紗は気絶したまま眠っていた。

 

一瞬目を覚まさないんじゃないか不安になったが、背中越しに愛紗の鼓動が聞こえているので、何れは目を覚ますだろう…。

 

 

 

「それにしても、聖さんって凄い強いんですね!! 愛紗ちゃんと鈴々ちゃん二人を相手に勝っちゃうなんて!!」

 

「たまたまだよ。今回はお互いに相手の手の内を知らなかった……だからこそ、俺が勝てたけど、次やったらどうなるかはそのとき次第かな…。」

 

「またまた謙遜して~!!」

 

「謙遜も何も、二人が強いのは本当のことだからね…。」

 

 

 

桃香とそうこう話をしていると、脇から朱里と雛里が顔を出した。

 

 

 

「聖さん!!お疲れ様でした!!」

 

「おっ……お疲れ様でした!!」

 

「ありがと、二人とも。」

 

「戦ってる姿カッコ良かったですよ。」

 

「………。(コクンコクン)」

 

「あははっ。そう言ってもらえると俺も嬉しいな。」

 

「鬼の化身の名は伊達ではないですね。」

 

「いや~それ程でも~…。」

 

「よっ!!大陸一の猛者!!」

 

「そんな器じゃないって~。」

 

「皆が認める聖人君主!!」

 

「褒め過ぎだって~!!」

 

「流石、『天の御使い』その力は噂以上ですね!!」

 

「そんなに凄くないって~。」

 

「へぇ~……。『天の御使い』は否定しないんですね…。」

 

「………はっ!!?」

 

 

 

朱里を見ると、何とも勝ち誇ったような顔をしているではないか……。

 

 

くそっ!!孔明の罠か……。

 

 

 

「えっと~………つまりどういうことなの、朱里ちゃん?」

 

「つまりですね、桃香様。聖さんは『鬼の化身』であり、『天の御使い』なんですよ。」

 

「え~!!! あの占いの!!!?」

 

 

 

朱里からその言葉を聞いた途端、桃香の大きな目が更に大きくなったように感じた。

 

そんな度々目を大きくしてたら、これから先大変だろうに……。

 

その内、目から飛び出ないだろうな……。

 

さて、桃香のことは置いておいて、何故朱里がそう思ったのか聞くことが大事だな…。

 

 

 

「………朱里、どこでそう思った?」

 

「初めからそうかなと思ってました。その見た事のない風貌、力、知識……。全てがあなたを『天の御使い』であると言っていました。そして、決定的なのはあなたが『鬼の化身』であったことです。」

 

「それが何か?」

 

「大アリです。桃香様、南西の空に流星が見えた日のことを覚えてますか?」

 

「えっと……うん、覚えてるよ。」

 

「では、『鬼の化身』の噂をしきりに耳にし始めたのもその頃ではなかったですか?」

 

「う~ん……言われてみればそうだったかも……。」

 

「そこで私は思ったんです。流星によって現れた『天の御使い』は名を隠すために『鬼の化身』という噂を流したのではないかと……。」

 

「えっ? でも、聖さんはその前から居たんだよ? 『鬼の化身』の出来事は事実だし…。」

 

「はい。聖さんは確かに『鬼の化身』だと思います。どうやってかは知りませんが、聖さんは天から既にこの世界にやってきていた……。そして、日々名を上げるために活動していたが、『天の御使い』という名が有名になることを恐れ、その名前は出さなかった。……もしかしたら、『天の御使い』という名前を出すことで頼みにされるのが嫌だったのかもしれません。そんな時、『鬼の化身』となる事件が起こった。勿論、そのことは何事も無かった様に処理されるはずでしたが、そこであの流星事件が起こった……。人々は流星から『天の御使い』の存在を思い出そうとする……が、それを人々の記憶から消し去るために、彼は『鬼の化身』と言う名を広めた……。そして、それは現在彼の思惑通りになっている…。」

 

「……本当ですか、聖さん?」

 

「…………。」

 

 

 

怖ろしいほどの洞察力……流石は諸葛亮と言った所か……。

 

勿論、一刀の事や天の御使いの経緯などは間違っているが、俺が鬼の化身の噂を流した意図は汲み取られている……。

 

ここは隠しても仕方ない……。それに、桃香たちは俺が天の御使いだと言った所で、頼ることも無いだろう……。

 

 

 

「……朱里の言う通りだ。俺は『天の御使い』だよ……。桃香たちに黙ってたのも、名を広めないようにするためさ……。」

 

「やはり、そうでしたか。」

 

 

 

俺の言葉を受け、何かしらを考え込む朱里。

 

彼女が次に何を考えているのか……やはりそこの知れない人物だ…。

 

 

 

 

 

 

「この際だ……他に質問がある人はいるかい?」

 

 

 

この際開き直って全て話したほうが良いだろう……。

 

そう思って皆に声をかけると、俺の背中側から声が聞こえた。

 

 

 

「では、一つ質問が…。」

 

「愛紗ちゃん!! 良かった目が覚めたんだ。」

 

「桃香様、心配かけてどうもすいませんでした。」

 

「良かった……。当たり所が悪かったからな、心配したぞ?」

 

「聖殿にもご迷惑をおかけしました。」

 

 

 

そう言うと、彼女は俺の背中から降りて、俺の正面に立った。

 

 

 

「良いよ別に……。で? 質問というのは?」

 

「はい……。天の御使いという名を広めれば、その名声に多くの人が集まるのではないのですか? その方が、戦力の拡大やら町の発展などに大きな成果をみせると思いますが……。」

 

 

 

愛紗が質問すると、朱里と雛里、桃香の三人も答えに興味ありげにこちらを見ている。

 

 

 

「確かに人も物も集まるさ……でも、人は俺を頼っちまう……。」

 

「それの何処が悪いのですか? 聖殿は『天の御使い』なのでございましょう? この乱世を終わらせ、この世を平穏に導いてくれるのではないのですか?」

 

「……それはあくまで君たちが予言を聞いて作り上げた妄想だ……。今現在、俺にそんな力は無い。それは、今のウチの兵力を見てくれれば一目瞭然だろう…。そんな人間の下へ、救いを求める人間が大勢集まってきた所でどうなる? 何も出来やしない……。そう、何も出来ないんだよ……。なら、いっその事名を隠し、それが出来るようになるだけの力や物を手に入れたときにこそ、自分が『天の御使い』であると公言したほうが良いと思わないか?」

 

「うっ……。それは…。」

 

「そりゃある意味逃げなんだろうけどな……。でも、民に絶望を与えるくらいなら、もう少し今に耐えてもらって、後々に……と考えたってだけだよ。」

 

 

 

ここまで話すと、愛紗は黙り込んでしまった。

 

分かってくれたかな? 天の御使いという言葉の重さを……。

 

 

 

「……聖さん。一つ良いですか?」

 

 

 

先ほどからの急激な展開に、遅ればせながら着いて来た桃香が俺に質問を投げかける。

 

 

 

「聖さんは……民のためを思ってそうしたんですよね?」

 

「あぁ……。」

 

「なら、それで良いと思います。私なんかより、ずっと頭の良い聖さんがそうするべきって思ったのならそれが正解だったんですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

………ドキリとした。

 

 

 

 

 

 

 

俺の考えの全てを読まれたわけでもない……。

 

でも、桃香は笑った……。

 

俺が正しい選択をしたと言って笑った……。

 

まるで、俺の心を見透かしたかの如く笑った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

………やはり、この娘も英雄なんだな…。

 

これが、英雄の器なのだと今さらながら思い知った……。

 

こういう人物こそ、人を率いれる人物なのだと再認した……。

 

 

 

 

 

 

自分の驕りに……少し嫌気が差した…。

 

 

 

 

 

 

「分かってもらえたみたいで良かった…。」

 

 

 

 

今の俺には……そう返事することしか出来なかった……。

 

 

 

当の本人は、何を思っているのか………その笑顔の裏を読むのは、中々に大変そうだった。

 

 

 

 

 

 

 

~愛紗side~

 

 

 

うっ……気を失っていたのか……。

 

確か……聖殿と試合をしていて……そうだ、矢を額に受けて……。

 

 

んっ……?? 周りの景色が動いている……。

 

私は運ばれているのか……一体誰が……。

 

 

 

「っ!!!!」

 

 

 

えっ!? ええっ!!??

 

まさか、聖殿に運んでもらっているのか!!?

 

そんな!! なんと申し訳ないことを……。

 

一刻も早く降りなければ……。

 

 

 

「ぁ……。」

 

「聖さ~ん!! 愛紗ちゃ~ん!! 鈴々ちゃ~ん!!」

 

 

 

むぅ……。起きる機会を逃してしまった……。

 

桃香様ももう少し話しかける時を考えて………いやいやっ!! 自分の主になんてことを考えているんだ私は……!!

 

と……とにかく……早く起きるようにしなければ……。

 

 

そうだ!! 自然なふりだ!! 自然に今起きましたよって感じを出せば、それで大丈夫ではないか!?

 

よしっ!! そうと決まれば早速……。

 

 

 

「あははっ……二人を相手に出来ること自体凄いんだけどね……。愛紗ちゃんは大丈夫?」

 

「あぁ、今は気絶してるだけさ…。ちょっと当たり所が悪かったからな……。」

 

 

 

えぇっ!!!!??? ここでそんな話を振られたら、起きるに起き難いじゃないですか!!

 

それに、聖殿の顔が近い!!!!! 

 

 

 

『鬼の化身』と言う名に相応しくない中性的な顔立ちは女の私が見ても綺麗な女の人の様で、その肌の白さを見てると、吸い込まれてしまいそうな……そんな透明感を持っている。

 

 

 

そんな顔が目の前に迫っていると………ついつい見惚れてしまって……何故だか顔が熱くなって……はっ恥ずかしい……。

 

 

静まれ……私の鼓動よ静まれ……。

 

 

はっ!! 今私は聖殿と密着してるではないか!!

 

 

これでは鼓動が聞こえてしまう……!!?

 

 

不味い!! 気付かれませんように……気付かれませんように……。

 

 

愛紗の必死の願いは叶ったのか叶わなかったのか……とにかく聖は愛紗が起きていることには気付かなかったようだ……。

 

 

 

 

その後、何とか平常心を取り戻した愛紗は、起きる機会を今か今かと窺い、質問に乗じて起きると言う手段を使って何とか聖の背中から降りたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

~聖side~

 

 

 

「徳種様、ただいま到着したとのことです。」

 

 

 

桃香たちと話していると、自軍の陣の方から髭面、長身のおっさんがやって来てそう告げる。

 

 

 

「おぉ、そうか。ダダ、ご苦労様。」

 

「いえ、では私はこれで……。」

 

 

 

俺たちに向けて一礼すると、おっさんはもと来た道をゆっくりと帰っていく。

 

その後姿は、おっさんと言う事もあってなのかどこか哀愁に満ちていた。

 

 

 

「聖さん、先ほどの方は?」

 

「あぁ、親衛隊の隊長を任せてるやつで、俺はダダって呼んでる。」

 

 

 

ダダは元々あの広陵の町の門兵をしていたダンディなおっさんのことだ。

 

広陵を手中に治めたとき、改めて俺の仲間にならないか誘い、今ではその実力や経験から親衛隊の隊長を務めている。

 

 

 

「だだ…さん…?? へぇ~珍しい名前…。」

 

「だろうな……俺がつけたから。」

 

「えぇっ!!? あの人それで良いんですか!?」

 

「何か、俺に名を付けて貰うのが隊長就任の証になったらしくてな……まぁ、面白そうだと思って俺も付き合った感じかな。」

 

「そうなんですか~……。でも、何でだださんなんですか?」

 

「あぁ。あいつ見た目がかなり品が高くてな……それでいてなんやかんやカッコ良いんだよ…。だからそこから『ダンディ』って呼ぶようにしてたんだけど、話を聞くと嫁さんがいるらしくてな……。『ダンディ』で『ダディ』だから『ダダ』って名にしたんだ。」

 

「……だんでぃ……?? ……だでぃ……??」

 

「あぁ、そこら辺は気にしないでくれ…。とにかく彼は『ダダ』って呼ばれてるんだよ。」

 

「じゃあ、私たちも会ったらそう呼んだほうが良いですかね??」

 

「あぁ、そうしてやってくれ。」

 

 

 

ダダもこの名前気に入ってるみたいだし、他の諸侯のトップの人に呼んでもらえるなら、あいつも喜ばしいことだろう。

 

 

 

「ところで……到着したって何のことですか、聖さん??」

 

「丁度良いから桃香たちも一緒に行こうか。説明は行きながら話すから。」

 

 

 

桃香にそれだけ伝えると、自陣目指して俺は歩みを進める。

 

 

桃香たちはその後ろに付いてきた。

 

 

 

「それで、到着したと言うのは……。」

 

「……朱里。」

 

「えっ!? あっ!! ひゃい!!」

 

 

 

急に名前を呼ばれた朱里は、驚きのあまり舌を噛んでしまった様だ。

 

大丈夫……だよね……。

 

 

 

「う~……。ヒリヒリします……。」

 

「急に声かけてごめんね。」

 

「いえっ……大丈夫です。」

 

「そう……良かった。じゃあ話を戻すけど、君はなんだと思う?」

 

「えっと……。 兵と糧食だと思われます!!」

 

「正解。流石だね。」

 

「えへへっ…。」

 

 

 

先ほどまで痛みに顔をしかめていたが、俺が頭を撫でてあげると笑顔になるあたり、年相応の女の子って印象が与えられる。

 

 

 

しかし、この子はあの諸葛亮なのである。

 

その実力は先ほどまでで十分に示してもらっている……。

 

 

 

 

これから先、劉備と付き合いを続けていく中で、一番敵に回してはいけない相手……それがこの朱里であろう…。

 

どうにかして仲良くなっていかないとな……。

 

でも、どうも俺嫌われてるみたいだしな~……。どうしようか……。

 

 

 

ネガティブなことばかり頭に浮かんでは消えていく……それぐらい朱里に嫌われていると思っている聖に対し、朱里は意外に聖に関しては興味を持っていた。

 

 

『鬼の化身』『天の御使い』その両名を持つ聖のその力を目の当りにし、後々に脅威となる存在であると。

 

 

少なくとも朱里は、聖と戦うことは余り望ましいものではなく、出来るなら友好的な関係を気付きたいと思っていた。

 

 

だが、この時にこの男がそれに気付くのは……あまりにも難し過ぎることだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第七章 第五話 孔明の罠 END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

 

第七章第五話の投稿が終わりました。

 

 

 

 

今話では、やはり計算高い朱里の一面を描きたくてこんなお話になってます。

 

とは言え、煽てに乗せられた聖が悪いんですけどね(笑)

 

 

 

愛紗目線のお話は、少し作者が面白がって作ってます。

 

愛紗ならこういう反応するだろうな………ぐらいの感覚で書いてますが……大丈夫ですかね??

 

 

 

 

そして、ようやく出せた男性オリキャラ!!

 

ダダさん………あなたの出番はこれから増えてきますよ!!!!

 

まぁ、一応初めのほうのフラグ回収ってことでご了承ください。

 

 

 

 

 

次話ですが、日曜日にまた上げるつもりです。

 

それではお楽しみに~!!!!!


 
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