No.555717 EDF3P 戦時記録映像 #1「ファーストコンタクト」2013-03-16 14:15:17 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:941 閲覧ユーザー数:929 |
「準備完了」
「隊長。いつでもいけますよ」
「よし。いくぞ」
車外に出ると、いつもの街並みと、いつもとは違う光景が隊員達の目に飛び込んできた。
ビル街の合間を通る道路は車ではなく、人が埋め尽くし、その上空には銀色の船体を輝かせながら異星人、〈フォーリナー〉の巨大な円盤が地上にその影を落しながらゆっくりと飛んでいる。
その中央には円盤と比べ物にならないほど大きな球体が浮かんでいる。
本部が言うにおそらくあれが母船だろうとの事だ。
近くではニュースアナウンサーが必死にこの現実味の無さすぎる出来事を伝えようとさまざまな言葉を発している。
そのアナウンサー、というかテレビ局のスタッフに避難するように警告すると、彼ら、ストームチームは指定されている位置に着いた。
「こちらストーム2。配置に着きました」
「ストーム3。同じく」
「こちらストーム1。いつでも行けます」
無線の方にも続々と報告が入る。
そして本部からは『別命があるまで待機せよ』と通達され、しばしの間暇ができる。
「まさか本当に来るとはな……」
ストーム1リーダー、桜井 春稀(さくらい はるき)が口を開く。
「あぁ、まったくだよ。何事もなければいいんだけどな」
ストーム1隊員の一人である吉村 聡(よしむら さとし)がそれに返す。
「まぁ俺達が空回っただけで済めばそれに越した事はない」
ストーム1もう一人の隊員、大城 俊太(おおき しゅんた)が会話に混ざった。
特殊遊撃隊「ストームチーム」の1番隊は編成中であり、現在の隊員数は隊長である春稀を入れてもたった三人という小隊にすらなっていない状態だ。
いくら少数精鋭を謳っていようともさすがにこれは酷いものではあるが、非常事態なのでそのまま出撃となった。なってしまった。
本来ならば臨時編成でもなんでもいいので数くらい揃えるものだが、今回はそんな暇すらなかったらしい。
その代わりなのかは知らないが、まともに編成されているストーム2・ストーム3と共に行動するように言われている。
「まぁ俺達が活躍する機会が無い事を祈ろうぜ。ほら、そっちも気楽に構えろよ。戦時記録映像ったってまず戦闘が起きなきゃ意味がないんだしさ」
そんな言葉が出てきた時だった。いままで特に目立ったことも無かった通信回線にその報告が入ったのは。
『こちらレンジャー4!巨大生物です!巨大生物を発見!市民を襲っています!』
その言葉に、いままで各々に好き勝手言っていたストームチームの面々の雰囲気が変わる。
『こちら本部。巨大生物とは何か?」』
『昆虫です……大きな昆虫です!『こっちに来るぞ!』撃て!撃てぇ!』
しばらく乾いた音が響き、レンジャー4から救援要請が入る。
『こちら本部。聞いての通りだ。レンジャー4が巨大生物と交戦を開始した。ストーム1・2・3はレンジャー4の援護に向え』
「本部。巨大生物とは?」
ストーム3リーダーの問いに本部は『詳しいことは不明だ』と答え、『どうやら昆虫に酷似しているらしい。発見しだい攻撃、殲滅せよ』とだけ言って他の部隊への指示に移った。
どうやらその巨大生物とやらはあちこちで出現しているらしい。
春稀が通信回線を開き、レンジャー4に声を掛ける。
「こちらストーム1。聞こえたな? これよりそちらに向かう。現在位置を教えてくれ」
『こちらレンジャー4!タワービルの近くにある公園付近で交戦中だ!できるだけ早く頼む!おい!大丈夫か!?』
「聞いたな? 行くぞ!」
ストームチームが動き始める。
目指す場所はここからそう遠くない公園だ。だが……
「なんだ……あれは……?」
正面、遥か前方が黒い波に飲まれ始めていた。
その波はよく見るとそれぞれが独立して動いており――
「蟻だ……デカい蟻の大群だぁ!?」
姿形は日本でよく見られるクロオオアリに似ている。
数が多すぎていまいちよくわからないが、一匹一匹の大きさはどうやらよく子どもが描く形の車よりも一回りか二回りほどの大きさのようだ。
それがワラワラと現れ、道路を埋め尽くしていた。
隊員達は直感した。いや、これは嫌でも分かるだろう。理解出来てしまうだろう。
こいつらが巨大生物だ……
とその時、群れから逃げていた市民の一人が足を縺れさせたのかこけてしまった。
その市民に巨大生物が群がり、引き裂いた。
腕を噛み千切り、腸が引き摺り出され、そして……
巨大生物の独特な足音のせいでその音は聞こえないが、凄惨な、常人では耐えられないような光景が群れの中に消え、群れが離れた場所には血だまり以外何も残されてはいなかった。
骨まで食われた……そう考えるのが妥当だろう。
むしろそれ以外に考えようがない。
「こ……こちらストーム2!巨大生物を発見!奴ら、人間を餌としているようです!」
『こちら本部。こちらでも確認した。これ以上食わせてやるわけにはいかん。各隊は独自に連携を取り、巨大生物を殲滅せよ!』
「行くぞ!」「付いて来いよ!」「攻撃開始!」
ストームチームの各隊長が叫び、トリガーが引かれた。
マズルフラッシュが光り……はさすがにしないが、銃口から煙が上がり始める。
どっちにしろEDF製のアサルトライフルの一つ、AF19が火を噴いたことに変わりはない。
このアサルトライフルは突撃銃というにはあまりにも威力があり、初期型であるAF14の時点で現行する戦車の装甲を軽くぶち抜くほどの貫徹能力がある。装弾数も120発、おまけにフルオートで撃っても銃身がダメになりにくい等々……とアサルトライフルというよりサブマシンガンのような有様だ。いや、機関砲といった方がいいかもしれない。
このAF19には2倍率スコープが付いており、有効射程距離はたしか150mくらいだったはずだ。発射速度はカタログスペックで秒間約15発。精度判定はB+と、トータルバランスはいい。
EDF製のアサルトライフルは全体的にリロードが素早く行えるものが多いため、とりあえずこれを持っていく者も多い。
と、ここまで武器を説明したわけなのだが、これで作り出された弾幕だけでは到底目の前の群れを抑えることは無理だ。
ビル街からはまだ溢れるように黒い波が表れ、押し寄せてくる。
市民はどうにか逃がしたが、今度は自分達が囲まれつつある。
「グレネードぉ!」
ストーム2からその声が聞こえ、巨大生物とは反対方向に爆発が起きた。
「穴が空いたぞ!走れぇ!」
援護を受けながら一気に来た道を戻る。
どうやら弾丸が当たれば一瞬怯むらしく、当て続ければその間動きを封じる事が出来る。
AF19の弾丸では撃破するのに十数発必要になるので、撃破したくても結局当て続けねばならないのだが。
「こいつら本当に生き物なのか!?」
春稀の叫びに俊太が「蟲は堅い上に空洞が多いからなぁ!」と返す。
配置指定された位置まで戻ってくると、三人は背中に担いでいた大きな筒を取り出した。
「空洞が多いなら穴を空けっちまえばいいだけだ!」
肩に担ぎ、引き金を引く。
装填された弾頭が放たれ、白い軌跡を描く。
彼らが担いでいるのは俗にいうロケットランチャー、スティングレイM4である。
EDFが作り出した兵器であり、ロケットランチャーにも関わらず一度に装填できる弾数は4発と多く、即時発射が可能となっている。
その破壊力も凄まじく、前述の戦車を一撃で行動不能に追い込むことができてしまう。
発射機は様々なロケット弾に対応した多目的用であり、繰り返し使用することを前提とした造りとなっている。
有効射程距離は約3000m。精度判定はA+だがあまりあてにならない。
スティングレイはロケット弾の名前であり、携行弾数、発射時の反動、弾倉の交換に掛かる時間などトータルバランスに優れており、非常に扱いやすい装備だ。
ロケット弾が地面に当たり、周囲を巻き込んで爆ぜる。
だが黒煙が晴れた先にはまだ動く巨大生物がいた。
勢いこそ削がれたようだが、またこちらに向かって流れ始めている。
「くそっ!なんて硬さだよ!?」
「おいおい冗談はよしてくれよ……これ撃ち込まれて壊れなかったのうちのバケモノ兵器どもだけなんだぜ?」
聡が苦い顔をする。
だがそのロケット弾を受けた巨大生物の甲殻は傷付き、脆くなっていたのか銃弾が易々と貫いていく。
爆破し、撃ち斃す。
それを何度も何度も後退しながら繰り返し、どうにか波が収まるまで耐え切った。
「レンジャー4!応答しろ!レンジャー4!」
春稀が呼び掛ける。が、
『……………………』
「くそっ」
返らない応答に見切りを付け、周囲を見渡す。
舗装が剥がれた道路や壁の崩れたビル、そして巨大生物の死骸が一面に広がっている。
折れた街灯が横たわり、おそらく車だったのであろう鉄の塊が燃え盛りながら転がっている。
そこに数十分前までの街並みは無かった。
『こちら本部。各地で巨大生物が出現している。各隊員は独自の判断で展開、戦闘を続行せよ』
「ストーム3了解。さぁいくぞ。蟻どもの駆除大会だ」
「そっちも大丈夫そうだな。それじゃあ行くぞ」
そう言って春稀達はビル街の方に移動を開始した……
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後に「巨大甲殻虫」と呼ばれる敵生物との初遭遇時の特殊遊撃隊「ストームチーム」の映像です。
EDFは敵生物に対して即時迎撃を開始。
しかし、この的な物量差と想像もしていなかったところからの攻撃でであったため、初動の速さとは裏腹に被害は拡大の一途を辿っていきました。