第39魔 学校生活
明日奈Side
「では今日はここまでです。課題ファイルを転送しておきますので、アップロードして課題を済ませておくように」
授業を担当していた女性教師が大型パネルの電源を切り、
教室をあとにしたことで授業を受けていたみんなから息抜きの声が漏れ始めた。
わたしは端末に課題ファイルをダウンロードしてから電源を切り、バッグの中になおした。
「明日奈、アンタお昼はどうするの?」
「今日は中庭で食べるんだよ♪」
隣の席に座っていた親友のリズベットこと篠崎里香が声を掛けてきたので返事をした。
「な~るほど。今日は愛しの王子様とのお昼ご飯なのね~♪」
「そ、そういう里香だって同じなんでしょ///!」
「う…そ、そうよ///!」
彼女にからかわれたので反撃したものの、里香は開き直った。
「お前ら、恥ずかしくないのか?」
「「え?……あ…///」」
里香の隣に座るハクヤ君こと十六夜志郎君のツッコミに、わたしも里香も教室内であることを思い出した。
他の生徒達がニヤニヤしていたり、苦笑したりしている。
揃って恥ずかしくなり、里香は志郎君に手を引かれて教室から出ていき、
わたしもいそいそと待ち合わせ場所の中庭に向かった。
明日奈Side Out
和人Side
授業が終わり、課題を出されたのでファイルをダウンロードすると、さっさと端末の電源を切ってデイパックに突っ込んだ。
デイパックを肩にかけて立ち上がると、俺の隣の席に座る仲の良い友人、興田が話し掛けてきた。
「カズ、食堂行「無理」…せめて全部言わせてくれよ…」
全て話し終える前に断っておく。
「……今日、和人は中庭だ…」
「なる。姫との食事か」
前の席に座る親友の国本景一と、その隣に座る仲の良い友人の村越が続けて話しを進めた。
「そういうわけだ。また今度な」
「りょ~かい。ちぇ、俺も彼女欲しいな~」
短くそう言うと興田はそんなことを口にしていた、まぁ頑張れ。
俺はそのまま教室をあとにして、彼女の待つ中庭へと向かった。
中庭は小さな庭園のようになっており、統廃合で空いた校舎とは思えないほど整備が整っている。
その中庭にある1つのベンチに彼女が細い脚を交互にぱたぱたとさせて、
地面を軽く叩く愛らしい姿を可愛く、愛おしく想う。
壁に凭れ掛かりながら彼女の姿を見ていると、こちらに気付いて笑顔を浮かべた……が、
すぐに澄ました表情に変えた。
その姿も可愛く想い、苦笑を浮かべて俺は声を掛けた。
「待たせたな、明日奈」
「キリトくんってば、どうしてこっそりと見てるのよ~」
唇を小さく尖らせながら言った彼女に俺は笑みを浮かべながら答えた。
「自然体の明日奈が可愛かったから、つい見惚れちゃってな。あと少しだけ見ていたかったんだけど…」
「ぁぅ…////// そんな風に言われたら、怒れないよぉ…//////」
素直な感想を伝えると明日奈は顔を真っ赤にして俯かせた。む、そういえば…。
「明日奈。今は誰も居ないとはいえ、学校でキャラネームを呼ぶのはマナー違反だぞ」
「あ、そうだったね……て、それじゃあわたしバレバレだよ!?」
「それは仕方が無いだろ?」
本名をキャラネームにするからだ。まぁ、俺もキリトだとバレているがな。
俺達が通うこの学校は中学・高校時代、場合によって小学校時代をSAOで過ごした者達が通っているのだ。
積極的殺人歴のある
そんな中でも他の一般的なプレイヤー達は主にこの学校に通うことになった。
義務付けられているわけではないので、この学校に入学せず高認定を得ようとする者、
他にもそのまま就職しようとする者などいる。
公輝に雫さん、奏さんが主にそうだ。
加えて俺を含んだ『嘆きの狩人』の面々は八雲師匠や海童さんの口添えもあって、こうやって学校に通えている。
なお、明日奈はキャラネームが同じだけな上に姿のこともあって、入学直後に即バレした。
かく言う俺も旧上層プレイヤー達を通し、さらに異名まで伝わりほとんどの生徒にバレている。
特にそれを促したのは俺と明日奈の関係だ。
【黒の聖魔剣士】と【閃光】が夫婦ということはそういう事らしい。
ま、俺には関係無いがな。
余談だが、俺と同時期に解放されたメンバーは未だに松葉杖が手放せない状態である。
俺は松葉杖を必要としていないが…。
膝の上のバスケットに手を置いている明日奈、俺は彼女の手を握る。
「和人くん…」
「ん…?」
「カフェテリアから丸見えなんだよ、ここ…」
頬を少し紅く染めつつ、呆れたように呟いた明日奈。それに対し俺は…、
「知ってる、ワザと見せつけようと思ったんだ…」
「なっ//////!?」
そんな風に言ってのけたので彼女は再び真っ赤になる。
つんと他の方を向いてしまい、バスケットを俺から遠ざけた。
「意地悪する人にはお弁当あげないんだから…//////」
「ぅ、ごめん…」
明日奈の手料理が食べられないのは辛い。だから素直に謝り、彼女の頭に手を置いて撫でてあげる。
くすぐったそうに瞳を細めると降参したのか、笑顔を浮かべてバスケットの蓋を開いて包みを1つ取り出し、
俺に渡してきたので受け取る。
包み紙を開くとハンバーガーが出てきた。うむ、美味しそうだ。そして一口食べてみると…、
「これ、74層の迷宮で食べた味だ…。良く作れたな?」
「えへへ、さすがに味を再現するのに苦労したんだよ~」
あの時の味がした。まったく、この娘はいつも俺を幸福で満たしてくれるよ。
俺が大きめの2つを食べ、明日奈は普通サイズのものを1つ食べた。
食後に彼女が持ってきてくれたハーブティーを飲んでいる。
「和人くん、午後の授業はどう?」
「あと2コマ。この学校色々と便利な環境だけど、家でやってもあまり変わらない気がするな。
明日奈と一緒に居られる時間があるのは嬉しいけど…」
「うん、わたしも和人くんと一緒で嬉しいよ」
明日奈の言葉に俺は考えてみながら返答してみる。明日奈と同じ考えなのは嬉しいかな。
「あ、そうだ。今日のオフ会、楽しみだね」
「あぁ、全員が揃うのは初めてだからな…」
今日行われるオフ会に思いを馳せる明日奈と俺。
そして彼女は俺の肩に頭を預けてきた。
俺は彼女の肩を抱き寄せる、陽気な日差しが温かいな。
和人Side Out
志郎Side
「まったく…明日奈もキリトも、人目も気にしないでイチャイチャしちゃって…」
「言ってやるな…。あの2人は、俺達とは違ったんだから」
「そうですね。特に和人さんは大変だったみたいですし…」
「あたし達では分からないこともありますからね…」
「俺はむしろあの2人らしいと思うけど」
「確かにね」
里香、俺、ヴァルこと神城烈弥、シリカこと綾野珪子、
ケイタこと
俺達6人はカフェテリアにて食事を取りながら、中庭の和人と明日奈の様子を見守っている。
「2人が気になるなら、俺達もああするか?」
「い、いいわよ!……2人きりの時の方がいいもの…///」
俺が茶化してそういうと里香は頬を紅く染めながら返してきた。
和人が明日奈に意地悪する理由がよく分かる。
俺の隣に座る烈弥と里香の隣に座る珪子は話しに花を咲かせており、こちらの様子には気付いていないようだ。
京太郎と幸も揃って和人と明日奈に視線を向けたままだ、俺達も大概だと思う。
志郎Side Out
刻Side
「まぁ、皆さんどっこいどっこいってことっすね」
「……それもそうだな」
「俺さぁ、最近コーヒー飲むようになったんだ…」
「奇遇だな、俺もだ…」
「それは偶然じゃないよ、僕もだし…」
ボクと景一さん、テツさんこと
ヤマトさんこと
「……で、刻はどうなんだ? 直葉とは…」
「んっと、順調っすね。デートが中心っすけど」
「……焦る必要もないだろう。和人達も、まだ時間が掛かるだろうしな…」
スグとのことを聞かれ、かといって大層な展開もないので簡単に話す。
景一さんの言うように和人さん達もボクと同じで大変っすからね。
「……そういえば、聞いたか?」
「なにをっすか?」
「……師匠から夏に招集が掛かった…」
「……………」
彼の放った一言にボクは夏休みのスグとの過ごし方が崩れ去っていくのを悟った。
「お、おい、どうしたんだ?」
「駄目だ、反応がねぇ…」
「空気が暗くなってる」
3人が声を掛けてくれるも、返答する気力が湧かなかった。
刻Side Out
明日奈Side
やってしまった…。結局人目に付いてしまう中庭で和人くんに寄り添ったまま眠ってしまうなんて…///
しかも和人くんに寝顔を見られてしまった///
「俺は明日奈分を十分に充電させてもらったからな。ごちそうさまでした」
「ぅ、うぅ…/////////」
ホントに恥ずかしいよぉ…///
「それじゃあ明日奈。午後も頑張ろうな…」
「うん///♪」
恥ずかしかったけど、わたしもこれで頑張れるよ。
昼休みも終わりになるので、わたしと和人くんは自分達の受ける授業へと移動した。
明日奈Side Out
To be continued……
後書きです。
原作と同じ展開で学校での様子になりました。
ケイタ、サチの名前は本作でのオリジナルになっています。
そして黒猫団の3人もオリキャラですので、別の名前を設定しました。
さて、次回はエギルの店でのオフ会の話しです。
本作も残るは2話ですね。
それでは・・・。
Tweet |
|
|
25
|
8
|
追加するフォルダを選択
第39魔です。
和人と明日奈の再会から約2,3か月後、学校が始まり・・・。
どうぞ・・・。