No.555250 少年達の挽歌 蜂起編 第三話2013-03-15 00:59:07 投稿 / 全3ページ 総閲覧数:611 閲覧ユーザー数:601 |
第三話 作戦計画
あれから一ヶ月が経った。
工場から帰宅すると最新のノートパソコンを開き、電源を入れる。
そしてアイコンにある『World war』というゲームをクリックする。
『World war』は海外のオンラインゲームで、主要国の軍をすべて選べ大人数で戦闘をするFPSのゲームだ。
なぜこのゲームをしているのか、それは公安の目を避けるためだった。
ゲーム上に小隊ごとにクランを作り、それを集めてクラン連合を形成させ作戦会議を行う環境を作る。
サーバーは東南アジアにあり、日本政府でも簡単には捜索ができるはずがなかった。
クランに入ると『クラン連合クラン長会議』という部屋が設置され、そこにはいると各クランもとい小隊の長が集まって会議を行っていた。
今では会員は連隊規模の六百名になり、小隊の数は二十個となり二十人の小隊長と宮本中尉が連日決まった時間に会議することにしていた。
だが怪しまれないようにゲームをしたり、『帰還兵の会』の活動をしながら細かい事を詰める時はオフ会と称して大勢が集まれるところで行っていた。
今日の会議はどこを襲撃するかだった。
挙げられた中には国会議事堂、首相官邸、他国の大使館、主要テレビ局、大多数の人が集まる場所などが挙がっていた。
この蜂起の目的は世間に戦争の真実を教え、自分達の待遇改善を訴える為なので標的としては申し分なかった。
その時、小野寺の頭にひらめいた、世間どころか世界中が必ず注目を集める場所を。
すぐにキーを叩いて表示させる。
《IS学園はどうだ?》
すぐに宮本少尉が反応した。
《確かにあそこで何かが起きれば世界中で報道される。》
《しかしあそこには精鋭部隊が中隊規模いるんですよ?しかもあそこの警備システムは頑強だ。あそこを完全占領するのは難しい。》
一人の小隊長が反論する。
《こちらにも人材はある。チャンスが来れば、占領できる可能性もある。》
《考えてみるか、よし!今度の日曜日に作戦会議オフ会を開く。》
《了解!》
小野寺はログオフすると、すぐにネットでIS学園について知り得る事をすべて調べ、メモに書く。
そして土曜日にレポート用紙に作戦を立案する上で必要な情報を事細かく書き、日曜日のオフ会で参加者に見せた。
作戦会議オフ会は小野寺と宮本少尉を含め二人の現役士官が参加して作戦を組み立てる場だった。
ファミリーレストランに集まると全員がそのレポート用紙に目を通した。
「IS学園警備中隊の戦力は知っていたが、警察署にはSATが常駐しているのか。」
宮本少尉が呟くと、他の士官が言った。
「しかも周囲には自動迎撃警備システムという完全自動化された銃座がいくつか隠匿されているだと。」
「地形的にも高台にある。簡単には攻め込めないぞ。」
小野寺は三人に考えた作戦を説明した。
「我々には情報科の人間が二人いて、二人とも優秀なハッカーです。彼らに警備システムを破壊させます。また先にIS学園警備大隊を駐屯地に押さえられれば、敵は二個小隊だけになります。」
「そこまでやれるのか?」
「はい。」
宮本少尉は頷いて言う。
「やってみる価値はあるな。よし、これから作戦を練り上げるぞ。」
そうして俺達は作戦を練り上げ、一ヵ月後に作戦計画が完成した。
宮本少尉は『帰還兵の会』の総力を使って国防省内部で暗躍して、人事に手を加え会員を各駐屯地の弾薬庫管理に
回した。
この作戦で使う装備の殆どが予備や訓練用に置かれた古い装備を使う、なぜなら旧式兵器の管理は緩いからだった。
また作戦には十年前に男性の地位を落とした男、直井慎三元首相の拉致計画を加える。
彼には占拠されたIS学園でこの国で起きたことを、そして日韓戦争のことについて発表させるつもりだった。
少尉はこの作戦は「天をめぐらし、世界を変える」という意味で“回天作戦”と名付けた。
回天作戦 作戦概要
動員部隊:一個中隊 六百名前後
主要装備:八二式指揮通信車一台、九六式装輪装甲車三台、七三式大型トラック二十台等
主要武器:81mm迫撃砲二門、84mm無反動砲四門、5.56mm機関銃MINIMI二十丁、八九式5.56mm小銃五百丁、対人狙撃銃十丁等
行動予定
0分 作戦開始
三分後 各駐屯地で武器・弾薬を内通者を通して受け取る
十分後 各駐屯地を出発並びに直井元総理大臣を拉致
七十五分後 浮島ICで合流
八十分後 無人偵察機発進
九十分後 IS学園島入り並びに警備システムへ攻撃・無力化させる
九十三分後 IS学園駐屯地並びにIS学園前警察署を襲撃
九十五分後 IS学園正門並びに警備詰所に砲撃
九十七分後 IS学園警備部隊に攻撃
百分後 IS学園に突入※十分程で生徒はシェルターに避難する。よって学園内には警備兵のみ。
百三十分後 IS学園完全占拠
そして作戦が出来上がった一週間後に居酒屋で連絡オフ会を開いた。
ここは作戦について説明する場で全小隊長が集まる前で、宮本少尉は回天作戦について説明した。
「あとは時を待つまでだ。」
そう言うと少尉は何かを思いついた。
「そうだ、この作戦の作戦開始の符合は『ニイタカヤマノボレ』で行こう。」
そうして解散すると次の日から各クランもとい小隊ごとに集まり、サバイバルゲーム場で訓練を開始した。
部隊行動の訓練や銃火器の訓練を行い、特に今までに使ったことのない八九式小銃をエアガンで訓練した。
また一部の機械に詳しい人間を集め、『無人機運用小隊』と名付けた。
彼らは敵の行動を知るための無人機を製作・運用させることが任務である。
すぐに彼らはラジコン飛行機の部品を集めて作り、大型の無人偵察機を作り上げてしまった。
機内には下と前面に向けて赤外線カメラを取り付けて、夜間でも飛行できるように作られた。
そうして一ヶ月が経ち、突然チャンスが降り掛かってきた。
工場の食堂で昼食を食べているとテレビから緊急速報の音が聞こえて顔を上げる。
画面は先程まで放送していたバラエティ番組からニュースに切り替わり、アナウンサーが緊迫した声で伝えた。
《先程国防省の発表でIS学園の臨海学校が襲撃されたと発表がありました。繰り返します・・・》
すると携帯電話が鳴り、出ると宮本少尉だった。
《ニュースは見たな?》
「はい。」
《今日の夜に指定の場所に集合だ。》
「了解しました。」
その日、仕事を終わらせるとアパートに戻らずに神奈川県内にある倉庫に入った。
そこには大勢の迷彩服を着た兵士がいて、彼らはゲームのクラン連絡掲示板にあった『ニイタカヤマノボレ』の文字を見て集まったのだ。
そうして俺達最後の作戦は開始した。
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日韓戦争から四ヶ月、小野寺達“臨時兵”は自分達の置かれた状態に不満を持っていた。
冷遇する政府、周囲からの冷たい目、毎日のように見る戦場の夢が彼らを待っていた。
だがある士官の発案で世界に自分達の存在を知らしめ、対等な立場を得る方法が発案された。彼らは人生の後輩達に同じ経験させない為にもこの作戦に参加して、蜂起した。