No.555213

インフィニット・ストラトス―絶望の海より生まれしモノ―#100

高郷葱さん

#100:終わらない戦い

無限ループって怖いよね。
あと負けイベントで相手に耐久値が設定されてない場合とか。

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2013-03-14 23:45:53 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1406   閲覧ユーザー数:1308

「まったく、キリが無い!」

 

「そうぼやくなよ、箒。―――とはいえまるでゾンビだな…こいつら。」

 

一夏と箒は次々と襲いかかってくる選手たちの暴走機を撃退し続けていた。

 

「操縦者を気絶させてまで暴走…いや、操縦者を護るために気絶させたのか?」

 

二人の脳裏に映るのは夏に遭遇した『狂わされた天使』の姿。

 

「あの時みたいに、撃墜したらセカンドシフトするような事は無いからまだいいモノの…」

 

「へぇ…あの時はそんなふうになってたのか。」

 

雑談に近い会話をしつつ迎撃していると、ピットに繋がるハッチから一機のISが上がってきた。

 

「あ、空!」

 

「状況は?」

 

「うん、それなんだけどね…」

 

空の言葉尻があいまいだった空に手は休めないままハテナマークを頭上に浮かべる一夏と箒。

 

「もうすぐ、あのへんから敵味方両方の増援あるから対処宜しく。」

 

「――――は?」

 

その直後、空が出てきた側と反対側にあるピット出入り口がアリーナの壁の一部諸共に文字通り(・・・・)吹き飛んだ。

 

「―――――はぁ!?」

訳の判らない一夏と箒の声がアリーナに響き渡った。

 

 * * *

[side:鈴]

 

ピットの中は爆炎とコンクリートの粉が舞っていた。

お陰で視界はほぼゼロ。

すぐそばにいるラウラとセシリアを視認するのがやっとなくらいだ。

 

「無茶をするわねあの爆発物大好きっ娘どもは。」

 

「まったく、メイン楯(セシリア)がいなければ即死だったな。」

 

「頼られているようで、酷い扱いされているような…」

 

あたしとラウラはセシリアとシールドビットで展開したエネルギーシールドの後に隠れて難を逃れていた。

 

…そういえば、夏休みに槇篠で整備してもらったときの改修で追加してたっけね、複合ビット。

お陰で本国(イギリス)じゃ無くて槇篠技研に注文しないと補充出来なくなったらしいけど。

 

「というか、なんであんな物騒な対IS戦じゃ使わないようなシロモノを…」

 

「あの二人が燃料気化爆弾とかを持ちだしても驚かないぞ。」

 

はぁ…と溜め息をつくとラウラもほぼ同時に溜め息をついていた。

セシリアは展開していたビットの生き残りを収容しエネルギーの充填に入る。

 

『ちょっと、鈴!セシリア!ラウラ!』

 

『何、休んでるのさ。会長とかが一夏の方に行って大変なんだから早く参戦してよね!』

 

そこにいつの間にか居なくなっていたシャルロットと簪からの通信が入る。

 

どうやら爆炎が晴れぬ間に(アリーナ)へ逃げた機体の追撃に向かったらしい。

まったく、元気なこった。

 

「…はいはい。ただ、あんたらの屋内爆破のお陰でセシリアのエネルギーとビットが消耗してるから一遍下がらせるわよ。」

 

あたしとラウラはほぼ無傷だけど、それはビットのシールドモードで展開したエネルギーシールドの働き以上にセシリア自身が楯になってくれたからという点が大きい。

 

 

『ん、判った。二人は早く来てよ!』

 

言うだけ言って二人からの通信が切れた。

 

「と言う訳で、あたしとラウラは向こうに加わるけど、セシリア。あんたは補給を済ませてきなさいよ。」

 

「あんまりもたもたしてると、獲物は全部持ってかれるがな。」

 

「そうですわね。ではお言葉に甘えましょう。――すぐに戻りますわ。」

 

セシリアはピットの奥――少し奥にある待機所に向かったのを見送りつつ、機体のステータスチェックを始める。

 

「―――で、実の所はどうだ?」

 

「シールドエネルギー残量なら六割ちょいって所。攻撃に使う分も考えたら実質四割か三割半ね。そっちは?」

 

「残量七割、この後の戦闘を考えたら四割を割る程度か。それとワイヤーブレードを一基損耗だ。」

七割か…流石は現役軍人って所かしらね。

 

「ま、その程度なら許容範囲でしょ。」

 

「そうだな。第一、一対多にアレは使えん。」

 

ステータスチェックを終えたらウィンドウを閉じる。

 

「ま、一対多向きって言ったら会長のミステリアス・レイディとか簪の打鉄弐式、あとシャルロットのラファール・オーキスくらいじゃない?」

 

「あとは母様の薙風だな。教官や一夏でも出来そうだが。」

 

一夏や千冬さん、ねぇ…

 

「それ、一対一の連続って言わない?」

 

「結果的には同じだろう。」

 

「ま、確かにね。」

むしろ、一対一をしてた方が確実に撃墜数が多くなる。

特に一夏や千冬さんの場合は。

 

 

そんな雑談をしつつ、爆炎が晴れつつあるピットの壁の穴に向けて向きを変えてスラスターを展開。

 

「―――行くわよ、ラウラ。」

 

「ああ。背中は任せるぞ、鈴。」

 

視線を交わし、お互いに不敵な笑みを浮かべる。

 

「―――発進!」

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)の要領でピットから飛び出したあたしたちと迎えたのは――――

 

 

「―――あ。」

必殺技とも言える『ミストルティンの槍』を見切り回避され、雪片の返し刃を喰らい撃墜されるミステリアス・レイディと、空と簪とシャルロットの三人組がするミサイルでの爆撃やガトリングガンの掃射によって薙払われる量産機の群れだった。

 

 

 

「…これ、あたしたち必要?」

 

思わず声に出てしまった。

 

一夏一人に任せてもいい気がするんだけど…

 

「いや、よく見ろ。」

 

「―――え?」

 

あたしは、目を疑った。

 

「―――なんで、撃墜されたのが復活してるのよ。」

墜落している筈のミステリアス・レイディが地面に落ちる前に再び機能を復活させている。

文字通りの弾雨に晒されている量産機も同様。

 

「判らん。絢爛舞踏のようなエネルギー増幅がされていると考えるのが自然だろうが…」

 

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)は再現できるモノじゃないわよ。誰かが供給しているんじゃない?」

 

「ふむ…では、我々で探して叩くぞ。」

 

「そうね。…片っ端から叩きのめす?」

 

「…学園貸与機や選手の機体にそんな物が付いていたらその時点でレースは失格だ。つまり…」

 

「レース参加機じゃないって事?」

 

「…あの警備についていた自衛隊の機体なんかは怪しくないか?」

 

ラウラが指さす方向には空が愛用するミサイル内蔵型装甲を備えている打鉄タイプの機体。

よく見れば追加装甲の一部が強制排除されて電子戦仕様機のようなアンテナが背中に生えているように見える。

 

「怪しいわね。」

 

「だろう?」

 

見たところ、アレに攻撃が通りそうになると近くの機体が楯になっているようだし、ほぼ黒ッぽいわね。

 

「それじゃ、アレを叩きに行きましょうか。」

 

「うむ、援護は任せる。」

 

「了解ッ!」


 
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