No.555212

インフィニット・ストラトス―絶望の海より生まれしモノ―#99

高郷葱さん

#99:始まった饗宴


大変お待たせしました。

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2013-03-14 23:44:21 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1047   閲覧ユーザー数:986

「えっ―――――!?」

 

会場警備中の一澤紗紀一尉は突然展開された空間投射ディスプレイに戸惑っていた。

 

「なに、これ―――ッ!」

 

次々と三ケタの数字の横に『connect』の文字が表示されてゆく。

そのたびに動きを止める眼前の選手たち。

 

紗紀がいくら処理の中止や機体が備える"新型電子戦装備"やミサイル内蔵型追加装甲の強制排除を命じても機体が言う事を聞いてくれない。

 

『一尉!』

 

「―――逃げろ!」

 

直後、彼女の意識は暗転した。

 

『ッ、これ―――ぁぁッ!?』

 

 * * *

 

『一体、何が!?』

 

『見て判るでしょ!選手と自衛隊機が暴走してるの!』

 

『避難!避難誘導を!』

 

『一澤一尉!比名二尉!応答してください!紗紀さん!』

 

「……随分な騒ぎになっているようだな。」

 

「…ですね。」

 

薄暗いピットで千冬と空は管制室の混乱ぶりを眺めていた。

 

もちろん、ただ眺めているだけでは無い。

もう一枚の空間投射ディスプレイでレース用に調整してあった機体を元の標準装備に戻す作業を並行して行っている。

 

『ああっ!織斑くんと篠ノ之さんがアリーナ内に突入!』

 

『ええっ!?』

 

『あっ、一年の更識さんから通信…?いえ、電文です!』

 

『なんて?』

 

『一年、専用機保有者、ピット内にて暴走機と戦闘開始。』

 

『――って、おい!』

 

『ISで屋内戦闘!?』

 

『…うぅ、施設修繕費が………』

 

悲鳴、驚愕、哀愁、悲嘆。

いろんな声が混ざった一方的な通信ウィンドウを閉じる空。

 

「…それじゃあ、僕はアリーナ内に突入します。」

 

「わかった。私の方で教員を纏めて対処に当たる。それまでは時間稼ぎをしてくれればそれでいい。」

 

「了解。ピット内の暴走機はアリーナ内に押し出す方向で?」

 

「そうだな。――既に屋内でIS戦が起こっている以上、少しくらい壊してもさして大きな差にはならんだろう。…何、責任は私経由で学園長と理事長に丸投げだ。」

 

「それじゃあ、その方向で。一年専用機保有組の指揮権、預かります。」

 

「頼む。」

 

「はい―――それじゃ、出ます!」

 

駆け出してゆく空。

 

その一方で千冬は混沌とした状態の管制室に相互通信を呼び掛ける。

 

『―――ああっ、織斑先生!よかった…』

 

「現状を。」

戦闘準備の傍らで傍受していたからだいたい把握しているのだが、相手を落ち着かせるためにも敢えて訊ねる。

 

『は、はい!現在―――』

 

それを慌てながらも若干落ち着いた感じに真耶が説明を始めるのを、管制室に向かいながら聞く千冬だった。

 

 * * *

 

「あー、もう。どうしてと言うか、やっぱりと言うか…」

 

「諦めろ、鈴。これがお約束というヤツだ。」

 

鈴とラウラはピット内で戦闘しながら愚痴をこぼしていた。

 

「あー、もう。やりにくいったらありゃしない!」

 

「仕方ないだろう。甲龍もレーゲンも一体多は不得手だ。」

 

「もっと言えば、IS自体が閉所戦闘に向いて無いですわね。」

 

正しくは愚痴をこぼしながら戦っていた。

 

「まあ、だからって言って向こうみたいに雑魚相手に無双する気にはならないけど。」

 

「…同感だ。」

 

ちらりと向けた視線の先ではほぼゼロ距離からのショットガン連射とかアサルトライフル一弾装お見舞いしたりするオレンジのラファールとか、薙刀で動きを牽制しながら大型ランチャーでヘッドショットかます打鉄弐式とかが居るがすぐさま視線から外す。

 

 

 

「鈴さん、ラウラさん。…もうちょっと真面目にやってもらいたいのですけど。」

そこに一人突っ込みを入れるセシリア。

 

「え…だって余裕でしょ?」

「苦戦する相手でもあるまい。」

 

「それはそうですけれど…」

 

言い返されて言い淀むセシリア。

言い淀みながらも付きだされたランスをショートソード(インターセプター)でいなしつつビットでの反撃を叩きこむ。

 

 

「ほら、会長相手でも出来てるじゃん。」

 

「―――ブルーティアーズの本領は広い場所での一体一なのですけど…」

 

「それ、だいたいのISに当てはまるぞ。」

 

「ああ言えばこう言う……まったく…」

 

セシリアが睨む先には見慣れた水色のIS――ミステリアス・レイディが再びランスを構えて襲いかかろうとしていた。

 

――――――意識が無く、ぐったりとした様子の操縦者を振り回しながら。

 

 

「―――ホント、この学園はどうしてこうも面倒事に巻き込まれるのでしょうね。」

 

こぼさずにはいられなかった愚痴。

 

セシリアははあ…と溜め息をつく。

 

「―――あ、空くんから連絡だ。…一斉送信?」

 

そこに量産機狩りを進めていた簪が突然言い出した。

 

同様に届いていたラウラが声に出して読み上げる。

 

「何々―――ピットに居る暴走機を全部アリーナに押し出せ?」

 

「―――なお、壁は壊してもいい。」

 

その瞬間、簪とシャルロットの目が輝いた。

 

それはもう、『ぴかーん』という擬音が付きそうなくらいに。

 

「お許しが出たって事は…」

 

「やるっきゃないでしょ?」

 

ふふふ、と怖い類の笑いを浮かべる二人に背筋に冷たいものが走る。

 

「そ、総員退避ぃ!」

 

「って、どこに!?」

 

慌てるラウラに突っ込む鈴。

 

それでも慌てている事には変わりない。

 

「ふっふっふー、こんな事もあろうかと、用意しといた地中貫通弾頭弾(バンカーバスター)!」

 

「おまけのおまけに拡散弾頭弾(クラスター)も全弾もってけー!」

 

イイ笑顔でミサイルを装填し始めるシャルロットと簪。

 

他の面々に出来る事は暴走機やミサイルを撃つ二人を楯に身を守ろうとする位だった。


 
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