No.554322

ALO~閃光の妖精姫~ 第36魔 鍍金の勇者

本郷 刃さん

第36魔です。
戦いが決着いたします・・・下種郷の散り様をご覧あれ!

どうぞ・・・。

2013-03-12 09:30:17 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:15571   閲覧ユーザー数:14225

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第36魔 鍍金の勇者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトSide

 

全てのプレイヤーが須郷を囲んでいる。

奴は蛇に睨まれた蛙のように怯み、しかしその表情に憎悪を浮かべている。

俺は奴の5m程前に近づいた。

 

「終わりにしよう、須郷…。最早お前に逃げ場はない…」

 

「巫山戯るな!? 僕は、僕はぁぁぁぁぁ!?」

 

奴は翅を動かして一気に俺の前に飛び込んできた。

その手に持つ聖剣『エクスキャリバー』を乱雑に振り回してくるが、俺はそれを全て回避する。

ここまでくると憐れに思えてくるが、全てコイツの自業自得だろう。

 

「僕は、この世界の神! 妖精王、オベイロンだぞ!」

 

「『ウィリアム・シェイクスピア』の戯曲、『夏の夜の夢』……かの妖精の王オーベロンは自らの罪に気付いたが、

 お前は自身の夢という名の欲望、罪から目覚めることはなさそうだな…」

 

俺は物語の妖精王が罪に気付いて後悔したことを思い出し、

この男もどこかで目覚めてくれるのではないかと少しばかり期待したが、それは無駄だったようだ。

 

「北欧神話においてのオーベロンはエルフの王であり、

 『支配者』や『王』を語源とする伝説的な魔術師、アルベリヒに由来された」

 

「それが、どぉしたぁぁぁ!?」

 

なおも剣を振りまわすこの男、周囲は固唾を飲んで俺達の様子を見ている。

俺は既にこの男には思考がないのではないかと、思ってしまう。

 

「オーベロンを由来するアルベリヒ、だがそいつはある1人の英雄によって完全に征服された…。

 英雄の名は、ジークフリート」

 

―――ガギィンッ!

 

「うがぁ!?」

 

俺は言葉を終えると共にエクスキャリバーを弾き飛ばし、須郷は体勢を崩した。

 

「システムコマンド。

 オブジェクトID『グラム』、『バルムンク』、『ノートウング』、『リジル』、『フロッティ』、ジェネレート」

 

俺の周囲に5本の剣が現れ、そのまま浮遊している。

 

「これらの剣は全てジークフリート、そして彼と同一視された英雄シグルズが所持したことのあるものだ」

 

手を振り上げると、浮遊していた剣は全て奴へ標準を定めた……そして、手を振り下ろす。

すると5本の剣が奴目掛けて飛び掛かった。

『グラム』は右手に、『バルムンク』は左手に、『リジル』は右足に、『フロッティ』は左足に、

『ノートウング』は奴の胴体に突き刺さる。

 

「うぐっ!?……い、痛みが、ない…だと…」

 

直前に俺がペインアブソーバーをレベル10に戻しておいたが、それは少しの間だけだ。

 

「面白くもなんともないな…。武器は相棒だ……己と共に鍛えるか、苦楽を経て手に入れることで、喜びや楽しみが分かる。

 こんな風にたった一言で出現させても、何の有難みも感じない…」

 

「な、何を言って…!?」

 

支配して操るだけのコイツには分からないだろう。

ゲームの中で相棒と言える武器と共に苦楽を経験したことのある俺達の想いなど。

 

「俺は神になんかなりたいとは思わない…、かといって英雄になる気も無いがな…」

 

苦笑しながらそう言った俺は止めを刺すべく、2本の刀『アシュラ』と『ハテン』を構えた。

 

「終わりにしよう、泥棒の王…!」

 

「く、来るなぁぁぁ!?」

 

俺は最速の飛行を行い、瞬時に奴へと接敵する。

そこでペインアブソーバーをレベル0にし……技を放つ。

 

「神霆流殺技《死五月雨(しさみだれ)》」

 

二刀流による高速の居合抜刀を行った。

右手に持つ紅のアシュラで奴の左手脚を、左手に持つ蒼のハテンで右手脚を斬り落とし、

同時に交錯させた両刀で首を跳ね飛ばした。

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!?」

 

絶叫を上げる須郷、俺もそれと同じ痛みを受けた。ならば耐えてもらうぞ!

俺は2本の刀を鞘に収め、背中の聖剣『セイクリッドゲイン』と魔剣『ダークネスペイン』を抜き放った。

落下してくる奴の頭部に向けて剣を構え……斬る!

 

「神霆流殺技……《滅霊(めつれい)》」

 

「っ―――――!」

 

奴の頭を神速の如き速さで連続斬りする。

奴の頭は塵の如く霧散して消滅した、最早声は発生していなかった。

その攻撃時間僅か10秒、その間に俺が放った斬撃の回数は13、俺の最大撃数だ。

リアルでやれば間違いなく俺の肉体が大打撃を受ける回数だったのだ。

そして須郷の消滅、それは……、

 

「「「「「「「「「「うおぉぉぉぉぉ!」」」」」」」」」」

 

俺達の勝利を示した。

 

 

 

「キリトくん!」

 

「パパ!」

 

歓声が響き渡った後、アスナが俺の元に飛び込んできた。

ユイもアスナの胸ポケットから現れて、くっ付いてきた。

 

「「「「「キリト(さん)(君)!」」」」」

 

他にも仲間に友人、戦友達が側に来てくれた。

 

「ありがとう、みんな。助かったよ」

 

「キリトよぉ……俺は、お前が無事で…くぅっ」

 

「大した精神力だな、キリト…」

 

俺がみんなに礼を告げると、クラインが泣きながらそう言って、エギルも感慨深そうに言った。

他のみんなも涙を流したり、肩を振るわせている。

本当に心配を掛けてしまった。

 

「色々と話したいこともあるけど、俺は後始末をしないといけないから世界樹に戻る。

 システム設定はほとんど修正するが、空は自由にしておく」

 

俺がそう言うとさらに歓声が沸き、ALOのプレイヤー達は縦横無尽に空を飛び回り始めた。

妖精達が勝利の凱歌を歌うかのように、舞い踊っているようにも見える。

 

「みんなも楽しんでくれよ。それじゃあ行こう、アスナ、ユイ」

 

「「うん(はい)」」

 

俺は2人に呼びかけ、アスナと手を繋ぎ、ユイは俺のコートの胸ポケットに入ってから、世界樹へと移動した。

 

 

 

世界樹へと戻ってきた俺達は『実験体格納室』へと赴き、

システムコンソールにシステムアクセス・コードのカードキーをはめて操作を行った。

1つ気になったあの男『PoH』の円柱に眼をやるも、

さすがに起きたばかりの奴では何もできないだろうと考えてから、

俺以外の299人全てのプレイヤーをログアウトさせた。

なお、俺に掛けられていたプロテクトは既に解除してあるので、いつでもログアウトできるようにしてある。

 

「これでやることはやったな…。いまはプレイヤー同士の戦闘は行えなくしてあるから、不正行為も行えないだろう。

 これで……終わりだ…」

 

俺は囚われの299人を解放するという目標を達成させたことに安心し、力が抜けて床に座り込んだ。

アスナと子供の姿になっているユイが俺の隣に座る。

 

「お疲れ様、キリトくん…」

 

「良かったです、パパ…。本当に…」

 

「アスナ、ユイ…俺の元にまで来てくれて、ありがとう…」

 

優しい笑顔を浮かべて労ってくれるアスナ、俺の無事を改めて認識したことで涙を流すユイ、

俺はそんな2人にもう一度お礼を言った。

本当ならもう少しの間こうしていたいが、やらなければならないことがある…。

 

「アスナ、待っているから……もう一度、俺に会いに来てくれないか?」

 

「っ、うん! すぐに、キリトくんのいる場所に行くよ………お疲れ様…わたしの、鍍金の勇者様…」

 

俺の言葉の意図を汲み取ってくれたアスナは一度俺を抱き締めると、ウインドウを操作して、

メニューのログアウトボタンを押してこの世界から去って行った。

 

「ユイ、また必ず会えるから……今はゆっくりと休んでくれ、疲れただろ?」

 

「パパ……はい、分かりました。おやすみなさい、パパ…」

 

「おやすみ、ユイ…」

 

俺は愛娘にもシステム的に負荷が掛かっていたことを知っていた。

GM権限はナビゲーションピクシーに負担が大きいからだ。

俺に抱き締められながら姿を消したユイ。

最後の仕事を行う為に立ち上がり…、

 

「全て終わったぞ、茅場」

 

『そのようだね、キリトくん』

 

茅場を呼び出した。

 

キリトSide Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

オリジナル技説明

 

神霆流・殺技《死五月雨(しさみだれ)》

二振りの剣で高速の居合抜刀を行い、標的の四肢と首を斬り飛ばす技。

 

神霆流・殺技《滅霊(めつれい)》

肉体の限界を超える速度で連続の斬撃を浴びせ、塵も残さずに斬り捨てる技。

 

 

 

 

 

後書きです。

 

はい、断罪が完了いたしましたw

 

皆さんスッキリしていただけていればなぁと思っております。

 

態々キリトさんにはレア武器をジェネレートしてもらって下種郷を磔にし、

さらに『神霆流』の殺人術まで使ってもらいました。

 

リアルでやれば肉体的ダメージが異常だというキリトさんですw

 

原作やアニメではキリトが自身を『鍍金の勇者』と名乗りましたが、この作品ではアスナがそう呼びました。

 

ウチのキリトさんは自分を勇者などとは言わないでしょうし(苦笑)

 

さて、それでは次回にて・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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