No.552184

恋姫のなにか 31

くらげさん

短いです

2013-03-07 11:17:43 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:9923   閲覧ユーザー数:6150

一刀姉弟の温泉旅行出発編です。

「ねー稟お姉ちゃん」

「なんです?」

「カーナビ触ってみていい?」

「構いませんよ。ルートは把握していますから」

「あと霞ねーさん達の車が後ろにいないっぽいけど」

「次のSAで待ちましょうか。 そろそろ桃香が限界の筈ですから」

 

華琳にしこたまお説教され、稟と霞に運転をお願いするのと夏侯家のお父さんに車借りる交渉を早めに終わらせ、余裕をもって出発の三日前に実家に戻った一刀。

 

「お姉さん孝行したいんなら前の日の準備からしたげなよ」

 

という華琳のアドバイスに従い、まぁ色々あったその次の日。

朝に一刀・稟組とその他組に別れて車で現地へ向かう事小一時間、高速に入る前に休憩する事になるとは思わなかった。

稟の車は改造に継ぐ改造でガチガチの走り屋仕様なのにカーナビ、オーディオは無論の事、携帯ゲームの充電まで出来る様になっている弟とのお出かけ仕様。

車に弱い桃香と一刀にくっ付いていたい恋は最後まで一刀と稟のペアに反対していたが、グチグチ言ってる時間が勿体無いと霞に車に放り込まれていた。

 

「………あー凪ねぇ? うん、次のSAで待ってる。うん。………ちょっと待って」

「○●SAですよ」

「○●。うん、そう。 大丈夫だって、稟お姉ちゃんのと外見が同じな車なんか存在しねぇから絶対」

「私の愛車は凶暴です(キリッ」

「なんか決め台詞言ってるから切るわ。んじゃね~」

 

ケータイをガラケーからスマホに買い換えた一刀はメールに手間取る事が多くなったので、メンドクセェと電話する事が多くなった。

 

「桃香の怒鳴り声と恋ねーちゃんの悲鳴が聞こえた」

「二人とも絶叫系は強い筈なんですがね」

「霞ねーさんの運転で慣らされたんじゃね? そういや稟お姉ちゃんは強いよね、絶叫系」

「日々アトラクションに挑戦している様な物ですからね………」

「ごめん………」

 

颯爽と車から降り、髪をかきあげながらすっ転ぶ稟の手を引いて何とかSAの中に入る二人。

人目を惹いたのは稟の容姿が原因であって、ドジっ娘具合ではないと信じたい。

一分も掛からないのに大冒険だった行程に、一息つこうとお茶を飲んでいた一刀と稟目掛けて、涙目になった恋が走ってきた。

 

「(´;ω;`)」

「生きてましたか、なによりです」

「怖かったねー恋ねーちゃん。良い子良い子」

「恋も稟の車に乗る………」

「稟姉様、膝を抱えて蹲ってますので、どうか私も乗せて下さい」

 

恋をフラフラになりながらも追いかけてきて、そう言う凪の顔は真っ青だった。

恋は対象的に赤い顔をしていたが、両者とも平常とは思えない。

 

「桃香は?」

「霞姉様がトイレに連れていった」

「桃香は車に弱い癖にギャースカ騒ぎますからね」

「本人曰く、騒げなくなったらプライドも女の尊厳も捨てて吐き散らかす。だそうです」

 

姉妹の中で徹底的に車に弱いのが桃香で、ほんの五分でも気分が悪くなるぐらいに弱い。

なのにこの行程は空いているという前提で車で二時間以上の移動。

出がけに家を見ながら『帰ってこれねぇかもしれねぇ』と真顔でつぶやき、車に乗り込む桃香を一刀達は敬礼で見送った。

 

「なんで霞ねーさんはあんなに運転荒いの?」

「昔とった杵柄というヤツでしょう」

「昔………は、単車専門だった、と………聞いていますが………うっぷ………」

「凪、あなたも手を洗ってきなさい」

 

やれやれ。と額を押さえながら勧める稟を見ずにそうします。とだけ言って、凪は視線を動かさずに足早に歩いていく。

ひっくひっくと一刀に縋り付く恋の背中を摩りながら、さてどれぐらいの休憩時間をとった物か。と一刀が頭を悩ませているとケータイが震えた。

着信を見ると【華琳】となっており、今日収録っつってなかったっけ?と思いながらも電話に出ると、日頃鍛えている声量で怒鳴られた。

 

『このアンポンタン!!』

「いってぇ………」

『ちょっと!!聞いてるの一刀!!』

「聞こえてるよ、聞こえすぎなんだよ………何?」

『チケット忘れてる!!』

「なんの?」

『宿泊先の!!テーブルの下に封筒落ちてて中から出てきた!! あれだけ口酸っぱくして確認しろって言ったでしょ!?』

「………ちょい待ち」

 

えっぐえっぐとしゃくりあげて泣く恋の両腕を背中に回させて、稟に肩掛けのカバン取って。と言う一刀。

目の座った桃香に肩を貸した霞も何とか到着したが、一刀の様子に二人して眉を顰める。

 

「………封筒入れたの確認したし、ちゃんとあるぞ?」

『中身!! 中身見て!!』

「………おっわ!?」

『それ旅行の時に撮った写真だよ!! 一刀が撮ってたのは少なかったから間違えちゃったんだよぉ!!』

 

華琳が行った通り、茶色の封筒の中から出てきたのは数枚の写真で、今向かっている旅館へ下見に行った際に撮った物だった。

にぱー☆と笑う華琳や、腕を組んで映っている一刀と華琳など、見れば思い出す記憶が赤裸々に残されている。

 

「やべぇ………おい、どーしたらいい?」

『………今何処に居る?』

「えーっと………稟お姉ちゃん、此処何処だっけ?」

「○●SAですよ。この交通量なら後三十分程で高速を降りられますので、そこから二十分程でしょうか。無論、下の道が空いていればの話ですが」

 

淡々と答える稟の言葉を耳にした桃香が「いちじかん…もうむりぽ…」と膝から崩れ落ち、霞が「おいぃ?!」と慌てて担ぎ上げ、稟が必死に座ったままで腕を伸ばして椅子を寄せているのを尻目に一刀は通話に戻る。

 

「今○●SA。普通にいけりゃあと一時間かからないぐらい」

『………解った。直ぐに出る?出来れば時間の猶予が欲しいんだけど』

「桃香と凪ねぇがかなり弱ってるから暫くは休ませるかも。元々それ込みで日程組んでるし」

『りょーかい。 三十分ぐらい休んでて。そしたらギリギリ旅館の前で会えると思う』

「お前今日仕事じゃなかったの?」

『聞いて驚け~、なんと華琳ちゃんは別取りになったのです!』

「やだ、かっこいい」

『お礼はらぶでよろしく♪』

 

普段は結構電話を切るタイミングを逃してダラダラと喋ってしまうのだが、今回は華琳からプツッと通話を終わらせた。

しゃくりあげる事は無くなったものの、それでも未だにしがみついて泣く恋の頭を撫でながらさてどう言おうか。と頭を回転させる一刀だったが、正直に言ってしまう事にした。

 

「えーと……言いづらいんだけど、どうも俺やらかしたみたいで、三十分ぐらい休憩挟んで良いかな?予定だと十分ぐらいなんだけど」

「カズちゃん……うっぷ…アタシの事…抱いていいよ……うえっ…無論性的な意味で………」

「殴らないんですか、霞姉さん」

「流石に死体蹴りする趣味無いわ………凪も恋も潰れてるし、ちょうど良かったんちゃう?」

「なら軽く何か食べますか?」

「今食物の匂いしたらバイオハザる………」

「桃香は車で横になってなさい」

 

もう死ぬ……アタシ無理……と零す桃香を霞がお腹を圧迫しない様に担ぎ、一刀に頼まれた恋がそれを手伝うべく立ち上がった。

 

「何か忘れ物ですか?」

「……うん」

「桃香ではないですが、かえって良かったと思いますよ。 一度宿泊先に連絡を入れておけば尚更ですね。まぁチェックインの時間を指定しているならですが」

「あ、そっか。 そういうのもしなきゃいけないのか」

「代わりにしておきましょうか?」

「いや、俺が幹事だから俺がやる」

 

ケータイを持って、静かな所へ行こうと歩く一刀を見守って、稟はさて、車まで無事に変えるためには這いずって行くべきかを真剣に悩みだすのだった。

 

 

「思ったんだけど、あっちの車を稟お姉ちゃんが運転すれば良かったんじゃね?」

「向こうはそれで解決しますが、私の車が手詰まりになりますね。私専用にチューニングしてますから」

「例えばだけど、霞ねーさんが運転したら?」

「高速からこの車が降り注ぎます」

「桃香……さよならだ」

 

恋を筆頭に凪と桃香は泣いて出発を嫌がったが、一刀と霞に連行されて車に詰め込まれた。

 

「嫌ぁ!!やめて!!」

 

とギリギリの体調で一刀へ向けてエロく騒ぐ桃香を見て「もう大丈夫か」と霞が判断したので桃香の自業自得。仕方ないね。

 

「稟お姉ちゃんの車は乗りやすくていいねー」

「もっと褒めても構いませんよ?」

 

と、桃香達三人の犠牲の上に成り立ったイチャラブ空間を思う存分満喫した稟だったが、旅館に付いたぐらいで雲行きがガラッと変わった。

雪の積もる、良い景色な中に建つ雰囲気のある日本旅館。

当日まで秘密。と一刀が言うので姉妹五人とも初めての豪華さに「マジでか」とポカンと口を開けながら、駐車場に車を止めて、受付までテクテクと歩いていく。

恋や霞はキョロキョロと内装を見渡し、稟は「この子幾ら使ったのかしら………」と渡すべき御小遣いを逆算し始め、凪は桃香を担ぎながらもお登りさんの様にあちこちで立ち止まる。

唯一来た事のある一刀と、内装にどれだけ金使って様が此処が何処で幾らだろうがどうでもいい、とにかく横になって寝たい桃香だけは無関心だった。

一刀がケータイを耳に当てながら、受付と微妙な距離を保ちつつ辺りを見渡すと、軽快なメロディを鳴らすケータイを取る事無くしゃがみこんでいた華琳が「一刀ー!」と手を振って立ち上がった。

 

「良かったー! 間に合ったね」

「華琳マジ天使」

「はっはー♪あがめろー♪」

「いやマジで助かったわ、ホントにありがと」

「今日はヤケに素直だねぇ?」

 

華琳逃げて!!胸に飛び込んだ一刀をかなぐり捨てて逃げて!!

 

「カズ、ちょっちきぃ」

「なになに?」

 

服の襟を霞にヒョイッと持ち上げられ、一刀は不思議そうな顔で物陰に連れていかれた。

華琳逃げて!!

 

「あ、皆さんお久しぶりです~♪」

「………華琳さん。少々、伺いたい事があるのですが」

「なんですか? って稟さんズタボロじゃないですか!?」

「派手に転んだだけです」

「恋ちゃん………待て。待てだよ………」

「フシュー……フシュー……」

「ダメだ……気持ち悪くて動けねぇ………」

「恋と桃香は一体何と戦っているんだ?」

 

華琳逃げて!!何にも悪い事してないけど超逃げて!!

まだ気付いていない凪の脇をすり抜けて!!

 

「ええと……時間ありますし、先に部屋に荷物置きにいきます?って一刀何処行っちゃったんだろ?」

「何、時間はとらせませんよ。 二、三の確認と一つの質問に答えて下さればそれで」

「はい?」

「電話での会話から察するに、一刀は此処の予約チケットか何かを自宅―――あぁ、アパートの方ですね。そちらに忘れてきてしまった。そうですね?」

「はい。ちゃんと確認はしてたんですけど、私も間違えちゃったみたいですいません」

 

華琳逃げて!!ホント逃げて!!

ゴギィッ!!って鳴ってる恋ねーちゃんの拳から距離取って!!

 

「それを、態々華琳さんが届けて下さった。そうですね?」

「はい。いやーこっちのが近くて助かりましたよ~。最悪冥琳に頼んでヘリ出して貰うつもりだったんで」

 

華琳逃げて!!気を探って瞬間移動して逃げて!!

顔を上げてロックオンしてる桃香から離れて!!

 

「そうですか。  では、質問です」

「はぁ………なんでしょう?」

「何故。 貴女が一刀の部屋にある忘れ物を知っているんです?」

「………」

 

華琳逃げて!!!!!

状況を理解して背後に回った凪に早く気付いて!!!

反省

短いですね。でもキリがよかったんでここらで終了。

次回はいよいよ酒飲んで覚醒した暴君モードの一刀が登場します。ドM桃香、お待たせしました。

悠なるかな様に色々手伝って頂きましたので、書く書く言って結局書いてないやつとかも色々妄想中です。

 

今回hujisai様の司馬日記の支援作マークⅡの方も同時に投稿してます。

快くバッタもん受け入れてくださるとかhujisai様マジ偉大。

司馬日記のついでに当方のなにかシリーズも良ければどうぞ~。

 

返信

 

ナナシ様   ただいまぁぁぁぁぁ!!!

 

ミドリガメ様  同士ハケーン!!

 

ちきゅさん様  恥ずかしながら帰ってまいりました。

 

AAA様     書いててやっぱり私は恋姫が好きで、SS書くのも好きなんだなぁと実感しました。

いじり様    来てみ亞莎、これ先週給食費と一緒に盗まれたヤツだべや。

 

R田中一郎様  ありがたいお言葉です、本当に。

 

BellCross様   華琳様マジ天使。

 

Yu^ki様     深夜のノリで産まれたタダのネタ、今やデンプシーロールばりの代名詞です。

 

ノワール様   今回も走っていただきました。

 

悠なるかな様  時を止めた、一年数ヶ月前の時点でな………そして時は動き出す!(キリィ!!

 

tyoromoko様  そこにしびれる憧れるぅ!!

 

喜多見翔馬様  腹を割って話そう!!(笑)

 

dai様     お待たせしました。待ってて貰って有難い話です。

 

サンレッド様  ちゃーっちゃちゃっちゃっちゃっちゃ、ちゃららら~

 

ルーデル様   おいおい、また調子に乗っちゃうべや(笑)

 

happy envrem様  華琳様マジ偉大。

 

ヴィヴィオ様  最高のお褒めの言葉です。

 

 


 
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