No.551605

凶刃月光 第二話

先日あげた凶刃月光の続きです。
中学校の病み期に書いたものですから如何せん内容を覚えていない…。
だからかなり違うものになります。
何か一回だけネットに投稿した気がするんですが途中で断念してしまいまして…、でもそれのストーリーが凄い良かった気がするんです。
そのストーリーじゃあ主人公が結局主神と全層の人たちを敵に回すんですけどね。

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2013-03-05 18:24:33 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:271   閲覧ユーザー数:271

第二話 神獣と狐神と神様体質

 

「よっ、と…。」

一瞬にして、眼前にあった山の頂上まで少女は飛んだ。

そして、着地する。

「ここまで遠かったら、あの人も君の姿勢に気付く筈さ。」

俺は少女から下ろしてもらう。

とにかく、無差別に何かを攻撃する様な祟り神ではない様だ。

俺は、さっきより少しだけ恐怖心がとれた。

「お前は…何が目的なんだ?」

「ヘルメスとか堕ち人執行機関には言わないと思うから話してあげるよ。

思い出すの辛いから泣いちゃうかもしれないけど」

少女は山頂の岩に座った。

俺はその後ろで見ていたが、手招きされたのでその隣に座る。

「僕はさ、とある人が好きで…その為に黒い衣服と業物を集めているんだ。

今でも人気の死神ルナーリアっていう美少女アクションゲームの作品があるでしょ?」

勿論、人との接触を避けて部屋に籠りっぱなしだった俺には分かる。

「知ってるよね。あれだけ人気なんだ。

僕は絵も得意でさ、よくその絵を描いてた…。

僕の兄もそれが好きでさ、喜んでくれるんだ。

僕は妹でありながら兄さんが好きだった。

けど…僕と兄はいつも虐められていた。

それでいつも支え合ってるうちに結婚したいって僕が言ったんだ。

兄さんは条件を出して、それを承諾した。

でも翌日だったよ、二人が堕ち人になったのは…。

まぁ…それから生き残って祟り神やってるんだけどさ。

で、その条件が死神ルナーリアになれって、そしたら苦しみからも逃げられるって、

俺が側に居てやるよって、そう言ったのさ…。

死神ルナーリアの武器はアサルトライフル二丁、大鎌、ナイフ。

ほら、今僕が持ってる武器と一緒でしょ?」

彼女は武装のすべてを見せた。

正真正銘、全てが金色のムーンシリーズ。

すなわち業物であった。

「でもきっと兄さんはこう言おうとしたんだと思う。

嫌いな奴らは殺せ、死神になったら殺せ。

だから…死神になれって。

僕が怖ければ誰も僕にたてつかないでしょ?」

少女の笑顔は痛切で、何故か心が締め付けられた。

「…返すつもりは?」

「場合による、かな。

正直、堕ち人になった瞬間は記憶がない。

兄さんもどうなったか未だに分からない。」

そう語る少女は、喋りかける事が許されない哀愁が漂っていた。

シンパシーを感じてしまう、理由は長い。

「ま、まぁ…兄さんがもし死んでて、生きてても約束を守ってくれなかったら意味がない。

そしたら業物も返す、大人しく討伐されてやるさ…。」

「馬鹿だな、祟り神は殆どの場合が何年も経過した堕ち人がなるものだ。

そんな数年も前の約束___」

「黙れ、兄さんはきっと覚えてる。」

今度こそ本気であった。

彼女は祟り神、その形は人間に近いがやはり人外である。

ローブを破って出て来たのは根元の黒い帯状の白い尻尾だった。

俺の頬が赤い線を描いた。

それも、何本も。

「君は祟り神や堕ち人の涙を見た事があるかい?

僕だって、泣きもするんだ。」

頬の血を拭い、彼女と視線を合わせた。

彼女はその目から赤い涙を流す。

人の顔を見るのは得意ではない、だから目を背けた。

だが、そんな事より祟り神も泣く事が衝撃だった。

「君とはこんなに話したから。最早知らない仲とは言えないからね。

名前を言っておこう、共由白水(トモヨシ ハクシィ)、白い水と書いてハクシィだ。

あと早く逃げると良い、君が幾らあの神様体質の子だろうと本物の神に勝てる訳がないんだ。

じゃあね、また会おう」

ハクシィはまた飛んだ。

俺は、山頂からヘルメスの車両と、とある人物二人を眺めた。

「堕ち人執行機関…?何で?」

神様体質。

それは超人染みた身体能力を生まれつき持っている事。

だがこれは一種の病気、何故なら代償に『人系の心臓を一定量で接種しなければならない』からだ。

俺がそれである。

正直、神様体質が存在出来るのは堕ち人や祟り神が居るからである。

それらを排除し、その報酬が生なのだ。

殺さずして俺らの存在は許されない。

だったら、殺すしかないのだ。

俺たち人間がどうして生きたがるのかは未だに不明だ。

子孫を残す為に生きる、コレが生きたがる理由と言われている。

だが…、子孫を残した所で何になるんだ…?

それが分からなくても、俺らは堕ち人を殺して生き残りたがるのだ。

だから、例え共和が出来る存在であっても、彼らを殺さずにはいられない。

俺は赤い雨の振る帰り道、瀕死の堕ち人三人を倒して喰った。

神様体質の心臓接種の適正量は4~5だ、これで丁度いい。

でも…あんなに機械的に殺して来た堕ち人が、

こんなに殺しにくくなってるとは思わなかった。

『君は祟り神や堕ち人の涙を見た事があるかい?』

ハクシィはそう言った。

深く考えられずにはいられない。

現在第一層、第二層、第三層。

その内第二層の第一層へ向かうゲートに近い神社だ。

赤い雨は未だ降り続けてる。

「家がないの?」

「あります」

俺は、後ろからの声にそう言った。

家には帰れる。

しかし、今はヘルメスに包囲されてるだろう。

だから帰ったら捕まる、そして姉に会わなければならない。

それだけは、勘弁したかった。

「寒くないの?」

「寒いです」

「帰ったら?」

「事情があって帰れないんです」

「そっか、君は堕ち人かい?」

「見て分かりませんか?堕ち人じゃないです。

けど神様体質です」

「そっか、何かあったんだ。」

今更だが神社だ、そりゃ神様も居るさ…。

「今はゲートが出来ちゃって、ここはお祭りくらいにしか使われなくなっちゃった。

お供え物の人かなとか思ったけど、ただの家出か…」

「ご迷惑の様ですので僕は帰ります、久々に挨拶をするのも良いかもしれないですから」

「ふぅん…、嫌なのにいかなきゃならないなんて君も大変…

私が変わってあげたい位」

カタンッ、そう言って神社の障子が開いた。

「これあげるよ、寒いでしょ?」

「いただきます」

俺は渡されたお茶をいただく。

そして、この神社の神が隣に座った。

今日はヤケに人と会う。

何だか疲れてしまう…、こんな事ではいつか死んでしまう。

「アレ…?君って女の子?」

「…やっぱり髪長いですか?」

「うん、長い長い。

声も高いじゃないか、やっぱり変わってるんだね…」

その神は俺の長髪を不思議そうに触った。

俺としては、パーカーの中に収めれば何ら問題ないので切ってないだけだ。

只…やっぱり髪は長くなっている様だ。

というか…鏡なんて見ないから自分がどうなってるかが分からない、

正直、変化に気付けない。

「君は何から逃げてるの?」

「ヘルメスと堕ち人執行機関とアマテラスからです」

「やっぱり堕ち人なんじゃないの…?

何か可哀想だし匿ってあげるけど…?」

「今日は色々な人にお世話になってます、

堕ち人じゃないんですけどその好意は受け取らせて頂きます。」

「嫌だなぁ…、ここ」

「どうして?」

僕は桜に聞いた。

ここは山である。

後ろには鴉谷杭奈と水野可奈がいる。

「だって…ここって金曜の赤い雨の日に来ると幽霊が出るって…。」

「堕ち人は出るけれど、幽霊はなぁ…。

イタズラ好きの妖人じゃない?」

「そうだと良いんですけど…」

「桜ちゃんったらビビりすぎよ」

「ですが杭奈成人試験官…、幽霊も強ち嘘じゃないって言うじゃないですか…。」

「大丈夫よ、確かに成人になれる精神かどうかを見極めて、

堕ち人にするかしないかをして来た私に恨みは多く向けられてるでしょうね。

けど、幽霊も倒せない事はない筈よ。

この世に存在してもので、倒せないものはないんだから。」

「は、はぁ…」

姉の杭奈さん。

彼女は第二層、通称『児童専用特殊区画』の重要人物である。

何が重要かというと、彼女は児童専用区画から、通常区画である第一層に行っても大丈夫かどうかを判定する成人試験官。

もし、それで落ちてしまったら即刻堕ち人と見なされる。

つまり、学生時代の試験戦争が終わったとしても、人生を左右する試験はまだあるのだ。

何故神様体質を持っただけの一般人である俺が彼女の弟なのか全く不明だが、

彼女が俺に暴力を振り、彼女や父に対する抵抗力を根こそぎ剥いだのは事実だ。

俺は、反射的に彼女に逆らえない。

それになにより…、怖いのだ。

怖くて怖くて怖過ぎてたまらない。

二人きりにでもなったら恐らく気絶する。

速攻で、話を聞きもせず一秒で。

「ほら、ご飯だよ」

そして、こうして俺を匿ってくれている神様は稲荷様。

かつては人だったのだが、ある事を境に神となったらしい。

「君の事調べて来たよ、大変だね。」

「はい、有り難う御座います匿ってくれて。

実は、今騒がれている黒剥ぎ事件と業物強奪事件、

その犯人と話している所を見られちゃって…、その犯人が俺を逃がしてくれたんです。

それで、家も包囲されて逃げてるんです。」

「君ったら、そんなに自分のお姉ちゃんが嫌いなんだ?」

「はい。」

「あっさり言うね…。

でも安心してよ、私は君を助けるつもりでここにおいてるんだから。

さて、美味しいかな?」

「あ、はい…。」

「いやあさ、君も中々人と話さないみたいだけど私もそうなの。

唯一の違いは話す事は得意だし嫌いじゃないって所かな」

「要するに久しぶりってことですよね?」

彼女は頷いて、ご飯を食べる俺をまじまじと見つめていた。

「麒麟って、知ってる?」

「…?」

急にそんなことを言われてしまってきょとんとする。

その仕草を見て彼女は察したようで、その麒麟とやらの情報を持って来てくれた。

「私の友達だよ、仲良かったんだぁ…。

今は堕ち人執行機関に居て、きっと君の事も追ってるんじゃないかな?」

「えっ…?」

「大丈夫だよ、きっと事情を話せば分かってくれるし、力になってくれる美人さんさ」

「つまり…何が言いたいんですか?」

「君はあの人達嫌いなんでしょ?つまり近付きたく無い捕まりたく無い。」

俺は頷く。

「でも麒麟ちゃんは恐らく知り合いである私を訪ねる。

そこで君が見つかっちゃったら厄介だよね?」

再び頷く。

「だから、君は隠れてて。

こっそり麒麟ちゃんに話もつけとくし、ちゃんと逃がしてあげるから。」

「初対面でここまでされるのは少し疑問です。」

「神様は人間を我が子の様に愛するもんだよ、辛そうなのは見てられないんだ」

彼女はそう言って、帯状の九本の尻尾で俺をくるんだ。

ドーム状の尻尾の中で、俺は驚いていた。

中から外が見えるし、どうやらあちら側からも此方は透明な様だ。

「そろそろ来るよ」

その外から、稲荷様の声が聞こえた。

途端、激しい雷撃と銃撃の音がした。

(ここは神社だぞ!?)

にも拘らず異能や銃をブッパとは…いやはや相当な荒くれ者が来たらしい。

『大丈夫、君が相当な危険人物ってことだよ』

テレパシーなのか何なのか、彼女はそう言った。

大丈夫な事なんて何一つないじゃないか、危険人物なんて思われたくは無かった。

だが、こうして神の居所が荒らされている所を見るとただ事じゃないようだ。

何でだか、俺にはさっぱりである。

「やぁ、久しぶりだね」

「だね、会うとは思わなかった」

「せ、先輩っ!?ここ神様居たじゃないですか!!」

聞き覚えのある声だった。

田中さん…?俺は初めて彼女の仕事に同席した。

とはいえ、目標としてだが…。

この第二層では、多くの学生が堕ち人に関わる何らかの組織に加わっている。

それを巷では『仕事』と呼んでいる。

かくいう俺も仕事は一番面倒な…と言うか大変な『討伐系』である。

そんな俺は息を殺し、稲荷様と麒麟と言われる堕ち人執行者と田中桜の話に耳を向けた。

「君は相変わらずだね…、慈愛が強いのか寂しがり屋なのか、また誰かと寝てた?」

「前者も後者も否定はしないよ、中々人間離れが出来なくてね。

けど、私は誰とも寝てないよ。

きっと君ならここに来るだろうと思って待ってたんだ。」

「分かったよ…。

所で、ここに如何にも暗そうな子が…ってこの様子じゃ居ないよね」

「この様子って言っても、君達が荒らしたんだけどね。

でも、コレで理解出来た?ここには誰もいないさ。」

「そうだねそうだね、君はもう…又あとで来るよ。

ただ…分かってるけど扱いは慎重にね。

君が壊して来た人間とは違うんだ」

(…?)

「分かってるさ、君ってしつこいね」

「心配だから言ってるの!

ほら桜、ここには居ないから行くよ。」

「は、はいっ!

し、失礼しましたぁぁぁ!」

彼女は思いっきり走る、麒麟という執行人の後を追って。

そして俺はドームから出た。

「お疲れさま、ちょっと音が大きかったかな…驚いちゃった?」

「大丈夫です、いっつも高振動電子刀ぶん回してるから…。

それより…今まで壊して来た人間って…?」

「ふふっ、ちょっとした過去のお話さ。

でも君は、簡単にはいかないよね?」

彼女は不適な笑みを浮かべて僕を眺めた。

それは狐が獲物を見つけた時の笑みか、それとも…。

とにかく、俺は恐怖していた。


 
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