No.551433

天使と悪魔の代理戦争 第十一話

夜の魔王さん

アリサちゃんの家には犬がたくさんいる。
すずかちゃんの家には猫がたくさんいる。

2013-03-05 00:41:11 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:737   閲覧ユーザー数:718

 その後の調査でジュエルシードは全て集まったことが確認されたので、僕たちは一度自宅に帰る事になった。

 その前に事件の今回の事件の犯人……分かり易く言うとあの紫色の雷を撃った人の話を聞けた。

 

「僕らと同じミッドチルダ出身の魔導師、プレシア・テスタロッサ」

 なのはちゃんが怒られた後、リンディさんに話を振られたクロノくんがエイミィさんに頼んでモニターに紫色の髪の女の人の画像を出して貰いながらそう言った。

「あの時、フェイトちゃん『母さん』って」

「親子、ね……」

『プレシア・テスタロッサはミッドチルダの民間エネルギー開発会社に勤務していましたが、事故を起こして辞めていますね』

 それが二十年以上前の話。それ以降、彼女が何をしていたかは誰も知らないそうだ。

 

 

 

「なのはちゃん! 元気そうで良かった……」

 久しぶりに登校した僕たちに気付いたすずかちゃんが駆け寄って来る。ちょっと離れた場所ではアリサちゃんがジト目でこちらを見ていた。

「ありがとうすずかちゃん。アリサちゃんも心配かけてごめんね」

「まあ、良かったわ。元気で……」

 その発言は尻すぼみになる。アリサちゃんは少し素直じゃないのだ。

 その光景を一歩離れた場所で微笑ましく見ていた僕の久しぶりに袖を通す制服(なのはちゃんは毎日着ていたが、僕は私服を着回していた)が軽く引かれた。振り返って見るとそこにはいつも通り無表情な白くんがいた。

「どうしたの白くん。何か用事かな?」

 彼から話しかけて来るのは珍しいため、一体何事かと少し身構える。

「これ、いなかった時の授業のノート」

「あ、ありがとう。大変じゃなかった?」

 白くんは首を横に振る。彼は両利きなので同時に二つ書けると言っていた。

「それと、あの二人が同時期にいなかったけど、関係ある?」

「ううん、関係ないよ!」

 思わぬことを聞かれたので思わず慌ててしまったが、白くんは納得してくれたみたいだった。

 

「そっか、また行かないといけないんだ」

「二人共大変だね……」

「うん。でも大丈夫! 弥雲くんが一緒だし。それよりも、日頃の練習ができないのがちょっと不安かな」

 艦内で走り回るわけにも木刀を振り回すわけにもいかないし、それよりも魔法の練習を優先しているというのもある。

「ああ……あのトンデモ剣術ね」

「トンデモって!」

 アリサちゃんの言葉には納得せざるを得なかった。

「だってなのはちゃん。少々習っている僕が言うのもなんだけど、士郎さんと恭也さんの立会いを見たらそう思うのは仕方ないよ?」

 魔法を使わずに人間の限界を超えてると思うもん。近距離の立会だと魔法使っても勝てる気がしないし。

「ねえ、放課後は一緒に遊べる?」

「あ、うん。大丈夫」

 すずかちゃんの話題の転換に乗る。この話題は続けてても何も生まれない。

「じゃあ家に来る? 新しいゲームもあるし」

「ホント!」

 なのはちゃんが嬉しそうな声を上げると、アリサちゃんが何かを思い出したのか、アッという顔をした。

「あ、そう言えばね、昨日怪我してる犬を拾ったの。すっごく大きくて毛色がオレンジで、見たことない種類」

 その話を聞いて、僕となのはちゃんは共通の生き物が思い浮かんだ。

(でも、まさかね)

「それでね、おでこに赤い宝石が付いてるの」

 うん、これで確定した。他にあんな動物が地球にいるわけない。

 

 

 放課後、いつもの様について来ようとしたあの二人を撒き、アリサちゃんの家に向かうと、話に出たおでこに赤い宝石が付いたオレンジ色の大型犬――アルフさんがいました。

『やっぱりアルフさん。その怪我、どうしたんですか? フェイトちゃんは?』

 なのはちゃんが念話でそう尋ねると、アルフさんはうなだれてしまった。

「大丈夫?」

「傷が痛むのかな……? そっとしといてあげよ」

 その動作を痛みによるものだとだと思った二人が心配そうにする。その時、すずかちゃんに抱えられていたユーノくんがその腕の中から逃げ出した。

「あっ、ユーノ、危ないぞ」

「大丈夫だよ。ユーノくん賢いから」

(人間だからね)

『なのは、弥雲。彼女からは僕が話を訊いておくから』

「さあ、おやつにしましょ」

「俺パス。こいつら見てる」

 そう言った白くんの片手には薬箱。どうして持ってるかと尋ねたところ、昨日アリサちゃんが拾ったアルフさんを治療したのは彼らしい。伊達に動物病院でバイトはしてないようだ。

「お願いね。終わったらいつでも来ていいわよ。おやつも取っておいて貰うから」

「感謝」

 

 

 

 念話でされた会話は僕たちにも聞こえていた。

 その内容は想像もしていなかったほど酷く、今のフェイトちゃんとアルフさんの心情を計るには十分すぎるほどの内容だった。

『聞いていたかい、二人共? 僕らはプレシア・テスタロッサの確保を最優先事項として動くだろう。君たちはどうする?』

『私はフェイトちゃんは助けたい。友達になりたいって返事もまだ聞かせてもらってないし』

『僕は、なのはちゃんにお任せで』

 自分でも流されすぎだと思うけど、個人的にもフェイトちゃんを救いたいとは思うが、それはなのはちゃんが適役だと思うのだ。

『なのは、だっけ? 頼めた義理じゃないけど、フェイトを助けて』

『大丈夫。任せて』

『僕もできる限り協力するよ』

 

『フェイト救出の作戦だが……どうする?』

『一応、考えてることはあるんだ』

 そのなのはちゃんの声なき声に、僕は少し背筋が寒くなった。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
1
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択