No.551245

運・恋姫†無双 第十話

二郎刀さん

もっと短くまとめてぽんぽんと読めたら良いのになーって思います。
話数が稼げますし(本音

2013-03-04 15:35:43 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1971   閲覧ユーザー数:1729

夢を見た。

 

 

龍の夢だ。

 

 

龍となって、大海を泳いでいた。

 

 

日輪さえ及ばぬ底知れぬ深淵と、光の柱が射す狭間を、龍となってどこまでも泳いでいた。

「紗羅殿、見えてきましたぞ」

 

「ぬっ……」

 

 

洛陽。漢の中心と言える都。相応の日数はかかったものの、割とあっさりと着いてしまった。時刻はすでに日が落ちかけている頃。西の地平線に日輪が傾き、黄金の残照が、群青の重い雲を僅かに彩る。

 

 

「寝ていたか……」

 

 

紗羅はどうやら寝てしまっていたらしい。一度、大きな伸びをしてから、欠伸を噛み殺す。旅の疲れというのは、少しずつ蓄積してくる。慣れぬうちは、ことさらにそれが響いてくるのだ。

 

 

「洛陽に入ったら、すぐに宿を探さねばなりませんね」

 

 

陳宮はよく気配りが出来る。今みたいにうたた寝していると、気付かないうちに手綱を持ってくれたりするのだ。十日前も伸びてきた髪を切ってもらったり、馬の世話を任せたこともある。紗羅はそれを求めていないが、彼女なりの恩返しだった。

 

 

「俺は、靴が欲しいな。擦れが痛い」

 

 

別の事を、紗羅は考えていた。

 

 

――あそこに、もしかしたら『呂布』がいるかもしれない。

 

 

そうしたら、紗羅の陳宮についての仕事は終わりだ。呂布の元へ行かせるなら、陳宮は未来に殺されることになるかもしれない。そう考えもしたが、その考えは放棄した。その事はここでは確定した未来ではないのだ。知りもしない他者の未来に口を挟むなどおこがましい。それは本人が決めることだ。それに紗羅個人も、呂布に会えるということは心を躍らせることであった。

城門の前には門を守る兵が立ちはだかっている。ここで検問などをするのだ。大陸の中心であるからか、いかにも堂々として頼もしさを感じる。充実しているのだろう。彼らの気が漲っているのを、紗羅は感じた。

 

 

「日没を過ぎれば、ここは通行出来ぬ事となっています」

 

「ぬっ?」

 

 

後ろめたい事がない紗羅にとっては、この出来事は予想外だった。門番に止められ、ここは通れない、と言われたのだ。何故だ? と思うと陳宮がそれに答えてくれる。

 

 

「紗羅殿、どうやら禁令が出ているようです」

 

「禁令?」

 

「はい、この掲示板を見てくだされ」

 

 

陳宮が指差す掲示板を見る。

 

 

「いかなる身分の者であれ、この北門を騒がす者は罰する、と書いてあります」

 

 

紗羅も掲示板に書いてある文字を読む。

 

日没が過ぎると北門の通行が出来ない事、武器は都に持ち込めない事、下馬をして人物の確認を取る事などが書かれている。これを破る者はいかなる身分でさえ罰に処されるらしい。

 

と、紗羅の動きが止まった。

 

 

「紗羅殿?」

 

 

陳宮が不思議に思い、彼の目線の先を見ると、最後の文字に釘付けになっている。

 

 

洛陽北部尉 曹操孟徳

 

 

「曹操? この者がどうか――

 

「曹操か!!」

 

「うひゃあ!?」

 

 

言わずと知れた三国志主役の一人。曹操孟徳。治世の能臣、乱世の奸雄と評され、覇王とまで言われる人物だ。

 

 

「まさかこんな所に居るとは……」

 

「どどど、どうしたのですか!?」

 

 

――会ってみたい、あの『曹操』に。

 

 

紗羅は強く思った。

 

 

「……会うか」

 

「紗羅殿?」

 

「公台、馬車を頼む」

 

「えっ? えっ?」

 

 

戸惑う陳宮に馬を任せると、馬車から飛び降りた紗羅が、城門の前で叫び出した。

 

 

「曹操!!」

 

「紗羅殿ぉ!?」

 

「居るか!! 曹孟徳!!」

 

 

騒者打擲。紗羅が捕まった。

 

 

――曹操に会える。

「お前かしら? 私を名指しで呼んでいたのは」

 

「……大きいな」

 

 

それが、紗羅が曹操を見た時の第一声だった。

 

やはり女性だが、他者とは比べ物にならない位の圧倒的な覇気にまず呑まれそうになった。彼女の一挙手一投足が目に付いて離れない。他者より『気』に敏感な紗羅はことさらにそれが大きく見えた。

 

 

――これが、曹操か。

 

 

彼の、大きい、と言った言葉に、曹操は興味を引かれ、曹操は、にやりと笑う。その不敵な笑みに、紗羅もまた惹かれた。

 

紗羅は、まるで触れ難い何かを目にしているような感覚で曹操と対峙していた。

 

 

「へぇ……」

 

「あなたが、曹孟徳殿か」

 

「ええ、そうよ。洛陽の北部尉をやっているわ。で、質問に答えてくれる? 何故私を?」

 

「あなたに会いたかったからだ」

 

 

何を馬鹿な事を、と言う言葉が、兵の口から聞こえてきた。兵が、さっさと準備をしろ、と急かしてくる。打擲は、五彩棒という金属製の棒で執行される。紗羅はその手引きを聞かず、曹操との会話を続けた。

 

確かに傍から見れば馬鹿げたことだが、紗羅は禁を破ったことに後悔はしていない。相手は曹操なのだ。それだけの価値があると判断しての行動だ。その目に迷いはない。曹操は、増々彼に興味を持った。曹操も、紗羅の会話に応じる。

 

 

「もう一つ、大きい、と言った意味は?」

 

 

身長、という意味なら、曹操はお世辞にも、大きい、とは言えない。それ以外の何かを、この者は感じ取ったのだと、曹操にはわかった。

 

 

「それは、あなたがよく知っているだろうに」

 

 

面白い、と曹操は思った。北部尉になってから注目は集めているが、彼のような人物はまだ見ていない。

 

 

「夢を見た」

 

「夢?」

 

「『臥龍の夢』だ、曹……孟徳殿。きっとあの夢は、この事を指していたんだろう」

 

 

臥龍。その言葉は、曹操に少なからず衝撃を与える。

 

 

「私を龍と言うか。面白いわね」

 

 

また笑った。そしてまた惹かれた。態度、笑み、覇気、曹操と言う存在全てに。

 

紗羅は思った。

 

 

――例えば、例えばだ。

 

 

【ここで曹操を殺したらどうなるだろう?】

 

 

肌が粟立った。

 

 

後の歴史の偉人を殺す。

 

 

自分の手で、

 

 

殺す。

 

 

そうしたらどうなるのだろう?

 

 

思う。

 

 

三国志が生まれることは無くなるか?

 

 

劉備と孫権の戦いになるか?

 

 

袁紹の天下になるか?

 

 

曹操が滅ぼした名も無き英雄が立ち上がるか?

 

 

曹操から生まれるはずの英雄が無くなるか?

 

 

曹操が居ない三国志。それを自分の手でやるのだ。想像するだけで身が震えた。

 

強い衝動に襲われる。心の臓が高鳴るほど、やってみたい、と思った。恐ろしい事に、妖術師である紗羅は、それが出来てしまう距離にいた。彼女の細い首に吸い込まれそうになる。

 

 

お兄さん。

 

 

ふと、程立の顔が思い浮かんだ。

 

程立の日輪の夢はどうなってしまうか?

 

 

――……駄目だな。

 

 

出来ない。程立には、恩がある。だから、出来ない。それに、曹操を殺すのは、三国志にとって勿体無さすぎる。自分でも邪(よこしま)だと思える考えを、振り払うだけなら簡単だった。

 

刑の準備は出来た。あとは曹操の声を待つだけだ。

 

 

「最後に名前を聞いておきましょう」

 

「姓は紗、名を羅、字を竿平。運び屋だ」

 

「その名、覚えておくわ。刑を執行せよ!」

 

 

打擲が始まった。

あとがきなるもの

 

タイムパラd(ry

 

二郎刀です。TINAMIの使い方がまだよく把握できてないです。それに近頃中二病が酷くなってる気がします。頭の中の怪物(爆)が暴れt(ry

 

 

で、

 

 

最近他の作者様の恋姫作品で、旅をするものを発見しました。読んでみました。すっげーおもしれー。それに自分が考えてた内容といくつか若干似通ったものがありました。っべー、まじっべーわ。どうしよう。私の作品が二番煎じになってしまう! 一話一話面白い話が書けるって凄いですよね。

 

という訳なので、その作品を出来る限り迅速に見なければなりません。更新も少し遅れるかもしれませんね。

 

 

では今回の話はどうでしたでしょうか? 少しでも楽しんで頂けたのなら幸いです。


 
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