No.550899

IS x アギト 目覚める魂 53:決着

i-pod男さん

ようやく完了しました。これにてまた一つ完結です。応援して下さった皆様、本当にありがとうございます。終わりがグダグダですが、それでも良いと言う方は、どうぞ。

2013-03-03 17:48:14 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4926   閲覧ユーザー数:4592

ある庭のほとりで、肩にかかりそうな長さの髪の毛を持つ男と、あの青年がいた。男の方は椅子に座っており、青年は立っている。

 

『無駄な事を・・・・あなた方は只の人間だ。人間の力では、何もする事は出来ません。人間の運命は私の手の中にあります。人類は全て自らの手で命を絶つ事になるでしょう。』

 

『果たしてそうかな?』

 

『私は、人間の側からアギトを滅ぼす為の使者として貴方を復活させた。だが、その必要は無かった様です。人間はいずれアギトを滅ぼします。』

 

『貴方は人間を作りながら、人間の事を何も知らない。』

 

断言した青年の言葉に、男は微笑を浮かべて静かに揶揄した。

 

『人はアギトを受け入れるだろう。人間の無限の可能性として。』

 

『では見守ってみましょう。貴方の言葉が正しいかどうか、人間とは何なのか、もう一度この目で。』

 

光が晴れると、学園はほぼ瓦礫の山と化していた。一夏と秋斗はその中から這い出て来る。

 

「あーーー・・・・・しんどっ・・・・・!!」

 

「確かに・・・・最後のアレはきつかったな。でも・・・・・何か、妙な感じがしなかったか?」

 

「はい。何か・・・・変なビジョンが・・・・」

 

『あれは、私の片割れとその使いが最後に交わした会話です。』

 

黒服の青年と瓜二つの顔立ちを持つ白い服を来た青年が現れた。

 

「お前は・・・・?」

 

『私は、人間にアギトの力を授けた者です。やはり、人間にこの力を託した選択は、間違いではなかった。これからも、その力を有意義に使って下さい。』

 

「捨てる事は出来ないのか?世界中にいるこの力を得た人間は、進んでこの力を手に入れた訳じゃない。」

 

『残念ながらそれは出来ません。アギトの種は、万を超える私の命の欠片のほんの一摘みに過ぎないのです。今こうして貴方達の前に現れる事すら大変なのです。』

 

見ると、確かに青年の体は徐々に粒子かして行き、残すは上半身だけとなった。

 

『改めて見るとこの世界は私が知る物に比べると、見る影もない程に変わってしまいました。ですが、私は信じ続けます。人間の強さと、内に秘めたるその可能性を。貴方達も、諦めないで下さい。それが私のたった一つの願いです。』

 

声は徐々に掻き消えて行き、やがて青年の姿は跡形も無く消え去った。長い沈黙を最初に破ったのは、秋斗だった。焦げた髪の一部を引き抜いて投げ捨てると、

 

「帰るか。」

 

「ですね。」

 

二人は仲間と共に島を後にした。ボロボロになった二人を迎えてくれたのは、学友と教師の皆だった。島で何が起こったのか、そんな事は最早どうでも良かった。只友人が無事でいてくれた、その事実を噛み締める。一夏は簪に泣き付かれたままどうする事も出来ず、泣き止むまで付き添う事となった。翔一や木野、アンノウンと今まで命を賭して戦って来た仲間達は、状況を察してアギトの力を返還してもらうと、静かにその場を後にした。

 

「秋斗君。」

 

「どうした?」

 

「実は、アメリカからこう言う物が送られて来たんだけど。」

 

楯無の手には、一枚の書類があった。それは、一夏と秋斗の二人を自由国籍持ちのIS操縦者に任命すると言う物だった。そこにはヨーロッパやアジアの国々のトップの署名が描かれている。

 

「自由国籍の、申請書・・・・!!通ったのか・・・・?!」

 

「ええ。貴方達二人がここに署名して私が委員会にこれを提出すれば、晴れて自由国籍権を手に入れられるわ。」

 

差し出されたペンを取り、二人はその紙に名前を書き込んだ。

 

「オッケー、ありがと。うわ、やばい・・・・たて、な」

 

だが、署名を終えた直後、一夏は仰向け、秋斗はうつぶせにどさりと倒れた。碌に受け身も取れずに頭や体を強かに打ち付けてしまったが、その鈍痛が感じられない程に二人の体は消耗し切っていたのだ。体も鉛に変わってしまったかの様に重く、疲労と空腹で碌に喋る事も出来ない。

 

「あらら。簪ちゃーん、ウチに運ぶわよー。」

 

「はーい。」

 

二人はエージェントらしき服装をした男女十名余りに担がれて行き、手厚い看護を受けた。元々頑丈な体である為、二人は翌朝早朝に目を覚まし、怪我も全て完治していた。

 

「全く・・・・心配させた挙句・・・・」

 

「すまん、簪。でも、ちゃんと戻って来ただろう?俺は出来ない約束はしない。だから、俺の事・・・・見放さないで欲しい。色々迷惑かけるだろうけど。」

 

「・・・・今日デートしてくれたら、考えてあげる・・・・」

 

「それ位で済むなら安いもんだ。良いぜ。」

 

「ん・・・・なら、許す。」

 

「ねえ、一夏君。」

 

「はい?」

 

「いちゃつくのは構わないんだけど、場所考えて、ね?」

 

「すんません・・・・久々だったもんで、つい。でも、これで戦いも終わりですか。」

 

「いや、まだだ。次の戦いがまだ残ってる。委員会と、そしてもしかしたらの話だが、篠ノ之束との戦いが、な。」

 

「委員会は分かりますが、束も・・・?」

 

「考えてみろ。一時は世界を眉一つ動かさずに混沌に陥れた人間だぞ。あんな気紛れな奴が何時どこで何をしでかすか、俺でも分からない。衝突の可能性は無いとは言い切れないだろう?それに、アンノウンが消えた今、また、何らかの動きは必ずある筈だ。」

 

「確かに・・・・でも・・・・・・戦う事は避けられないんですね・・・・」

 

「残念ながらな。元々、今まで俺達は話し合いが通じる様な奴らを相手にして来たと思ってるか?」

 

「無いです。学園で突っかかって来た人物を除けば、ですけど。」

 

「こーら、そこ二人。今は休養中なんだから先の事なんて後、後!今は治療に専念して、大人しく私達に看病されなさい!リハビリもしなきゃ行けないんだから。」

 

「お前は世話焼きな母親か?俺はまだやる事がある。これももうすぐ書き終わるしな。」

 

そう言って手に持ったパソコンの画面を見せる。

 

「何を?」

 

「論文だ。IS不要論と俺は呼んでる。」

 

「「「え?!」」」

 

「ISは元々宇宙進出の為に作られた物だろう?それを軍事転用した時点で世界は既に過ちを犯していたんだよ。オーヴァーロードがまた人間を滅ぼそうとした理由はもしかしたらそれかもしれない。戦争の勃発率が高くなり、アラスカ条約なんて欠陥しか見当たらない様な物も作られた。急遽作られた委員会ですらまともに動いてはいない。俺は、ISをもっと有効活用する方法があるんじゃないかと思ってる。例えば、人命救助、工事、宇宙進出とか。ISを作った科学力で、また別の何かを作れるんじゃないかと思う。戦いの道具にした所で、またどこかの誰かがそれを超える何かを作る日は必ず来る。また、オーヴァーロードが人類を今度こそ本気で消してしまうと言う忌避すべき終端から世界を遠ざけねばならない。これを、全世界に発信する。」

 

「それで、どうするんですか?」

 

「波紋とは一つ現れれば、また別の波紋を呼び、更なる波紋を呼ぶ。様子を見るしか無い。どう転ぶかは、世界次第だ。」

 

最後に力強くキーを押し込み、数十ページに及ぶそれは世界中に発信された。

 

「もう一息だ。行けるな、一夏?」

 

「勿論。」


 
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