No.548066

現代に生きる恋姫達 目指すは恋姫同窓会 番外・??編 

狭乃 狼さん

愛紗の後編がまとまりきらないので、まずは先にこっちを公開。

あとがきにもしましたが、この二人をこのシリーズに出すことは、
MiTiさんからも許可を得ております。

続きを表示

2013-02-24 10:11:26 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:5909   閲覧ユーザー数:4883

 

 現代に生きる恋姫達 目指すは恋姫同窓会 番外・??編の前編

 

 

 幼い頃から毎夜のように見ていた、ただの夢にしかすぎないものだと思っていたソレが、実は自分の前世における記憶が、無意識のうちに魂の奥底から湧き上がって来ていたものだった……。

 

 「……なーんて、ね。そんなこと、現実にあるわけ無いわよねー」

 

 普段、あれやこれやな文章ばっかり書いて居るから、そんな、マンガみたいな妄想が浮かんでくるんだ。現実の自分はただの大学生に過ぎず、SFやファンタジーな世界の登場人物というわけでは決してないのだから、そんな非現実な現象などとは無縁に決まっている。

 そこまで思考して、想像の世界から再び目の前の現実へと意識を戻し、机の上に鎮座する愛用ノートPCへとその目を向ける私。画面には眉目秀麗な美男子が、これまた華美ともいえる武者鎧を身に着けたイラストが映っており、マイPCの画面を飾っている。

 

 「さーてと。次の締め切りまで後どれだけもないし、とっとと原稿、完成させちゃわないとね」

 

 ここで語弊の無いように言っておくが。

 締め切りだの原稿だの言っていても、私はべつにプロではない。作家であるという点はともかく、別に商業誌に作品を載せているわけではない。今、目の前の画面に開かれているメモ帳機能につらつらと綴られている文字の羅列は、あくまで趣味の範疇で書いているに過ぎない。

 たとえ、これを完成させたものを印刷物にし、一冊の薄い本にして、年に二度の大イベントであるコミックマーケットという名の即売会で売っていようとも、所詮は素人に毛が生えた程度のアマチュアでしかない。

 けれど、たとえアマチュアであろうがなんだろうが、好きな作品への情熱、それだけは紛うことなき本物であり、いわゆる二次創作作家としての私、『東乃輝里(とうのかがり)』を形成するアイデンティティなのだ。

 

 「にしても……次の冬コミ、久々壁になれたのはいいけど、隣がかの『臥竜鳳雛』とは……お客、全部持っていかれないといいけど」

 

 臥竜鳳雛。

 何年か前のコミケに初参加して以降、あれよあれよという間に超人気サークルの一角に納まり、今年の夏コミではついに壁サークルの一つにまでなった、新進気鋭の同人サークルである。主催は確か二人の大学生で、ペンネームはそのものずばり、『臥竜』と『鳳雛』。

 臥竜は確か、三国志と呼ばれる物語の中に出てくる、かつて本当にこの世に存在した偉人、天才軍師としてその名を知らぬ者はまず居ないだろう、諸葛亮孔明のこと。対して鳳雛とは、その諸葛亮にして天才と呼ばしめた軍師、龐統士元のことである。

 

 「……でも、ほんとになんでまた、こんな大層な名前をペンネームにしてるんだろ、この二人。……さっきの妄想じゃないけど、前世がそうだったとか?はは、まさか」

 

 単に、三国志が好きで、たまたま、件の二人の軍師が、それぞれに好きなだけだろう。かくいう私だって、三国志は原点から演義から、はてはそこから派生した数々のオマージュ作品まで踏破したほど、あの物語は大好きである。

 特に、中盤になって以降登場する、とある人物にいたっては、夢の中で自分がその人物になっている、そんな夢をしょっちゅう見る位にファンとなっている。まあ、どうしたわけかその夢の中では、私は私のこの現実の姿のまま、服装だけが違う姿で登場しているんだけど。

 

 「……剣客から軍師になって、三国志の主役の一人である劉備の参謀になって大活躍して。けど、曹操の策略でその下を泣く泣く離れる羽目になってしまった、劉備の最初の軍師と呼べる人……徐庶元直。ま、まあ夢の中でこそ、なんでか、その劉備も曹操も、諸葛亮に龐統はじめ、ほとんどの人物が女性化して居たりするわけだけど……これはあれかな?前にやったゲームの影響だったりするのかな?」

 

 三国志のオマージュ作の中に、少々マイナーではあるが、『恋姫†無双』という名のゲームがある。登場人物の一部が女性化し、『北郷一刀』という名の、その作品のオリジナルの人物を中心に話の進む、いわゆる18歳未満禁止なゲームだったりする。

 え、そのゲーム?プレイ(やり)ましたけど、何か?

 そりゃあ、普段私が趣味で書いているのは?見目麗しい男性たち同士の恋愛もの、いわゆるBLってやつだけど、そんな私だって、そっち方面に興味津々な、うら若い乙女ですから。友人の一人と一緒にこっそり買って、二人できゃーきゃー言いながら全クリしましたけど、それが?

 

 「……あ、いけない、もうこんな時間。そろそろ出ないと遅刻しちゃう。今日の講義、落としたら洒落にならないもんね」

 

 原稿は……まあ、今夜、帰ってきてから仕上げるしかないか。……徹夜ね、これは。 

 

 

 「おーし。これで今年の必須講義も無事全部終了ーっ!後は冬コミに向けて一直線ー!」

 

 というわけで、落とせない今年最後の講義も何とか終わり、今年最後の大イベントに向けてのラストスパートへの意気を、私は大学構内の敷地内を歩きながら声高にする。

 

 「……張り切るのはいいがな輝里よ。本気で原稿、間に合うのか?入稿まで確か二週間無いとか言っていなかったか?」

 「う。……そこはその、まあ、気合と根性と、あん」

 「わらわは手伝わんぞ。こっちもコスの完成までいよいよ大詰めなのだ。仮縫いが昨日やっと終わったとこだからな。今日から本縫いに入らねばならん」

 「……うー……命ぉ~、そんなこと言わないで、そこは幼馴染のよしみで」

 「ならんものはならん。それに、漫画ならアシも出来ようが、おぬしのような小説を書いているやつの手伝いなぞ、何をどうできると?」

 「あう」

 

 そんな感じで、けんもほろろな態度と言葉で、隣を歩く私を冷たく突き放すのは、我が親友にして生まれながらの幼馴染であるところの、皇命(すめらぎ・みこと)。その仰々しい苗字が示すように、結構な上位階級の家に生まれた正真正銘のお嬢様である。

 そんな彼女と、一般家庭生まれの私が幼馴染なのは、生まれた病院が一緒だったということと、母親同士が学生時代からの友人だったということだ。その後も、幼稚園から現在に至るまでずっと、エスカレータ式の名門校に私たちは通い、もはや腐れ縁といっていい友人関係を続けている。 

 

 「……仕方ない、か。あ、そういえば命、今回は何のコスにしたの?夏の時は確か、赤セ○バーだったっけ?」

 「ふっふっふー。今回はちと趣向を変えてな。……輝里よ、前におぬしとやった18禁のあれ、覚えておるか?」

 「恋姫無双?」

 「そうじゃ。最近、あれの二次小説にはまっておってな。で、今回はその恋姫のキャラで行くことにした。キャラは……じゃ」

 「……またすごいところを選んだわね。あんたのその体型でアレは、ちょっと色々まずくない?」

 

 あのキャラの衣装を命がすると、下手したら会場に出れなくならないかしら?

 

 「大丈夫大丈夫。……それに今回はわらわ一人ではないしの(ぼそぼそ)」

 「?なんか言った?」

 「なんでもないない。……それはそうと輝里。おぬし、例の“夢”とやら、やはりまだ見るのか?」

 「……まあ、ね。そういう命も?」

 「ああ。ほぼ毎日、の。……しかし夢の中とはいえ、このわらわが皇帝とはのー」

 「出てすぐ退場するチョイ役皇帝様だけどねー」

 「……」

 

 この命も、私と一緒で、ある時期からしょっちゅう、ほぼ同じ内容の夢を見るようになっていた。舞台背景としては確かに、紀元三世紀ごろの中国だけど、史実の三国志とほとんど一緒だけど。なぜか、登場する武将とか軍師がのきなみ女性になっている、例の18禁ゲームの恋姫無双、その世界にいる夢を。

 それもただの夢ではなく、見るたびに物語がきちんと続き、ゲームに無かった日常の描写も事細かにされる、まるで、一本の連続ドラマのような夢。その中で、私は徐庶元直に、命は時の皇帝、漢の十三代皇帝劉弁にそれぞれなり、それぞれの運命(ストーリー)を追体験していっている。

 正直、わたしも命も、最近はなんだか良く分からなくなってきている。今、こうして大学構内を歩いているが現実なのか。それとも、夢の中で三国志の世界に生きているのが現実なのか。胡蝶の夢って話があるけど、それはまさに、私たちの今をぴったり物語っている。

 

 「……のう、輝里。わらわな、最近思うのだ。……アレがただの夢ではなく、本当に前世の記憶なのではないか、と」

 「ありえないわよ。現実は現実、夢は夢。それだけよ。ましてや、ゲームの世界からの生まれ変わり、なんてものがあるわけ無いでしょ?それに」

 「それに?」

 「徐庶にしても劉弁にしても、ゲームに登場すらしていないんだから」

 

 まあ、徐庶は名前だけなら出てるんだけどね。命の憶測をばっさりと否定し、その、根拠とも呼べない根拠を口にする私。

 

 「……まあいい。では、わらわはここでな。……次は戦場で、じゃ」

 「オーケー。コス、楽しみにしてるわね」

 「うむ、楽しみにしておれ。……楽しみに、な。くっくっく」

 

 なんか、去り際に邪悪な笑いと呟きが聞こえたような気がするけど、まあ、気のせいだということにしておこう。うん。

 

 「さってと!私も今日から修羅場に入んなきゃ!表紙と挿絵も完成させないと!さー、やるわよー!」

 

 そうして、意気込み帰った私は、それから一週間ほどの徹夜の末、原稿を無事入稿することが出来た。後はもう、当日、戦場へと赴くのみ。

 そして、きたる12月の30日。

 同好の兵の熱気渦巻くその中で、私と命は、その出会いをすることになるのであった……。

 

 つづく

 

 

 MiTiさんいわく、原作以外のオリキャラも、このシリーズに出していいということ。

 

 なので、今回うちの娘二人、輝里と命を、この現代に生きる恋姫達に出すこととあいなりましたw

 

 ただこの二人の場合、原作には当然出てませんから、どこのルートから来たことにするかが、非常に現在悩みどころです。

 

 まあ、輝里というか、徐庶の名前は原作で朱里が口にしてましたから、無印、もしくは真の蜀ルートかなー、という感じで今は構想しています。

 

 二人とも、まだ前世の記憶は戻っていません。おぼろげに、夢としては見ていますが、冬コミにて出会うあの二人と、そして・・・との邂逅、そこにて、その切欠が訪れることになります。

 

 輝里の例の趣味はともかく、命がいったいなんのコスを選んだのかは、次回の命メインの中編にて明らかに。特に、命のファンだと言ってる誰かさんは、今から十分、心構えをしておくようにw

 

 では今回はこの辺で。

 

 再見w 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
29
3

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択