第二章 『三爸爸†無双』 其の二十
本城 占術の間
【炙叉turn】
こんにちは、読者の皆様。
羌族の迷姚大王、炙叉でございます。
前回は公孫賛伯珪の『
公孫賛伯珪が如何にしてこの能力を手に入れたのか、またこの能力がどの様な物か。
名付け親たるこの私がお話しましょう。
それは聞くも涙、語るも涙の物語でございます。
公孫賛伯珪(以後、白蓮)
以前は秀才と呼ばれ、幽州の太守に成る程の傑物でした。
血の滲む様な努力の結果手に入れたその地位。
一見非凡と感じるその才ですが、師である盧植には『普通』と言われていました。(白蓮本人談)
同じ時期に桃香様と一緒に盧植へ師事していたので比べられていた為と見る人もいますが、私は盧植が白蓮の中に『普通』と云う力が在る事を見抜いていたのだと思います。
師に『普通』と言われながらも、太守にまで出世した白蓮。
その太守時代が歴史的に見た場合の白蓮の絶頂期と言っていいでしょう。
そして麗羽に敗れ幽州太守の座から降ろされた時が、白蓮のこれまでの人生で最大の不幸でした。
しかしこの時以降、白蓮は歴史に関わる様な大きい幸運にも不運にも逢わなくなります。
それは白蓮の持つ『普通』が遂にその力を顕在化させ始めた為です。
人は皆、幸と不幸を行き来する振り子。
『普通』とは幸と不幸の振り幅を小さくしようとする力だと思ってください。
『普通』は常に振り子を安定させるよう作用しています。
しかしその振り子へ干渉してくる存在がいます。
そう、三人の天の御遣い、北郷一刀様です。
『普通』は御子様からの干渉に、対抗手段として白蓮の存在感を希薄にする事で抵抗し始めました。
例としては、天下一品料理大会で実況を飛ばされたり、北郷学園の教師役選抜に名前が上がらなかったりと云った具合です。
そうして御子様の影響を受け続けた『普通』は次第に『存在感殺し』にまで成長してしまったのです。
私が白蓮に初めて出会った時にはその力が既に形成され始めていました。
本来ならば『華蝶の仮面』と同等の力を持つ『白馬の仮面』の力を打ち消す程に・・・。
それ故、私は白蓮に『高望みさえしなければ普通の幸せが手に入る』と忠告しました。
高い望みは決して叶わず、挫折感が白蓮を不幸にする未来が視えてしまったから・・・・・。
私は張三姉妹に協力してもらい、白蓮に『女として普通の幸せ』を手に入れる事が出来る様に画策して来ました。
その甲斐あって、白蓮は手に入れました。
『女としての普通の幸せ』を・・・・・。
本城 皇帝執務室 (時報:桂花一人目 金桂生後四ヶ月)
【白蓮turn】
私は大きな扉の前で一度深呼吸をした。
き、緊張するなぁ~・・・。
で、でもここに突っ立ててもしょうがない!
私もついに懐妊できたんだ。
早く一刀たちに報告しなきゃ!
「か、一刀!私だ!白蓮だ!入ってもいいか!?」
ノックと同時にそう叫んだ。
叫ぶつもりは無かったんだけど・・・・・緊張してたから声がデカくなっちゃったよ・・・。
返事よりも先に扉が開く。
「「「さあ、入って。白蓮♪」」」
一刀たちが三人揃って笑顔で迎えてくれた。
その笑顔を見たら胸が急に熱くなって・・・・・・・嬉しさがこみ上げてくる・・・・・。
「か・・・一刀・・・・・私・・・懐妊・・・懐妊した・・・・・・懐妊できたよ・・・」
涙が勝手に出てくる・・・・・一刀たちの顔を見たいのに・・・涙でにじむよ・・・・・。
笑わなくちゃ・・・・・こんなに嬉しいんだから・・・わらわなくちゃ・・・・・。
「「「白蓮・・・・・ありがとう・・・」」」
一刀が抱きしめてくれた。
「・・・うん・・・・・うん・・・」
嬉し涙が止まるまで私は一刀の腕の中にいた・・・・・。
後宮 談話室
「うへ♪うへへ♪うへへへへへへへへ♪」
「ちょっと白蓮・・・・・嬉しいのは解るけどその笑い・・・・・気持ち悪いわよ・・・」
華琳にそんな事を言われるけど・・・自然と顔がニヤけるんだよう♪
「華琳だって妊娠が判ったばかりの頃は笑ってたじゃないかぁ♪」
「私はうへうへなんて笑ってないわよっ!」
そうかなぁ?結構似たようなモンだったと思うけど・・・・・。
「それよりも一刀たちの事を話すから、しっかり聞きなさい!」
「え!?どんな話♪」
一刀の話題ってだけで、更に顔が緩んじゃうよ♪
後宮 白蓮個室
【緑一刀turn】
「「「お~い、白蓮。入るぞ~。」」」
何回かノックしたけど返事が無いので扉を少しだけ開けてみた。
桃香達が白蓮は部屋に居るって言ってたから居る筈なんだけど・・・・・。
薄暗い部屋の中で椅子に座っている白蓮が居た・・・・・・だけど・・・。
「・・・う・・・うっく・・・・・うぅ・・・」
泣いてる!?
しかも懐妊報告をしに来た時みたいな嬉し泣きって感じじゃ無いぞっ!!
「「「白蓮!どうしたっ!?どこか痛いのか!?」」」
俺たちは慌てて駆け寄った。
「ぢ、ぢがう・・・・・がずどぉ・・・おばえら・・・・・」
白蓮は涙で濡れた顔で俺たちを見上げた。
どれだけ泣いてたんだ・・・・・卓の上が涙で水たまりみたいになってるじゃないか・・・。
「おばえらそんなづらいめにあっでるのに・・・・・・・・あだじは・・・・ぞんなごどもじらないで・・・・・うがれで・・・うっ・・・」
俺たちが辛い目に?・・・・・・・・・あ!
「「「白蓮・・・・・外史の事か?」」」
「うん・・・・・」
華琳は白蓮にどんな話をしたんだ?
今の俺たちが思い出せるのは前の外史、桃香や雪蓮、他にも何人も居なくて・・・白蓮が死んでしまう外史だ。
前の外史での白蓮の死を思い出せば、今でも泣きたくなる時は有るが・・・・・白蓮が泣くのはその事とは違う気がする。
俺がたまに夢で見る様々な外史。実は俺が他にも外史を経験していたり、同時進行で別の俺がここ以外の外史に居たりするのではないかという推測。
華琳はその事も話したんだろう・・・・・。
白蓮はそんな俺たちの事を想い、泣いてくれたんだ・・・・・。
「「「白蓮・・・・・ありがとう・・・・・」」」
昼に言ったのと同じ言葉・・・しかし、そこに込める想いは・・・更に重く深く・・・。
俺たちはその日、白蓮に問われるままに外史の話をし続けた。
白蓮にもっともっと、俺たちの事を知って欲しいとと思ったから・・・・・。
ひと月後
後宮 食堂 (時報:桂花一人目 金桂生後五ヶ月)
【白蓮turn】
「ちょっと、桃香!また
朝の食卓で華琳が声を上げる。
「あ、あれぇ~?ちゃんと切ったと思ったんだけどなぁ・・・」
桃香が笑って誤魔化している。
「朝から炒飯なのぉ?」
雪蓮が渋い顔をしながらレンゲで炒飯を突っつく。
「も、申し訳ない・・・・・まともに食べられる物がそれしか作れなくて・・・・・」
愛紗が縮こまって頭を下げている。
「凪!あんたまた華琳様のお舌を麻痺させる気!?」
桂花が真っ赤な
「い、いえ!味見をしながら作っていたらそうなりまして・・・・・」
凪が手を振って否定する。
「そう言う桂花が作ったのだって・・・・・ただ野菜を茹でただけじゃない。形も歪だし、せめて塩くらい入れようよ・・・」
たんぽぽが大根、人参、じゃがいもを指差す。
「そ、素材の味を生かしたのよ!」
他のみんなは黙々と食べている。
恋と猪々子はいつも通り。
今日は私も当番だったんだけど・・・・・・・・・誰も私の作った味噌汁に何も言ってくれない・・・。
「「「この味噌汁を作ったのって白蓮か?」」」
一刀!
「旨いよ、この味噌汁。具が豆腐と刻んだネギって素朴な感じで。」
「「うんうん♪」」
「・・・・・素朴・・・・・」
「「「ほ、褒めてるんだぞ!」」」
「・・・味噌を造ったのは華琳・・・・・・」
「味噌汁って俺たちの生まれた国では家庭料理の定番でさ!」
「昔は男が求婚する時に『毎日俺のために味噌汁を作ってくれ』って言ったくらい重要なんだ!」
「お袋の作った味噌汁を思い出したよ。」
一刀たちの目が本気だ・・・・・本当に褒めてくれてる・・・。
「え、えへへ♪お、おかわり装おうか?まだ沢山あるぞ♪」
「「「ああ♪是非頼むよ!」」」
あはは~♪目の前が急に明るくなった気がするな~♪
次の日の朝の食卓・・・・・雪蓮の怒鳴り声が響いた。
「ちょっと!朝ごはんのおかずが味噌汁ばっかり十種類ってどういう事よっ!!」
なにやってんだか・・・・・・気持ちは分るけど。
わ、私は今日の当番じゃないから作ってないぞ!
妊娠三ヶ月目
後宮 白蓮個室 (時報:桂花一人目 金桂生後六ヶ月)
【緑一刀turn】
「かずと~~・・・ぎぼぢわるいよ~~~」
白蓮が寝台の中で横になっている。
つわりのピークが来ているのだ。
「みんなもそうだったけど、今が一番つらい時だから頑張れ!」
「う゛~~~~」
恨みがましい目で睨まれるけど、俺たちには励ます事しか出来ないからなぁ。
「気持ち悪くても何か食べないとダメだぞ。と、いう訳ですっぱい物が食べたいって言ってたから持ってきたよ。
本当はみかんとかの柑橘系を持って来たかったんだけど時期が悪く手に入らなかった。
「・・・・・食欲ない・・・」
「お腹の子の為だと思って我慢してくれ。」
我儘を言う白蓮ってのも珍しい。なんか新鮮だ♪
「・・・じゃあ、李・・・」
「よし、今剥いてあげるな。」
俺は果物包丁で皮を剥き、種から実を切って小鉢に入れてあげる。
「はい、どうぞ。」
「・・・食べさせて・・・」
なんか白蓮自身が子供になったみたいだ。
「はいはい。あ~ん。」
「あ~ん。」
楊枝に刺した果肉を白蓮の口に入れてあげる。
「えへへ、おいしい♪」
ヤ、ヤバイ!
俺の方が堪えられなくなりそう・・・・・。
妊娠四ヶ月
後宮 談話室 (時報:桂花一人目 金桂生後七ヶ月)
【白蓮turn】
「やっとつわりが治まって来たよ・・・」
「よかったね白蓮ちゃん♪」
桃香が香斗にオッパイをあげながらそう言ってくれた。
「今つわりが来てる奴には申し訳無いよ。食欲が落ちてるのにこの暑さじゃ、体力をごっそり持ってかれる・・・・・何かしてやれないかな?」
庭からは蝉の声がうるさいくらい聞こえている。
スパや水練場で水に浸かればかなり楽になると思うんだけど、そこに行くまでが大変だからなぁ。
「そうやって心配してあげるくらい、白蓮ちゃんも余裕が出て来たみたいだね。」
「つわりの辛さは身を以て知ったからな・・・・・桶に水を汲んできて体を拭いてやるかな?」
「あ、いいねぇ♪その後で私達も拭こう。白蓮ちゃんも汗かいてるし。妊娠中は汗かきやすくなるでしょ。」
「この暑さじゃよく分からないよ。桃香こそ香斗を抱いてるから汗かいてるじゃないか。」
「香斗ちゃんは甘えん坊さんだから、飲み終わってもおっぱい放してくれないんだよねぇ。」
この暑いのにしがみついちゃって。可愛いなぁ♪
「あら、桃香と白蓮はここに居たのね。」
華琳が眞琳を連れて現れた。
「水風呂を用意させたから入らない?つわりの子達を先に行かせてあるけど。」
さすが華琳だ。私らが考えるより先に行動してるよ。
「丁度今、つわりの連中の体を拭いてやろうかって話してたんだ。」
「お風呂でだったら拭いてあげやすいね♪」
「それじゃあ行きましょう♪」
華琳が笑顔で私と桃香を先導した。
私も桃香もこの時は暑さでボケてたのかも知れない。
華琳の趣味に、まるで思い至らなかったんだから・・・・・。
妊娠五ヶ月
後宮 白蓮個室 (時報:桂花二人目 妊娠一ヶ月)
【緑一刀turn】
「股に手?」
「マタニティ!桃香と同じボケをしなくていいから!」
妊娠五ヶ月目の戌の日には妊婦帯をするのだが、マタニティ・インナーとウェアは先に身につけても構わない事にしてある。
これは風の時から始めた事で、体力の無い風がお腹を支えるのが辛そうだったからだ。
「言いづらいなら妊婦下着と妊婦服でいいよ・・・・・この服なんか白蓮に似合うと思うけどどうかな?」
俺は服屋の親父さんから預かった物をズラリと並べて、まるでセールスマンの様に薦める。
「桃色!?しかもヒラヒラしてて可愛らしすぎるよ!私には似合わないって!」
「翠と同じ事を言うなぁ・・・・・」
「す、翠は似合ってたけど・・・私はもっと落ち着いた感じの方が・・・・・・ちょっと待ってくれ一刀。今気が付いたけど、ここに持って来てある服の大きさって・・・」
「白蓮に合った物ばかりだよ。まあ、基本的にゆったりした服だから直しは必要ないと思う。」
「それって・・・・・この下着もか?」
あれ?なんか警戒されてる?
ああ、そうか!
「服の試着をする時はちゃんと部屋を出るって。下着に関しては試着の必要すら無いぞ。伸縮性があってお腹を支え、しかも締め付けすぎないとみんなが絶賛してたからな♪」
「下はそれでいいとして・・・・・上は?」
「上?ああ、ブラの方か。それも大丈夫、ちゃんと今の大きさに合ったの持ってきたから♪」
「何で大きくなったの知ってるんだよっ!!」
「服を着てても見れば解るよ。白蓮が今着けてるの、大きさ合ってないだろ?」
「さも当然みたいに言うなよ!服着てるのに分るって変だろ!?」
「そうかなあ?下着の形だってどんなの着けてるか解るぞ。それに薄着の時は色も大体判別出来るけど。」
そんなに変か?俺たちにはごく普通に・・・・・。
「あ、そうだ。何年か前に華琳や星と一緒に、みんながどんな下着を着けてるか当てる賭けをしてる内に身に付いたんだった。」
「・・・・・なんて遊びしてたんだよ・・・」
「正解の確認は華琳と星が」
「その話はもういいよっ!!」
スキルの有効活用は出来ていると思うんだけど・・・・・。
妊娠六ヶ月目
後宮 談話室 (時報:桂花二人目 妊娠二ヶ月)
【白蓮turn】
「それでは私、蓮華、桃香、思春は今日から自室に戻ります。この後宮の管理とまとめ役は紫苑と冥琳に引き継いであるわ。頼むわね、紫苑、冥琳。」
「はい、お任せ下さい、華琳さん。」
「ああ、しっかり目を光らせておく。」
子供の乳離れが終了した四人が後宮を引き払う事になった。
今は後宮組が全員集まって壮行会の最中だ。
桂花が華琳に縋り付いて泣いてる。
先月に桂花が二人目を懐妊して、後宮を出るのが伸びたから余計になんだろうけど、昼は仕事で会うんだからそこまで泣かなくてもいいだろうに・・・・・。
私はと云えば、お腹が大きくなってきて胎動も感じられる様になった。
「みんな体重管理には気を付けなさい。出産前の者は妊娠中毒が怖いから特にね。」
私を含めた武将達は剣の鍛錬をしてるし、天和達シスターズは踊りの稽古を、軍師も出来るだけ体を動かすようにしている。
それ以外にも全員で妊婦体操をして調整してるから問題は今のところ発生していない。
「それからおっぱいマッサージもしっかりやっておかないと後で困るわよ♪」
おっぱいまっさーじ?
『まっさーじ』って確か指圧とか揉んだりする事だったよな・・・・・。
「(華琳の奴!水風呂の一件を思い出させる様な冗談言いやがって!)」
「え!?」
呟いた私を隣にいた天和が驚いた顔で私を見た。
「白蓮ちゃん・・・おっぱいマッサージを教えてもらってないの?」
「へ?」
今度は私が驚いた。
今のって冗談じゃ無いのか!?
「ちょっと桃香!貴女教えてあげなかったの!?」
華琳にも私と天和の会話が聞こえたらしい。
「わたしはてっきり華琳さんが教えたとばっかり・・・・・」
「申し訳ありません!わたくしが確認を怠っておりました!」
そんな、紫苑まで慌て出したぞ!
「まあまあ、白蓮ちゃんは確か六ヶ月目でしたから遅いと言う程じゃありませんよ~。」
風が間に入って場を収めた。
「白蓮ちゃん。おっぱいマッサージとは母乳の出を良くするためにするのですよ。これのおかげで風や桂花ちゃんみたいな真っ平らなお胸でもきちんとお乳をあげられたというスグレモノなのですぅ♪」
「ちょっと風!大きさは関係ないでしょ!巨乳人だってやっておかないと出ないのが居るって産婆が言ってたわよっ!!」
桂花の奴、さっきまで泣いてたのに・・・・・泣いたり怒ったり忙しい奴だな・・・。
「おお!そうでした~。風は自分が出るか心配だったのでつい~。まあ、万一出なくてもここには出る人がこんなに居ますから、赤ちゃんにひもじい思いをさせることは有りませんが・・・やはり自分の子供には自分のお乳を飲んで育って欲しいじゃないですかぁ♪」
風は自分の事として言ってるけど・・・私に気を使ってくれてるんだなぁ・・・・・感謝してるぞ、風!
「それに最悪母乳が出ない時は、爸爸さんたちが出るように協力してくれますよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
それはナニか?一刀たちに『おっぱいまっさーじ』をしてもらう・・・・・いやいやいや!恥ずかしすぎるだろ!それは!!
「(しまった!その手が有ったか!)」
だ、誰だ今の声!!しかも一人や二人じゃ無かったぞ!!
「ぱ、白蓮ちゃん。わたくしが後でお部屋に伺って教えてあげるわね。」
紫苑が珍しく苦笑してるよ。
「あ、ああ・・・・・ありがとう、紫苑。」
まったく・・・・・程々にしておかないとまだ懐妊してない連中に恨まれるぞ。
妊娠九ヶ月目
後宮 白蓮個室 (時報:桂花二人目 妊娠五ヶ月)
【緑一刀turn】
「お、動いた動いた。
白蓮のお腹に手を置いて胎動を確認する。
この時が一番お腹の中にいる子供を感じられて、嬉しくなってくるな。
「人和の出産も無事終わったし、いよいよ私の番かと思うとドキドキするよ。」
「ゴメンな・・・ずっと傍に居られなくて・・・・・」
「そんなに気にするなよ。ずっと独り占めなんかできないって納得してるって。」
そう言って微笑む白蓮を俺は見つめた。
その笑顔を見て唐突に思い出した・・・・・・前の外史の白蓮を・・・。
「ど、どうしたんだよ!急に涙なんか流して!」
「え?あ・・・・・その・・・思い出して・・・・・前の外史を・・・」
「・・・・・私が・・・死んじゃうってやつか?」
「ああ・・・・・あの時は白蓮に真名を預けてもらう事も・・・看取る事も出来なかった・・・」
こんな事を目の前の白蓮に言っても困らせるだけなのに・・・・・。
「だから一刀は反董卓連合の時、洛陽から離れる前に私へあんなにしつこく麗羽に気を付けろって言ってくれたんだよな・・・・・結局負けちゃったけどさ。」
でも生きていてくれた。逃げ延びて俺の所に来てくれた。
「城を捨てて逃げる時さ・・・・・正直に言うと一刀の顔が浮かんで脱出を早めたんだ・・・情けない太守だよな!国を守るより好きになった男を選んじゃうんだから・・・・・」
俺は白蓮を抱きしめた。
「それなら俺も・・・我侭な皇帝だ・・・・・白蓮が生き延びてくれて、今こうしていられる事が堪らなく嬉しいんだから・・・・・もし非難する声が有るなら・・・それは俺が全て引き受けるよ。白蓮を俺が守る!」
今、俺の腕の中に白蓮が居る。
それがどれだけの幸運かと云う事を、俺は改めて心に刻みつけた・・・・。
妊娠十ヶ月
本城 分娩室
【白蓮turn】
痛い!
苦しい!
「「「白蓮!頑張れっ!!」」」
一刀たちが励ましてくれている。
夜中にお腹が痛くて目が覚めた。
後宮のみんなが助言や手助けをしてくれた。
夜番のメイド達が付き添ってこの部屋に連れてきてくれた。
華佗と産婆さんは先に来て準備を始めていた。
それから一刀たちがやって来た。
陣痛を感じる間隔が短くなった。
一刀たちが腰をさすってくれた。
夜が明けた。
破水した
分娩台に乗るように言われた。
一刀たちが支えてくれた。
恥ずかしかった。
あれからどれだけ経った?
もう苦しくって何が何だか分からなくなってきた。
あ・・・・・。
「オギャー!オギャー!オギャー!」
苦しかったのが無くなって、産声が聞こえた・・・・・。
「「「お疲れ様、白蓮。頑張ったね・・・」」」
一刀たちが笑ってる・・・・・あはは・・・ホント疲れた・・・・・。
「はいよ、お待たせ。白蓮様、予想通り女の子だよ♪」
産婆さんから赤ちゃんを・・・白煌を受け取り胸に抱く。
元気に泣いている白煌・・・・・十ヶ月も一緒にいたのに・・・やっと顔が見れたな、白煌。
無事生まれてくれて・・・ありがとう・・・・・本当に・・・。
生後一ヶ月
本城 後宮談話室 (時報:桂花二人目 妊娠七ヶ月)
【緑一刀turn】
春の足音が聞こえ始めた今日この頃。
今日は待ちに待った特別な日!
月に一度のお風呂ターーーイム!!
・・・・・いや、俺たちが月に一度しか入らない訳じゃないぞ。
俺たち三人が娘達をお風呂に入れてあげるのだ!
タライにお湯を張って入れる、いわゆるベビーバスとも違う。
俺たちが先に湯船に浸かり、子供達を順番にお風呂に入れる。
赤ん坊は温まるのが早いから、手早く次々入れていかねばならない。
俺たちが娘達とスキンシップをとれる数少ない機会なのですよ!
風呂から上がった子はすぐに母親の手によって体を拭かれ部屋に戻ってしまう。
それでも一番上の眞琳、香斗、蓮紅、烈夏は結構入っていられるようになった。
だが、一歳九ヶ月ともなると『お話し』したり『口真似』をしたりするので、楽しくてあっという間に時間が過ぎてしまう。
「絶対にお湯の中に落っことすなよ!」
白蓮が心配そうに言ってきた。
「大丈夫だって。一年半以上やってるんだぞ、信用してくれ。」
今日は白煌のお風呂デビューの日でもあるのだ。
「それは分かってるけどさぁ・・・・・」
むむ?今ひとつ信用が無いようだ。
「そんなに心配なら一緒に入る?」
「ば、ばか!子供の前でナニ言ってんだ!たんぽぽや桔梗の時で懲りてないのか!?」
あの時は・・・・・・のぼせて大変な目に会ったね、そういえば。
「いやまあ、あの時は子供達のお風呂が終わった後だったからさあ・・・・・俺としては親子全員で一緒に入りたいんだけど。」
「お、おい!お前ナニ考えて・・・・・」
「子供達が居ればさすがにそんな事にはならないだろう?こう、山奥の温泉の露天風呂でまったり、のんびり景色を眺めながら親子全員でお湯に浸かるんだ。」
「・・・・・まったり、のんびりかぁ・・・・・・それだったら・・・まぁ・・・でも、白煌が今の眞琳くらいに成長するまで待ってくれよ。」
おお!真っ赤になりながらも白蓮が承諾してくれた!
「そりゃ、赤ちゃんの内は慌ただしくてのんびり出来ないもんな♪」
娘達が大きくなったら俺たちと一緒にはお風呂に入ってくれなくなるだろうから、この野望は期間限定だ。
今の内から計画を進めなければ!
おまけ壱
白蓮の娘 公孫続 真名:白煌
四歳
北郷学園職員室 (時報:桂花五人目 妊娠六ヶ月)
【白蓮turn】
「なあ、麗羽。うちの白煌ってどんな感じだ?」
隣の机で仕事をしている麗羽に話しかけた。
まさか麗羽と机を並べて仕事する日が来るとはなぁ。
「そうですわね・・・素直でいい子ですわよ。他の子達とも仲良くしてますし。」
麗羽は子供達を一人一人よく見ている。
「あ、ありがとう・・・・・その・・・個性なんかどうかな?」
「個性・・有りませんわね。」
「おい!そんなわけ無いだろ!せめてもう少し考えてから言えよ!!」
よく見てるって云った傍からそんな断言されたら泣けてくるだろ!
「わたくしの娘の
確かに目立つな・・・白煌とは半年くらいしか違わないのにお前と同じ様に笑うから。
「愛羅さんや恋々さんの様に武芸ができるわけでも有りませんし。」
まだ始めてないだけだ。
「眞琳さんの様に特別かしこいとは言えませんわ。」
いや、まあ・・・・・眞琳は特に頭が良いからなぁ・・・・・。
「ですけど、疾さんみたいにお漏らしせずに、お手洗いの時はちゃんと言えますし。」
ああ、翠の子の疾はよく漏らすな。
「嵐さんみたいに目を離すと寝てたりしませんし。」
みんなと遊びながらでも寝てるもんな。
「烈夏さんみたいにどこに居るか分からなくなるわけでも有りませんわ。」
思春が身を隠す鍛錬を常にやらせてるって言ってたっけ・・・迷子になったかと心配するから止めさせてくれないかなぁ・・・・・。
「知能も運動神経も性格も、決して悪くは無いのですから心配いりませんわ。」
「そ、そうか?そうだよな!きっとその内に個性も出てくるよな♪」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「おい!そこで目をそらすなよ!!」
こんな話を麗羽としていた時、職員室の出入口に小さな人影が現れた。
「ままぁ・・・まだおわらない?」
「おかあさま!おなかすきましたわ!」
それは手をつないだ白煌と揚羽だった。
しかし、二人の口調とは逆に揚羽の顔には涙の跡が見え、白煌は遠慮がちな態度ながらも揚羽の前に立っている。
どうやら泣き出した揚羽を白煌が連れてきたらしい。
はは・・・・・本当に余計な心配だったみたいだ。
「ごめんごめん!丁度終わったから帰ろうか!」
「ごめんなさいね、揚羽さん。夕食まで少し時間がありますから華琳さんの所に寄って、お菓子をもらってから帰りましょう♪」
麗羽・・・・・・この状況で華琳にたかるのか・・・・・・。
このまま麗羽と揚羽だけ華琳の所に行かせたら余計な騒動が起きそうだ。
「白煌、私らも華琳媽媽の所に寄って行くぞ。」
「うん!かりんままのおやつだぁ♪」
華琳はいつもお菓子の作り置きしてあるから大丈夫だろうけど・・・・・また嫌味を言われそうだよ・・・・・。
おまけ弐
思春の娘 甘述 真名:烈夏
六歳
房都 西部商店街 (時報:桂花六人目來羅(らいら) 生後一ヶ月)
【烈夏turn】
きょうは媽媽とおかいもの。
烈夏はかわいい服でおめかし。
おひさまがあついからすずしい服。
媽媽もおめかし。
かみのけをおろしてる媽媽はいつもよりきれい♪
「烈夏は今、欲しい物は無いか?」
「・・・ほしいもの?う~ん・・・・・」
媽媽の『りんいん』みたいな剣がほしいけど、きっと媽媽がいってるのはちがう。
服とかおもちゃとか。
服はいまきてるのがおきにいりだからいらない。
おもちゃは『からくりかんねいしょうぐん』がほしいけど、媽媽がいやがるからやめておく。
「う~ん!う~ん!う~ん!」
「ふふ、決まったら言いなさい♪」
うわあ!きょうの媽媽はすごくごきげんだ!
いつもなら「決まったら言え」っていうのに!
「ここで甘い物でも食べながら一緒に考えようか?」
「・・・うん。」
あれ?このおみせのしるし、まえに爸爸たちのおへやで見たことある。
たしか、はこに書いてあった。
「爸爸たちきてくれるの?」
「ほう、どうしてそう思ったのかな?」
「あのしるし、爸爸のおへやで見たから。」
「前に忍び込む鍛錬をした時か・・・よく覚えていたな、偉いぞ♪」
あたまをなでてくれた♪
「でも、来てくれるのは赤爸爸だけなんだ・・・・・がっかりしたか?」
「ううん。爸爸たちいそがしい・・・・・一人でもうれしい♪」
なんで媽媽がごきげんだったかわかった。
「ほら、烈夏。口の周りが蜜でベタベタだぞ。」
「ん~~~!」
媽媽がお口をふいてくれた。
みつまめおいしい♪
まえに眞琳ちゃんが食べたっていってた・・・きっとこのおみせだ。
「お待たせ!思春!烈夏!」
赤爸爸がきてくれた♪
「なんだ?走ってきたのか?別に遅れてはいないのに・・・」
「思春と烈夏の事を考えてたら足が勝手にね♪お、その服着てくれたのか!想像以上に似合ってるぞ!」
「せ、折角作ってくれた服だ・・・・・着ないと勿体無いと思っただけだ・・・・・」
媽媽がてれてる?
「烈夏だって媽媽の服が似合ってるって思うよな。」
「うん!媽媽きれい♪」
「そ、そうか・・・・・・」
媽媽がまっかだ。
「赤北郷様。まずはお水をどうぞ・・・・・何をご用意致しましょう?」
おみせの人が爸爸にちゅうもんをききにきた。
「この店に来たら、やっぱり蜜豆を食べないとな♪」
「・・・烈夏ほしいものきまった。」
「ん?何か食べたい物でも有るのか?」
「いや、さっき烈夏に欲しい物を訊いたんだが決められなくてな。で、何が欲しい?」
「烈夏、妹がほしい!」
「「「え?」」」
「冰蓮ちゃんと冥龍ちゃんがこの前いってた。烈夏も妹がいい!」
「・・・それってこの前釣りに行った時のアレか・・・・・」
「い、妹は・・・その・・・・・」
「あのぉ・・・・・『夜菓子』をお包みしましょうか?大箱をふたつほど♪」
うん!われながらいいかんがえ♪
おまけ参
炙叉の娘
五歳
本城 炙叉自室
【炙叉turn】
「ままぁ、ただいま~!」
おや、帰ってきたわね。
「おかえりなさいってあんた!なんて格好してるのよっ!!」
学園から帰ってきた直はパンツ一枚の姿だった。
イジメ!?・・・・・・・・いや、直がニコニコしてるからそれは無さそう・・・・・。
まさか『貂蝉ごっこ』とかが流行ってる訳じゃないわよね!
「どうしたら爸爸がいちばんよろこんでくれるかなってきいたら、かくわいおねえちゃんがおしえてくれたの♪」
かくわい?・・・・・・・ああ、この前仕官してきた郭淮か・・・・・・。
「ウチの娘になんちゅうコト吹き込むんじゃいっ!あんクソだぎゃあっ!!」
あかん!怒りのあまり敦煌訛りが久々に出よった!
「いまから爸爸のところにいってくるー♪」
「ちょい待ちい!お風呂ですっぽんぽん見せとるけん、今更あんたのかぼちゃパンツ見せても爸爸は喜ばん。可愛い服着てった方が爸爸たち喜ぶから、桃色のヒラヒラを着て行き!」
「は~い♪」
まったく・・・・・ウチと御子様の子なのに、なんでこんなアホっ子になってしもたんじゃろ?
あとがき
三爸爸†無双も二十話となりました。
この拙作を読んでいただいている皆様にはいつも感謝しております。
そしてリクエストを下さる方々には、特にお礼申し上げます。
皆様のお力添え有っての三爸爸†無双ですのでこれからもよろしくお願い致します。
白蓮の妊娠から出産まで、『一般的な妊婦さん』を念頭に置いて書いたのですが
一刀を含めた周りの人達に巻き込まれていますね。
料理に出て来た野菜の豆知識
この時代に人参と言うと本当は漢方薬の材料の方です。
ニンジンは中国では胡蘿蔔(こらふ)と言って、アフガニスタンが原産で12世紀以降に伝来します。
じゃがいもは南米原産で、海を渡ったのは16世紀以降ですが
萌将伝で桃香が肉じゃがを作っていたので敢えてスルーしてました。
きっと恋姫の外史では、新たな食材を求め世界を駆け巡る冒険家が居たんでしょうねw
お風呂の話は
育児系HPに「パパは赤ちゃんとお風呂に入ってコミュニケーションをとりましょう」
と、書いてあったので。
今のままだと、娘達が十歳になる前に母親達が止めさせそうですw
おまけ壱で
麗羽にとって華琳は駄菓子屋的存在のようですw
おまけ弐は娘視点第三弾
「優しいママの思春」を書いたら「デレデレの思春」も付いて来ました。
おまけ参について
二十話記念に載せました。
この話は炙叉のキャラメイクをしていた頃から考えていた物です。
元ネタは正史で、迷当大王が郭淮に騙されて味方の姜維率いる蜀軍を敗走させてしまうという物でした。
竜羽様のリクエストと、この話が無ければ三爸爸†無双は始めていなかったと思います。
竜羽様
十六話で頂いたコメントにご返事が遅れてしまい申し訳ありません。
遅くなりましたがコメントに頂いた一刀の妹ですが、いつか出したいと思います。
一刀の息子が産まれてからになりますのでもう暫くお待ち下さいm(_ _)m
現在、一刀の息子共々キャラを熟成しております。
《次回のお話&現在の得票数》
☆秋蘭 23票
という事で、次回は秋蘭に決定しました。
以下、現在の得票数です。
前回遂に全キャラ出揃いました!
前回rin様から頂いた二人目の子供の募集も開始いたします。
月 22票
朱里+雛里21票
流琉 21票
詠 21票
ニャン蛮族18票
小蓮 18票
焔耶 16票
明命 16票
猪々子 14票
亞莎 14票
音々音 14票
二喬 12票
春蘭 11票
穏 10票
斗詩 9票
星 8票
璃々 8票
華雄 7票
稟 7票
真桜 4票
季衣 2票
冥琳② 1票
霞 1票
沙和 1票
※「朱里と雛里」「美以と三猫」「大喬と小喬」は一つの話となりますのでセットとさせて頂きます。
②は二人目を表します。
リクエスト参戦順番→ 朱里+雛里 猪々子 穏 亞莎 流琉 ニャン蛮族 小蓮 詠 焔耶 明命 秋蘭 月 斗詩 二喬 春蘭 音々音 華雄 稟 星 璃々 真桜 季衣 冥琳② 霞 沙和
過去にメインになったキャラ
【魏】華琳 風 桂花 凪 数え役満☆シスターズ
【呉】雪蓮 冥琳 祭 思春 美羽 蓮華 七乃
【蜀】桃香 鈴々 愛紗 恋 紫苑 翠 蒲公英 麗羽 桔梗 白蓮
引き続き、皆様からのリクエストを募集しております。
リクエストに制限は決めてありません。
何回でも、一度に何人でもご応募いただいても大丈夫です(´∀`)
よろしくお願い申し上げます。
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申し訳ありません、遅くなりましたorz
得票数21の白蓮お話です。
懐妊から生後ひと月までのお話+おまけ三本となります。
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