宿屋の男部屋の中でルークとガイはイスに腰をかけて話し合っていた。
話は色々と盛り上がり、ガイはある話を提案してきた。
「なぁ、ルーク? 男二人だし、ここは色っぽい話しでもしないか?」
「色っぽい話……?」
怪訝そうに首をかしげるルークにガイは面白そうに笑った。
「おぅ……題して、『誰が一番、結婚できそうか』だ♪」
「結婚か……なんか、面白そうだな?」
「だろう?」
クスクスと笑い、ルークは早速、例題を上げた。
「じゃあ、まず、ティアはどうだ?」
「ティアか……?」
アゴに手を置き、ガイは考え込むように頷いた。
「ティアは綺麗でスタイルもいい……正確はややキツイが、そこに優しさもある」
「じゃあ、早速、結婚できそうな女か?」
「甘いなルーク?」
チッチッチッと指を鳴らすガイにルークは不思議そうに聞いた。
「どぅしてだ……ティアはメロンだし、美人だぞ?」
「そこだ!」
ビシッとルークを指差し、ガイは自慢げに話しはじめた。
「メロンで美人だと、誰もがティアを高嶺の花と見るだろう……?」
「たしかに……高嶺の花だよな?」
なぜか、花畑で綺麗に笑うティアを想像し、ルークは顔を真っ赤にしてしまった。
「そぅいう女は結局、みんなから神聖視され、結婚が遅れるんだ!」
「なるほど……じゃあ、俺にもチャンスが?」
「……」
ルークの小声にガイはいやらしく、肘を小突いた。
「なんだ、やっぱり、お前、ティアのことが……」
「ち、ちげーよ……た、ただ、貰い手がないなら、俺が貰ってやろうと思っただけだ!」
「素直じゃねーな?」
呆れたように苦笑するガイにルークは慌てて話をもとに戻した。
「次だ次! 次はナタリアはどぅだ!?」
「ナタリアか……ナタリアは王女というのを抜けば、なにが残る?」
「料理が下手?」
「遠距離からの弓攻撃だから、攻撃が当たりにくい?」
「不特定多数の回復譜術を使えない?」
「見てみたガール?」
「ティアと比べると前線向きにできてない?」
ハァ~~とため息を吐き、二人は次に入った。
「アニスは……あれはダメだろう?」
ルークは首を横に振り、テーブルに頬杖をついた。
「性格最悪だし、金の亡者だし、ペッタコだし?」
「最後はお前の好みだろう……」
ガイは呆れたように苦笑し、ルークを見つめた。
「だが、甘いぞ、ルーク……そんな私見じゃ、お前、幸せになれないぞ?」
「な、なんだよ……」
「アニスがお前と初めて会ったときのことを思い出せ?」
「初めて会ったとき?」
初めて会ったときのアニスのぶりっ子を思い出し、ルークはおぞましげに身震いを起こした。
「ああ、アニスのあの異常なまでの猫かぶりの良さは、大きくなったら、脅威になる!」
「脅威……そぅかな?」
どこか釈然としないルークの顔にガイはキッと目線を吊り上げた。
「二十歳になれば、男の一人や二人騙して、結婚なんて考えられるだろうな?」
「な、なるほど……未来を想定しての過程か?」
確かにアニスは性格は最悪だが、ルックスは悪くない……
十年もすれば、ティアやナタリアと違った色香を持つ大人の女性になるだろう。
一瞬、未来のアニスの姿を想像しルークは顔を真っ赤にした。
「だが、ああいうタイプは結婚できても、幸せにはなれないだろうな?」
「なんでだ……?」
心底、不思議がるルークにガイは説明口調で話しはじめた。
「お前、結婚相手が自分を愛さず、財産だけ愛したら、どぅ思う?」
「どぅって……?」
そっと目線をそらし、言葉を探すルークにガイはさらにいった。
「アニスみたいなタイプは気付いたら、他の女に旦那を寝取られてるタイプなんだ?」
「ね、寝取られ……?」
あまりにも聞き慣れない単語に顔を真っ赤にし、ルークは慌てて叫んだ。
「じゃ、じゃあ……最後の過程で行けば、アニスは結婚できるが幸せにはなれないんだな?」
「俺の想像ではな?」
「……」
考え込むようにうずくまるルークにガイは心配そうに顔を覗き込んだ。
「どぅしたルーク……あくまで俺の想像だぞ?」
「いや……それなら、俺がなんとかしてやったほうがいいのかなっと?」
「お前な~~……」
呆れたようにため息を吐き、ガイはルークのおでこを小突いた。
「他人のためを考えるのは立派だが、それは大きなお世話だ……それよりも、今回一番、例題に上げたいやつがいる?」
「だ、誰だ?」
神妙な顔をするガイにルークも顔を強張らせ、答えを待った。
「ジェイドだ……」
「ッ!?」
ピシャンッと背中に雷が落ちたようなショックを受け、ルークは言葉を失った。
「ジェイドは結婚しないほうがいい! 結婚した女が不幸になる!」
「気が合うなルーク……俺もあいつが結婚するのはよくないと思う」
「マッドだし……」
「皮肉屋だし……」
「なによりも……」
「結婚した女を実験体に使いそうだ」
二人の声が重なり、神妙な空気が漂った。
「俺たちのパーティって、結婚できそうな奴一人もいないな?」
「ああ……自嘲するようだが俺も女性恐怖症を治さないと結婚どころか、交際だって危ない……」
「俺も、自分が変わることでせいっぱいで結婚なんて考えられない……」
ふぅ~~とため息を吐き、二人は不意に笑い出した。
「だけど、あの四人のうち一人でも結婚できたら、奇跡だな?」
「まったくだ……」
ハッハッハッと笑いあう二人の背後に冷たい声が聞こえてきた。
「二人とも、言い残すことはそれだけ?」
「え……?」
二人の顔が氷山の氷の色よりも真っ青に変わった。
「み、皆さん……いらっしゃってたんですか?」
ガイの言葉にティアは冷たく目線を見下し、いった。
「ええ……色っぽい話のところからずっと」
二人は顔をさらに真っ青にして、叫んだ。
「お、俺は悪くないぞ……ガイが言いだしたんだ!」
「あ、テメェ……ルーク、ずりぃぞ!?」
ティアとナタリア、アニスの目がキランッと光った。
「問答無用!」
夜空の宿屋からガイとルークの悲鳴がこだました。
次の日……
「ネクロマンサーの名のもとに……」
ジェイドは詠唱を途中で止め、不思議そうにティア達を見た。
「さっきから、女性人が戦闘に参加してないのですが、どぅしたんですか?」
「いや……まったく」
顔をタコのように腫れあがらせたガイとルークは涙目で首を振った。
二度と、結婚話なぞしないぞと二人は心の中で、強く誓いあった。
あとがき
実はこれ、アニスは結婚できるかを想像し、作った話なんです。
ようするにアニス以外のサブキャラクターは全員、おまけ♪
でも、アニスは結婚しても幸せになれるかは疑問ですね?
後半あたりはまだいいですが、序盤はテイルズの悪女ですからね……
次はデスティニー2でも、同じのを書こうかな?
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宿屋の中で男二人、話し合っていると、ガイは突然、結婚話を持ちかけてきた。
ノリノリで参加するルークに最初に例題に上げたのは……