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Fate/anotherside saga~ドラゴンラージャ~ 外伝『夕日の屋上で』

最近、朝起きたらなぜか体が痛いです。
別に変な体勢で寝ているわけでもないのに……。
なぜだ……?

今回は外伝ということで本編とは毛色の違う作品となっております。

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2013-02-18 10:33:44 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:1471   閲覧ユーザー数:1443

 

 

 

 

 

「それじゃあ、この子はもらっていきますね、兄さん?」

 

 

今、この部屋は小さな戦場と化している。

部屋の真ん中では少年と少女が対峙している。

彼らの前には命令に忠実に従う戦士がそれぞれ十六体ずつ揃っている。

……いや、揃っていたというべきか。

 

 

「や、止めろ! そいつを取られたら俺は、俺は!」

 

 

最初十六体いた戦士の数は戦いが進むにつれ、その数を減らしていた。

特に少年の方の戦士はもう十体にも満たなかった。

 

 

「あはははは! 勝負とは非情なものなんですよ、兄さん!」

 

 

少女が笑いながら自分の戦士に命令を出して、少年の戦士を打ち倒す。

少年はそれを見て悲痛な叫び声を上げる。

 

 

「だ、だったらこれでどうだ!」

 

 

少年は戦士に指示を出して、最も近い位置にいた敵の戦士を倒す。

 

 

「かかりましたね?」

「な、なんだとっ!」

 

 

しかしその攻撃に少女は動揺するどころか、二ヤリと黒い笑顔を少年に向ける。

 

 

(キング)がフリーになっていますよ! わたしはこの子をこの位置に置きます!」

 

 

少女の号令で彼女の最強の戦士が少年の陣営を突破する。

 

 

「し、しまった!?」

 

 

少年が慌てて自分の戦士を陣に戻すが、時すでに遅し。

すでに少女の戦士は彼のどの戦士でも手の届かない場所にまで来ていた。

 

 

「これで終わりです! チェックメイト!」

「く、くそーーーーー!」

 

 

ついに少女の戦士が少年の王を追い詰め、少年は自分の負けを悟るしかなかった。

こうして、この部屋で行われた小さな戦争は少女の勝ちで幕を下ろした。

 

 

「くそ、もう一回勝負だ、椿!」

「嫌ですよ。わたしさっきから何回兄さんと打ったと思っているんですか」

「くそっ! だったら衛宮、お前がやれ! なに一人で部屋の隅でうじうじしてるんだよ! お前もチェス部の一員だろ!?」

「ああ、わかった、わかった。そんな怒鳴らくても聞こえてるよ、勇二」

 

 

こうして俺も戦場に足を踏み入れることになった。

……といっても、ただのチェスの対戦のことなんだけどな。

 

 

 

 

 

✞       ✞       ✞

 

 

 

 

 

ここは日本の地方都市、冬木市にある穂村原学園。

学生の自主性を重んじる自由な校風が人気な私立高校で、俺が通っている学校でもある。

今、俺達がいるこの部屋は元々空き教室の一つだったのだが、顧問がわざわざ俺達チェス部のために理事長に頼んでチェス部の活動場所にしてくれたのだ。

空き教室とはいっても普通の教室となんら変わりがあるわけではないので、部員数三人という超弱小クラブである俺達が使うと少々もったいないことになっている。

 

 

「それじゃ、やるか。勇二」

 

 

俺はそう言って青い髪をした少年の前に座る。

 

 

「ああ。観念しろよ。ギタギタにされて泣いても知らないからな」

 

 

そう嫌味な調子で俺に話しかけてくる少年の名前は、間桐勇二(まとうゆうじ)

これでも俺の友人の一人で、数少ないチェス部の一員でもある。

青色の珍しい髪をワックスで固めて、ギンギンに逆立てている。

なんでそんな髪形をしているのか前に本人に聞いてみたら、なんでも勇二の髪は天パぎみで、何もしないとその髪色と合わさってワカメみたいな髪形になってしまうらしい。

『ワカメ』がものすごく嫌いな勇二にとってそれは避けたいことなんだろう。

どこか人を見下したような発言をすることが多いが、その実、筋の通らないことは嫌いで仲間思いな面もある。

 

 

「何を言っているんですか、兄さん? 兄さんが衛宮先輩をギタギタに負かすことなんてできるはずないじゃないですか」

「な、なんだと!」

「だってそうでしょう? 実力では衛宮先輩の方が圧倒的に上なんですから。……まあ、まぐれで兄さんが勝つことはあるかもしれませんが」

「つ、椿、おまえなぁ……」

 

 

さっきから勇二に妙に攻撃的なことを言っている少女は間桐椿(まとうつばき)

俺と勇二より一つ年下の二年生で、彼女もチェス部の一員だ。

勇二のことを『兄さん』と呼んでいるけど、実際はいとこの関係で本当の兄妹ではないと前に本人達から聞いたことがある。

ただ二人とも幼いころからよくいっしょに遊んでいたから、なんとなく兄妹のような関係になってしまったらしい。

椿は勇二とは違って少し赤みがかった黒い髪をしていて、それを肩まで伸ばしている。

純情そうなかなり可愛らしい顔をしているが、ただ、猫かぶっているというか、少し黒いというか……性格は少しいじわる気味だ。

 

 

「衛宮先輩? なにか変なことを考えていませんか?」

「い、いや、別になにも考えてないぞ、椿」

「おい、何しゃべっているんだよ、衛宮! さっさと始めるぞ!」

「あ、ああ。そうだな」

 

 

慌ててチェス盤を見ると、勇二はすでに自分の歩兵(ポーン)を動かしていた。

それを見て俺も意識を集中させる。

 

 

さて、始めますか。

 

 

俺も歩兵(ポーン)のコマを一つ前に進める。

勇二はそれを見て考え込むような表情になり、椿は近くでニコニコと笑いながら俺達の勝負を眺めている。

まだ勝負は始まったばかり、どうなるかはわからない。

 

 

 

 

 

ちなみに、俺の名前は衛宮拓斗(えみやたくと)

一応このチェス部の主将を務めている。

 

 

 

 

 

✞       ✞       ✞

 

 

 

 

 

 

「くそ! また負けたー!」

「悪いな、勇二」

「だから言ったじゃないですか。兄さんより衛宮先輩の方が強いって」

 

 

絶叫する勇二を椿がおもしろそうに眺める。

その光景に少し苦笑する。

結局、俺と勇二の対戦は俺の勝ちで幕が下りた。

勇二はこう見えて成績は常に学年のトップクラスだし、チェスもかなり上手い。

実際、さっきの対戦も、勇二があの場面で騎士(ナイト)を動かすというミスがなければかなりまずかった。

 

 

「勇二。少し自分の方が有利になると、油断して周りが見えなくなるのがお前の悪い癖だな。勝負っていうのは、常に自分が負けるかもしれないと考えながら全力でいくようにしないと、あっという間に相手に勝ちが転がり込んでしまうもんだぞ」

「くっ……珍しく衛宮にしては饒舌じゃないか……。そんなに俺に勝ったのが嬉しいのか?」

「兄さん、宮先輩はそんな人じゃありませんよ。でも、確かに珍しいことですよね。何かあったんですか、衛宮先輩?」

「いや、なんとなくだけど、このままだと勇二が足元をすくわれて、ひどい目を見るような気がして……」

「ああ、それはわかります! わたし、絶対に兄さんは自分より格下だと思っていた人に手痛い反撃を食らって、そのまま失意の内に死ぬんじゃないかと思うんです!」

「余計な御世話だよ、二人とも!」

 

 

俺と椿の言葉に勇二はすっかり機嫌を悪くしてしまう。

……ちょっと、言いすぎちゃったかな?

でも椿の言葉じゃないけど本当にそんな死に方しそうなんだよな、勇二のやつ。

機嫌を悪くした勇二をどうなだめようか俺が考えていると、誰かがこの教室に入ってくるのが見えた。

 

 

 

 

 

「……あら、みなさん、まだいらしたのですね」

 

 

 

 

 

扉を開けて静かに入ってきたのは、綺麗な銀髪が特徴の俺のクラスメイトだった。

 

 

「シリア? 一体どうしたんだ? ていうか、まだ帰っていなかったのか?」

「ええ。さっきまで藤村先生に英語の資料をまとめるのを手伝わされていたんです」

「そうか、大変だったんだな」

「まったくです。どうして私があのような雑用をしなくてはならなかったのか、まるで理解できません。ああいうのは柳洞華音(りゅうどうかのん)のような人の役割でしょうに」

「いや、華音は生徒会の仕事が忙しいんだから、しかたないだろ」

 

 

不機嫌そうなシリアの様子に少し困りながらもちゃんと答える。

教室に入ってきた女子生徒の名前はシリア・オルテンシア。

勇二と同じく俺のクラスメイトで、今は俺の隣の席に座っている。

家は隣町の教会で、母親と二人でいっしょに住んでいるらしい。

見事な銀髪をしていて端正な顔つきも合わさって、何も言わなければまるで天使のように見える。

……そう、何も言わなければだが…………。

俺がシリアのことを複雑な目で見ていると、シリアは小首をかしげて不思議そうに口を開いた。

 

 

「どうしたのですか、衛宮拓斗? 私の可憐な姿を見て欲情でもしましたか?」

「シリア、例え冗談でもそういうことは言うな」

「いえ、冗談のつもりではなかったのですが?」

「やめろ。本当に俺がそういう目でお前を見ていたみたいになるじゃないか」

 

 

いつも通りのシリアの暴言を、身震いしながらも軽く受け流す。

……彼女が口を開くときは大抵の場合、皮肉か暴言しか言わないので喋るときは本当に疲れる。

この学校に転校してきた最初のころは、彼女の言葉で何度心を切り裂かれたか……。

もっとも、今じゃもうある程度は慣れちゃったけど。

楽しそうな彼女を見て、俺は疲れて溜息をつく。

するとシリアが入ってきてから、ずっと彼女を睨みつけていた椿がこっちにやってきた。

 

 

「あの、シリアさん? 衛宮先輩に迷惑をかけるようなことはしないでくださいませんか?」

「あら、心外ですね。私はただ衛宮拓斗と普通に話していただけですよ」

「あなたはただ喋るだけで周りの人に迷惑をかけるんです。いい加減に自覚してくれませんか?」

「本当に失礼な人ですね。あなたこそ私の名前を呼ぶときに『先輩』という敬称をつけていないじゃないですか。上級生に対する敬意の気持ちが足りないんじゃないのでは?」

「冗談は言わないでください。わたしが『先輩』と呼ぶのは衛宮先輩、ただ一人だけですよ。というより、あなたに対して敬意の気持ちなんて最初からもっていません」

「あら、それはいけませんね。年長者に対する敬意のない人は社会で生きていけませんよ?神もこう申しています。『汝、親や目上の者に孝行せよ』と……」

「……わたし、神学の知識はあまりないので自信はないんですけど、それって神様じゃなくて孔子とか、そのあたりの人の言葉ではありませんでしたっけ?」

「どちらも同じですよ。偉大な言葉は全て神が仰った言葉なのですから」

「あなた、本当にエセシスターなんですね…………」

 

 

…………怖い。

何が怖いって、さっきから顔は笑っているのに目が笑っていない椿とシリアが怖い。

この二人は仲が悪い。

どれくらい悪いかっていうと、この二人のどちらかと話しているときに、もう片方の名前を出すだけで睨まれるくらいに。

でも、どうしてこんなに仲が悪いのかはよくわからない。

勇二が言うには去年の二月ごろまでは特別仲が悪かったわけではないらしい。

どことなくこの二人の顔つきが似ているせいなんかじゃないかって俺は勝手に思っている。

 

 

「おいおい、二人ともそれくらいにしろよ。正直、見ている俺らが一番めいわ――」

「ちょっと黙ってくれませんか、兄さん? 兄さんがしゃべると磯の匂いがして気持ち悪いんです」

「黙りなさい、間桐勇二。あなたが近くにいると海鮮物とワックスの匂いがいっしょにするんです。だからあっちに行きなさい、この駄犬」

「…………………」

 

 

ああ、勇二が燃え尽きたボクサーのようになってる…………かわいそうに……。

椿とシリアは教室の隅っこでメソメソと泣いている勇二なんか目もくれないのか、まだ言い合いを続けていた。

 

 

「第一、チェス部の部員でもないあなたがどうしてここに来ているんですか! 活動の邪魔のなので今すぐ出て行って下さい!」

「拒否します。私がどこに行こうと、それは私の勝手です。後輩であるあなたに指示されるようないわれはありません」

 

 

そう言って睨みあう椿とシリア。

なんとなく、教室の温度が二、三度下がった気がする。

だめだ……。

この冷たい空気を砕く度胸は俺にはない…………。

だれか、だれか助けてくれー……。

 

 

 

 

 

「部活動中に失礼する。衛宮はここにいるか…………と、何だこの空気は?」

 

 

 

 

 

俺が勇二といっしょにブルブルと震えていると、教室のドアが開いてまた女子生徒が入ってきた。

 

 

「あ、柳洞会長…………」

「…………柳洞華音、何しに来たのですか?」

 

 

入ってきた人物を見て、さっきまで殺気を飛ばし合っていた二人が居心地悪そうに身をよじる。

 

 

「この空気の原因はお前達か、間桐妹、オルテンシア。……そう嫌そうな顔をするな、二人とも。私はただ藤村先生から衛宮への言伝を伝えに来ただけだ。用が済めばすぐにここからは去るつもりだよ」

「華音、俺に用なのか?」

「む、そんなところにいたのか。聞いていたかも知れんが、藤村先生からの伝言だ。『明日の放課後に職員室にいる私のところにくるように!』とのことだ」

「何で今日じゃなくて、明日の放課後なんだ? 呼び出しの理由は言ってなかったか?」

「いや、言ってないな。残念ながら、藤村先生はお前の言伝を言ったあと、猛スピードで帰っていったからな。理由を聞く暇もなかった」

「相変わらずだな、藤村先生……。まあ、それはともかくわざわざありがとな、華音」

「別にお礼を言う必要はないさ。私はただ先生の命令を聞いただけだからな」

 

 

華音はそう言って、腕を組んで静かに微笑む。

 

 

柳洞華音。

俺のクラスメイトの一人で、現生徒会長を務めている。

女性らしい抜群のプロポーションに、男性のようなサバサバとした口調とクールな雰囲気で男子生徒からも女子生徒からも絶対的な支持を持つ。

成績は優秀で、言われたこと以上の結果を残すので先生からの信頼も厚い。

だからと言って冗談が通じないわけでも、融通が利かないわけでもないという、絵に描いたような完璧生徒だ。

転校してきた俺に最初に声をかけてきたのも彼女で、そのおかげで俺は早くクラスに馴染むことができた。

 

 

「ところで、その近くで真っ白になっている物体は間桐か? なにかあったのか?」

「聞かないでやってくれ。こいつも大変なんだ……」

「そうか。まあ、大体の事情はわかるしな」

 

 

俺の言葉に華音は頷いて、椿とシリアの方をじろっと見る。

その視線に椿とシリアはわたわたと慌てだす。

 

 

「間桐妹。何度も言うが仮にも兄と言うのなら、もっと間桐のことを大切にしろ。それでなくても同じ身内で年長者なんだ。それではお前達の関係を知らない人が見たらどう思われると思う? お前一人が恥をかくだけなら自業自得だが、お前のことを女手一つで育ててきた母親にも迷惑がかかるんだぞ」

「ふみゅうう……。ご、ごめんなさーい…………」

 

 

華音に叱られ、椿はさっきまでの勢いもすっかり失ってしょんぼりとする。

 

 

「オルテンシア、お前もだ。仮にも聖職者を務めるお前が人を諭すこともなく、後輩といがみ合ってどうする。それで他の無関係の人まで巻き込むなど、言語道断なことだ」

「く、仏教徒であるあなたに言われるゆわれはないのですが?」

 

 

シリアはさっきも言ったように教会に住んでいて、シスター見習いのようなこともやっているらしい。

対する華音の家は柳洞寺という歴史のあるお寺で、彼女自身も厚く仏教を信仰している。

 

 

「確かに私は熱心な仏教徒だ。だが、仏教もキリスト教も人に迷惑をかけてはいけない宗教のはずだが?」

「うっ……」

 

 

華音の正論にシリアはフラフラと後ずさる。

一応、自分達のいがみ合いが俺と勇二の迷惑になっているという自覚はあったようだ。

 

 

「ほら、二人とも。衛宮と間桐にちゃんと謝れ」

「衛宮先輩ごめんなさい……。兄さんも、すみません」

「…………」

「……オルテンシア?」

「くっ、わかってますよ。…………迷惑をかけて、ごめんなさい」

 

 

華音に促され、頭を下げる二人。

 

 

「別にいいよ、二人とも。俺も別に怒ってたわけじゃ――」

「ふ、ふん! 謝ったぐらいで俺が許すとでも思ったのか!? 二人とも、何か罰が必要だと俺は思うんだよな!」

「……勇二…………」

 

 

俺の言葉をさえぎるように、復活した勇二が生き生きと叫ぶ。

 

 

「ふむ、罰か。確かにこの二人には必要かもしれんな」

「「えっ!?」」

「か、華音!?」

 

 

勇二のとんでも発言に華音がまさかの賛成を表明する。

椿とシリアの顔がみるみる内に青ざめていく。

 

 

「おっ、話がわかるじゃないか、柳洞! じゃあ、罰の内容は二人とも俺の――」

「というわけで、衛宮、罰の内容を考えてくれ」

「俺が!?」

「おい、柳洞! どういうことだ!?」

「当たり前だろ、バカ者。お前に考えさせたらどんなひどい内容になるかわからん。その点、衛宮なら何の心配もないからな」

 

 

華音の言葉に勇二はがっくりと膝をつき、椿とシリアは救われたような顔になった。

 

 

「なあ、華音。これ絶対に考えなきゃいけないか?」

「当たり前だろ。人に迷惑をかけたら罰ぐらいは受けるものだ」

「うーん、だったら……」

 

 

俺は目を閉じてしばらく考え込んでから、思いついた罰の内容を口にする。

 

 

「シリアには俺とチェスで対戦してもらう」

「は?」

 

 

俺の言葉にシリアは目を丸くする。

他のみんなも俺の考えがよくわからないようで首をかしげている。

 

 

「……それが罰なのですか?」

「ああ」

 

 

俺の言葉にシリアはオロオロとしだす。

 

 

「私、チェスなんて上手くできないのですが……。はっ、まさかそれが狙い!? 私が手も足も出ずにボロボロになって泣く姿を皆に晒し出すつもりなのですね。く、衛宮拓斗、相変わらず鬼畜ですね……!」

「そんなわけなかろう」

「うッ……!」

 

 

顔を赤くして勝手に妄想していたシリアの頭を、華音が軽く拳骨でたたく。

呆れながらもシリアの勘違いを正す。

 

 

「違う、違う。シリアにチェスをやってもらうのはそんな理由じゃないよ」

「うう。だったらどういう意味があるのですか?」

「もちろん、ただ普通にチェスをやってもそれは罰じゃない。でも、さっきシリア自身も言っていたけど、俺とシリアとの間には明らかな実力差がある。俺は一応チェス部の主将だし、シリアは素人だからな。そこで、シリアは椿と相談しながらチェスを打ってもらう」

「えっ!?」

「わ、わたしですか!?」

「ああ、そうだ。そしたら少しはマシになるだろ? もちろん、途中でまたケンカしだしたら、今度は勇二の罰を受けてもらう」

「「わ、わかりました……」」

 

 

二人とも渋々、俺の言葉に頷く。

今回の騒動は、元々椿とシリアの中の悪さが原因だ。

だったら協力して同じことをやれば、少しはマシになるかもしれない。

もちろん、俺だってこれで二人が仲良くなるなんて思っていない。

でも、これがきっかけで少しは二人の関係が改善してくれたら嬉しい。

だって二人とも俺の大切な友人なんだから。

 

 

「ほう、さすがは衛宮だ。おもしろいことを考えつく。どれ、私もこの対局を見学しようかな」

「柳洞会長いいんですか? 生徒会の仕事で忙しいんじゃ……?」

「いや、今日の生徒会の仕事はもう終わっているからな。今は自由時間なのさ」

 

 

心配そうな椿の言葉に華音は何でもないように答えて、チェス盤の周りのイスに腰を下ろす。

勇二はぶつくさ言いながらもやっぱり興味があるのかおとなしくしている。

シリアは溜息をつきながらも覚悟を決めたのかこちらをキッと睨みつけてくる。

 

 

「なにをしているのです、衛宮拓斗? 早く席に座りなさい。言っておきますが、やるならば私は負けるつもりはありませんよ」

「ふふ。衛宮先輩、残念ながらわたしもシリアさんと同じ意見です。覚悟して下さいね?」

「……ああ、わかっているよ。俺だって負けるつもりはない」

 

 

負けず嫌いな二人の迫力に少々気押されながらも、気を引き締めて席に座る。

そして、史上初の椿とシリアの共同作業による対局が始まった。

 

 

 

 

 

✞      ✞       ✞

 

 

 

 

 

「チェックメイトだ、二人とも」

「ま、参りました……」

「うう、悔しいですー……」

「はっ! 結局、衛宮の勝ちかよ!」

「相変わらずお前は強いな」

 

 

今度の対局も俺の勝利で終わった。

とはいえ、今度は勇二とやったときよりもさらに大変だった。

アドバイスを出していた椿は正直勇二よりもずっと上手いし、シリアも椿が出さないような手を出して俺を慌てさせた。

 

 

「本当に衛宮はチェスが上手いな。昔どこかでやっていたのか?」

「いや、そういうわけじゃないんだけど……」

 

 

悪気がないとわかっていても、華音の言葉に俺は閉口してしまった。

 

 

俺には過去の記憶というものがない。

厳密には過去の思い出と呼ばれるものがないのだ。

俺はこの時代の人間ではない。

およそ四十年以上前に俺はこの世界で生を受けこの日本で暮らしていた。

だが、当時世界はテロや紛争が嵐のように起こっており、俺や家族もそれに巻き込まれた。

死者×××××人以上の未曾有のテロ。

俺の家族や友人、知り合い、他にもある有名な科学者もそれに巻き込まれて死んだらしい。

俺はなんとか生き残ることができたが、そのときのテロである脳症にかかって記憶を失ってしまった。

本来なら、そのままその脳症により命を落とすところだったが、冷凍睡眠(コールドスリープ)装置で眠りつき、三十年後のこの時代で医療手術を受け、なんとか一命を取り留めることができた。

しかし、脳症が治っても一度失った記憶はもう戻っては来なかった……。

このことを知っているのは、そのとき俺を手術してくれたNGOの人達と現在の家族だけだ。

 

 

「ん、どうした、衛宮? 何か気に障ることでも言ってしまったか?」

「い、いや。何でもないよ。まあ、俺がチェスに強いのは何というか、才能みたいなところがあるんじゃないかな」

「ああ、その可能性あると思います。だって衛宮先輩の強さってちょっと普通じゃないんですもん」

 

 

話を変えるために俺が適当に言った言葉に、椿が納得するようにしきりに同意してくる。

いや、本気で言ったんじゃないんだけど……。

 

 

「しかし、何でチェスなんだ? お前のその実力なら将棋も同じように打つことができるだろうに」

「同感ですね。なぜ、わざわざチェス部を立ち上げたんですか、衛宮拓斗?」

 

 

実はチェス部は元々あったクラブではなく、一カ月前に転校してきた俺が新しく作った部活なのだ。

いまだできてから半年も経ってない新興の部活なので、この部活の部員はさっきも言ったように俺を含めて三人しかいない。

こんな無茶苦茶な部活が認められたのも、生徒会長である華音と顧問の葛木先生のおかげだ。

 

 

「確かに将棋もできないわけじゃないんだけど、なんだか将棋ってあまり好きじゃないんだよな」

「へえ、意外だね。お前にも嫌いなものがあったのか」

「いや、嫌いってわけじゃないんだけど……。取った駒を自分の駒として使えるっていうあのルールがしっくりこなくて」

「わたしは好きですけど。だって一度盤上から消えた駒を自分が好きに使っていいなんておもしろいですし、何より戦略性が増えるじゃないですか」

「それは、そうなんだけど……」

 

 

椿の言葉の通りなんだけど、あのルールはやっぱり好きじゃないんだよな。

一度退場した駒がその後も盤の上にあるっていうのにどうしても違和感がある。

 

 

 

 

 

「タクトー! いるー!?」

 

 

 

 

 

物思いにふけっていると、本日三度目の来客があった。

……って、あの声って、まさか…………。

 

 

「あっ、見つけた! ヘへ……タ~ク~ト~!」

「うっ! い、イリス姉さん!?」

 

 

突然後ろから抱き付いてきた女性に驚いて声をかける。

 

 

「えへへ……」

 

 

俺の背中にギュッと掴まりながら、その小柄な女性は幸せそうな声を上げていた。

 

 

「よう、拓斗! 元気にしてるか?」

「み、美津留まで来たのか!?」

 

 

俺の言葉に学校一の美男子と称されるクラスメイトは、ハハハと楽しそうに笑っていた。

 

 

突然やってきたこの二人の名前は、俺にくっ付いている女性が衛宮イリスで、笑っている男子生徒が美綴美津留(みつづりみつる)

イリス姉さんの方は名字からもわかるように俺の今の家族で、俺よりも一つ年が上のため義姉になっている。

体は小柄で、髪は雪のようなきれいな白髪。

体が小さいせいか年にあわず元気が有り余っていて、家では俺や養父の紫苑さんによく迷惑をかけている。

この間、穂村原学園を卒業したけど大学には進学しないで、今は紫苑さんといっしょにNGO活動をしている。

美津留は俺のクラスメイトで友人。

強豪クラブである弓道部の主将で練習に後輩の世話、そして藤村先生の後始末と毎日忙しそうにしている。

サラサラの茶髪にクールな表情が女生徒から人気を集め、今では穂村原学園一の美男子とまで呼ばれている。

そのためか、同じく女生徒からモテる勇二からは一方的に敵視されている。

ちなみに、美津留は和の文化を深く愛していて、家では和服を常に着ているらしい。

 

 

「何しているんですか、イリスさん! 早く衛宮先輩から離れてください!」

「間桐椿の言う通りです、衛宮イリス! 女性が男性と気安く触れ合ってはいけません!」

「これくらい、いいじゃなーい。私とタクトは姉弟なのよ。これくらいのスキンシップは当たり前のことだと思うの」

「い、イリスさんと衛宮先輩は本当の姉弟じゃないじゃないですか!」

「仮に本当の姉弟でも、こ、恋人でもない男女が触れ合うことを神は許しておりません!」

「悪いけど、私は腹黒後輩キャラや腹黒シスターキャラに従うつもりはありませーん! ……それに、タクトは私のものだもーん。ね、タクト」

「い、イリス姉さん。変な言い方をしないでくれ……。誤解される……」

 

 

いまだに俺の背中にしがみ付いたまま離れようとしないイリス姉さんを椿とシリアがなぜか焦ったように引き離そうとしている。

さっき椿とシリアは仲が悪いと言ったが、もう少し詳しく言うと椿とシリアとイリス姉さんの三人の仲がとても悪いのだ。

この三人が仲良くやっている場面なんて一度も見たことがない。

 

 

「み、美津留、華音! た、助けてくれー!」

 

 

一抹の希望を託して、友人二名に助けを求める。

しかし。

 

 

「お、柳洞じゃねーか。お前、生徒会の仕事はどうしたんだ? 珍しくサボったのか?」

「そんなわけないだろ。もうとっくに今日の仕事は終わらせている。サボったのはお前の方なんじゃないか、弓道部主将さん?」

「なーに。今日は顧問のタイガーが早く帰りやがったからな。おかげでうちも早めに練習を切り上げたのさ。責任者がいないと万が一、何かが起こった時に事だからな」

「なるほどな。そういえば藤村先生は早く帰っていたな」

「ところで、今度の週末おまえんちに行くからよろしく~」

「なっ! また来るのか、お前は!? この間来たばかりだろう!?」

「いや~。師匠と和について熱く語りたくてね」

「くっ……何でお前はそんなに父上と親しいんだ……!」

 

 

だめだ、こっちの話が聞こえてない……!

 

 

「勇二、助けてくれないか!?」

「断るよ。残念ながら俺は馬に蹴られて死にたくないんだ」

 

 

勇二もニヤニヤと笑っているだけで助けてくれそうにない。

 

 

「いい加減離れなさい、この変態シスコン!」

「あーあー、きーこーえーなーいー」

「衛宮先輩も早くイリスさんを引きはがしてください!」

「そんなこと言われても、後ろにしがみ付かれるとしがみ付かれた本人がはがすのが難しいんだ!」

「へへーん! タクトは何の関係もない同級生や後輩よりも、お姉ちゃんのほうが好きだもんね」

「何の話!? イリス姉さん、それはどういう意味で言ってるんだ!?」

「「衛宮先輩(タクト)!」」

「ぐわあああああ!?」

 

 

プライドを傷つけられたのか、怒った二人の鋭い一撃で俺は意識を失った。

り、理不尽だ……。

 

 

 

 

 

でも、一瞬見えた彼女達の目がうっすらと潤んでいたように見えたのは気のせいだったのだろうか?

 

 

 

 

 

✞       ✞       ✞

 

 

 

 

 

「痛たたたた…………」

「染みますか?」

「い、いや大丈夫だよ、シリア。それよりも手当てしてくれて、ありがとうな」

「な、何を言っているのですか。この傷は私のせいでついてしまった。ならば罪を償うために、手当てをするのは当たり前のことでしょう?」

「いや、本当にありがたいと思ってるよ。…………他にも責任のあるはずの二人は俺なんて無視してケンカしてるし」

 

 

シリアに包帯を巻かれながら、ケンカをしている椿とイリス姉さんを遠巻きに眺める。

実は普段の言動からはあまり想像できないがシリアはとても優しい。

確かに色々とひどいをことを言って相手の心をバッサリと斬り裂くことも多いが、自分の言葉で相手を本当に傷つけたりしたら彼女は本気でその人に謝る。

彼女の言葉は悪意も含まれているが、基本的にはただの冗談の類と同じなのだ。

……中々そのことを理解できる人は少ないんだけどな。

 

 

「ところで、よく包帯なんて持っていたな。どこか怪我でもしたのか?」

「いえ。私は常に包帯を持ち歩いているので」

「常に!?」

「母が何かと役に立って便利だからいつも持っていたほうがいい、と言っているので」

「ああ、なるほどな。確かに今日みたいに突然怪我したときには命を救うかもしれないもんな」

「ええ。他にも目隠しの代わりにもできますし、丈夫ですからロープの代わりに相手を縛りあげることもできますしね。ああ、首を絞めるのに使えば護身用にも使えますね」

「………………」

 

 

楽しそうに話すシリアから思わず目をそらす。

…………なんだか、さっき優しいと思ったことを訂正したほうがいいのかもしれない。

 

 

「まったく、あなた達は……!」

「ご、ごめんなさーい…………」

「ふん! なによ、ちょっと騒いだだけじゃなーい!」

「ははは。懲りませんね、衛宮先輩も」

「ま、こっちに火の粉が飛ばなきゃ楽しい見世物なんだけどな」

 

 

あっちから他のメンバーがぞろぞろと集まってきた。

どうやらケンカは終わったらしい。

 

 

「はぁー……。衛宮先輩も少しは反省してくれ…………」

「ぶーぶー。何で後輩のあなたに私が叱られなきゃならないのよー」

 

 

溜息をつく華音の隣でイリス姉さんは頬を膨らます。

どうやら、うちのわがままお姫様は反省する気はゼロらしい。

 

 

「ていうか、今更だけど何でイリス姉さんが学校に来てるんだ?」

 

 

さっきも言ったけど、イリス姉さんは今年の三月にこの学校を無事に卒業しているから本来ならここにいるはずがない。

 

 

「それはねー、退屈だったから、ミツル達でも鍛えてあげようかなー、って思って来たの」

 

 

そういえば、イリス姉さんは学生時代弓道部の主将だったって聞いたことがあったな。

百発百中の腕前だったらしく、歴代弓道部第二位の実力者だったらしい。

 

 

「あとついでに、かわいいタクトの顔が見たくなったの」

「そっちが本命ですね……」

 

 

椿が重い溜息をつく。

俺もついでに溜息をついておく。

 

 

「話は変わるんだけどさ。この教室って少しほこりっぽくないか? 衛宮、間桐、ちゃんと掃除とかってしているのか?」

「あー……。そう言えばやってないな」

「俺がそんなめんどくさいことをすると思ってるの?」

 

 

美津留の言葉に俺と勇二はそれぞれ答える。

 

 

「掃除ですか……。確かにやっていませんでしたね」

「いけませんね、衛宮拓斗。掃除とは日常生活の根本をつかさどる大事な労働の一つです。それすらも満足におこなっていないのなら、いくら慈悲深い天の父でも罰を下さないといけなくなりますよ?」

「確かに実綴の言う通り、この教室は少しほこりっぽいな。掃除をした方がいいのではないか、衛宮?」

「もー、タクトったら! ちゃんと身の回りの整理整頓はちゃんとしなさいっていつもいっているでしょ!」

 

 

皆が次々と色んなことを言っている。

まあ、要約すると皆言っていることは『掃除しましょう』ってことなんだろうけど。

俺は腕まくりして、気合を入れる。

 

 

「だったらこれから掃除するか」

「そうですね。善は急げとも言いますし」

 

 

そう言って、教室のロッカーからほうきを持ってくる椿。

 

 

「ん? 椿、手伝ってくれるのか?」

「はい。元々ここは私達チェス部の活動場所ですから」

「そうだな。よし、みんな。これからチェス部でこの教室を掃除するから勇二以外はもう帰ってもいいよ。もしそれでも残るんだったら、掃除を手伝ってくれ」

「掃除ですか……。なら、私はお言葉に甘えさせてもらって先に帰らせてもらいます」

「私は残るぞ。乗りかかった船だ、手伝うとしよう」

「あっ、俺も残るぜ。元々ほこりっぽいって言ったのは俺なんだしな」

「タクトー。お姉ちゃん、先に帰って夕飯の準備しとくねー」

 

 

俺の提案に皆、それぞれの答えを出す。

ただ、イリス姉さんはともかく、さっき労働がなんたらかんたら言っていたシリアも帰る気満々なんだな……。

 

 

「ちょっと待ってくれよ、衛宮。ここは一つ賭けをしないか?」

 

 

そう言ってニヤニヤ笑っている勇二。

絶対になんかとんでもないことを考えている顔だ。

椿も勇二を見て冷たい目をしているし。

 

 

「賭け?」

「そう、賭けさ! 今からお前と俺がチェスで対戦して、負けたほうがこの教室を一人で掃除するんだ。当然、手伝いはなし!」

「そんなルールでいいのか? こう言ったら何だけど、お前の方が不利なんじゃ……?」

「そんなことはどうでもいいだろ。で、やるの? やらないの?」

「ま、まあ。お前がそれでいいって言うんなら、いいけど……」

「言ったな!? ならもう途中で止めるのはなしだからな!」

「別にいいけど……?」

 

 

俺がそう言うと、勇二はガッツポーズをして喜んでいた。

……?

何で勇二はこんな賭けを?

絶対に俺が勝つなんて言いきれないけど、どちらかと言ったら勇二の方が不利のはずだけど……?

だけど俺以外の皆はそう思っていないのか、皆一斉に溜息をつく。

 

 

「衛宮先輩、兄さんの言葉なんて無視したらいいのに……」

「神は時として善良な人にほど強い試練を課すものです……。がんばってください、衛宮拓斗」

「衛宮……わかっているとは思うが、お前は自分でその賭けに乗ったんだ。お前が負けても私達は手伝うことはできんぞ?」

「お前ってさぁ。本当に素直な奴だよな……。いい意味でも悪い意味でも」

「あーあ。タクトって本当に不器用なんだから」

 

 

え?

皆、俺が負ける方に一票?

 

 

「いや、まだ俺が負けるなんて決まってないだろ?」

「わかりますよ、それぐらい」

 

 

きっぱりと言い放つシリアに皆が頷く。

 

 

「はい。もしこれが普通の勝負なら、衛宮先輩が負けるはずがないんですが……」

「今回は賭けだもんね」

「だから、なんで賭けだと俺が負けるんだ?」

 

 

俺がそう言うと、みんなは顔を見合わせたあと一斉に口を開いた。

 

 

 

 

 

「「「「「だって、衛宮(先輩)(拓斗)(タクト)って運が悪い((ですから))((からな))(もの)」」」」」

 

 

 

 

 

 

…………結局、賭けには負けました。

何で?

 

 

 

 

 

✞       ✞       ✞

 

 

 

 

 

NO SIDE 1

 

 

いつもの通学路を間桐勇二と従兄妹の間桐椿は一緒に帰っていた。

同じ家に住んでいるというわけではないがそれぞれの家は比較的近くにあるため、女子高生を一人で帰らすのは危ないという親の意向で、こうして一緒に登下校をしているのだ。

もっとも一緒に帰っているとはいえ、それはとても仲睦まじいものとは言えないが。

 

 

「どうして兄さんはあんなバカな賭けを提案したんですか? あの賭けさえなかったら今頃、兄さんなんかとかじゃなくて衛宮先輩といっしょに帰っていたかもしれないのに……!」

「わ、悪かったって言ってるだろ! 俺だって掃除なんかしたくなかったんだよ!」

「兄さんの意見なんてどうでもいいんです……! 大切なのは私と衛宮先輩のことだけなんですから!」

 

 

従妹の放つ黒いオーラに間桐勇二はタジタジと退く。

ようやく許したのか、それとも単純に飽きただけなのか、間桐椿は視線を間桐勇二からそらす。

重度の殺気から解放された間桐勇二はホッと安堵のため息を漏らす。

ただ、その間も間桐椿はここにはいないシリア・オルテンシアと衛宮イリスを呪いだしていたが。

 

 

「お前ってさ。本当に衛宮のことになると必死になるよな」

「当然です。好きな人を手に入れるためなら、乙女は黒くもなりますし、敵役にもなるんです」

 

 

いつも通りの従妹の言葉に間桐勇二は深いため息をつく。

その仕草が気に障ったのか、間桐椿は従兄の顔をキッと睨みつける。

 

 

「……なんですか?」

「別に。ただ、あんまり気を張りすぎても逆に上手くいかなくなると思っただけさ」

「……そんなことわかってます。でも、わたしは後悔だけはしたくないんです。母さんみたいに後悔だけは……」

 

 

黙り込んでしまった従妹に間桐勇二は何も言わなかった。

しばらくして、間桐椿がポツリポツリと言葉を漏らす。

 

 

「……母さんは潔すぎたんです。好きな人をただ見ているだけで無理に手を伸ばそうとしなかった。もちろん、母さんなりに努力したのはわかってます。でも。それでもわたしは母さんが消極的すぎた気がしてならないんですよ……。母さんは名前のように美しく、でもあまりにも潔く散りすぎたんです」

「……」

「だから、わたしは絶対に後悔だけはしたくない。どんなに醜かったっていい。他の人からどんなに野次られったっていい。わたしは椿の花ように、最後までしぶとく、あきらめ悪く、醜く散りたい。それで、大切な人を手に入れられるなら…………」

 

 

間桐椿は手を胸の前で合わせて、まるで祈るようにしながら一人独白する。

従妹のそんな一途な姿を見て間桐勇二は一瞬だけ優しく微笑み、すぐにそんな表情など消してどうでもよさそうな表情にする。

 

 

「はっ。おもしろいから俺はお前の恋路を遠くから眺めさせてもらうけど、まあ、せいぜい頑張るといいさ」

「……兄さんに言われるまでもありません。絶対にわたしは負けませんから」

「そうかい。ま、一応俺はお前を応援してやるよ。別に何をするでもないけどさ」

「相変わらず兄さんは役に立ちませんね」

 

 

不満そうな従妹の顔を見ながら間桐勇二は軽く笑った。

 

 

 

 

 

✞       ✞       ✞

 

 

 

 

 

NO SIDE 2

 

 

「さて、夕飯の材料も買ってきたし、洗濯物も取り込んだ。あとはイリスとタクトが帰ってくる前に夕飯の準備を終わらせるだけだ」

 

 

台布巾でテーブルを拭き終わった三十代ほどの男は満足そうに頷いた。

 

 

「それにしても、あなたが死んでからもう十年以上経つんですね。月日が経つのは本当に早い」

 

 

その男、つまりこの家の現家主、衛宮紫苑(えみやしおん)はエプロンをつけながら、しみじみと語る。

そして、居間の端に置かれた仏壇を見る。

 

 

衛宮紫苑は元々日本の生まれではなかった。

シオンはとある中東のとある国で少年兵として幼いころから戦場で暮らし、そして家族の温かみ、命の尊さ、人の愛を知らずに生きていた。

しかし、戦場で足を撃ち抜かれ死にゆこうとしていたある日、シオンはある男に助けられた。

その男は世界の様々な戦場を渡り歩き、争いを止め、人々を救う『正義の味方』になるために行動していた。

シオンは今まで自分が想像すらしていなかったその生き方に驚嘆し、彼についていくことを決めた。

やがてシオンは彼の養子となり、衛宮紫苑の名前をもらった。

 

 

「でも、あなたはあまりにも急ぎすぎた。そしてあまりにも強欲すぎた。だからあんな結末になってしまったんでしょうね……」

 

 

衛宮紫苑が今暮らすこの武家屋敷は元々彼が住んでいた家だった。

それを彼の死後に譲り受けたのだ。

昔、彼が生きていたころは賑やかだったこの家も、今となってはめったに来客も来なくなった。

 

 

「あなたが死んでから、私もNGOの職員として様々な世界を渡り歩きました。でも、世界は相変わらずでしたよ。……ヨーロッパは西欧財閥の元でどうしようもない停滞におかれ、その他の地域はテロや紛争が止むことはない。正直、どうしようもありませんでした」

 

 

彼の失敗を生かし、衛宮紫苑はNGOの活動で『正義の味方』に近づこうとした。

それは失敗ではなかったが、決して成功でもなかった。

 

 

「ですが、私はこの生活を続けるつもりです。私はまだ若く、時間がある。あなたのように生き急いで、あの子達に私のような思いを味わってほしくないから」

 

 

仏壇を見ながら、衛宮紫苑は軽く笑う。

夕飯を作るために握った包丁がさっきから一度も振るわれていないことには気づいていない。

 

 

「そういえば、言いましたっけ。イリスが私の所属するNGOに入ってくれたんですよ。あのわがままなお姫様が見ず知らずの人のために働くって言ったんです。信じられますか?」

 

 

衛宮イリスは衛宮紫苑と同じように彼の養子だった。

戸籍上義兄妹の関係の二人だったが、その年齢差から実質は親子のように暮らしていた。

 

 

「あなたにイリスの世話を頼まれたときはどうしようかと思いましたよ。当時はまだ私も十代前半でしたし、イリスにいたっては生まれたての赤ん坊でしたからね。でも、断ろうとは思いませんでした。やっぱり、あの子があの人の娘だったからでしょうね……」

 

 

衛宮紫苑はどこか痛みをこらえるような顔して、手に持っていた包丁をギュッと握りしめた。

衛宮イリスの母親は元々体があまり強くなかったため、衛宮イリスを出産するのと引き換えに亡くなった。

父親が誰だったかを明言する前に母親が亡くなったため、生まれたばかりの衛宮イリスは母親と懇意にしていた彼の元に引き取られた。

しかし当時の彼は『正義の味方』として最も忙しい時期であったために家に帰ることは少なかった。

結果として衛宮イリスは衛宮紫苑のもとで育てられたのだった。

 

 

「私やあなたの生き方を見てきたせいか、あの子はあまり他人を想うことが少なかった。なのに、結局最後はまた私達の生き方に戻ってきた。それは幼いころから私達の考えを聞きながら育ったせいなのか……。それとも。やはり血は裏切れないという事なのかもしれませんね。…………あなたは、どう思いますか?」

 

 

そう言って、衛宮紫苑は仏壇の方を無言で見る。

しばらく見続けた後に、首を振って静かに微笑んだ。

 

 

「いえ、違いますね。きっとあの子を変えたのはタクトです。私とイリスの大事な新しい家族。きっと彼が人を信じようとしなかったあの子を変えてくれたんです」

 

 

衛宮紫苑は天井を見上げる。

 

 

「彼を救ったのは厳密には私ではありません。眠り続けていた彼の存在を私は知りませんでした。彼のことを教えてくれたのは彼女でした。……彼女のことは話しましたっけ? 魔術師(ウィザード)としてテロ活動を行っているのに、優しい心を失わなかった少女ですよ。彼女とは妙に腐れ縁が続いて、なんだかいつの間にか友人のような関係になってしまっていたんですよね。いやー、不思議なことです」

 

 

首を振りながら、衛宮紫苑は軽く笑う。

人を救うNGOの職員と人を傷つけるテロ屋の魔術師(ウィザード)との間に生まれた奇妙な交友関係をおもしろがるかのように。

 

 

「そんな彼女が戦場でなく、この家に乗り込んで来た時は何があったんだろうって思いましたね。おまけにいつも弱い所を見せない彼女が必死な表情で私に助けを求めてきたときには、冗談でなく世界が終るんじゃないかとすら思ってしまいました」

 

 

日本にまで来た彼女は衛宮紫苑に拓斗の存在を知らせた。

彼女は拓斗を助け出そうとしていたが、身内にいい医者がいなかったため衛宮紫苑の人脈を使って名医を連れてきてもらおうと思ったのだ。

そして拓斗は長い眠りから目覚めた。

 

 

「実はタクトの手術をしているときに、彼の心臓が一回止まったんですよ。電気ショックや心臓マッサージをしても動かなかったので、私も医者達も諦めかけましたね。そこで彼女がタクトの胸を思いっきり殴って心臓が動き始めたときには、本当に奇跡だと思いましたね」

 

 

『借りは返したわよ』

あのとき、彼女が言った言葉がいまだに衛宮紫苑には理解できなかった。

なぜ、他人と慣れ合うことを嫌う彼女があそこまで必死になって拓斗を助けようとしたのか。

その理由を衛宮紫苑は聞くことができなかったのだ。

 

 

「それにしても彼女はどこに行ったんでしょうか? せっかく助けたタクトが目覚める前にどこかに行ってしまうし……。大丈夫だとは思いますが、少しだけ、心配ですね」

 

 

そう呟いて、衛宮紫苑は外を眺める。

外はそろそろ日が沈みそうになっていた。

 

 

 

 

 

 

✞       ✞       ✞

 

 

 

 

 

「よ、ようやく終わった……」

 

 

疲れ切った俺はきれいにした机の上で伸びていた。

勇二との賭けに負けて教室の掃除をやることになった俺は、皆が帰った後も一人で掃除をしていた。

ほうきで床をはいて、濡れぞうきんで机の上や窓ガラスを拭き、集めたほこりをゴミ箱に捨てる……。

さすがに教室一つを一人で掃除するのはとても骨が折れた。

 

 

「さて、帰るか。イリス姉さんも紫苑さんも待っているだろうし」

 

 

自分のカバンを持って教室を出る。

窓から外を見ると、夕方の空は真っ赤に染まっていた。

 

 

「ん? 何だ?」

 

 

廊下を歩いてると、階段の上の方から何やら物音が聞こえた。

チェス部の活動場所の教室は校舎の最上階にある。

だから上に続く階段から物音が聞こえたということは、屋上に誰かいるということだ。

 

 

「先生の誰かか? でもこんな時間に何の用だ?」

 

 

上り階段をじっと見つめる。

屋上は生徒の立ち入りが禁止されているため俺も実際に行ってみたことはない。

そんなところで誰が何をしているんだろうか?

しばらく迷ったあと、好奇心に負けて階段を登ってみた。

そんなに高くない階段を登りきると、そこには屋上に入るための扉がそっけなくあるだけだった。

ドアノブを触ってみても鍵は掛かっておらず、簡単に回すことができた。

恐る恐るドアを開けて、屋上に入ってみる。

 

 

「ま、眩し――って、えっ……?」

 

 

屋上に入ると強烈な光が目に飛び込んできた。

初めて入った屋上は夕日に照らされて、どこも真っ赤に染まっていた。

だけどそれよりも俺の目に焼き付いたのは屋上にいた一人の少女だった。

 

 

燃えるような赤色の服を着た少女が屋上の端に堂々と立っている。

残念ながら俺に背を向けて学校の外の光景を見ているためよくわからないが、年は俺と変わらない高校生ぐらいに見える。

だがそれより俺の目を引いたのは彼女の金色の髪だった。

ツインテールにしている彼女のみごとな金髪は夕日の光を存分に浴びて、まるで燃えているかのように輝いていた。

 

 

なんだかひどく非現実的な、幻想の世界に入ってしまったようだった。

 

 

「この風景を見ていると懐かしい気持ちになるわね。私と彼が最後にゆっくり話した時もこんなみごとな夕日だった」

 

 

突然、少女が話し出したため驚いて息を飲む。

だけどそれはただのひとり言だったのか、俺に背を向けたまま彼女は一人話を続ける。

 

 

「でも、少しだけ残念ね。こんな見事な夕日はめったに見ることはできないわ。……どうせなら今日じゃなくて、明日見せてくれたらよかったのに」

 

 

少女はそこで軽くため息をついて、首を横に振った。

 

 

「いいえ、そこまで言うのは贅沢ね。二度と会えないと思ってた人にまた会えるんだもの。それだけで十分よね。……さて、下見も終わったしそろそろ帰りますか。本当はもうちょっとこの夕日を見ていたかったけど、やることも色々あるしね」

 

 

そう言って少女は軽く伸びをして、こちらに振り向いた。

呆然としていた俺は反応することもできずに、馬鹿みたいに突っ立ていることしかできなかった。

 

 

「へ……?」

 

 

気づいていなかったのか、少女のきれいな蒼眼が俺を確認して丸くなる。

 

 

「嘘でしょ……?」

 

 

椿やシリアと比べても見劣りしないきれいな顔が驚きの表情でいっぱいになる。

俺は何も言えないまま、彼女を見つめることしかできなかった。

 

 

「ど、どうして、あなたがここに……?」

「いや、その、誰かが屋上にいたから気になって……」

 

 

彼女のセリフに若干の違和感を覚えながらもなんとか答える。

 

 

「あなたって人は相変わらず予測のつかないことをするのね。私の思い通りにならないっていうか……。ああ、もう! そんないきなり現れても、私も心の準備ができてないわよ……!」

 

 

彼女は呆れたような、でもどこか泣きそうな表情をしながらぽつりと言葉を漏らす。

 

 

「あの……失礼だけど、俺って君と会ったことがあったかな?」

 

 

彼女の言葉に俺への親愛の情が含まれているような気がして思わずそう問いかける。

 

 

「……いいえ。あなたと私は初対面よ。会ったことは、ないわ」

 

 

彼女は俺の問いにどこか悲しそうに答える。

でも気分を切り替えたのか、すぐにそんな表情を消して俺の顔をじっと見つめる。

 

 

「な、なに……?」

「あなた、名前は何て言うの?」

「俺の名前? え、衛宮拓斗だけど……」

 

 

突然の彼女の問いに俺はすぐに答える。

彼女はそう、と呟いただけでじっと俺を見続けている。

 

 

「き、君の名前は何て言うんだ?」

 

 

その視線に耐えきれなくなって、思わず彼女にそう尋ねる。

 

 

「私の名前?」

 

 

彼女は眼をパチクリとさせたあと、嬉しそうに微笑む。

 

 

 

 

 

「私の名前は遠坂凛。今度……ていうか明日からこの学校に転校してくる予定なの」

 

 

 

 

 

彼女――遠坂凛の言葉を聞いて俺もようやく納得した。

きっと、彼女はこの学校の下見に来ていたのだろう。

明日から自分が通うことになるこの学校の。

 

 

「そうだったのか。俺は今三年生なんだけど、遠坂は?」

「凛でいいわよ、拓斗。……私も三年生よ」

「そうか。だったら凛と一緒のクラスになるかもしれないんだな」

「ええ、そうね」

 

 

そう言いながら凛は二ヤリと面白そうに笑った。

なんだろう、なんだか急に悪寒を感じたんだけど……?

 

 

凛は髪をかき上げながら、また俺の顔をじっと見つめる。

その顔はひどく真面目なものだった。

 

 

 

 

 

「…………久しぶり、拓斗」

 

 

 

 

 

「ん? 何か言ったか? 悪いけど聞こえなかったらもう一回言ってくれないか?」

 

 

小声でつぶやいた凛にそう聞くと、凛は少しだけ寂しそうに顔を振ってから勝気な笑みを浮かべて手を伸ばす。

 

 

「これからよろしくね、衛宮拓斗――って言ったのよ」

「……そっか。うん。俺からもよろしく、凛」

 

 

俺は別に何も言わないで、ただ凛と同じように手を伸ばす。

きれいな夕日を浴びながら、俺と凛は握手を交わした。

 

 

 

 

 

あとがき

というわけで外伝『夕日の屋上で』でした。

外伝ということで今回は拓斗の元になった少年と地上に一人取り残された凛のお話にしてみました。

正直、やっちまたZE☆って気分です☆

時系列的にはEXTRAのエンディング並びにanotherside sagaのプロローグから大体三か月ぐらい後の話です。(それと独自設定で月の聖杯戦争は地上の暦で二月頃に行われたとしています)

 

オリジナルキャラが多数出演しましたのでちょっとここにまとめておきます。

 

・衛宮拓斗(えみや たくと)

本編の主人公でチェス部の主将。

四月に穂村原学園に転校してきた。

言うまでもなくEXTRA主人公の元になった人物である。

後輩やら同級生やら義姉やら転校生やらに囲まれ、どこぞの馬鹿スパナと似たような運命を辿りつつある。

 

・間桐椿(まとう つばき)

拓斗の後輩でチェス部の部員。

一途に恋する腹黒少女。

目的のためなら黒化しようが敵役になろうがラスボス化しようがどうでもいいらしい。

お淑やかで理想的な母親がいる。

母子家庭。

 

・間桐雄二(まとう ゆうじ)

拓斗のクラスメイトでチェス部の一員。

秀才だが色々残念なキャラ。

元アジアのゲームチャンプだった少年の親戚。

父親がアレらしい。

名前やルックスの由来が某Fクラスの代表であることは内緒である。

 

・シリア・オルテンシア

拓斗のクラスメイト。

毒舌家なシスター見習い。

容赦のない罵倒や皮肉を言うが母親よりはだいぶマシみたい。

実は家事スキルが高い。

生き別れの父親の影響を色々とうけているらしい。

 

・柳洞華音(りゅうどう かのん)

拓斗のクラスメイトで生徒会長。

完璧優等生(猫かぶりではあらず)。

キャラの濃い友人たちを見事にまとめることができるが美綴美津留だけは苦手。

実家は柳洞寺というお寺。

父親はまじめで堅物な人らしい。

 

・美綴美津留(みつづり みつる)

拓斗のクラスメイトで弓道部主将。

学園一のモテ男だが彼女はいない。

雄二から一方的にライバルとされているが、なんだかんだで馬が合うらしく仲は良い。

華音の父親を師匠と慕っている。

母親に似て和服などが好き。

 

・衛宮イリス(えみや いりす)

拓斗の義姉で元弓道部主将の卒業生。

弓道部で歴代二位の実力を持つ。

小柄な体形と天真爛漫な性格をしているため実年齢よりはるかに幼く見える。

独占欲が強く、欲しいものは何が何でも手に入れ決して手放さない。

父親は不明。

 

・衛宮紫苑(えみや しおん)

拓斗の養父でイリスの義兄。

NGOの職員で『正義の味方』を目指している。

元はとある貧困国の少年兵だったが、現在は比較的穏やかに暮らしている。

姉のように慕っていた女性の忘れ形見であるイリスと、どこか養父と似たような匂いのする拓斗のことは実の子供同然に大事に思っている。

尊敬する人物は亡くなった養父。

 

独自設定が多々ありますが並行世界の一つの可能性として見逃してください(世界情勢など)。

 

 

では、また次回お会いしましょう。

(CCC発売前にもう一回EXTRAをやり直そうか考え中の)メガネオオカミでした。

 


 
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