No.544854

真・金姫†無双 #26

一郎太さん

前回のあらすじ。

説明をお断りします(゚ω゚)

という訳で、今回は休憩回。

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2013-02-16 01:14:26 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:10693   閲覧ユーザー数:7724

 

 

 

#26

 

 

春蘭と仕合を行い、曹操たんに殺されそうになってから、また時間が流れる。散々ボコられた後で出店の許可をもらったので、空き家を借りて店を出した。とはいえ、最初の予定の通り、空き家自体は使わない。家の前に焼き場のある屋台を作り、火を焚いて焼鳥を焼いているくらいだ。

 

「へいっ、モモ、ハツそれからネギ3本、お待ちぃ!」

 

そして、夜には立ち飲み屋を展開している。焼き場の半分に鉄板を置いて、さらにその半分には鍋を乗せてメニューも増やす。儲けとしてはこの方がよいのだが、昼間は皆ゆっくりと食事をとる訳ではないので、歩きながら口に出来る焼鳥か焼きおにぎりを売るくらいだ。

 

「来たぞ、一刀!」

「おう、春蘭に秋蘭ちゃん、いらっしゃい」

 

そして今は、夜である。つまりは立ち飲み屋を営業しており、仕事を終えた城の要人なんかも来たりする。ちなみに、春蘭との勝負と曹操たんによる私刑(リンチ)のあと、秋蘭ちゃんにも真名を預けられた。嬉しいねぇ。

 

「いつものを頼む」

「私は肉だ!出せるだけ出せ!」

「他の客の分があるから程々にな。ほら、席は準備してあるから入りな」

 

2人から注文を受け、家の中へと通す。そんな事をすれば当然、

 

「おい、北郷さんよ。なんであの嬢ちゃんたちは中に入れるんだ?」

「そりゃあれだろ。北郷の兄ちゃんだって若いんだ。美人が来たらもてなすんだろうよ。俺たちみたいなムサイ男とは違ってな」

 

彼女らよりも前に来ていた客の男たちから、疑問の声が上がる。あぁ、こいつらは知らないんだな。

 

「いや、これはおっちゃん達の為でもあるんだぜ?」

「どういう事だ?」

「お前にはカミさんがいるじゃねーか。変な気を起こさないように、気を使ってくれてんだろ」

 

そう言って笑い合う男たち。いいから人の話を聞きやがれ、このクソ酔っ払い共。

 

「そう怒んなって。で、実際のところは?」

「あの2人な……夏候惇様と夏侯淵様だぜ?」

「……へっ?」

 

俺の口から出て来た名に、お客さんたちは呆ける。

 

「酔っ払って下手な事を口走りでもしてみろ」

 

俺は真面目な顔で、首に親指を当て

 

「――こうなるぞ」

 

それを真横に振る。

 

「「「「「 」」」」」

「それとも、おっちゃん達も店の中に入りたいか?」

「「「「「っ!」」」」」

 

問えば、凄い勢いで首を横に振り、

 

「……そ、そろそろ帰らねぇとかみさんに叱られちまう。じゃぁな、北郷さん。また来るぜ」

「お、おぉ、そうだな……うちもおふくろが怒りだしそうだ。ごちそうさん」

 

酔いも醒めてしまったのか、三々五々と帰って行く。

 

「3日に1回くらいしか来ないから、残り2日を狙って来ておくれー」

 

最後に負け犬の遠吠えよろしく声をかけるが、さて、また来てくれるのかね。

 

「春蘭たちの方が金払いがいいから別に気にしてないし!……チクショウ」

 

煙に目をやられ、俺はこっそりと涙を流すのだった。

 

 

 

 

 

 

「――私たちは、あまり来ない方がいいか?」

「秋蘭ちゃん」

 

パタパタと手作りの扇で赤くなった炭を(あお)いでいると、後ろから声を掛けられた。

 

「聞こえてたのか?」

「まぁな」

「気にしなくていいよ。あいつらは常連だし、聞いた通り、秋蘭ちゃん達が来ない日には来てくれるさ。それに昼間だってある」

「そうか、すまないな」

「だから気にしなくていいって」

 

軽く笑いながら、俺は酒を準備する。

 

「それより、こうなったら今夜は他に来ないだろ。こっちに出てきなよ。椅子も出していいから」

「……そうだな。風に当たりながら飲むのも悪くない」

 

俺の誘いに頷き、秋蘭ちゃんは中に戻って行った。春蘭を呼びに行ったんだろうな。

 

『今日は外で飲むのか!それもまたよしっ!』

 

そんな春蘭の声も聞こえてくる。そして。

 

ガタガタッ!……ドガァアアアッッ!!

 

「おぃ」

「姉者…」

「……あれっ?」

 

背後の扉が音を立てて破壊された。振り返れば、椅子と卓を抱えた春蘭。どうやら出入口のスペースを把握してなかったらしく、卓がぶつかったのだろう。

 

「春蘭、正座」

「いやいやいや、これはな、一刀」

「正座」

「地面にか?痛そうなのだが……」

「正座」

「……はぃ」

「正座」

「してるぞっ!?」

 

串をくるくるとひっくり返しながら、俺は春蘭に説教をかます。秋蘭は俺の出した酒を飲みながら、困ったような、それでいて楽しげな顔で見ていた。

 

 

 

 

 

 

「――うー…まだ足を解いてはならぬのか?」

「ダメ」

 

春蘭が持ってきた卓に料理を出し、酒も追加で置く。秋蘭ちゃんは卓に添えられた椅子に、俺は焼き台の前に置かれた椅子に、春蘭は地面にそれぞれ座っている。

 

「お腹空いてるのに……」

「ハァ…ハァ……可愛いよ、姉者」

 

秋蘭ちゃんは早速酔っているようで、哀しげな瞳の姉の姿に恍惚としていた。

 

「一刀ぉ…」

 

春蘭が泣きそうな顔で見上げてくる。可愛いなぁ、もぅ。

 

「……仕方がないな」

「じゃぁ――」

「ほら、あーん」

「――私も席に……って、え?」

 

可哀相なので、俺は焼いた串を春蘭に向けて差し出す。

 

「あの、一刀……えっ?」

「要らないのか?じゃぁ、俺が食べようかな」

「い、いるっ!いるから!」

「じゃ、あーん」

「あ、あーん……」

 

俺のSっ気に、春蘭はエサを与えられる雛鳥のように口を開く。その顔は赤い。

 

「可愛いよ、姉者…ハァ……ハァハァ」

「あー……んむっ」

「美味いか?」

「んぐんぐ…おいしぃ……」

「そうか。じゃぁ、今度はこっちのモモ串をやろう。はい、あーん」

「あー…あむっ!」

「姉者ぁ…ハァハァ……」

 

秋蘭ちゃんは相変わらずエロイ表情。可愛いなぁ、もぅ。

 

「次は…」

「ん?」

「次は、ネギまがいい……」

「おぅ。ほら」

「あーん……はむっ!」

 

そんな事をしていれば。

 

 

 

 

 

 

「――――私の春蘭に、餌付けなんてしないでくれるかしら?」

 

横合いから掛かる声。

 

「華琳様、お疲れ様です」

「か、華琳様っ!?」

「遅くなったわね」

 

曹操たんだった。

 

「それより、これはどういう状況なの?」

「はい。実は――――」

 

問われ、秋蘭ちゃんが説明をする。春蘭ちゃんは恥ずかしそうにモジモジしているが、俺のひと睨みに動けないでいた。

 

「はぁ…何をしているの、春蘭……」

「か、華琳さ、あむっ!?」

 

呆れ返る曹操たんに、春蘭はなんとか言い訳をしようとする。だが、俺は肉の刺さった串をその開いた口に突っ込む。

 

「あむ、んぐ…その、これはそういう訳ではなく、えっとですね、はむっ」

「ほーら、しっかり噛んで食べるんだぞー」

「一刀が、んむ…ムグムグ……今日は外で飲まないかと」

「あーん」

「あーん、あむっ」

 

そんな事を繰り返していれば。

 

「うちの娘を調教しないで」

「だって、可愛いだろ?」

「あーん」

「それは認めるけど……」

 

 

 

 

 

 

椅子をもう1脚出し、曹操たんに席を献上。

 

「それより、1人で来たのか?」

「えぇ、それが?」

「いや、春蘭と秋蘭ちゃんなら、きっと護衛も兼ねて一緒に来そうだったのに」

「私の分の仕事が長引いてね。2人は待つって言ってたけど、命令したの。先に行きなさいって」

「おぉ、凄い御方だ」

 

日本の管理職の奴らにも見習わせたいね。

 

「でも、まさか曹操さんが来るとはな」

 

酒を出しながら、そんな事を口にする。

 

「あら、私が来てはいけないのかしら?」

「だって、曹操さんは美食家だって聞いてるし、こんな安居酒屋なんて来るわけもないと思ってたよ」

「あーん」

「春蘭がいつも楽しそうに話すの。興味を惹かれるのは当然でしょう?」

「でも、春蘭の舌だぞ?」

「あーん」

 

春蘭はいまだ正座中。相変わらず俺に餌付けされていた。

 

「いいのよ。不味かったら指摘するから」

「うっわ、凄い嬉しそう……」

 

相当なドSだな、このツインテール。

 

「それより、私の串はまだなの?」

「いま焼いてるよ」

「あーむっ」

「春蘭に食べさせてるじゃない」

「これはさっき焼いたやつ。冷めてるから、しばしお待ちを」

「出来立てを出そうという心意気は評価してあげる」

「プロですから」

「?」

 

そんな訳で、上手に焼けましたー。

 

「はい、お待ち」

「頂くわ」

 

緊張の一瞬だねぇ。ま、結果は目に見えてるけど。

 

「……5点ね」

「5点満点の?」

「どうしたらそんな肯定的(ポジティブな)思考に至るのよ!?100点満点中の5点よ」

 

ほらねー。

 

「何が悪い?」

「まず、素材が駄目」

「だって安いし」

「味付けも塩だけで、つまらないわ」

「お酒のアテは、単純なのが一番(シンプル・イズ・ベスト)

「それに焼き過ぎ。硬い」

「春蘭ちゃんに食べさせてあげないと」

「いや、それはどうなのよ……」

 

色々と注文をつけてきますね、この娘は。

でもさぁ。

 

「何よ」

「春蘭と秋蘭ちゃんは美味しいって言ってくれてるよ?それに他のお客さん達も」

「春蘭はともかく、秋蘭は優しいのよ」

 

おい、青髪チャイナが目を逸らしてるぞ。

 

 

 

 

 

 

曹操たんの()撃は続く。

 

「酒は及第点だけれど、料理はダメね。私の口には合わないわ」

「じゃぁ、聞くけどさ」

「なによ」

 

でも、俺だってMじゃないんだぜ?

 

「1人の兵と100人の兵、どちらかしか助けられないならどうするの?」

「なに、その質問?100人の方に決まってるじゃない。その方が、後に続かせられる」

「たった1人の賢者しか理解できない政策と、100人の民が理解し、満足できる政策。どっちを採用するの?」

「後者よ。民が結果として実感できない政策など、無意味以外の何ものでもないわ」

「たった1人の美食家(グルメ)にしか理解できない料理と、泣く泣く手間を惜しんで多少味の質は落ちても、100人が満足してくれる料理、どっちに価値がある?」

「後者ね。……って、ちょっと待――」

「はい論破ー」

「待ちなさい!いまのは釣られただけよっ!」

「はい、春蘭。あーん」

「あー、んっ!美味いぞ、一刀。もっとくれ」

「聞きなさいよ!」

「さっき焼き上がったばかりのがあるからな。たくさん食べてくれ」

「おうっ」

「それは私の料理よっ!?」

「だっていらないんだろ?ほい、あー」

「そんな事言ってないじゃない!」

「あー、ぁむっ!」

「可愛いなぁ、春蘭」

「撫でるな!照れるではないかむっ!?」

「美味しい?」

「おいひぃ!」

「可愛いなぁ」

「可愛いよ、姉者……ハァハァハァ」

「聞きなさいよぉぉおおおおおおっ!!!」

 

夜なんだから、もっと静かにしなさい。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

 

素直な春蘭ちゃんの可愛さは異常。

 

 

ギャグパートでいじられる華琳ちゃんの可愛さは異常。

 

 

という訳で、春蘭ちゃんと秋蘭ちゃんが大好きな一郎太です。

 

 

ホントはこの次のと一緒にあげるつもりだったんだけど、

 

 

次のが思ったよりも長くなったのと、話数稼ぎで単独の話に。

 

 

つまりは#27も魏partで。

 

 

ではまた次回。

 

 

バイバイ。

 

 

 

 

 


 
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