No.544221

真・金姫†無双 #25

一郎太さん

前回のあらすじ。

愛紗たんとのフラグをバッキバキにへし折ったよ!

んで、今日は2つ投稿。

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2013-02-14 20:08:09 投稿 / 全17ページ    総閲覧数:9922   閲覧ユーザー数:7148

 

 

#25

 

 

関羽ちゃんとの戦闘フラグを立てちまった癖に、無理矢理バッキバキにへし折ってまた旅に出た。出たのはいいが、目的の黒麦は何処に。あの商人は青州と言っていたが、気候的には青州以外でも栽培は出来ると思うんだけど……まぁ。確実に手に入れるなら、その土地だ。ただ、土地勘が皆無なため、どちらに向かえばいいのか分からない。北か西の方だったと思うんだが……。

 

「北に行き過ぎると寒いしな」

 

という訳で西進すること、これまたしばし。

 

「――――よう、兄ちゃん。なかなかの荷物じゃねぇか」

 

賊と思わしき奴らに絡まれる。数はだいたい50人かそこら。

 

……いやいやいや。

 

「おいおいおい。いくら俺が女の子とのフラグを立てた端から折って回っているとはいえ、だからと言って男のフラグなんか欲しくはないぞ?」

「なに訳のわからんこと言ってやがる!いいからその荷物と、有り金全部寄越しな。そしたら、命だけは助けてやってもいいんだぜ?」

「これまたお決まりの台詞だな。芸がねーよ、お前ら。だから、いつまで経っても、すぐやられるモブキャラ扱いなんだよ」

 

さて、どうしようかな。こうも囲まれてしまっては、どうしようもない。とは言わない。全員が同時に斬りかかってくるわけじゃないし、まぁ、大丈夫だろ。

 

そんな事を考えていれば。

 

 

 

 

 

 

「――ぎゃぁっ!」

「ぐぁあっ!!」

 

次々と賊が悲鳴を上げ、倒れていく。見れば、その身体には矢が突き刺さっていた。

 

「何処だ!?どっからきやがった!!」

 

賊共は狼狽えるが、俺には見えている。数百メートルはあろうかという程の距離の向こうに、1人の弓将の姿。……え、あそこから射たの?

そんな事を考えている間にも、どんどんと賊が倒れていく。残り十数人になった頃に、ようやく自分たちだけを狙っていると気付いたのだろう。賊の1人が、俺の首元に剣をあてがった。

 

「へへっ、何処にいるかはわかんねーが。こうしていれば手出しはしてこないだろうよ」

「くそっ!それでもかなり殺られちまった!」

 

俺としては、ここまで減ってくれればありがたいんだけどね。

 

「なぁ、お前ら。いいこと教えてやろうか」

「どうした。金の隠し場所でも教えてくれるってのか?」

 

下卑た笑い。わかってないなぁ。

 

「別に援護射撃がなくても、お前ら程度なら俺1人で元から十分なんだよ」

「えっ――」

 

背後のそいつが何かを言うよりも速く、俺は首元の腕を掴み、投げ飛ばす。そのまま隠しクナイを取り出して、残りの奴らの首を刎ねていった。

えっ?クナイで首を刎ねる事が出来るのかって?ほら、ナ〇トでもそんくらいやってるし、俺にも出来んじゃね?

 

「――――という訳で、おしまいっと」

 

得物についた血糊を適当に拭き取り、荷車の積み荷を確認。よかった。特に被害はないようだ。

そんな事をしていれば、遠くから1騎の馬が駆けて来た。

 

 

 

 

 

 

「やぁ。姉さんが助けてくれたみたいだな。ありがとう」

「いや、いま思えば、無用な手助けだったかもしれないな」

 

やって来たのは、青髪ショートのお姉さん。何故か右眼だけ髪で隠している。それって見えにくくない?

 

「いやいや、流石に50人はきついさ。それで、こんなところで何をしていたんだ?」

「あぁ。もともとそいつらは、別の邑を襲った賊共でな。取り逃がした奴らをこうして追ってきてみれば、お前が倒してしまったという訳さ。だが、どちらにしろ巻き込んでしまったのは事実だ。謝罪する」

「必要ない。被害もなかったし」

 

髪に合わせてか青いチャイナ服は、切れ込みが凄い。雪蓮ちゃんにも劣らないんじゃね?

 

「それにしても、凄い弓の腕だね。あんな遠くから」

「なに。ずっとこの武器を扱っていただけだ。大した事はないさ」

 

え?なにこの人カッコいい!クール!KOOLだぜ!

 

「そういうお前こそ、なかなかの腕だ。どこかで武将でもやっているのか?」

「まさか。見ての通り、商売をしながら旅してるだけだよ。それなりに腕はないと、生きていけないんでね」

「なるほど……だが、興味深いな。よかったら、陳留に来ないか?賊討伐の手伝いをしてくれたのだ。何か礼をさせてくれ」

 

その上、気前もいい!惚れちまいそうだぜ、姉さん!

 

「俺もそろそろ暖かい布団で寝たくなってた事だし、街に行きたいと思ってたんだ。お言葉に甘えさせてもらうよ」

「あぁ、そうするといい」

 

お誘いもあった事だしと、俺は荷車を持ち直す。

 

「まさかとは思うが……」

「ん?」

「……もしや、ずっとそれを引いて旅をしていたのか?」

「そだよ?」

「……」

 

あれ、ひかれた?いや、確かに相当の重さだし、馬が引いててもいいくらいだけど、頑張れば出来るもんなんだよ?そんな人外を見るような眼をすんなよ。

 

「まぁ、姉者や季衣にも出来そうだし、男で出来てもおかしくはないが……」

「へぇ、お姉さんがいるんだ?」

 

この空気を霧散させるべく、なんとか聞こえてきた呟き声に、問いをかける。

 

「あ、あぁ、双子の姉がな。そういえば、自己紹介がまだだった。私は夏侯淵。陳留にて街を治める、曹操様の家臣をしている」

「じゃぁ、お姉さんは夏候惇さん?」

「なんだ、知っているのか」

「有名だからね」

「ふっ…確かに、姉者は有名だな」

 

夏候惇ってアイツだよね?天和たちを助ける時に会ったアイツだよね?なんかフラグ立ってね?

 

 

 

 

 

 

歩きながら話を聞けば、俺が絡まれていた時、彼女のそばには部隊が居たらしい。だが迂闊に近づけば俺に危険が及ぶだろうと、部隊は使わずにあれだけ離れた位置から矢を射ていたとのことだ。パねぇな。

だが、その説明の通り、数分歩けば鎧を見に纏った兵達が隊列を作っていた。なんか怖いんですけど。

 

「気にするな。客と思っていろ」

「いつもはもてなす側なんだよ」

「流石は商売人だな。それより、本当にいいのか?部下に荷車を引かせてもいいんだぞ?」

「いま言ってくれたじゃん。俺が『商売人』って。運び手に金を払わない限り、自分で商品を運ばなきゃいけないんだよ。信頼や信用とか以前の、商人(しょうにん)の心得さ」

 

夏侯淵ちゃんは、俺の隣で馬に乗っている。いいなぁ。

 

「……ふむ。それはどういう意味だ?」

「例えば、商品が駄目になっちまったとする。もし別の運び手やら保管人やらを無償で設けちまったなら、そいつらに責任はない。仮にそいつらが駄目にした当事者なら、そんな奴らに任せたこっちの責任だ」

「なかなかおもしろい主張だな」

「そいつらが原因にしろ、そうでないにしろ、『奴らの所為だ』って理由を外付けする余地が出来ちまうだろ?」

「確かに」

「でも、最初から最後まで自分が見ていれば、何かあっても誰の所為にも出来ない。もし何かが起きた場合、自分に何か落ち度があったからこそ自分でその理由を考え、対抗策が生まれる訳だ」

「それが商売人の流儀という奴か」

「まぁね。でも、時間と共に信頼関係ってのは出来てくるから、いま言った事は初対面の人間については、って前程が入るけど」

「なかなか興味深いな」

 

なんだろう、この気持ち。凄い落ち着いて会話が出来る。……あぁ、そっか。俺の周りの人間が、変なテンションの奴らばっかだからか。

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、やって来ました陳留の街。通りにはそこかしこに人が溢れているくせに、人通りは狭さを感じさせない。どの店も活気づいていて、民度の高さと治安の良さがうかがえる。

 

「栄えてんなー」

「ふっ、これもすべて、曹操様の統治のおかげさ」

「へぇー」

 

曹操は智武兼備の偉人として伝えられているし、こっちの世界でもそうなんだと理解させられる。というか、やっぱりこっちの曹操さんも女なのかな。

 

「会ってみるか?」

「いいの?俺みたいな、どこの馬の骨ともしれない男がいきなり行って、会ってくれるかなぁ」

「確かに曹操様は男嫌いだが……能力を適切に評価するだけの器はお持ちだ。それに、お前ほどの腕があれば、登用だってしてくれるかもしれないぞ?」

「ご冗談を。俺は商売人だ」

「それは別として、まだ礼をしていないからな。城には案内する。それに、この街で商売をするならある程度の便宜も図るぞ」

「そんな事していいの?」

「当然、内密にだ」

 

そう言って、片目を瞑る夏侯淵。それじゃ前が見えねーだろ。

 

「何か言ったか?」

「ほら、ちょっと前に、某絵師がそんな感じのイラスト上げてたじゃん?折角だしパクって……ゲフンゲフン、流れにあやかろうかとなんでもないですだからその弓を下ろしてください」

「危険な発言をしていたからな。忠告も含めてだ」

 

意外と短気なのかもしれない。

 

「――――着いたぞ」

「おー」

 

街の中央に見えていた城へと到着する。部下は部隊長に任せて、淵ちゃんは城内へと向かおうとしたところで、こちらを振り向いた。

 

「どうした、来ないのか?」

「いや、荷車どうしようかと」

「城の門の内側にでも置いておいてくれ……あぁ、そういえば、お前はそういう事をしないのだったか」

「んー…そこまで言ってくれてるんなら、甘えるよ。それに、ここで何かあったら、門番の人たちが疑われるだろ?曹操様のところは軍律が厳しいって有名だし、将軍の顔を潰す事もしないでしょ」

「そうか。……聞こえていたな、お前達。この荷に触れる事は許さん。他の者に触れさせる事もだ。いいな」

「「御意」」

 

あえて番兵たちに聞こえるようにいえば、淵ちゃんも部下に命令を出してくれた。厳しいねぇ。

 

 

 

 

 

 

「――秋蘭から話は聞いたわ。賊の討伐に手を貸してくれて感謝する」

 

玉座の間に案内され、待つこと数分。淵ちゃんが、1人の少女を連れてきた。え、アレが曹操なの?『曹操様!』ってより、『曹操たん!』って感じ。

 

「いえいえ、滅相もない。俺がやらなくても、夏侯淵様でしたら難なく終わらせられたことでしょう」

「それでもよ」

 

そして、なんとまぁ堂々とされてらっしゃる。雪蓮ちゃんの真面目な顔もなかなか凛々しかったけど、曹操たんもカッコいい。まだ小さいのに、頑張ってんだな。

 

「何か褒美をと乞われはしたけど……北郷と言ったかしら?貴方、何か欲しい物はある?」

「そうですねぇ。夏侯淵様にもお話しましたけど、俺は商売人なんでね。この街で商売をする許可でも頂ければ、それだけで十分ですよ」

「あら、欲がないのね」

 

そりゃ、金を稼ぐ事が目的だからな。それ目的で戦う事はあっても、たまたま自分がした事で金を貰うのは、あまり面白くない。そんな理由で、その場だけ所望。

 

「ならば、その許可を出しましょう。秋蘭、店を出せそうな空家があれば、彼に貸し出してあげなさい」

「御意」

 

……えっ?

 

「私は仕事が残ってるから、これで失礼するわ。せいぜい稼ぎなさい」

「はっ!ありがとうございます!」

 

空気を読んで礼だけは言うが、ちょいと混乱。おいおい、俺は屋台を出す許可だけでいいんだぜ?なんで店を出す事になってんの?

いろいろと考える事はあるが、

 

「聞いた通りだ、北郷。明日また来てくれ。どこか商売できるところをあてがってやる」

「えっと、ありがとう?」

「なぜ疑問形なのだ」

 

とりあえずは、ありがたく場所を借りるとしようか。

 

 

 

 

 

 

荷物の事もあるし、門まで見送ってくれると言うので、淵ちゃんとテクテク歩く。

 

「それにしても、曹操様ってお若いんだね」

「あぁ。驚いたろう?」

「そりゃぁね。それなのに、凄い優秀な御方なんだろ?」

「あの方ほど天に愛されている人間もいないだろうな」

 

誇らしげに微笑む淵ちゃん。ちょいと胸を張ったので、その巨乳がかすかに揺れた。眼福。

そんな下衆な事を考えていると。

 

「おぉ、秋蘭!戻って来たのか!」

「ただいま、姉者。賊の討伐も終わったぞ」

 

淵ちゃんを呼び止める声。振り返れば、淵ちゃんのチャイナ服とは色違いの赤い服のお姉さん。見覚えがある。というか、一番会いたくない人に会っちゃった。

 

「そうかそうか、お疲れ様。……っと、お前は」

「あぁ。この者はな、賊の討伐を手伝ってくれた――」

「北郷ではないか!」

「あ、ども……」

 

なんで覚えてんだよ。こっちはお前の馬鹿なところしか覚えてなかったってのに。

 

「姉者、知っているのか?」

「当然だ!私と同じく、妹を愛する者だからな!」

「そっちの理由かよ」

 

酷く納得できるのは何故なんだろうな。

 

「どういう事だ、北郷?」

「おいおい、秋蘭。何故私に訊かない」

 

なんとなく、その理由はわかる。

 

「……どういう事だ、姉者?」

 

あ、訊き直した。

 

「うむ!黄巾党の最後の討伐の時に、私が砦に向かっただろう?」

「そうだったな。私の制止も振り切って、1人で勝手に向かったのだったな」

 

夏侯淵ちゃんも大変なんだな。

 

「その時に、張角の居場所を聞いたんだ!」

「「……」」

 

いや、何かが決定的に足りない気がするよ?

 

「……それだけか?」

「あぁ!」

「……妹のくだりは?」

「えーと…そうそう、こいつには妹が3人いたのだ!」

「それで?」

「それだけだが?」

「北郷が砦にいた理由は?」

「知らん!」

「……北郷、解説を頼む」

 

あ、やっぱり諦めちゃうんだ。

 

「だいぶ前の話だけど、俺の妹たちが、黄巾党に囚われちまったんだよ。それで、妹たちを助けるために、孫策様の軍に入れてもらったんだ」

「……ほぅ?」

「で、燃え盛る砦に侵入して、妹達を助け出したところにちょうど、惇ちゃんがやって来てな」

「惇ちゃん!?」

「姉者は黙っていような。姉者は『張角の居場所を聞いた』と言っていたが、なぜ自分で捕らえなかったのだ?金一封どころの褒美ではないだろう」

「そりゃ惇ちゃんの記憶違いだ。俺の目的は、妹達だけだった。砦も燃えていたし、3人が上手く逃げ出したところで、俺と再会した。俺は、惇ちゃんには何も教えてないよ。勝手に盛り上がって砦の奥に走っていったからな」

「思い出した!確か、そうだったな!」

「姉者……」

「なんだ、秋蘭?」

「……いや、なんでもない」

 

淵ちゃんはお疲れのようだ。うちは俺が妹達の面倒を見るタイプだが、こっちの姉妹は、妹が姉の世話をしているらしい。ここまで馬鹿だと、相手をするのが大変そうだな。

 

 

 

 

 

 

久しぶりの再会という事で、惇ちゃんに誘われてお茶をする事に。淵ちゃんも当然参加し、荷物はもう少しだけ城に置いてもらう事になった。

 

「――事情はわかった。それに、軍に入って単身砦に乗り込む程の実力があるのなら、先の賊たちへの対応も納得がいく」

「妹達を助ける為に、鍛えまくったからな」

 

やって来たのは、街の通りにある1軒の茶屋。見た目も味も、高級感がある。それなのに、惇ちゃんは貪るように茶菓子を口に運んでいた。おいおい、会計は平気なのかよ。

 

「だが、最初に会った時、何故私に教えてくれなかった?」

「そりゃ、言っても信じなかったかもしれないだろう?それに惇ちゃんと再会するかもわからないし、変な勘繰りをされるくらいなら最初から何も言わない方がいいのさ。今回だって、惇ちゃんが覚えてなかったら、俺は何も言わずに出ていくつもりだったよ」

「確かにな」

「おい、人の物にまで手を出すなよ」

「む゙っ!」

 

口いっぱいに菓子を詰め込んでリスみたいな顔になった惇ちゃんが、俺の皿にまで手を伸ばしてくる。ピシャリと手を叩けば、乞うような、恨みがましいような眼で睨んできた。

 

「姉者。なくなったのなら、また注文してやる。恥ずかしい事をするな」

「おぉっ!流石は秋蘭だ!」

 

店員を呼び寄せて、淵ちゃんは適当に注文をし、自分の皿を姉の方へとずらす。甘いなぁ。

「あぁ、甘くて美味しいな!」

 

違くて。

 

「それよりも」

「ん?」

「よく軍から離れる事が出来たな。単独で行動をするくらいだ。最低でも部隊長。あるいは武将の副官でなければならない。孫策殿は、よく北郷のような武人に離脱を許したものだ」

「その辺りは拝み倒したからね。それに、やる気がない部下を無理に引き留めるくらいなら、辞めさせた方がいいに決まってる」

「……それもそうだな」

 

納得と言った顔で、新しくきた皿と惇ちゃんの前にある、幾分か量の減った皿を交換する淵ちゃん。だから甘いって。

 

「もがばがごごもごっ!」

「……淵ちゃん、解説」

「無理に決まっているだろう。姉者、飲み込んでから喋ってくれ」

「もごぐぐっ……」

 

呆れ顔の妹に、流石に無茶が過ぎたと悟ったのだろう。惇ちゃんは口の中を空にして、再び口を開いた。

 

「ゴクンっ……北郷、妹達は来ていないのか?」

「そういえば、そうだな。先に言ったような危険な目に遭ってまで助け出したのに、故郷に置いてきてしまったのか?」

「実は、そこらあたりも孫策様に便宜を図ってもらってんだ。城に近いところに店を構えてるし、大丈夫さ」

「ふむ、退役した兵たちへの配慮か……今度、曹操様に上申してみよう」

 

嘘ではない分、性質が悪いよね。

 

 

 

 

 

 

おやつの時間も終え、そろそろ店を出ようかという頃。

 

「ホントにいいの、ご馳走になっちゃって?」

「かまわないさ。楽しい時間も過ごせたしな。それに、この街で商売をするなら、資金は必要だろう?」

「そっか、ありがとな。あと、その話なんだけど、さっきも言った通り妹が待ってるから、あまり長くはいないよ?許可さえ貰えれば、屋台でも出そうかと思ってるし」

「曹操様の命令も出ているから、お前に拒否権はないぞ?」

「……マジ?」

「それに、寝床は必要だろう。腰を据える気がないのなら、空き家は寝泊りにだけ使ってもかまわないさ」

「そっか、ありがと」

 

という訳で、寝床ゲット。美羽のところも劉備ちゃんのところも長居は出来なかったし、ゆっくり休める場所があるのはありがたい。

 

「……難しい話は終わったか?」

 

などと感謝をしていれば、惇ちゃんが話に入って来た。

 

「あぁ、終わったぞ、姉者」

「そうか。ならば北郷!」

「ん?」

「勝負をするぞ!」

「「……は?」」

 

脈絡のない誘いに、俺と淵ちゃんの疑問の声が重なる。

 

「待て、姉者。どういうつもりだ?」

「言葉の通りだ!勝負をするぞ!」

「その理由を説明しろと言っているのだ」

 

呆れを通り越してほんの少しだけ苛立ちを滲ませた声で、淵ちゃんが問えば、惇ちゃんはまさにそれこそがこの世の真理と言わんばかりに、説明を開始した。

 

「あの時、討伐軍のなかで、砦に居たのは私と北郷だけだったのだ!」

「あー…確かに、他には見なかったな」

 

記憶を辿りながら答える。

 

「皆が張角の首を狙っていたなか、それを出来る可能性があったのが、私と北郷だけなのだ。それだけで、お前の武が相当のものだという事がわかる。だから勝負だ!」

 

コイツ、馬鹿のくせになんでそんな理由づけは上手いの?

 

「えー…俺、長旅で疲れてるんだけど……」

「じゃぁ、明日だ!」

 

どうしよう。ぶっちゃけ断りたい。でも、この人たちとは繋がりを維持したいんだよなぁ。曹操が三国のうちの1つに残るってのもあるけど、今回は相当よくしてもらってるし。え、関羽ちゃん?あれは別にいいの。関羽ちゃんはブチ切れてるだろうけど、劉備ちゃんとは仲良くなれたし。趙雲ちゃんにも贈り物しておいたし、差し引きしてもプラス側に収まってるだろうから。

 

という事で、俺が出した返答は。

 

「じゃ、明日ね」

 

受諾だった。

 

「いいのか、北郷?」

「勝負って言っても、死合ってわけじゃないだろ?」

「それはそうだが――」

 

困ったような顔をしながら、淵ちゃんが顔を近づけてくる。ちょっとドキッとした。そんな俺の童貞のような心持ちには気づかないまま、淵ちゃんは俺の耳元で囁く。

 

「姉者の性格は、なんとなくでもわかるだろう?手加減など出来ると思うか?」

「……」

 

その可能性は考慮外だった。

 

「ま、なんとかなるっしょ。1度は返事をしちゃったし。それに、商人は約束を反故にはしないんだぜ?」

「お前がいいのなら、構わないが……致命傷だけは避けろよ?」

「ん、頑張る」

「よしっ、それでは明日の朝、迎えに来るからな!」

「へーい」

「それじゃ、またな、北郷!」

 

言いたいだけ言って、惇ちゃんは城に向かって駆けて行った。

 

「姉者、待てっ!……すまない、北郷。また明日だ」

「おー」

 

置いて行かれた淵ちゃんも別れの挨拶を済ませ、その後を追う。可愛い姉妹だ。

 

「……あ、荷物どうしよ」

 

取りに行き難いな。……ま、淵ちゃんなら保管しといてくれるだろ。

 

 

 

 

 

 

そんな訳で翌日。荷物を置いて行ったのは結果的には功を奏し、荷物を気にせず身体ひとつで宿に泊まり、ゆっくり休む事が出来た。

 

「飯も食ったし、服も着替えた。クナイは……ま、持てるだけ隠しておこう。それからこいつも――」

 

宿にて、戦いの準備をする。惇ちゃんは『明日』としか言っていないけど、あぁいうタイプは朝っぱらから始めようとしてもおかしくない。いつ来てもいいようにしっかりと準備を――

 

「おはよう、北郷!迎えに来たぞ!」

 

――しといてよかった。壊れそうな程の音を立てて扉が開けば、その向こうには元気な黒髪赤チャイナ。

 

「おはよう、惇ちゃん。それより、よくここがわかったね」

「調べた!」

「調べたって、どうやって?」

「通りの宿屋を1軒1軒聞いて回ったのだ!」

「……」

 

城の方からこの宿屋まで、4つか5つは他の宿が営業していた気がする。……主人も可哀想に。

 

「それで、何処でやるの?」

「城の練兵場だ!」

「城?」

 

なんかフラグ臭が……。

 

「昨日の夜、お前の事を華琳様に話したのだ!そしたら、練兵場を使ってもいいと言ってくれてな」

「え…」

 

いやいやいや、マジかよ。ぶっちゃけギャグで有耶無耶に終わらせようかと考えてたのに、曹操たんがいたら手抜けないじゃん。

 

「よし、それでは行くぞ!」

「うわ、ちょ、引っ張るなって――――」

 

どうすべくか考えている間にも惇ちゃんは俺の手を引き、駆け出していく。ああああぁぁぁぁああああああああああああ――――。

 

 

 

 

 

 

「おはよう、北郷」

「どもっす」

 

凛とした声で朝の挨拶をしてくれたのは、まさかの城主・曹操たん。いやぁ、気合が入るねぇ。

 

「なによ、その覇気のない返事は。そのように気を抜いていると、春蘭に殺されるわよ?」

「死なない程度に頑張りますよ」

「ふんっ、アンタみたいな奴なんて、さっさと首を刎ねられてしまえばいいのよ!」

「あ?」

 

適当に会話をしていれば、投げつけられる棘のあるお言葉。振り返ってみると、猫耳フード。

 

「いやいや、そんな事をしたら、俺死んじゃいますって」

「そう言ってるのよ。馬鹿ね」

 

ドギツイなぁ。なんで朝っぱらから機嫌が悪いんだよ。

 

「どうせ、華琳様との朝の時間がなくなったから、ヘソを曲げているだけだ」

「うるさいわよ、春蘭!」

「春蘭様、頑張ってくださいね!」

「あぁ、任せておけ!」

「聞きなさいよぉっ!?」

「ちなみに、この娘は私の軍師をしている荀文若よ」

「なるほろ」

 

惇ちゃんは荀彧ちゃんの怒声も無視して、桃髪頭の幼女と談笑していた。あの娘も武将なのかな。

そんで、この猫たんが王佐の才ねぇ。いや、雛里んもあんなだし、人は見かけによらないという事で。

 

「うっわー、春蘭様と勝負とか、絶対にしたくないわ」

「あのお兄さん、死んじゃうんじゃないのー?」

「物騒な事を言うな、沙和。春蘭様とて、そのくらいの手加減はできるはずだ。……たぶん」

 

別の場所には、3人組の女の子。何やら酷い事を言ってくれてるぜ。

 

「このまま話しをしていてもいいけれど、時間は限られているの。そろそろ始めなさい」

「はいっ、華琳様!」

「へーい」

 

何処のお城も、真面目な人は忙しいようだ。雪蓮ちゃんにこの半分でもやる気があったら、冥琳ちゃんも楽を出来るんだろうけど。

 

「2人共、準備はいいか?」

「あぁ!」

「惇ちゃんに引っ張られて走らされたからね。身体は温まってるよ」

 

審判役の淵ちゃんに問われ、俺たちは頷き、距離を空けて対峙する。

 

「お前は無手なのか?」

「無手じゃないよ」

「なるほど、隠しているわけだな!」

「そのとーり」

 

大きな剣を正眼に構える惇ちゃんが問うてくるので、正直に否と答える。そしてバレている始末である。

 

「2人とも、大怪我にだけは気を付けてくれ」

「任せろ!」

「おー」

「では……」

 

俺たちのちょうど真ん中に立った淵ちゃんが、水平に伸ばした手を振り上げる。

 

「……はじめっ!」

 

 

 

 

 

 

合図と同時に飛び出したのは、一刀であった。夏候惇の武器はかなりの重量がある事は予想がつく。しかし、それを補ってありあまる速度が出るであろう事も、想像がついていた。彼女がこれまでに一刀に見せた力を考えれば、それも当然である。

したがって、一刀が採った策が、先制攻撃だ。

 

「――待て待て待て!ちょっと待って!」

「?」

 

突然、一刀の動きが止まる。いったい、どうしたというのだろう。

 

「なんで、地の文が3人称になってんだよ!これまでずっと俺の1人称だったじゃねーか!」

 

当然、戦闘の場面はこちらの方が書きやすいからである。

 

「ざけんな!1人称視点なら、まだギャグの余地があっただろうが!最後の芽まで潰しやがって!」

「「「「「……?」」」」」

 

いったい、何を言っているのであろう。彼以外の5人の頭上に、疑問符が浮かぶ。当然だ。仕合が始まったと思えば、本人以外には理解の出来ない事を言い出したのである。目を逸らしてしまうのも、無理からぬことであった。

 

「やめて!?真面目にやるから、電波な人を見る目をしないで!?お願いだから、これなかったことにしてっ!」

 

という訳で、この1ページはなかった事になる。

 

 

 

 

 

 

対峙したまま、一刀は考える。夏候惇の持つ得物は、特別長いだけではないが短くもない。一刀の隠し持つクナイとは、その射程は雲泥の差だ。またその重量も段違いであり、それはそのまま、攻撃の重さに直結する。

 

(さて、どうしようかなぁ……)

 

一刀にとっての勝負の肝は、如何に夏候惇の攻撃を躱し、如何に自分の攻撃を相手の射程内から繰り出すかである。

そうして考えているうちに、夏候惇が動き出した。

 

「そぉらっ!」

「おっと」

 

夏候惇の放つ、重く速い攻撃。一刀はクナイ1本を右手に握り、その軌道を逸らす。

観客たちから、「おぉっ!」という驚きの声が上がった。

 

「やるな、北郷!」

「いや、いくら刃を潰してようが、それ当たったら死ぬからね?」

「気合でなんとかしろ!」

 

無理である。

 

「さぁ!そのまま躱すだけか!」

「さて、どうだろうね」

 

夏候惇はそう(けしか)けるが、周囲の評価は逆だった。

 

「まさか、春蘭様の攻撃をあぁも簡単に躱すとは……」

「あのお兄さん、実は強いのかもしれないのー!」

「あら、桂花。つまらなそうね」

「さっさと喰らえばよかったんです!」

 

最後の1人の言葉は聞こえなかった事にして、一刀は調子に乗る。

 

「そんじゃ、今度は俺の攻撃の番だな」

 

言いながら、一刀は構える。とはいえ、両手を後ろに回しただけだ。

 

「……?」

「いくぜ?」

 

夏候惇が不審に思い、一刀がニッと笑った次の瞬間。

 

ガキィッ!

 

「「「「「!?」」」」」

 

夏候惇が目の前に大剣を動かしたかと思うと、金属どうしのぶつかる音が練兵場に響く。

 

「……ほぅ」

 

だが、弓将として卓越した眼を持つ夏侯淵には見えていた。その速度と姉の心中線を狙う正確性、そしてそこに投擲しようとも、夏候惇が必ず防ぐという信頼に、驚きと感嘆の溜息を洩らす。

 

「……なるほど。それがお前の戦い方か」

「あぁ。先に言っておくけど、俺の戦い方はひとつだ。勝たなくてもいい。ただ、死ななければいい。そういう風に鍛えられてきたからな」

「その割には急所を狙ってきたと思うが?」

「惇ちゃんなら防げるだろうし」

「まぁな!さぁ、どんどん来るがいい!」

「言われなくても」

 

仕合相手に挑発され、今度は近接戦へと挑む一刀。右腕を折り曲げて胸の前に構え、大地を蹴って夏候惇の間合いに入り込む。しかしながら、夏候惇には一刀の攻撃の力の大きさを想像出来ている。振るわれる一刀の腕に合わせて剣をほんの少し動かし、いとも簡単に弾いた。

 

「どうした、北郷!その程度では何も出来はしないぞ!」

 

言葉の通りに、どれだけ一刀が攻撃のベクトルを変えようと、その軌道上に剣を置くだけで、その重量を以って一刀の攻撃を軽く防いでいく。通常ならば攻め手は焦るところであろうが、一刀にその感情はない。いつだか記したように、彼にとっての勝利条件は、生き残る事、ただそれだけである。

しかしながら、だからといって敗北を是としている訳ではない。したがって、一刀はその攻撃方法を変えた。

 

「……なんだ、それは?」

「戦いの場で出すんだ。武器に決まっているだろう?」

「そんな物で……っ」

 

夏候惇から距離を取り、おもむろに上半身の服を肌蹴る。一刀の肌が見えると思いきや、そこに現れたそれに、夏候惇は疑問の声をあげる。勝負の場で何を馬鹿な事をと、一刀はその端に手を掛ける。

 

「よっ……と」

 

一刀が隠し持っていたのは、上半身の地肌に巻いていた、麻の長布。それをすべて解けば、1畳(3m)はあろうかというほどの長さになった。幅は和服の帯の程であるそれが、2枚。一刀はその端を握り、残りの部分は地面に垂らす。

 

「さて、こんな武器は初めてだろう?」

 

 

 

 

 

 

両手に長布を構えた一刀は、再び夏候惇へと向けて跳ぶ。しかしながら、その距離は先程の比ではない。当然だ。前述のように、2つの得物の長さは夏候惇の大剣の倍を見ても余りあるのだ。

 

「そのようなもので、どうするつもりだ!」

「こうするんだ……よっ!」

 

一刀は左腕を振るう。それに合わせて、彼の左手に握られていた布が振るわれた。

 

「このようなものっ!」

 

向かってくる武器に反応してしまうのは、ある意味武人としての防衛本能であろう。しかし、それは功を奏さない。一刀が振るったのは、鉄線が編み込まれている訳でもない、ただの布なのだ。タイミングを合わせてその向きを変える事で鞭打(べんだ)のような事はできるが、それ以上でもそれ以下でもない。空気を叩くような音が身体から発せられれば当然痛みを感じるが、それだけだ。繰り返すが、ただの布である。さらに言うならば、この大陸の剣は、『剣』と銘打ってはいても、その主眼は力任せに叩き潰す事にある。日本刀のような、斬り裂く事に特化していないのである。

 

つまり。

 

「――なっ!?」

 

動く布に合わせて振られた大剣はそれを斬る事はない。上述の通り、斬る事を得手としない武器では、中宙に舞った布を断つ事など出来はせず、逆にその刀身に布を巻きつかせ、その動きを封じられた。

 

「さて、どうする、惇ちゃん?」

「くっ……こんなものっ!」

 

ピンと張られた布。それにて、夏候惇と一刀の2人は繋がれている。一方はその剣にて。もう一方は、その手にて。それを受け、力比べをするのだろうと、夏候惇は察する。だから、思い切り剣ごと布を引っ張った。

 

だが。

 

「ほぃ」

「ぬなっ!?」

 

一刀はすぐに布を手放す。力の限り剣を引っ張った夏候惇は、当然力の行かせどころを失い、尻餅をついた。

 

「さ、行くぜ!」

 

その隙をついて、一刀は再三夏候惇に近づく。しかし、その時間にも夏候惇は立ち上がる。ただし、大剣・七星餓狼を構えるまでの時間はない。一刀には、その猶予で十分だった。

 

「――わぷっ!?」

 

右腕を振るい、夏候惇の顔に布を巻きつける。このまま徒手あるいはクナイで攻撃を加えて来るだろうと夏候惇は大剣を振るうが、その軌道上に一刀はいない。当然である。それよりも前に一刀は跳び上がり、右手で夏候惇の左肩を支えに、彼女の真上に頭足を天地逆さに構えていた。

 

「っ!このようなもの――」

 

正確な様子は見えなくとも、一刀の大まかな動きは、左肩に加わる圧力によって、夏候惇にも伝わっている。だからこそ彼女は力を加え、その均衡を崩す為、首を横に捩じろうとした。

 

 

 

 

 

 

「待て、姉者――」

「春蘭、ダメっ!」

 

その危険性を理解したのは、夏侯淵と曹操の2人と。

 

「――――っらぁああ!!」

 

そして、一刀の3人だった。夏候惇が取ろうとしていた動きを誰よりも近く、そして速く感じ取った一刀は、空いていた左腕でクナイを振るい、右手から伸びる布を斬り裂く。

 

「……?」

 

いきなり体表から去った圧力を不思議に思いつつも、夏候惇は得物を構え、着地したばかりの一刀に斬りかかる。

 

だが。

 

「それまでっ!」

 

仕合を止めにかかったのは、審判ではなく、彼女の主である曹操だった。

 

「っ!」

「……ふぅ」

 

その鬼気迫る声に夏候惇はビクリと動きを止め、一刀はようやく終わったかと息を吐く。

 

「ど、どういう事ですか、華琳様っ!?まだ勝負は終わっておりません!」

 

当然、主の制止であろうと疑問を投げかける。その問いに、曹操は無表情で答えた。

 

「あのまま北郷が何もしなかったら、貴女、首の骨を折ってたわよ?」

「っ!?」

「そうだぞ、姉者」

 

夏侯淵も、主に追随する。

 

「どういう事だ!あの程度の布など――」

「その布に、動きを封じられていたのは誰だ?」

「――っ!」

「あの時北郷がとろうとしていた動きの向きと、姉者が首を捻ろうとした方向。真逆どころではない。首が1回転していてもおかしくなかったぞ」

「……」

「北郷はそれを察し、武器で布を斬り裂き、姉者の首を解放したのだ」

「……そういう事か」

 

どうやら夏候惇も納得したようだ。しかしながら。

 

「不完全燃焼のようだね、惇ちゃん」

「北郷……」

 

声を掛けた一刀の言う通り、満足してはいないようだ。それは周りで見ていた者たちも同様で、年若い3人の少女や、桃髪の幼女は首を傾げている。いや、猫耳フードの軍師だけは、早く終わってよかったと、溜息を吐いていた。

 

「確かに物足りない気はするが……いや、駄目だな。私の負けだ」

「惇ちゃん?」

「華琳様も秋蘭も、私が誰よりも信頼している2人が私の負けだと言っているのだ。それを信じない理由はない。今回の仕合はいい経験だった」

「そっか。俺も久しぶりに思い切りやれて、楽しかったよ」

 

だが、最終的には夏候惇も晴れやかな顔になる。敗けた悔しさは当然あるだろうが、それよりも、このような奇策を繰り出してくる相手と闘えた経験を、尊いものだと思っていた。

 

「俺の真名は一刀。よかったら受け取ってくれ」

「あぁ!私の真名は春蘭だ!また挑ませてもらうからな!」

 

こうして、一刀は新たな友を得た。

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

春蘭との仕合も終え、俺は城を出て宿に――

 

「あれ?」

 

――向かおうと『俺は』思ったところで、『俺は』立ち止まる。

 

「おぉっ!!地の文が1人称に戻ってる!」

 

『俺は』この世の春が戻って来たと言わんばかりに『俺は』飛び跳ねて『俺は』全身で喜びを『俺は』表現しべへぁっ!?

 

「北郷、うるさい」

「曹操さん、痛いです……」

 

死神の鎌みたいな武器の柄で、後頭部を殴られた。

 

「このまま帰れると思っているのかしら?」

「え、ダメなんですか?」

 

ダメなの?

可愛く首を傾げたら鎌を首に添えられたので、大人しくする。

曹操たんは、借りてきた猫のように静かになった俺の様子に満足したのか、不適な笑みを浮かべて言い放つ。

 

「当然でしょう。北郷、私の部下になりなさい」

 

三国志でも曹操様は人材好きという事は読み知っていたが、まさか俺がその食指に触れてしまうとは思わなかった。

 

「なんでまた。俺は商人だって言ったじゃないですか」

「ただの商人がうちの一番の武を倒してしまうの?」

「いや、それは、ほら……」

 

頑張ったし。

 

「あー、えーと、春蘭が言ったように、俺って孫策様のところに居たし。勝手に引き抜いたら駄目ですよ」

「秋蘭から聞いたわよ。目的を達したら軍を抜けたのでしょう?ならば問題ないじゃない」

 

いやいやいや。

 

「これで最後よ。私のものになりなさい、北郷」

 

堂々と言い放つ曹操たん。胸を張るが、揺れる事はない。そんな大人ぶろうと頑張ってる姿が無性に可愛くなり、俺は、猫のような表情で答える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「……」」」」」

「春蘭、秋蘭……」

「御意」

「凪、真桜、沙和……」

「はっ!」

「季衣」

「はいっ!」

「桂花」

「部隊には既に指示を」

 

1人1人部下の名を呼び、曹操たんは厳かに、たった二文字を言い放った。

 

「殺れ」

「「「「「「「はっ!!」」」」」」」

「ぎゃぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!?」

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

戦闘シーンは真面目に書いたけど、やっぱり難しいんだよ!

 

 

あと、今日はもう1つ投稿するので、よかったら読んでいってね!

 

 

ではまた次回。

 

 

バイバイ。

 

 

 


 
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