拠点:澪羅、綺羅
「真名を預けない理由」
一刀は仕事で、兵達が行っている訓練の状況を見ていた。彼は訓練が行われているところ確認していく。
(どうやら問題はないようだな……ん?)
だが水軍の訓練場にて珍しい人物を目にした。
(あれは……杜預?)
この場所で彼女を見かけたのは初めてだった。
「杜預、どうしたんだ?」
「あ、司馬昭!?」
彼女はまさかこの場所で一刀に声を掛けられるとは思わず驚いた。
「状況から見るに……澪羅の水軍を見ていたようだけど……」
「ええ、そうよ」
彼女はすぐ気を取り直して、再び訓練の様子を見ながらそう返事した。
「ほら、水上での戦いってやっぱり陸地とは勝手が違ってくるじゃない?、だから軍略にしたって陸地とまった
く同じってわけにはいかないって思うわけ」
「それを見極めるために訓練を見学してたって訳か……なるほどね」
彼女が訓練の光景を見ていた理由に彼は納得した。
「それいえばあんた達司馬家って、水上での戦いにおいてはあの人にほとんど任せてるって聞いたわよ」
あの人とはもちろん澪羅のことだ。
「ああ、俺達もある程度は策を考えて方針は決めるけど、戦闘での動きとなると俺達は援護、支援という動きに
なって彼女が中心の行軍になってしまうな。下手な動きで、一番上手い戦いをする彼女の邪魔をしてしまうと
効率が悪くなってしまうし最悪陣形が崩れたら目も当てられない」
「じゃあ……」
綺羅は一刀に振り向きながら言う。
「水軍の軍略が得意な軍師が居ないってことになるわね」
「そうなんだよな……」
彼女の結論に一刀は苦笑しながら答えた。
「ふーん、やっぱりそうなんだ……」
「そういう人間が一人でも居てくれれば澪羅が今までよりも良い動きが出来ると思うし、俺達もすごく助かるん
だけどなぁ」
「そうなんだ……」
再び綺羅は訓練の様子を見る。しばらく二人でその様子を見ていたとき、不意に彼女は呟いた。
「そうなれば少しはあんたの役に立つわね……」
一刀は綺羅が呟いたのを気付き彼女を見てその内容を聞こうとする。
「ん、何だって?」
「な、なんでもないわよ」
綺羅はあわててごまかす。一刀はそれを見て「気のせいか?」と言いながら視線を訓練の様子に移すと彼女は
ほっとした。
「あっ」
ここで彼は自分の仕事を思い出した。
「まだ見なくちゃいけないところがあったんだった!」
そう言って一刀は走りながらその場を去る。
「またな、杜預」
「あ……」
杜預、そう言われた彼女は少し悲しい感情を抱く。
「なんだいその顔は、お頭に真名で呼んで欲しかったのかい?」
「!!」
何時の間にか、綺羅の後ろに澪羅が居た。
「それなら早く真名預けちゃえばいいじゃないか」
澪羅の言った事に彼女は悲しそうに「……無理よ……」と言う。
「私の母とあいつの母とは仲が悪いのよ……もし私が司馬昭と真名を交換しあったとわかったら最悪絶縁される
かもしれない……」
「うわ……本当かい?」
その理由に澪羅は無意識にそう呟く。二人の母の不仲は聞いていたがまさかそこまでとは思っていなかった。
「あいつと真名で呼び合える日が来るとしたら、二人の仲が改善されるかそういう必要が無くなるかよ……」
そういう必要が無くなる……。
その意味を澪羅は聞かなかった。なんとなく分かってしまったからだ。そしてその日が来ないほうが良いと言
うことも……。
「アンタも大変だねぇ……」
澪羅はしみじみとそう言った。
あとがき
これで第二章の拠点は終了です。
次は更新した主な人物紹介になります。
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