No.543677

マリア様がみてるSS 白薔薇さまの見る夢・カップヌードル編

さん

マリア様がみてるSS
それはやはりシーフードじゃないかしら

2013-02-13 16:00:59 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:3385   閲覧ユーザー数:3379

ご案内

 

「白薔薇さまの見る夢」は、その名の通り白薔薇さまである佐藤聖さまの夢の中のお話です。

この夢の中では、全ての女性が福沢祐巳を愛しているという設定になっております。

そしてキャラ崩壊も起きています。

もし、そういうお話が苦手な方は申し訳ありません。そっとページをお閉じ下さい。

大丈夫だよ!という方は是非次ページからの本文へお進み下さい。

白薔薇さまの見る夢・カップヌードル編

 

 リリアン女学院の全校生徒のみならず、日本中、いや世界中から愛されている福沢祐巳。

 その彼女をめぐって数多くのドラマが繰り広げられるのが、ここ薔薇の館である。

 とある日の放課後。

 福沢祐巳が好きすぎて、少々おかしくなっている由乃と志摩子は、愛する祐巳の登場を待ちながら、二階の会議室で雑談を交わしていた。

「カップヌードルってしょうゆ味とシーフードとカレーが、赤・白・黄の三色に分かれているわよね」

 雑談のさなか、ふと由乃が話を切り出す。

「えぇ、そうね」

 志摩子は柔らかい微笑みを浮かべながら静かに頷いた。

「赤・白・黄って言うと三薔薇と同じ色だなーと思って。と言うことは、祐巳さんはカップヌードルで言えばしょうゆ味って事じゃない」

 と、立てた人差し指をぶんぶん振って力説する由乃。

「あら、面白い考え方ね」

 そう言いつつ、志摩子は無意識に、祐巳がカップヌードルしょうゆ味を手に持って自分に微笑みかけている姿を妄想した。あぁ、祐巳さん可愛い。

「それでね、私、急いでしょうゆ味を買ってきて食べちゃった。暖かくて優しい味で、祐巳さんを食べたらきっとこんな感じなんだろうなーと思ったわ」

 鼻息荒く話す由乃に、志摩子は、

「一人抜け駆けで祐巳さんを食べちゃうなんてずるいわ」

 微笑みながら言いつつ、自分が祐巳を食べる姿を妄想し、興奮した。

 なんとも気味の悪い流れだが、恋は人を狂わすと言う。このような話題で話が盛り上がるのは二人に限らず、福沢祐巳に魅了された全ての者たちの常であった。

「そういえば、祐巳さんは何味が好きなのかしらね」

 由乃がふとつぶやく。

「それはやはりシーフードじゃないかしら」

 当然と言った風に答える志摩子。

 それに対して、由乃は信じられないと言った表情で、

「まさか、カレーに決まってるでしょ」

 と真っ向から否定した。

 二人の間に見えない火花が激しく散った。

 

 

数分後

 

 

 祐巳は、薔薇の館二階の会議室に入るなり、由乃と志摩子に囲まれた。

「ごきげんよう祐巳さん」

 ただの挨拶のはずなのに、何故か二人はものすごい剣幕だった。

「ご、ごきげんよう?」

 圧倒されながらも、祐巳は挨拶を返す。二人は驚く祐巳に構わず、話を始めた。

「来て早々申し訳ないのだけれど、私達、祐巳さんに是非お聞きしたいことがあって」

 そう言う志摩子さんの目がギラギラしていて、祐巳はますますたじろいだ。

「なんでしょう、私に分かることなら」

 一体何を問われるのか、恐る恐る受け答える。

「私達二人はカップヌードルがたまらなく大好きなの。あのしょうゆ味のやつね」

「そう。そこで、祐巳さんはカップヌードルで一体何味が好きなのかなーと気になってしまって」

「は、はぁ」

 何だ、ただ何が好きかって話なのか。何かの失敗を追求されるのかと思っていた祐巳は少し肩の力が抜けた。

「あ、でもしょうゆ味はもうナシよ。それはもう違うから」

 と、由乃。続けて志摩子が、

「だからシーフードかカレーから選んで。さあ、どちらかしら?」

 何故しょうゆ味はダメなのか、祐巳には意味不明であったが、とにかくシーフードかカレーの二択を迫られていることは把握できた。

「え、えっと……」

 味の好みなんて些細な事のはずだけど……。

 そう思ったが、固唾を飲んで答えを待つ真剣な二人を見ると、適当に答えたのでは満足してもらえそうもなかった。  祐巳はできるだけ真剣に考え、ゆっくりと口を開いた。

「……か、カレーかな」

 祐巳の答えを聞くやいなや、この世の終わりのような絶望の表情を浮かべ、膝から崩れ落ちる志摩子。

 対して由乃は、

「さすが祐巳さん!そうよね!カレーよね!」

 この上なく幸せそうな笑みを浮かべ、祐巳の両手を握って握手をした。

「それじゃあ、あっちでカレー味のどこが好きか詳しく聞かせてちょうだい」

 そう言って由乃は、さあさあと祐巳の肩を抱きながら席に向かう。

 哀れ志摩子はその親しげな振る舞いに意見することもできず、ぐったりとうなだれた。

(このまま由乃さんの毒牙にかかってしまうのか)

 そう志摩子が諦めかけたその時、

「あっ」

 突然、祐巳は何かを思い出したように小さく声を上げた。

「そういえば忘れていたけど、本当はカップヌードルの中だと、しおが一番好きだな」

 祐巳のこの言葉に、部屋の空気が一変した。

 驚きの表情を浮かべ、しばし互いを見合う由乃と志摩子。

 刹那、はっと閃く志摩子。すぐさま立ち上がると、声高らかに宣誓した。

「そういえば私、しおだったわ!」

 普段の志摩子の柔らかな声とは違う、力強い決意の声が部屋中に響いた。

「なっ、卑怯よ志摩子さん!」

 目を見開いて、すかさず抗議する由乃。だが志摩子はそれに構うことなく、

「カレーよりしお、そうよね、しおよね」

 うふふと花のように微笑んで祐巳の手を取った。

「駄目よ!絶対ダメ!ルール違反!」

 キャンキャン犬のように激しく言い立てる由乃だが、志摩子は一切相手にせず、

「それでは残念だけど由乃さん、約束通りしょうゆ味には今後一切手を出さないでね。そうね、由乃さんには一平ちゃんなんて良いんじゃないかしら」

「な、なんですってぇー!」

 

 

 

「はっ!」

窓から朝日が漏れ、ちゅんちゅんとスズメの鳴き声が聞こえる。どうやら夢を見ていたらしい。

「なんなの今の夢……」

ひどく脱力した聖は、続けて一言「怖い」とつぶやいて布団の中で体を丸めた。

 

 

おしまい。


 
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