一刀は魏から戻り学生生活に戻った。
戻ってきた一刀は周りから『雰囲気が変わった』と言われ、剣道部でも3年生や師範の先生も相手にならない位強くなっていた。
女子生徒からも一目置かれ、頻繁に女子生徒に話しかけられたりデートに誘おうとする者もいれば呼び出して恋の告白もされるようになった。
デートには付き合うものの告白は断り続けた。
あるとき一人の女子が「私じゃだめなんですか?他に彼女がいるんですか?」と尋ねてきた。
一刀は一瞬悲しい顔をするが無理やり笑顔を作って「ごめんね。遠い所に彼女がいるんだ」と詫びた。
その噂を聞いた及川が「かずピーが女たらしになってもーた!」と顔を赤らめて騒いだとか。
そんな高校生活を終えて一刀は『華琳のような度量を持った人間にはなれなくても人のためになにかしたい』と思い立ち警察官を目指し大学へ進んだ。
あの日々で体験した3人の頼れる部下と取り組んだ平和な町を守る仕事。
空はいつも青くて人々は笑顔で3人で回れば必ず騒がしくなったあの仕事こそこの世界でも信念をもってやり続けることができる。
そんな気がしたからだった。
大学3年のある日だった。
家に帰ると高校卒業後東京の町工場で働いている及川から手紙が届いた。
それは結婚式の招待状。
相手は俺に告白を断った理由を聞いてきたあの子だった。
すぐに及川に電話でお祝いのついでに馴れ初め聞いてみると「かずピー。そりゃ野暮ってもんやで。」と話してもらえなかった。
すごく幸せだと及川は喜んでいた。
結婚か……。俺の想い人は同じ空も見ることができない遠い地で何をして何を思って毎日を過ごしているんだろう。
「華琳……。会いたいよ……」
月に向かってポツリと漏らした。
結婚式当日―――
新郎の友人席で俺は本当に幸せそうな二人を祝った。
高校の友人は新郎新婦共に多く招待しており、知っている顔が何人もいた。
俺はビール瓶をもって及川へ酌をしに行った。
「二人とも。おめでとう」
「ありがとうございます。北郷さん、今日もカッコイイですね」
「サユぅ、もう俺の妻ねんで。早速浮気かいなぁ。かずピー人妻に手ぇ出すんが趣味なんか!?」
「いや、そんなわけないから。ってか夫婦漫才で俺をいじるな」
「じょーだんやって。せやけどホンマありがとうな。今日は本当に幸せや」
「及川、違うだろ。今日から幸せな毎日が始まるんだろ?」
「せやな。ホンマありがたいわ」
式の後の2次会を終えて帰ってきた俺は結構酔ってしまい、酔いを醒まそうとベランダに出た。
滅多に吸わないタバコを吸って今日を振り返っていた。
(及川、本当に嬉しそうだったよな……)
顔を上げるとまた月が出ていた。
「華琳……。お前との最後もこんな綺麗な月だったよな」
酔っているせいか、一刀の独白は続く。
「俺さ、結婚ってきっとお前以外はできないと思うんだよな……。だって結婚するってことはその人を人生の伴侶にするってことだろ?」
やがて俯き肩が震え始めた。
「俺はお前の物なんだよな。あのときお前の背中は俺に行くなって言ってるように感じたよ……。図々しい……かな。お前はさ、王らしく俺を送り出そうとしてくれたんだよな。華琳らしいし俺もその方がよかったって思っているんだ。……いるんだけどさ……」
やがて雫が1滴、また1滴と床に落ち―――
「なんだろうな。お互い、見得みたいなの張っちゃって……。悲しくないようにしようって……、気を遣いあっちゃったんだよな……っ」
「華琳……っ、俺はすごくお前に会いたいっ、お前に触れたいっ!声が聞きたいっ……!……~~っ」
「馬鹿ね……」
「っ!!」
ふと顔をあげると月明かりに照らされた愛する人がそこに、いた。
「なんで……」
「さぁ、何でかしらね。」
「華琳……なのか?」
「あら?この私以外に何に見えるのかしら?」
「華琳っ!華琳……っ!!」
「一刀、会いたかったっ!!馬鹿っ!」
月明かりが二人を放し再び月明かりが二人を結んだ。
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この話は魏から戻ってきた一刀のお話です。
※華琳が華「梨」なっていたので慌てて直しましたっ