ここはラミナ市内、エバーグリーンカレッジ。
そのプライマリー・クラス(1年生)B組の教室でため息をつくロボットが一人…。
「はぁ……」
…九段下久遠。学生形ロボット…であったが、持ち前の正義感の強さを買われ
ファンガルド警察K-9隊に配属され、日夜平和のために戦っている。
そんな彼女は連日の事件に毎日の勉強、多忙多忙を極める毎日で恋する暇もないのであった。
「ねぇ、どーしたのよクオン、さっきからため息ばっかりだよ」
と、声をかけるのはクラスメートのデイジー・ハインツとジャネット・エマソン。
「うん…ちょっとね…」
「ちょっとじゃないよ、すっごい耳が垂れ下がってるもん」
「何か悩みがあるんだったら相談に乗るわよ」
「じゃあ聞いてくれるかな…実はね…」
「…なーるほどぉ、周りのみんなが次々にカップル成立してるのに自分だけ置いてけぼりになってる気がする、と」
「そーなんだよ。エルザ隊長とアーサーさんでしょ、アレク兄ちゃんとフィー姉ちゃんでしょ。あと…」
と、ラミナ署管内で成立したカップルを列挙していくうちに、クオンはがっくりうなだれ深いため息をつく。
「…はぁぁぁぁ、もうボク一生独身で終わっちゃうのかなぁ…」
「ク、クオン!しっかりして!」
放課後。クオンがとぼとぼと廊下を歩いていると、近くを担任教師のミルス・イリオーモが通りかかった。
「…はぁ…」
「おや、どうしましたクオンさん?」
「あ、先生…実は悩んでることがあって…」
「悩み事?進路のことですか?」
「いいえ、このぐらいの歳の女の子なら誰もが抱える悩みですよ…」
「…何があったかは存じませんが、まぁ立ち話もなんですし、中庭でお話を伺いましょう」
カレッジの中庭にて。
「…というわけなんです」
「成る程、つまり周りで恋仲が成立しつつある中で、自分ひとりだけが取り残されている気がして焦っていると」
「…あぁ、このまま相手が見つからなかったらボク…ボク…」
思わず涙を浮かべるクオンの肩に、ミルスがそっと手を置きハンカチを差し出す。
「大丈夫ですよ、クオンさん」
「せ、先生…?」
「いい相手を見つけるのは決して簡単なことではありません。今でこそ私も妻と子を持っていますが、妻とめぐり合うまでは本当に苦労したものです」
「…先生もだったんですか?」
「ええ、このまま一生独り身のままかと悩んで相手探しに奔走したものです。ですがなかなか見つからずもう諦めようかと思っていた。ちょうどそのときですか、一人の女性とめぐり合いましてね」
「…それが、今の先生の奥さんになる人だったんですか?」
「はい。…実は同じ大学で同じクラスだったのですよ。しかも私の二つ後ろの席にいた娘さんでした。まさかこんな近くにいたとは、と思って思わず笑ってしまいましたよ」
と、照れくさそうに話をしていたミルスは再びクオンの肩に手を置くと、さらに続ける。
「クオンさん、恋の相手はいつ、どこでめぐり合えるかわからないものです。そしてその相手は、意外とあなたの近くにいるのかもしれません」
「ボクの…身近なところに?」
「ええ。あなたならきっと見つけられます」
しばらく戸惑っていたクオンだったが、ミルスの真剣なまなざしを見るや、こぼれていた涙をぬぐいゆっくりと立ち上がる。
「…わかりました。きっといい相手を見つけて、幸せになってみせます!」
「ええ。応援していますよクオンさん」
クオンはミルスに一礼をして立ち去ると、握りこぶしを作って勢いよく空へと振り上げ叫ぶ。
「よぉぉーしっ…幸せになるぞーーーっ!!!」
…九段下久遠。彼女の恋は始まったばかりである…。
Tweet |
|
|
3
|
1
|
追加するフォルダを選択
なんだか可哀想な気がしたので、ここらでクオンちゃんに恋のチャンスを与えてみる。
なんとOXYさんが彼氏を描いてくれることになったよ!ありがとうございます!!
■出演:
クオン:http://www.tinami.com/view/372605
続きを表示