No.539498

恋姫外史終章・いつまでも一刀第20話

アキナスさん

一刀は行く・・・・・・

2013-02-03 13:07:27 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:5596   閲覧ユーザー数:4319

七乃がぬけがらとなっている間、雪蓮たちは着々と反旗を翻す準備を整えていた。

 

兵士たちの訓練も充分。

 

ちりぢりになっていた三姉妹と将たちも勢ぞろい。

 

攻め込むまであとわずか。

 

そんな時だった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

建業・城下街

 

ペタペタ・・・・・・

 

妙な足音と共に、街中をうろつく物体があった。

 

ペタペタ・・・・・・

 

「な、何だありゃあ?」

 

ぺタぺタ・・・・・・

 

「どこかの旅芸人たちの宣伝じゃあないかい?」

 

ペタペタ・・・・・・

 

「お母さん、あれ可愛いね♪」

 

ペタペタ・・・・・・

 

その物体は人々の奇異の視線にさらされながら、ゆっくりと城の方へと歩いていくのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「あ~あ、退屈。街にでも繰り出そっと・・・・・・」

 

孫家の末娘、小蓮はそう言いつつ、城門の前まで来ていた。

 

戦いが迫る中、彼女だけはここに留守番と決められてしまったため、ほとんどやることもなく、時間をもてあましていたのだった。

 

門番に声をかけて街へ行こうとする小蓮であったが、

 

「止まれ!!」

 

「ええ!?」

 

こちらに背を向けたまま、急に門番が大きな声を上げたのでびっくりしてしまった。

 

「?」

 

くるりと、小蓮のほうを振り向く門番。

 

「ああ、これは尚香様。驚かせてしまいましたか。申し訳ありません」

 

「う、うん・・・・・・えっと、今のはシャオに言ったんじゃないの?」

 

「も、勿論です!私は、この怪しいやつに止まれと言ったのです」

 

そう言って、門番は門の外を指差す。

 

 

 

 

小蓮がその指差す方向を見ると

 

 

 

 

 

そこには

 

 

 

 

「・・・・・ふ」

 

 

 

 

緑色の帽子に赤い蝶ネクタイを身に着けた犬のような、ネズミのようなよく分からない茶色の生物の着ぐるみ。つまり・・・・・・

 

 

 

 

 

「ふもっふ」

 

 

 

 

 

ボン太くんが立っていたのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「わあ!可愛い♪」

 

そう言って小蓮はボン太くんに近づこうとする・・・・・・が、

 

「いけません尚香様」

 

門番が間に割って入り、小蓮をとおせんぼした。

 

「ぶ~~!何で邪魔するの~~?」

 

「こんな怪しい者に無闇に近付いてはいけません。ご自重ください」

 

そう言うと、門番はボン太くんに向き直った。

 

「貴様、いったい何者だ?この城にいったい何の用があってきた?」

 

「ふも・・・・・・ふもっふ。ふも、ふもふも・・・・・・」

 

ボン太くんは門番の質問に答えるように、ふもふも言いながらジェスチャーを交えて説明しようとしているようだった。

 

だが、門番にはさっぱり意味が分からなかった。

 

「さっぱり分からんわ!そのみょうな服を脱いで、まじめに話せ!!」

 

そう言って、門番はボン太くんの着ぐるみに手をかけようとする。

 

しかし、その手が届く寸前で、

 

「待ちなさい!」

 

小蓮が門番の行動を制した。

 

「ど、どうして止めるのですか?尚香様・・・・・・」

 

「いいから、ちょっと下がってて」

 

そう言うと、小蓮は門番を押しのけ、ボン太くんの前に来た。

 

「ふも?」

 

首を傾げるボン太くん。

 

「ねえ、もう一回説明してみてくれない?」

 

「ふもっふ」

 

小蓮の言葉にボン太くんは頷くと、再びジェスチャーを交えてふもふも言い始めた。

 

「ふも、ふもふも。ふもっふふもっふ・・・・・・」

 

「ふんふん・・・・・・」

 

小蓮はうんうん頷きながら、ボン太くんの言葉を聞いていた。

 

そして

 

「なるほどね~~」

 

ボン太くんが話し終えた後、小蓮はそう言って、門番に向き直った。

 

「ねえ、この子通してあげてよ」

 

「は?で、ですが・・・・・・」

 

小蓮の言葉に困惑する門番。

 

「この子、袁術の使いの人なんだって。通さないと大変な事になるかもしれないけど・・・・・・」

 

「ええ!?」

 

門番は嘘だろ!?といわんばかりの目でボン太くんを見る。

 

「ふもっふ!」

 

それに対し、ボン太くんはその通り!といわんばかりに胸を張っていた。

 

「その・・・・・・尚香様はこの者の言っている事が分かるのですか?」

 

「うん。周々たちと似たような感じだからかなあ?だいたい分かるみたい」

 

「は、はあ・・・・・・」

 

「いいから通してよ。責任はシャオが取るから」

 

「え、ええと・・・・・・分かりました。どうぞ・・・・・・」

 

そう言って道を空ける門番。

 

「さ、行こ♪シャオが連れてってあげる♪」

 

小蓮はボン太くんに手を差し出す。

 

「ふもっふ♪」

 

ボン太くんも差し出された手に自分の手を重ねる。

 

 

 

 

そして二人は

 

 

 

 

手を繋ぎながら城の中へと入って行った・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

謁見の間にて

 

孫家の重要人物の全てが集められ、使者であるボン太くんを迎えていた。

 

本当に使者かと皆疑ったが、袁術の書状(確かに自分の使者だと書いてあるだけだったが)を持っていたため、一応信用はしてもらえたようだった。

 

ボン太くんを見る視線は、ふざけているのかと言う怒りの視線、訳が分からないと言う戸惑いの視線など様々であった。

 

「ようこそ使者殿よ。遠いところからご足労痛み入る」

 

冥琳はボン太くんの真意を探るように、視線を向けて言った。

 

「ふも、もふもふ、もっふる」

 

「いやいや、何の連絡もなく押しかけてまことに申し訳ない・・・・・・って言ってるよ」

 

ボン太くんの隣でシャオが通訳する。

 

他にボン太くんの言葉が分かる人間がいないので、当然といえば当然なのだが・・・・・・

 

「ところで、何故貴公はそのような姿をしているのだろうか?」

 

「ふもっふ」

 

「それは秘密です・・・・・・だって」

 

「むう・・・・・・」

 

身も蓋もないもない言い方に、押し黙る冥琳。

 

「じゃあ質問を変えましょう。使者殿はここに何の用があって来たのかしら?」

 

黙った冥琳に代わり、今度は雪蓮がボン太くんに訊ねた。

 

「ふも、ふもふも、ふも!ふもっふ」

 

「ええと、随分前におたくの周泰をお借りした事がありましたね。遅れてしまいましたが、そのお返しに来たのです・・・・・・だって」

 

「へえ、それで?どんなお返しをしてくれるのかしら?」

 

「ふもっふ!」

 

ドン!と胸を叩くボン太くん。

 

「私がここで働かせていただきます・・・・・・え?それホント?」

 

「ふもっふふもっふ」

 

小蓮の言葉に頷くボン太くん。

 

「ふうん・・・・・・」

 

じろじろとボン太くんを眺める雪蓮。

 

「あなた、明命に匹敵するくらい優秀なの?」

 

「ふも、ふもっふ」

 

そう言ってボン太くんは頭を下げた。

 

「それは実際にお見せしたほうが早いでしょう、どうかよろしくお願いします・・・・・・だって」

 

「確かに、分かったわ。それじゃあ明日からでも働いてもらおうと思うけれど、構わないかしら?」

 

「ふもっふ!・・・ふも」

 

「任せてください!ただ、一つお願いが・・・・・・って言ってる」

 

「何かしら?」

 

「ふもふも」

 

「私の隣にいる孫尚香様に、仕事を手伝ってもらいたい。主に通訳関係で・・・・・・って、シャオに?」

 

「ふもっふ」

 

頷くボン太くんだったが、それに猛反発した者がいた。

 

蓮華である。

 

「おい貴様!使者の分際でよりにもよって我が妹を使おうなどと図々しいにも程があるぞ!」

 

「シャオなら別に構わないけど?」

 

「な!?」

 

絶句する蓮華。

 

「だって最近暇で仕方無いんだもん」

 

「し、しかしだな・・・・・・」

 

「いいんじゃない?どっちにしろ仕事ぶりを見ておく人間が必要だし、言葉が分かるのはシャオだけなんだから」

 

「ね、姉様まで・・・・・・」

 

「じゃあ決まり!」

 

「そうね。それじゃあ部屋を用意させてあるから、今日はそちらでゆっくり休んでちょうだい」

 

雪蓮がそう言うと、兵士が一人、ボン太くんの側にやってきた。

 

「ではこちらへ」

 

「ふもっふ」

 

側に来た兵士について歩いていこうとするボン太くん。

 

「あ、そういえば・・・・・・」

 

「ふも?」

 

雪蓮の言葉に足を止めるボン太くん。

 

「貴方の事は、何て呼べばいいのかしら?

 

「ふもっふ」

 

「ボン太くんと呼んでください・・・・・・だって」

 

「そう。じゃあボン太くん。また明日」

 

「ふもっふ」

 

ボン太くんは雪蓮に向けてバイバイと手を振ると、兵士に連れられ部屋に向かって歩き出したのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、あの者をどうするつもりだ?」

 

「とりあえず様子見かしらね。シャオに見張らせておけば妙な事はしないでしょ」

 

「まったく、こんな時期に妙な者が来てしまったな。動きが取りづらくなる・・・・・・」

 

「ぼやかないぼやかない」

 

「お前はやけに楽しそうだな?」

 

「だって面白いじゃない。あんな格好で堂々と謁見に望むとか、何度吹き出しそうになったか・・・・・・」

 

「まったく、楽しむのは構わんが、本来の目的を忘れるなよ?」

 

「忘れるわけないでしょ?それに、あいつはここにおいて置いた方がいいと思うわよ?」

 

「何?」

 

「あれの中身、かなりの重要人物だと思うから」

 

「根拠は?」

 

「勘」

 

「だと思ったよ。まあ、いざとなったら・・・・・・」

 

「捕らえるなり始末するなりすればいいでしょ?ここは、私達の城なんだから・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蓮華様」

 

「何?思春?」

 

「あの妙な者の事ですが・・・・・・」

 

「ああ、あれ。まったく姉様もシャオも何を考えているのか・・・・・・」

 

眉間に皺を寄せる蓮華。

 

「で?あれがどうかしたの?」

 

「いえ、何というか、妙な感じがしたのです」

 

「妙な感じ?」

 

「ええ、少し懐かしいような、それでいて忌まわしいような、それでも少しだけ楽しいような何とも言えない感じが・・・・・・」

 

「・・・・・・思春。貴方もなの?」

 

「も、と言いますと・・・・・・」

 

「私も、何とも言えない不思議な感じがしたのよ。色々な感情が混ざったような、変な感じが」

 

「いったい何なんでしょうか?」

 

「分からないわ・・・・・・」

 

揃って首を傾げる蓮華と思春であった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

(ふう、とりあえずは何とかなったな)

 

ボン太くんの着ぐるみを着たまま、一刀は用意された部屋の寝台に寝転んだ。

 

(しかし、シャオがボン太くんの言葉が分かるとはな。まあ、おかげで助かったけど・・・・・・)

 

いざとなったら筆談で何とかするしかないと思っていたので、本当に助かったと一刀は思っていた。

 

(さて、当面は仕事しながら監視だな。雪蓮たちをどう止めるか、まだ考えつかねえし・・・・・・)

 

寝転びながら腕組みする一刀。

 

(とりあえず、明日からがんばろ~。お~~)

 

一刀はそう思いつつ、右腕を天に突き出したのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、アキナスです。

 

単身乗り込んだ一刀くん。

 

果たして雪蓮たちを止める事は出来るのか?

 

そして、正体を隠し通す事は出来るのか?

 

そんなところで次回に・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大導脈流究極奥義! 臨・死・堆・拳!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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