一月二日、ケイは上半身は赤地に黄色と青と朱色の模様の振袖を腕を出した状態で着用し、下半身は朱色の袴に白い足袋、赤い鼻緒の黒い草履の姿で悠平の前に現れた。
悠平は驚きと呆れと困惑が入り乱れた気持ちで「お前、なんでそんな格好なんだよ」とツッコむ。
「今日は書初めをやろうと思って」とケイは返す。
「書初めするのはいいけど、なぜM.D.Sの格納庫なんだ?」
「彌勒に搭乗して書初めするの、もちろん筆も硯も半紙もM.D.Sに合わせたジャンボサイズでね」
あたりを見回すと人間には大きすぎるどころでないサイズの筆、硯、半紙、墨などが用意されている。
「変なこだわりかたするんだなぁ」悠平が一言言った。
するとケイは「あなたにも書初めをしてもらうわ、もちろん冴助を操作してね」と彼に勧めた。
「オ、オレもかよっ」
「書初め用の和服、悠平の分も用意してあるわ」と上半身部分は白、下半身部分は青紫の神社の神官向け白衣と黒い木沓(きぐつ)を差し出す。
「衣装まで用意して、本気なんだな」
「今着替えさせてあげる」
とケイは悠平の胸アーマー付き全身タイツのパイロットスーツを脱がそうとアーマー部分に手をやる。
「いやぁー!痴女ぉーー!」
悠平のややオネエの入った悲鳴が格納庫に木霊する。
すっかり神社の神官風の和装に着替えさせられた悠平、すっかりげっそりした表情になっている。
「てっきり、もっと変な事するかと思ったんだぜ」と洩らす。
「もっと変な事って言うと女装とか着ぐるみとかハゲヅララクダのシャツ腹巻股引とか?」
「全部オレに似合わねぇし、つかなぜ最後だけ妙に具体的なんだよっ!」
「ついでにビン底眼鏡とチョビひg」
「おい、やめろ読者が本気にしたらどうすんだ」
「ごめん!そして身に着けた衣装、すごく似合っているわ、知的で教養高く見えるわ」
「そ、そうか…ありがとよっ!」
ケイの一言で悠平が俄然やる気を出したようだ!
ケイと悠平はそれぞれ自分の搭乗するM.D.Sに乗り込んだ。
彌勒と冴助それぞれの背中の部分の入り口の扉が音も立てずに重量ある身を下していく。
二機はそれぞれの持ち場に付き水を入れた硯で巨大でずーんと重い墨を岩と岩が擦れるような重低音をさせて擦る。
硯に入った水の色はどんどん墨色を増していく。
どうやら書初めに向いた濃さになったようだ。
二機のM.D.S、右腕を巨大な筆に近づけ大きくゴツい手のひらで筆の軸を握りしめる。
墨の付いた筆が和紙でできた広大な雪原を軽快に滑る。
墨色の滑り跡が半紙に色づき文字が書かれたということが分かる。
それぞれの自機から降りたケイと悠平はM.D.Sに搭乗したまま書初めを行ったので和装に墨の汚れは全然なく、彌勒と冴助も防水加工がされているので機体に墨が着くことはなかった。
そしてお互いの完成作品を確認し合う。
「悠平の書いたのかっこいいね、それ何て書いたの?」
「えっとこれは…うっ、自分で書いた字が読めねぇ」
あまりもの悪筆で自分でもどんな字を書いたのか分からなくなったようだ。
「…気を取り直してケイ、お前の方はどうなんだ…ってなんだこりゃ」
「これは『ぼんじり』って書いたの、鶏の尻尾の部分の肉の事よ」
「どうしてその言葉をチョイスしたんだ?」
悠平は疑問に思い聞いてみる。
「『ぼんじり』って字づらがかっこいい上かわいいの」
ケイは満面の笑みで返答した。
「言うの忘れてたけど、悠平がここに来てからの今までのやりとりネットで生配信してるから全宇宙に知られてるわよ」
「全宇宙か、そいつはすげぇな…ってことは着替えさせられてる場面もか!」
「そう、その場面もよ」
ケイは落ち着いた口調で言った。
「うあー、オレもうお嫁もらえねぇ」
悠平のテンションはだだ下がりである…。
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ケイと悠平の書初め話です。
ケイが変態気味です。
悠平がかわいそうな目に遭っています。(生死関係ではありません)
ギャグ