No.539258

東方百合語-咲夜・パチュリー編-

初音軍さん

ツイッターで話をしていてできたネタ・・・のはずだけど。 最初の予定よりだいぶ違った形になってしまた^q^ タイトル通り、咲夜とパチュリーの百合話です。少しでも楽しんでもらえれば幸いです♪

2013-02-02 22:35:03 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:5090   閲覧ユーザー数:5071

 

 

 一つの世界の中に複数の世界が存在するといわれる、平行線上にある世界。

時空をゆがめる力があれば、あるいは別世界に行けるであろうという仮説は存在する。

 

「何をブツブツ言ってるのです?」

 

 パチュリー様と声をかけられて、私は声がした方へ向けて顔を仰ぐ。

すると、読書をしていた私を覗いてみるような形で咲夜が立っていた。

 

「何よ」

 

 私は不機嫌そうにそう言うと、再び視線を本の上に落とした。

直後、私の隣にコトンという小さな音がした。

 

 私の嗅覚に反応するそれは、いつも頼んでいる紅茶の匂いであった。

 

「お茶の時間でございます」

「最初からそう言ってよ」

 

 そもそも、咲夜はレミィの玩具なんだから、ここに長く留まる必要はないのだが。

暇つぶしに二人で話しをしてからというもの、咲夜はしつこいくらいに私の傍に

居たがった。

 

 レミィのモノなのに私が独占して拗ねられても困ると思って、レミィに説明すると

なぜか喜んでいる表情をしたのを思い出した。

 

 もう咲夜のことは飽きて要らなくなったのだろうか。否、だったら食料にでも

するだろう。

 

 咲夜の淹れた紅茶を一口飲むと、ほどよく濃い香りが読書漬けで凝り固まっていた

脳がリラックスしていくように感じた。彼女の淹れる紅茶は特別美味しく感じた。

 

「ねぇ、咲夜。ここばかりいても仕方ないでしょう。掃除とかまだ残ってるんじゃ・・・」

「本日の仕事は全て完了しました」

 

「あ、そう・・・」

 

 近づくきっかけとなったのは・・・。そう、幻想郷に私達が来て、紅い霧を撒いていた。

その時期に巫女たちが紅魔館に浸入してきた辺りかしら。

 

 咲夜が負けて、レミィが何とか凌いで追い払った後に私の元に彼女が訪れてきた。

 

『スペルの強化を図りたいんです』

 

 それは下僕としてでなく、自分の意思で強くなりたいという強い目をしていた。

私はその気持ちに応えて、魔法が使えない咲夜でもできる軽い火の魔法をスペルに

組み込んだ。

 

 名前はここに越した時に紛れていた書物に登場していた名前を使わせてもらった。

ただ、それだけのことだった。

 

「パチュリー様、お体に障らない程度にお外に出ましょうか」

「いいわ、小悪魔にしてもらうから」

 

「そうですか・・・」

 

 本を開きながら、昔を思い耽っていたが咲夜の声で我に返ると、私は彼女の申し出を

断った。事実、何でも咲夜にしてもらうと小悪魔の存在価値が薄れてしまう。

 

 せっかくの使い魔なのだし、活用しないと。

 

 他意はないのだが、咲夜にとっては避けているとも取られるかもしれない。

まぁ、部下のことで一々気にしていたらキリがないから思考の切り替えをする。

 

 咲夜が部屋を去ると、途端に静かに感じる。いても静かなはずなのだが、

不思議と別の空間にいるような錯覚を感じる。

 

「パチュリー様? どうかされました?」

「あぁ、小悪魔・・・。何でもないの。ちょっと胸が苦しくて・・・」

 

「体調崩されたのでしょうか、今ベッドの用意を・・・」

「いえ、そういうのではないけど・・・。何なのかしらね」

 

 私の言葉に小悪魔は首を傾げて考える仕草をしていた。

ただ、仕草をするだけで本当に考えてくれてるかは疑問だったけれど。

 

 そんな小悪魔に手を向けて制止させ、やっている途中だった仕事に戻させた。

一瞬小悪魔に考えてもらおうと考えてしまったことに後悔をする。

魔女である私が考えることを放棄してどうしようというのだ。

 

 私はそんな弱い気持ちを振り払って、一度読書に神経を戻すことにした。

 

 

 

【咲夜】

 

 今日も避けられるような感じがした。私が何かしただろうか。

仕事も一段落してテーブル前の椅子に座って考え込む仕草をする。

 

 今日は計20分ほどしか一緒にいられなかった。

私の気持ちに気づかれているのだろうか、それとも偶然?

 

「どうしたの、咲夜」

「あ・・・、お嬢様」

 

 眠りから覚めたのか欠伸をしながら私に近づいてくるお嬢様。

それは心配という顔ではなく面白そうなものを見つけた子供のように

好奇心を前に出している感じである。

 

「またパチュリーのこと?」

「・・・はい」

 

 仕えてる主の他に夢中になるのを知られると普通はまずいものなのだが、

お嬢様はそういうことを気にせず・・・いや、むしろ楽しんでいる節がある。

 

「今日は20分51秒13くらいしかいられませんでした」

「あんた・・・そんなに細かいこと気にしてるとハゲるわよ」

 

「何か避けられてる気がするんですよね」

「気のせい、気のせい。あのパチュリーがそんなことに気を回してる余裕ないわよ。

むしろ、あるとしたら・・・咲夜のことを意識しているのかもしれないけど」

 

 そうか、逆に考えると避けることは私を意識しているから。

でもそれって確実にマイナス方面にまっしぐらな気がするからやはり落ち込みそうになる。

 

「どうすればいいんでしょう・・・」

「前から言ってるじゃない。素直に気持ち伝えてみたら?」

 

 お嬢様は簡単に言うけど、それができればこんな苦労はしないのだ。

だけど、それしか方法がないのなら・・・。私は唾をごくりと飲み込み、

椅子から立ち上がった。

 

 

「パチュリー様!」

 

 私が勢いよく入ると、図書館内で読書をしているパチュリー様はビクッと

体を震わせてから、再び本の上に視線を落とす。

 

 それが何だか寂しくて私は失礼を承知で後ろから包み込むように抱きつく。

 

「・・・!」

「パチュリー様、何か気に障ることをしてしまったでしょうか。だとしたら

謝ります・・・」

 

「それはないわ・・・」

 

 本に顔を挟むように沈めるパチュリー様の表情を見たかったけど、

見える隙間がなかった。そしてパチュリー様は言葉を続ける。

 

「最初は本を読んでいればいつもの私に戻れると思ってた」

 

 どこから話が始まってるのかわからず、私はただ黙って見ることしかできずにいた。

私より本の方が好きかもしれないってちょっと寂しかったけど。

 

 そんな私の考えとは違う方向にパチュリー様が話を続ける。

しかも、本で隠しながらも少しだけ肌が見える箇所から紅く染まってるのが見える。

 

「でもいつまで経っても咲夜のことが頭から離れないのよ…。これは何て病気なのかしら」

 

 隠していた書物から顔を上げて私を見るパチュリー様。

 

「あ・・・」

 

 その表情はとても熱っぽく、目が潤んでいた。ここは風邪とかいうオチがつきそう

だけど、手で熱を測ってみたりしたが、特に風邪の症状は見当たらなかった・・・。

 

 意識すればするほど、私も顔が熱くなってしまうではないか。

変に期待しない方がいいってわかってるのに、胸の音が煩い。

 

「それは・・・」

 

 私は決心をして告白をしようとすると、パチュリー様は私の額に御自分の額を

擦るように合わせて来た。パチュリー様の体温が私の心臓の音を更に早める。

 

「咲夜も赤くなって・・・私のがうつってしまったかしら?」

「パチュリー様・・・それは恋っていう気持ちじゃないでしょうか・・・」

 

 私は言葉が喉に引っかかって出なかったのを、搾り出すようにしてようやく

口に出した。それにきょとんとした顔をして私を見つめるパチュリー様。

 

 やはり、呆れられてしまっただろうか。つい手に力を込めてしまう緊張感が漂う。

 

「流石、咲夜ね」

「え・・・?」

 

「私がずっと気になっていたことをスラッと答えてしまうのだから」

「パチュリーさま・・・それって・・・んんっ・・・」

 

 私の疑問の口を塞ぐようにパチュリー様の唇が重なる。

ただ互いの唇を重ねてチュッチュッという音を立てるだけの可愛らしいキス。

 

 それだけでも今の私達の気持ちが興奮するには十分の刺激であった。

そしてパチュリー様は口を離した後、私の胸元にしがみ付いて呟いた。

 

「いつも、お世話ありがとう。とても助かってるわ」

 

 デレてる!めっちゃデレてる!常に瀟洒に振舞う私の気持ちがはちきれん

ばかりに上がっている。こんなパチュリー様は一生の内に見れるかわからない。

 

 はっ、これはもしかして夢なのでは? という疑問から、夢なら早く目が覚めてくれ

と私は願った。だけど、私に触れる感触や匂いがそれが現実のものだと思い知らされる。

 

 夢にまで見ていたことだけど、いざ私の手元にいるとその儚さから怖さまで

感じるようになる。ちょっと乱暴にしたら壊れてしまいそうだったから。

 

「咲夜?」

「いえ、光栄の至りです! これからもパチュリー様の傍に居させてください!」

 

「えぇ、もちろんよ」

 

 あまりにパチュリー様が愛しすぎて私は抱き返す手に力を加えてしまう。

痛そうにしないから大丈夫なのだろう、と。少しホッとした。

 

 

 それから暫くしてお嬢様にからかわれつつ、メイド長としての仕事をがんばり。

その褒美という形で毎日パチュリー様の元へ顔を出しにいっていた。

 

 それはもちろんお茶の時間とは違う時間帯にお邪魔しているのだ。

 

 前の甘々な展開とは打って変わって、終始読書の時間だし。

基本ここでの仕事は小悪魔担当なのだから、よほど手が足りない時じゃないと

手伝わせてもらえない。

 

 ぐぬぬ、このままでは私の株が上げられないではないか。

 

 と、悔しそうにしているのを横目で私を見るパチュリー様。

 

「何だか物足りなさそうね」

「い、いえ。そんなことありません!」

 

「貴女はここに居てくれるだけで落ち着くのよ。もしよかったらお話でも聞かせて?」

「お邪魔になりませんか?」

 

「大丈夫よ」

 

 侵入者とか小悪魔が粗相をした時の方が五月蝿いから。ていうパチュリー様のお言葉が

私のツボに入って笑いを堪えるのが大変だった。

 

「では、一つ」

 

 部屋から滅多に出ないパチュリー様に幻想郷で体験した話をいくつか冒険譚のように

脚色しながら本を開いている姿を前にお聞かせする。

 

 しばらくすると、いつしか私に視線を向けてくれていたパチュリー様。

そして微笑んでいるその表情にドキドキしつつも、まったりとした空気に浸る。

 

 深くまで愛したい気持ちが無いといえば嘘になるけど、私達は奥手でちょっとした

ことで怖がったり、縮こまったりするから。

 

 暫くはこの雰囲気を楽しもうと思えた。

こうやって話をしている時間がとても大切に感じられたから。

私はここでメイドをやっていてよかったと、心から感謝していた。

 

「パチュリー様、大好きです」

「私もよ、咲夜」

 

 こうして長閑に紅魔館の中の時間は過ぎていくのだった。

お終い


 
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