No.53888

当て馬 or 噛ませ犬みたいな人達 ~除け者達の決起~

Zero Pさん

え~、カオスな三作目です(笑
当て馬なあの人や、噛ませ犬なあの人達、出て来れなかったあの二人及び、その他大勢の方々…が登場!!
え~カオスっす。正直脈絡ないっす。
恵まれない境遇な彼らに、祝福があらん事を…!!!(笑

2009-01-24 13:11:11 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:10803   閲覧ユーザー数:8727

『乙女繚乱☆三国志演義』出演者座談会の時の事だった。

主役級や脇役達は宴会を楽しんでいた。中には、自分の物語に不満を漏らしている者も居たが、それなりに楽しそうではあった。

 

が、しかし。その集団の中に混ざれない者達が居た。

 

「………うぅっ!!」

 

その座談会の隅で、一際影が薄いその者達が酒を煽って居た。

 

「今回もか…今回も私はっ!!!あんな役回りかっ!!!んぐっ!!」

 

卓に拳を叩きつける華雄。煽るように酒を飲み下す。

 

「まだ良いじゃないっすか、俺たち初出で悪人っすよ?」

 

五胡の軍勢(2,3人程)が、返す。心なしか、顔に斜線が入っている。

 

「だが!!私は未だ、当て馬の枠から抜けられぬ!!これは呪いか!?」

 

「でも俺たちは噛ませ犬ですよ?しかも、殆ど殺られちゃいましたし」

 

「…五胡の軍勢も大変なのだな…同情するぞ…」

 

「俺たち、華雄さんみたいに一人立ち絵が無いっす。皆、同じっす。所詮雑魚の群れっす」

 

「すまん…。私は贅沢を言い過ぎているのかもな…」

 

自分達よりも境遇が悲惨な五胡の兵士達に頭を下げる華雄。

 

「いえ、分かって頂ければ十分っすよ…」

 

涙ぐむ五胡の兵士達。余計哀れに思えてくる。

 

「だがっ!!真名の件は許せんぞ!!なぜ、公孫賛には付けたのに、私には無いんだ!?」

 

かゆうはほえた!!

 

「………ネタ切れ?」

 

ごこはいってはいけないことをいってしまった!!

 

「ちくしょー!!グレテヤルー!!」

 

かゆうはせきをたって、はしりさった!!!だれもいないへやのすみで、たいいくずわりをした!!!

 

「あ、いじけちゃった」

 

「…もしも俺達の仲間にも女が居たら、俺達の存在って、こう…何か変わったかなぁ…?」

 

「いや、論外だろ?」

 

「だよなぁ…」

 

残った兵士達で、座談会の中心をじっと見つめていた。ふと兵士の一人が、

 

「でも!!南蛮は!?」

 

同じ蛮族なのにえこひいきはおかしいと言う。もう一人の兵士は、

 

「孟獲、女の子じゃん…」

 

「あっ…」

 

直球だった。居た堪れなくなった。

 

「南蛮兵、量産型含め全て女の子じゃん…」

 

撃沈。悲しみにくれる五胡の兵士達。

 

「やっぱり所詮、噛ませ犬がお似合いなのか…?」

 

そんな時だった。じっと黙っていた兵士が、ポンと手を打った。

 

「お、名案が浮かんだぞ?」

 

「何々?」

 

近寄ってくる兵士達。

 

「華雄さんを五胡の総司令官にするってのはどうだ!?」

 

「おおっ!!!それ良いかもしれない!!!かゆーさーん!!!」

 

部屋の隅でいじけていた華雄に、兵士の一人が大声で呼びかけた。

 

「…どうせ私は影薄いよ、突撃しか能無いよ、人気だって………ん?」

 

それに気付いた華雄は、えぐえぐ涙を流しながら五胡の兵士のほうを向いた。

 

「華雄さん!!いえ、華雄様!!」

 

「ど、どうしたんだ!?」

 

途端の『様』付けにびびる華雄。

 

「我ら五胡の軍勢の、全ての部族の長になってはくれないだろうか!?」

 

「な、なにー!?」

 

シェーのポーズをとる華雄。説明を続ける五胡。

 

「そうすれば、お互い、出番が増えると思うんですよ!!」

 

「なるほど…五胡編が出来上がる寸法だな…!!」

 

やる気が出てきた華雄。もう一押しの五胡。

 

「俺等を除け者にした、連中に仕返ししてやりましょうよ!!」

 

「そ、そうだな!!人気に胡坐を掻いて私達を除け者にした連中に天誅を下そうぞっ!!!」

 

決意の華雄。諸手を挙げる五胡。

 

「さすがです!!華雄様!!」

 

「だが、流石に『様』は照れる物がある…。此処は華雄将軍と呼んではくれないか?」

 

もはやノリノリである。こっちもノリノリである。

 

「はい!!将軍!!」

 

「おぉ…何だか、希望に満ち溢れて来て気がしたぞ…!!!一旗揚げて、我等の人気の確立を果たそうではないかっ!!!」

 

拳を高々と掲げる華雄。同意する五胡の兵たち。

 

「おぉー!!!!」

 

彼女達のスペースから初めて、笑い声と雄叫びが聞こえてきた。

だが、彼女達は知らない。どこまで行ってもやられ役は、所詮やられ役なのである…。

 

合掌。

   

その様子を天井から見ていた于吉と左慈。

 

「と本人達は盛り上がっているみたいですが、どうします?左慈」

 

「…知らん。と言うか…何故俺に振る、何故俺が此処に居る!!」

 

面倒くさそうにそして、怒りを混ぜながら返事を返す、左慈。

 

「ふふっ…何となくです…。…ぐはっ!?」

 

ニッコリ笑顔で左慈にそう答えた瞬間、顔面にストレートが決まった。

 

「顔が近い」

 

「一尺も離れているのに…」

 

いじけて、のの字を書く于吉。

 

「距離の問題じゃない、倫理の問題だ。それに一尺は近いだろうが」

 

「まあそれは置いておき」

 

「置くのか」

 

「外史が紡がれかねません」

 

途端に真面目な顔して問いかける于吉。

 

「動いたら潰す。それで良いだろ?」

 

興味が無いように当たり前の事を言う左慈。その答えに満足したのか、于吉はその場から立ち去ろうとした。

 

「それでこそ貴方だ。では、暫しの休息を…」

 

「おう、気をつけろよ」

 

「心配していただけるのですか?」

 

「…黙れ」

 

「左慈の照れん坊…」

 

「今直ぐ棺桶に行くか?」

 

拳に力を入れる左慈。

 

「遠慮しておきます」

 

ニッコリ笑い、スッと消える于吉。

 

「…ったく。…にしても、華雄。お前には同情する…」

 

と、華雄に哀れみを覚えた時、唐突に気がついた。

 

「…!?今更だが、俺等って今回、出番無いよな!?」

 

「そうです」

 

ワラワラと湧いてきた白装束の集団。

 

「傀儡達…」

 

「前回はあんなに頑張ったのに、もう影も無い」

 

顔がかなり隠れているので、表情は読み取れないが、悲愴感が漂っていた。

 

「…すまん…。俺が言うのはアレだが…、その内きっと、良い事有るぜ…」

 

頷く白装束達。それを哀愁漂う目で見つめる、左慈。

出番無き者達に新たなる外史の突端が開かれる事を切に願うばかりである。

 

はい、二回目の合掌。

 

~完…?~

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
29
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択