「はあっ!!」
槍を片手に集団訓練に勤しむ集団がある。
「そこ、もっと腰を落とせ!! 相手を一撃で粉砕しろ!!」
そこで声を上げて入るのは劉備軍が一の家臣である関雲長将軍である。
艶やかな髪、可憐な顔。しかしそれだけではなく豪傑さ、智謀を兼ねそろえた将軍だ。
「よし、今日はここまでだ。皆、よくがんばったな。調練の後はしっかりと各自で体を休めるように」
さて、ここに一人、関将軍に思いを募らせる若者がいた。
彼は黄匪に家族を殺され、劉備軍に保護された。以来、恩のある劉備軍を父のように慕い、兵卒となって
からは、関将軍の隊に配属された。
それからと言うもの、彼はすべてを関羽に捧げるかのごとく、彼女のことを慕っていた。
彼は鍛錬を怠らない。毎日、槍を片手に指導を思い出しながら、鍛錬をする。
その成果であろうか、彼はめきめきと頭角を現してきた。
つい先日までは何もできない人民であった彼であったが、今では関羽隊では一、二を争う猛者になっていた。
彼の努力は、愛紗の目に留まった。
ある日、愛紗は彼に声をかけた。
「よく頑張っているな。お前は私の部下でも数少ない精鋭の一人だ。これからも、私たち……ご主人様たちに力を貸してくれ」
これには彼は意気込んだ。
―もっと強くなりたい……関羽将軍の力になりたい。
彼の強さはさらに増していった。その強さは、もはや他の隊の精鋭でも手も足も出ないほどであった。
ある日、彼は巡察で郊外へ出ていた。
森の方だ。
そこには見慣れた姿があった。
―関羽将軍だ。
彼は声をかけようとしたその時、一人の青年の姿を同時に捉えた。
その青年こそ、彼の主人である北郷一刀である。
彼はその光景をじっと見ていた。
羨ましそうに。
それを見ていたとき、北郷一刀は関羽と接吻を交わした。
彼は固まった。
前々からうわさはあった。
しかし、彼は信じなかった。いや、信じたくはなかった。
愛紗は彼のことを好きというよりは、戦友として見ていた。
しかし一刀に対しては、好意の目で見ていたのは判っていた。
彼はいたたまれなくなり、その場を逃げ出した。
あの光景を目撃してから数日が経った。
彼は関羽将軍に呼び出された。
呼び出されて、関羽の顔を見たとき、彼の背中には冷たい汗が流れ、同時にあの光景を思い出した。
「なに、緊張するな。実はな、私たち将軍たちは副官を自分の隊から一人ずつ決めようと前々からいっていてな、
そこで、私はお前を推薦したい。どうだ?私の副官になってくれないか?」
思わず驚いた。自分が関羽将軍の右腕となれると思うと即座にうなずいた。
「そうか、いやお前なら承諾してくれると信じていたよ。明日、就任式がある。ご主人様から任命状が与えられるからな」
翌日、彼は玉座の前にいた。
彼のほかにも数名の副官に任命される者がいた。全員腕に覚えのあるものばかりだ。
次々と任命されていき、彼の番になった。
「今後も、俺たちに力を貸してくれ」
偏屈なく笑顔を見せる北郷一刀に彼は思わずたじろいだ。
しかし彼はこう言った。
「ありがとうございます。私の命は皆様方に捧げましょう。しかし、一刀様、私は貴方には負けません。
必ず、関羽将軍を振り向かせてみせます」
彼はそういうと、玉座の間を退出した。
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愛紗に恋する兵士を書いてみました。
読みにくいと思いますがご了承を。