EP8 月乃刻と英雄の妹
昨日は明日奈さんと眠っている和人さんの対面があったっす。
結果は成功で明日奈さんも喜んでくれた。
そして翌日である今日、ボク達『神霆流』の面々はリハビリに励んでいるっす……。
「し、死ぬっす…」
「き、きつい、ね…」
「さすがに、な…」
「……まったく、だ…」
「あ~、だるい…」
ボクの言葉を皮切りに、烈君(烈弥)、志郎さん、景一さん、公輝さんも言葉にしていく。
ボク達の現在のリハビリメニューとは、とにかく体力をつけて筋肉を戻すことを中心に組まれている。
早い話しが師匠からの御達しなんすけどね…。
ようやく日常生活レベルに戻せた体調なのにリハビリメニューに筋トレとか普通はありえないっすよ!
まぁ、できるだけ早く2年間というブランクを取り戻したいんすけどね~。
休憩をしてから、ボク達はもう一度リハビリに取り組んだっす…。
「風が気持ち良いっすね~…」
トレーニングもといリハビリが終わって、汗を拭いて着替えたボクは病院の中庭にあるベンチに座っている。
すると、突然目の前が真っ暗になったっす。
「だ~れだ?」
聞き慣れた女の子の声、後頭部には柔らかな感触……最近彼女のスキンシップが過激になった気がしてきたっす。
とりあえず、彼女の名前を当てておこう。
「スグっすね」
「正解で~す」
手で目隠しをしてきたのは、和人さんの妹である桐ヶ谷直葉……ボクが想いを寄せている女の子。
彼女への気持ちに気付いたのはSAOに囚われていた頃だった。
なんてことはない…離れて、死ぬかもしれないという状況になってようやく気付いた、それだけっす。
だからこそ、いま近くにいる彼女を守れるようになる為に力を一刻も早く取り戻したいんだ。
そんな風に考え込んでいると、スグは笑顔のままボクの隣に座ったっす。
「寒くないの? 風吹いてるよ?」
「リハビリメニューが終わった後だから、体が火照っているんすよ」
そう言ったスグにボクは答えた。彼女はボクにピッタリと寄り添うように座っている。
うん、やっぱりスキンシップが…いや、
ボクは気付いている、彼女がボクに想いを寄せてくれていることに。
だけどボクは自分の想いを伝えるわけにはいかないし、スグが気持ちを伝えてきたとしても、答えることは出来ない。
なんせボク達の『SAO事件』はまだ終わっていないから、和人さんが目覚めた時、初めてボクは次へと進めるんす。
「どうしたの? 刻君」
「ちょっとした考え事っす、大丈夫っすよ」
いけない、いけない。考えすぎてスグに心配を掛けたら元も子もないっすね。
このことはもう少しあとで考えよう。
「あ、お守り付けてくれてるんだ」
「そうっす、折角スグがくれたんだし、ご利益あるはずっすからね」
クリスマスであった昨日、ボクはスグからプレゼントを貰った。
お守りだった、彼女はクリスマスプレゼントらしくないと言ったけれど、『健康祈願』のお守りは嬉しかったっす。
「お兄ちゃん、喜んでくれたかなぁ?」
「和人さんが喜ばないはずがないっすよ」
スグは和人さんにもお守りを買っていた、早く目覚めてくれるように、と…。
和人さんと彼女は本当の兄妹ではない、数日前に初めて知ったことだった。
ボクだけじゃなくて、志郎さん達も知らなかったそうっす。
スグがそれを知ったのも、ボク達がSAOに囚われてからということだったけど、
和人さんは10歳の時に既に知っていたそうっす。
住基ネットの抹消記録に気が付いたという、相変わらずおそろしい人だと思ったっす。
でも、その和人さんが目を覚まさない……駄目っすね~、不安がってちゃ…。
明日奈さんも頑張っているっていうのに。
「よし!」
「どうしたの?」
ボクが意気込んでベンチから立ち上がったから、スグは不思議そうにしている。
「ジッとしているのは、何かを作っている時以外は性に合わないから、病院の中散歩してくるっす」
「それじゃ、あたしもいくよ」
「ん、一緒に行くっすか」
スグも立ち上がるとボクの手を握ってきた。
「スグ?」
「ほら、いこ」
笑顔のままスグは隣に立っている。ボクは心が温かくなるのを感じて、笑みを浮かべた。
そしてボク達は歩き出した。
和人さん、貴方がボクにスグを任せたいというのなら、早く目覚めてもらわないと。
ボクの時間も、和人さんとスグの時間も進みませんっすよ。
でも、ボクがスグを守るということに変わりはないんすけどね…。
刻Side Out
To be continued……
後書きです。
はい、え~・・・ルナリオとリーファでした。
一応これで再会編は終わりです、クラインとカノンは本編中での再会なのでご容赦くださいね。
予告としておきますが、次回は明日奈と直葉の2人での会話になります。
2人が和人のことについて話します。
それでは次回で・・・。
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EP8です。
今回はルナリオとリーファのお話しですが、短めです。
それでは、どうぞ・・・。