冬休みまでカウントダウン。授業は午前中で終わるようになって、学校の中もなんとなくクリスマスへ向けて浮かれた空気が漂い始める。ホームルームが終わると、教室の中でも遠慮がちな甘酸っぱい空気を漂わせる男女がちらほらする。俺の友人たちも例外ではない。
上野の隣で小柄な八代さんが肩を軽くすくめて、無邪気に笑う。文句なくかわいらしい。
「上野め…。爆発しろ」
教室のどこかから、上野の爆発を祈る言葉がささげられる。邪悪なオーラに目をそらす。窓際で、ふんわりと柔らかい笑みを浮かべた東雲さんが、ふっくらとした胸を机に乗せて橋本の話を聞いている。机の上の橋本の小指に、軽く東雲さんの人差し指が近づいて、少し触れて、また離れる。
「…橋本…爆発…しろ」
別の声が、橋本の爆発を切に願う。
かけがえのない高校時代の一ページと、切ないリア充爆発の願いが教室を満たしていく。愛と殺意の教室だ。
「二宮」
「どうした?三島」
「ん…と…ちょっと…いいかしら?」
たぶん殺意の方だ。
「まだ死にたくないし、爆発を願われる状態にもいない」
「なにを言ってるの?」
「殺さないのか?」
「死にたいの?」
「死にたくありません」
「殺してくれと泣いて頼むようにしてもいいんだけど?いいから、ちょっと来て」
きしゃあ。ヴェロキラプトルのいななきを聞いた気がする。教室を惨劇の現場にしないために、おとなしく三島について行く。
三島は、俺を連れて屋上に向かう。階段の段数を数える。十四段だった。十三段じゃない。
「寒いから、ここでいいわ」
屋上に出る手前。階段の踊り場で三島が止まる。こちらを振り向く。そういえば、今日はいつもの三つ編みをほどいて後ろに下ろしている。よく見ると、白い三島の頬にうっすらと紅がさしている。上気しているのかと思ったが違う。チークでも軽く塗っているのか。こいつも化粧なんてすることもあるんだな。
そんな風に三島をじっくりと観察してしまう。なにせ、三島がただ黙って足元を見ているだけだからだ。俺もだまって三島を見ているしかない。
「あ、あの…ね…」
三島が、目を上げてようやく口を開く。
ぱくぱく。
そのまま、何度か池の鯉みたいに唇を動かして、また下を向く。
なんなんだよ。
三島の髪の分け目を見る。真っ黒でつやつやの髪。軽く天然のウェーブがかかっている。美沙ちゃんや真奈美さんの、細くて真っ黒な髪より腰のある髪だ。顔の形も悪くないし、こいつも本来なら、愛情グループにいるはずなんじゃなかろうか。けっして爆発祈念グループではない気がする。この距離では見えないが、スカートから伸びる脚は、フェチにはたまらないラインも持っている。
いかん。三島を至近距離で観察し続けていると、変な気持ちになりかねない。
つっと視線をそらす。
「ひぎゃっ!?」
変な声を出してしまった。階段の下に美沙ちゃんが仁王立ちしていた。形のいい両足をそろえて、両手を腰の下にぴったりとつけて、拳を握り締めて立っている。無言で、表情を消して、瞬きもせずこっちを見つめている。
「二宮?…ひっ!」
あの三島が、小さな悲鳴をあげる。そのくらいの迫力は十分にある。
十二月の階段で、じっとりと汗がにじむ。
なに?俺、なんか美沙ちゃんに怒られるようなことをしているかな。
まさか三島と一緒にいるというだけで、駄目なのか?そんな馬鹿な。クラスメイトだぞ、それを許可してもらわないと授業も受けられない。というか、それはもう共学校が無理なんじゃなかろうか。
どきんっ。
美沙ちゃんが、階段の一段目に足をかけた。瞬きもせず、無言で階段を一段一段踏みしめる。
目の前。美沙ちゃんの胸が俺にぶつかる寸前まで、音を立てずに切迫する。左手首を掴まれる。強い力ではないけれど、けっして逃れられないひんやりとした指。三島と俺の間に割り込むように俺を押しやる。俺は、引き立てるようにして階段を降ろされる。
「ちょ、ちょっと待って美沙ちゃん」
「待ちません」
氷のような断言だ。
階段を降りて、玄関へ行くと真奈美さんと妹が待っていた。妹が、自分のカバンと一緒に俺のカバンを持ち、足元に美沙ちゃんのカバンが置いてある。
妹の表情は凍っている。真奈美さんの表情は前髪の下だ。
妹からカバンを受け取って、四人で駅へ向かう。
「ねっ。お兄さん」
美沙ちゃんが、軽くスキップするように俺を追い抜くと、くるりと振り返る。後ろ向きに歩きながら、悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「な、なに?」
俺の動揺は美沙ちゃんの溢れる可愛さゆえか、恐怖ゆえか。
「携帯、見せてください」
やわらかな笑み。目だけ笑ってない。操られるようにポケットから携帯電話を取り出し、渡していた。
駅に着く。
プラットホームで四人並んで電車を待つ。妹、真奈美さん、俺、美沙ちゃんの順。
美沙ちゃんが、ついっと身体を寄せてくる。
「わっ…」
そのかすかな感触に、左腕がしびれる。ふふっと悪戯っぽい笑い声が耳をくすぐる。
「えいっ!」
首を抱えられて、えいやとばかりに引き寄せられる。肩に柔らで確かな弾力が押し当てられ、頬に美沙ちゃんの頬が当たる。
ぱしゃっ。
一瞬のことだった。ふわりとした香りを残して美沙ちゃんが、元の距離にもどる。
「はい。今日のプレゼントです。あとで私にもメールで送ってくださいね」
美沙ちゃんの手から、渡された俺の携帯には美沙ちゃんが俺にしがみつく自画撮りが写っていた。俺の顔は、間抜け面と言うほかないが、美沙ちゃんの可愛さは鉄板だ。コートの下のふくらみが俺の肩の後ろで変形している。うちの学校の男子に見られたら、爆発が願いではなく能動的な行動になりかねない。爆殺される。
しばしぼーっとしてしまう。
「絶対、私にもメールで送ってくださいね」
「あ…ああ…今、送るよ」
「だめです」
「え?」
「家に帰って、夜に送ってください」
「あ、うん。いいけど…なんで?今じゃだめなの?」
「だって寝る前に、お兄さんからメールが届いたら嬉しいじゃないですか」
ぐはあっ。
はにかんでそんなことを言うなんてずるい。破壊力ありすぎだ。やっぱ、もう美沙ちゃんと付き合うべきかも。いたたまれなくなって、目をそらす。目をそらした先では、前髪の間から魔眼がじーっとこちらを見ていた。
真奈美さん…。
じー。
視線を上に向ける。猫背で縮んだ身長の真奈美さんを飛び越えて、妹を見る。
「そ、そうだ。真菜…お、お前、クリスマスにケーキ屋でバイトしないか?」
「白々しいっす…」
そうだった。昨日の例の会話も美沙ちゃんに聞かれていたんだった。盗聴器で…。
美沙ちゃんのほうを見る。
「お兄さん。私と真菜にケーキ屋さんのミニスカサンタの衣装着せたいんですか?」
「着せたい」
きっぱり言える。美沙ちゃんのミニスカサンタ見たい。正直な、俺のそのままの心。偽る必要はない。
「にーくん、私と美沙っちのミニスカサンタの衣装脱がせたいんすか?」
「ぬが…」
あぶねぇ。妹の計略にひっかかるところだった。正直な、俺のそのままの心。偽らなければいけないこともある。
「中に水着着てなら、脱がせてもいいですよ」
「まじでッ!?」
ふんがーっ!!頭蓋骨の内側で、毛細血管がはじけ飛ぶ音が聞こえた気がした。
「にーくんがそんなに次の電車に飛び込みたいとは知らなかったっす」
「ごめんなさい」
冗談と本気の濃度が五十パーセントを割った妹の声音に我に返る。だめだ。俺はだめなやつだ。ご覧の通りだ。俺の意志が豆腐とするなら、美沙ちゃんの可愛さは三連装四十六サンチ砲だ。爆風だけで消し飛ぶ。
「中、水着ですよ?水着と変わらないと思うけど…」
美沙ちゃんが怪訝な顔をする。威力がわかっていない。
「美沙っちは男の兄妹がいないから、今の破壊力がわかっていないっす」
妹が訂正する。さすがにわかってるな。こいつ。
「そうなの?」
「そうっす!」
「ふーん…。でも、どちらにしても、その日は私バイトなんてできないから」
「なにか、予定があるっすか?」
「お兄さんとデートだもん」
俺は、そんな予定は立ててない。
「ほら」
美沙ちゃんが妹に手帳を見せる。なるほど、美沙ちゃんは毎日予定がぎっしりだ。全部、俺とのデートだ。二十四日には俺とクリスマスイルミネーションを見る予定になっているし、三十一日は俺と夜中からニューイヤーカウントダウンに行くことになっている。不思議なことに俺の手帳は真っ白だ。いつのまにこんなに予定が入っちゃったんだろうか。
「俺、今日美沙ちゃんと買い物行くの?」
「お兄さんは、このあと私とルミネに行きます」
そうだったのか。知らなかった。
「昨日はお兄さんとスカイツリーのライトアップ見に行くはずだったのに、キャンセルになっちゃったからなぁ…」
何度も重ねたバツ印で消された昨日の予定を見て、美沙ちゃんが残念そうにつぶやく。そんな予定があったとは知らなかった。
「一昨日だって、二人で羽田に行って、夜の空港を見る予定だったのになぁ…知ってました?夜の空港ってすっごいきれいなんですよ!」
一昨日の予定にもバツ印がついている。よほど残念だったのか、何度もバツ印を書きなぞって、少し手帳の紙が破けている。
「一昨昨日は、一緒に図書館に行くはずだったし、その前の水族館だって行けなかったし、その前の日の美術展も行けなかったなぁ」
美沙ちゃんのつぶやきに、冷たいものが背中を伝う…。
「じゃ、じゃあ、わ、私も一緒にルミネ行くっすよ」
昨日渡した『なんでも言うことを聞く券』は妹の受け取るべき当然の報酬だった。本当にありがとう。妹よ。お前の卓越した努力にはいつも感謝しているよ。
「真奈美さんも、一緒に行く?」
控えめに真奈美さんに尋ねる。
ふるふるっ。
「ルミネは人がいっぱいいるもんね…」
こっくり。
今度、また真奈美さんの部屋に遊びに行くことにしよう。
「えー。真菜、お邪魔虫ぃー」
「美沙っちの身の安全のためっすよー」
真奈美さんを市瀬家に送り届けて、美沙ちゃん、俺、妹の三人でルミネに向かう。
ルミネでの美沙ちゃんの浮かれっぷりは、見ているだけで心が痛むほどだった。可愛いし。ぱぁっと花が咲いたような笑顔を振りまいて、つぎつぎにいろんな服を合わせてみては、俺の感想を求める。
「美沙っち、その服は戦闘力が低いっす!」
そして、妹がずれた視点で評価する。
「真菜?戦闘力ってなに?」
「戦闘力の高い服ってなんだよ?」
美沙ちゃんと俺が十字砲火で突っ込む。
「ああいうの」
妹は通りすがりの男性を指差す。鋲のついた革ジャンを着用した身長百九十センチ+トサカ三十センチ+唇ピアスの男性だ。指差すな!バカ!妹の人差し指を掴んで引き下ろす。たしかに、あの人は戦闘力高そうだよ!
「わかったから、指差すな。あと美沙ちゃんは、戦闘力で服を選ばない」
「じゃあ、なにで選んでるっすか?」
「そりゃ、女子力だろ」
「ううん。お兄さんへのアピール力」
「にーくんにアピールする服なら、ルミネじゃないっすよ」
「どこ?」
「どこだ?」
「秋葉原駅前、エム…ぎゃひぃいいいい」
妹の頭を拳で挟んで、ぐりぐりと攻撃する。
こ、の、ば、か、や、ろ、お。
今の美沙ちゃんにそんなことを言ったら、本当に秋葉原駅前大人のデパートエムズに服を買いに行っちゃうだろうが。いろんな意味で危ないぞ。
「そうだ。いいこと思いついた」
「なぁに?」
小さく首を傾げて、やわらかく微笑む。美沙ちゃん、可愛いなぁ…。
「美沙ちゃん、こいつに女の子の服の選び方を教えてやってくれ!」
「大丈夫かなぁ…。実は、真菜には何度も可愛い格好させようとクラスのみんなで頑張ったんですよね」
ああ、そういえば、こいつ学校の友達が行くパステルカラーのお店になじめないと言っていたな。
「にーくん。私に、女子力高い格好をさせたいっすか?」
妹が、頭だけ後ろにのけぞらせて聞いてくる。
「つーか。俺は、お前の服のチョイスがなんでそんなに残念なことになっているのか、理由が知りたい。ちょっと、服を選んでみろ。買わなくていいから」
「わかったっす」
妹は、つかつかと歩き出すとエスカレーターへ直行する。向かうフロアは登山用具の店だ。不穏なものを感じるが、とりあえず妹の行動を見守る。
「アンダーウェアを見るっす」
「ここで?」
美沙ちゃんが、眉根を寄せる。迷いなく向かう先には確かに、アンダーウェアと表示が出ている。
「見るっす。こういうのがいいっす」
「真菜。これ、可愛くない」
「モンベルのジオライトエクスペディションは、最高の保温力と速乾性っす。最強」
「…女子力、最低だ。零点」
妹は、心底不満げな表情を見せる。
「じゃあ、次は冬のアウターを見るっす」
つかつかと移動する。あくまで登山用具店で服を見るのか、お前は…。
「これがいいっす。このパーカーがいいっす」
「もう少し選べよ」
女の子が服を選ぶって、そうじゃないだろう。
「選んだっす。緑とオレンジで、オレンジ色を選んだっす」
「なんで、オレンジ色なんだ?」
「遭難したときに見つけてもらいやすいし、夜中でも目立つから事故にあうリスクが減るっす」
非の打ち所のない理由だが、女の子的には一つも正しくない。
「これ、欲しいっすー。ゴアテックス・ファブリクスのスリーレイヤーで、重量四百グラムしかないっすしー。ほら、雪と雨が混じる天候にも対応できるって書いてあるっすよ」
「四万円も出したら、ぜったい可愛いコート買えるよ。真菜」
「こっちの方が、ぜったいサバイバビリティ上がるっすよ」
美沙ちゃんと妹の価値観は、金星人と火星人くらい違う。
「…これも、だめっすかねー」
「だめだな」
「だめね」
妹は、地球の文化に親しめない火星人の表情をする。
「じゃあ、靴…」
「まて」
「真菜。もう分かった」
ダスカパスオムニテックに羨望の眼差しを向ける妹の手を取って、エスカレーターを降りる。そして、また婦人服フロアにもどる。
「意味わかんないっす」
「なんで!?ぜったい真菜に似合うよ。かわいいってばっ!」
美沙ちゃんが薄いショールをすすめて、妹が理解できていない。
「風が吹いたら邪魔っすし、自動ドアに挟まったりして危険っすし、ひらひらしてたら混んだ電車で迷惑かもしれないっす。どうせならあっちがいいっす」
指差す先は、フリースのネックウォーマーだ。
「真菜、そんな服ばっかり着てたら、彼氏ができたときにガッカリされるよ。ぜったいやばいって!制服着てるときはモテるんだから、真菜はどう見ても着るものが悪いんだよ」
妹、やっぱりモテるのか?まじか?
「こいつ、モテるの?」
「真菜は超モテますよ」
「美沙ちゃんと一緒にいるから、美沙ちゃんがモテてるんじゃなくて?」
「私も、モテますけど、真菜もモテますよ」
「今年の一年は、そんなにロリコンが多いのか。やばいな」
妹が守備範囲と言うことは、小学校高学年がストライクゾーンということだ。おまわりさんはどこだ。
「にーくん。私を取られると思って、心配してるっすか?」
「真菜、実妹じゃない。変なこと言わないで」
「世の中に、どれだけ妹とつきあう漫画があると思ってるっすか。普通の恋愛ものより、多いっすよ。たぶん」
美沙ちゃんの目からハイライトが消える。
「……」
「ふぃ、フィクションの世界だけっすけどね」
「あ、当たり前だろ。ああいうのは、リアル妹のいない奴のファンタジーだ。フィクションの妹というのは、妖精とかの幻獣と同じくらいの想像上の生き物だ」
「……」
まずい。妹とアイコンタクトを交わす。
(なにしてくれちゃうんだ。ばか。美沙ちゃんの目にハイライトがもどって来ないぞ)
(にーくん。私、まだ死にたくないっす)
妹が目にも止まらぬ速度で俺の手首を鷲づかみにして、実行する。むにっ。妹の手に導かれるままに美沙ちゃんの胸に俺の手が特攻した。
「ひゃっ!」
「にーくん、やめるっす!」
なんだとぉ?!いつの間に妹が俺の手首を掴んで、制止しているみたいな状況になってんの?!
ばっ。
慌てて、妹の手を振り払って美沙ちゃんの胸から手を引き剥がす。
「ご、ごめん!」
美沙ちゃんに謝る。美沙ちゃんの白い頬は真っ赤に染まっている。
「もー。にーくんは、おっぱい星人だから困るっすー。にーくんにとって、女の子イコールおっぱいっすからねー」
棒読みだ。
「そ、そうなの?」
「そうっすよー」
「そうなんだ。じゃあ、真菜はまだまだ子供なのかな…。お兄さんから見たら…」
そうか。理解した。この流れで鎮火しないと、妹が死ぬのか。
「当たり前だ。こいつ、第二性徴来てないだろ。どう見ても」
「ぐっ…」
コンプレックスに狙いを定めた波状攻撃に妹が涙目だ。お前が始めた回避運動だからな。
「ふーん。そうなんだ。じゃあ、お兄さん。やっぱり、私みたいなスタイルの方が好きなんですよね。よかったぁ…真菜みたいなスレンダーなタイプが好きだったらダイエットしなくちゃって思ってました」
きらきらー。きらめき粒子が美沙ちゃんの周囲に飛び交うエフェクトつきで美沙ちゃんが微笑む。かわいすぎる。あと、美沙ちゃんだって十分すぎるくらいスレンダーだ。真菜は痩せすぎだ。骨と皮だけじゃないか。
「く、くそぉ。美沙っちの方が年下のくせに」
「同い年だろ」
「美沙っちは、三月生まれっすから、まだ十五っす」
「まじで?」
「うん。そうですよ」
十五歳で、Dカップ?けしからんすぎるだろう。
「普通は名前で分かるっす」
「わかんねーよ」
「わかるっすよー。三月三日生まれで、ミサって名前にしたって推理できるっす」
「うわ。真菜すごい。なんで分かるの?」
市瀬家のダンディなお父様と美人なお母様は、外見にそぐわず適当な人だ。
「簡単な推理っすよ。ワトソンくん」
そんな簡単な推理で当たってしまう市瀬夫妻のネーミングセンスが単純すぎるだけだ。ドヤ顔するな。
「真奈美さんは、何月生まれなんだ?」
「お姉ちゃんは、四月三日…」
そうか、美沙ちゃんとはほとんど二年ちがうんだな。
「そんなことより、真菜のファッションセンスだよ!」
「そうだ。お前、たまにはジーパン以外履け!」
「毎日、制服のスカート履いてるっす!」
「あたりまえだ!」
「あたりまえでしょ!」
家にもどると、妹の部屋の床と瓦礫が除去されていた。いよいよ修復が始まった様子だ。早く直ってくれ。
(つづく)
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妄想劇場49話目。つなぎの回。
最初から読まれる場合は、こちらから↓
(第一話) http://www.tinami.com/view/402411
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