No.536189

真・恋姫無双 三人の天の御遣い 第二章『三爸爸†無双』 其の十七

雷起さん


得票数18の凪のお話です。
懐妊発覚時のお話+おまけとなります。
沙和と真桜は今回出番が有りませんw
凪の北郷隊以外の人たちとの交流を書いてみました。

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2013-01-26 04:34:49 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:3899   閲覧ユーザー数:3101

第二章  『三爸爸†無双』 其の十七

 

 

本城 医務室          (時報:桂花 一人目妊娠九ヶ月)

【凪turn】

「華佗先生!私に懐妊確認の技を教えて下さいっ!」

 私は頭を下げた姿勢で華佗先生の返事を待つ。

 私がこの事を決意したのは、戦や街の警備以外でも隊長たちのお役に立ちたいと思ったからだ。この技を覚えれば華佗先生が街の人たちの病気を治す時間も増える筈。

 決して真桜と沙和が言ったからとか、隊長たちが『凪は氣が扱えるから修行したら華佗みたいな事が出来るんじゃないか?』と仰ったからではない!

 い、いや・・・・・隊長たちに褒めてもらいたいとは・・・・・少しは思うけど・・・。

 ち、ちなみに自分の懐妊を少しでも早く知りたいからとかそんな理由でも・・・・・・・・な、無いぞ・・・。

「ふむ・・・・・そうだな。楽進、君は氣弾を放つ修行をしてきたから判ると思うが・・・単純な修行の反復を長く続ける事になる。覚悟は出来ているか?」

「はい!もとより承知の上です!!」

 私の拳法も、隊長から教えて頂いた鉄山靠も、ひたすら反復練習を繰り返す事で会得したものだ。

「よし分かったっ!君にはこの技!伝授しようっ!!」

「はいっ!ありがとうございますっ!華佗老師!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 ?・・・あれ?どうしたんだろう・・・・・熱かった華佗老師の氣が急に弱く・・・・・。

「・・・楽進・・・・・俺のことは『師匠』と呼んでくれ・・・・・」

「はぁ・・・普通、教えを頂く方には年齢を問わず『老師』とお呼びするものですが・・・・・華佗老師がそう・・・」

「うっ!!」

「・・・華佗師匠がそう仰るのなら、そうお呼びします・・・・・」

「(だ、大丈夫だよな俺・・・・・まだ若いよな・・・・・)」

 ・・・・・・・・・・今のは聞こえなかった事にしておこう。

 

 

「さて、気を取り直して、先ずは講義からしておこう。」

「はいっ!師匠っ!」

 私は椅子に座り背筋を伸ばして意識を集中した。

「胎児の氣を探る。この技は敵の気配を察知するものと基本は同じなんだ。でも楽進程の氣を操れる技を持っていても出来ない。更に孫策さんや夏侯惇の様な氣を察知する天才にも出来ていない。」

「そ、そうですね・・・春蘭様は私の技を見ただけで真似をして、更に工夫までされていたのに・・・」

 あの天下一品武闘会で七星餓狼を即興で大きくしてみせられたのには本当に驚いた。

「実はあの二人にもこの技を教えて欲しいと言われた事があるが、断った。妊娠初期の胎児の氣は非常に弱く小さい。その為強い氣を当てられると胎児が死亡してしまうからだ。」

「・・・・春蘭様なら華佗師匠の技を見ただけで真似をしてしまいそうですが・・・・・」

 春蘭様ならきっと出来るだろう・・・・・でも、ついうっかりで・・・・・・有り得る!スゴイ簡単に想像できてしまう!!

「そこは曹操にも頼んで、夏侯惇が胎児の氣を探ろうとしないよう注意してもらった。孫策さんは俺の言った事をすぐ理解してくれたから大丈夫だ。」

 成程・・・春蘭様も華琳様の言い付けなら絶対に守るだろうし、雪蓮様は絶対にそんな危険を犯さない。

「さて、今ので妊娠初期の胎児の氣が読めない理由が解るんじゃないか?」

「氣が弱くて小さい・・・・・母親の氣の強さに紛れて普通には察知出来ないからですね。」

「正解だ。武将達はみんな敵の氣を察知する事に長けているが、飽くまでも『敵』だ。基本的には殺気を感じ取る訳だ。暗殺者なんかが殺気を消して近寄る事も有るがそれでも君なら感知出来るだろう?」

「はい・・・・・思春殿や明命、それに貂蝉さんと卑弥呼さんのは気付けないですけど・・・・・」

「い、いや、まあ・・・・・その辺は・・・・・ともかく、君は敵を探るとき、より多く、より広い範囲を感知しようとしている筈だ。」

「は、はい・・・・・」

 それは敵の数、敵の位置を把握出来れば戦いを有利に進める事が出来るからだ。

「例えるなら真夜中の暗闇で篝火を遠くから数えるのに近い。対して胎児の氣を探るのは、真夏の炎天下の荒野で灯した燭台の小さな火だ。」

 分かり易い例え話だが・・・・・やはり相当な修行が必要そうだ。

「それじゃあ、楽進。今から俺がやって見せるから、さっきの話を念頭に置いて俺の体内の氣の流れを読むんだ。」

「はい!華佗師匠!・・・あ!その前に師匠、私のことは凪と真名で呼んで下さい。」

「え?」

「教えを請う師に対して信頼無くして、どうしてその教えを授かる事ができましょう。」

「う~ん・・・・・そうだな・・・・・」

 華佗師匠が悩んでいる。

 私は拳法の師匠にも真名を預けていた。それが当然だと思っていたが・・・・・もしかしたら他の流派は違うのだろうか!?

「真名の件は一刀たちに相談してから返事をさせてくれ。」

「・・・あ。」

 華佗師匠が私の事を真名で呼ぶようになったら隊長たちは・・・・・・心配してくれるだろうか?・・・・・・・・・・って、何を考えているんだ私はっ!!

「とにかく、やって見せるぞ!」

「は、はい!師匠っ!!」

 

「はぁあああああああああ!母の胎内に宿りし光よ!神の恵みし()の命!我にその姿を示さん!!胎児恵光(たいじエコー)おおおおおおおおおおおっ!!」

 

 今までに何度も見てきたこの技。十日前にもしてもらったが、こうして華佗師匠の氣の流れを読み取りながらというのは初めてだ。

 丹田で練り上げた氣を一度尾骨に下ろし、そこから背骨に沿って頭頂の泥丸まで昇らせ、顔、胸を通して丹田に戻す。

 仙道の小周天と同じ・・・・・氣の内圧は相当高そうだ。それなのに放たれる氣はそよ風の様に優しい。

 こんな事が私に出来るだろうか・・・・・。

 

「楽進・・・・・」

 

「は、はい!」

 神妙な顔で名前を呼ばれ、返事の声が上擦った。

「懐妊してる。おめでとう・・・・・」

 

「え・・・・・・えええええっ!?」

 

 

 

 

執金吾執務室

【凪turn】

 十日前の時は胎児の氣が小さすぎて華佗師匠にも読めなかったという事だった。

 いつもなら沙和と真桜が一緒にいてくれるから安心していたけど、こんな一人きりの時に懐妊を告知されてもどうしたらいいか・・・・・。

 後宮へは華佗師匠が伝えてくれるという事だった。

 私は何をしたらいいのか考えながらフラフラしている内に警備隊の事務室も兼ねる執金吾執務室に来てしまっていた。

 沙和と真桜は新兵の訓練で今日は城壁の外に行ってしまっていると判っているのに・・・。

 

「あれ?凪じゃない。今日は非番じゃなかったっけ?」

 

 この声は雪蓮様!?

「は、はい!でも雪蓮様もどうしてここに・・・・・」

「私は執金吾なんだからここに来るのは当然でしょ。」

 大きくなったお腹を支えながら得意そうに仰られるが・・・・・。

「妊娠前からこの部屋には滅多に来られなかったと思いますが?」

「え~と・・・ほら!私って現場第一主義だから!」

 事務仕事はほとんど冥琳様が片付けていた。

 執金吾の事務処理を丞相がするという実に奇妙な光景が普通に行われていたわけだ。

「わ、私のことより凪のことよ!どうしたの、一体?」

「え、ええと実は・・・・・懐妊致しまして・・・」

 

「ええ!?ホント!?おめでとう、凪♪」

 

 雪蓮様は飛び上がらんばかりに喜んでくれた。

「あ、ありがとうございます・・・・・ただその・・・自分が何をしたらいいのか分からなくなってしまって・・・・・」

「はあ?沙和と真桜は・・・・・ああ、新兵訓練なんだ。」

 壁に有る今日の当番表。沙和と真桜の名前の木札が新兵訓練の所に掛かっているのを雪蓮様が確認した。

 私の木札は非番の所に掛かっている。

「後宮には華佗が使いを出すから大丈夫だし、そうなるとやることは一つ!あなたの隊長たちに報告でしょ♪」

 本来なら現在私が隊長と呼ぶべきは、目の前の雪蓮様だ。

 雪蓮様の赴任初日に『雪蓮隊長』と呼んだら、『北郷隊の隊長は一刀でしょ。私は北郷隊を一刀から預かるだけよ♪』と言われた。

 その時と同じ笑顔で私の背中を押してくれている。

「一刀たち、今日は揃って街の視察に行ってるわ。いつもの連中と一緒に。どうする?」

 どうするとは戻るまで待つか、街に探しに行くかという事・・・・・。

 以前隊長に主を待ち続ける忠犬の話を聞いた事が有ったが、私には人の言葉を話す口がある。隊長たちに追いつく事が出来るんだ!

「隊長たちを探しに行きますっ!」

「ふふ♪それでこそ凪ね。あ、一刀たちを探してる時に私を探してる人がいたら、後宮に戻ったって言っておいてね。」

「はい!分かりましたっ!!」

「いやあ、丁度いい時に凪が懐妊してくれたわ。これで仕事しろって追いかけてくる冥琳から逃げられる♪」

「・・・・・・・いえ・・・仕事はした方がいいと思いますよ・・・・・」

 

 

 

 

房都 市街地

【紫一刀turn】

「皇帝陛下方が視察にお見えになったぞっ!」

「北郷親衛隊も一緒だっ!」

 なんか久しぶりに街に出てみたら・・・・・えらい歓迎だな・・・。

 北郷親衛隊とは魂の兄弟達の事。

 親衛隊の中でも特別な存在として最近その名が与えられた。

 北郷隊と紛らわしく無いかとも思うんだけどなぁ。

「なんか集まってるの男ばっかりですね・・・・・」

 董の兄ぃがポツリと呟いた。

「まるでむねむね団の時と変わらん気がするな、兄者。」

「俺もそう思っていた所だ、弟者。」

 兄者と弟者も困惑している。

「貧乳党の集会もこんな感じですね・・・・・」

 インテリも周りを警戒しつつ同意した。

「天和ちゃん達のらいぶは最近女の子が結構やって来るッスよ。」

 追っかけ・・・・・マネージャーとしては嬉しい情報だが、今は関係ないよな。

「秋の時は北郷様たちを見るのに女の子が来てたのに・・・また、あの立札が出たのか?」

「おいおい!怖いこと言うなよ尻好き。」

 あの立札騒ぎの時、どれだけ悲しい目に逢ったか・・・・・大喬と小喬には会えたけどさ。

 そんな会話を交わしながら歩いてる最中にも、集まってくる男達は徐々にヒートアップしていた。

 

「三陛下と北郷親衛隊!バンザーーーイ!!」

 

 一人がそう叫ぶと周りも同じ様に唱和しはじめた。

「北郷親変隊!バンザーーーーイ!!」

「北郷親変態!バンザーーーーイ!!」

「北郷真変態!バンザーーーーイ!!」

 なに!?ちょっと待ていっ!!

 

『北郷真変態!バンザーーーーーーーーイ』

 

 万歳を唱える男達の顔は俺たちを蔑む物ではなく、明らかに讃えている。

 つまり・・・・・。

「「「ここに集まった全員が変態仲間だっ!!」」」

 

『うおおおおおおおおおおおっ!!真変態!真変態!!真変態!!真変態!!』

 

 冬の街を熱く震わせる変態(おとこ)達の声が響き渡る!

 嬉しいじゃないか!仲間たちよ!

 ・・・・・あ~、でも眞琳達が言葉を覚える前に止めさせないと・・・・・大きくなった眞琳に『爸爸って真変態だったのね!不潔!』とか言われたら俺、立ち直れねぇ・・・・・。

 

 

 

 

房都 数え役満☆シスターズ事務所

【凪turn】

「一刀たちなら四半刻くらい前にここに顔を出して行ったわよ。」

 地和の言葉に少しだけ落胆したが、今日は徒歩での視察だと確認してあるから四半刻前ならそう遠くへは移動してない。

 隊長は陳留の頃から街の巡回に馬を使わない人だったな

 最もあの頃は予算も少なくて馬を使えなかったというのも有るけど。

 そういえば初めて隊長と巡回をした時、ひったくりを捕まえるのに気弾で建物を壊してしまったっけ・・・・・・我ながら周りが見えていなかったな・・・隊長も引きつってたし。

「どうしたの、凪?ニヤニヤしちゃって。」

「ちょっと昔を思い出して・・・」

「あ!凪ちゃんだぁ♪いらっしゃ~い。その服かわいいね♪」

 建物から出て来た天和に挨拶と一緒にそんな事を言われた。

「こ、この服は桃香様から頂いた物で・・・・・」

 私は出かける前に一度部屋に戻り、上着をこの毛糸で編んだ『せーたー』に変えていた。

 白くてフワフワした毛糸の着心地がとても良く、着る物に疎い私でも桃香様の編み物の腕が相当高いのが分る。

「やっぱり!桃香ちゃんの編んだ服なんだぁ。私達も襟巻きとか手袋とか貰ったよ♪」

「冬でも薄着ができるように鍛えてるから普段は使わないけど、かわいいから舞台の衣装にしようと思ってるけどね。」

「あれ?凪ちゃん・・・・・・・・おめでた?」

「え!?」

 唐突に天和が言った。

「な、なぜ・・・・・まさか妖術でもそういう事が分るのか!?」

「妖術じゃないよぉ。これはおねえちゃんの乙女の勘なのです♪」

 天和が胸を張って得意げにしてる横で地和が苦笑していた。

「ちぃ達以上に鍛えてる凪が厚着してるのはお腹を冷やさないためかなって。それに普段はお洒落しない凪がそんなかわいい格好で一刀たちを探してるって事。最初は一刀たちをデートに誘うのに来たのかなって思ったけど、凪は他の女に会ってる一刀にそんな事言える性格じゃないしね~。ふふ、おめでとう、凪。」

「おめでとう、凪ちゃん♪」

 二人におめでとうを言ってもらったというのに、私は言葉に詰まって顔が熱くなるばかり。

「・・・・・・・あ、ありがとう・・・」

 なんとかそれだけは言うことができた。

「姉さん達どうしたの?こんな所で・・・・・あ、凪さん。こんにちは。」

「人和ちゃん、凪ちゃんがおめでたなんだって♪」

「それはおめでとうございます、凪さん。ああ、一刀さんたちを探しに来たんですね。」

 建物から出て来たばかりの人和が、あっさりと事情を察してしまった。

 私ってそんなに分かり易いのかな・・・・・。

「・・・ありがとう、人和・・・・・」

「凪さん、もし良かったら一刀さんたちが今どこに居るか、妖術で探りましょうか?」

「え?そんな事が出来るのか?」

「ええ、簡単ですよ。」

 事も無げに言ってしまう・・・・・妖術って便利だな・・・・・。

「その代わり、今度私達が一刀さんたちに会うとき、邪魔が入らないよう協力してくださいね♪」

 それまで微笑み程度の表情しか見せてなかった人和が、悪戯っぽく笑ってみせた。

 その顔が私ですら可愛く感じてしまうのだから、隊長たちを始め世の男性が虜になるのも頷ける。あいどるとは本当にスゴイな・・・。

「今日は一刀たちの他にも兵隊さん達が一緒だったもんねぇ・・・・・」

「まぁ、全員ちぃ達のファンだったから許してあげるけどね。」

「今までも来るたびに揮毫をしてあげてたのだから彼等にも協力してもらいましょう。」

 北郷親衛隊の事か・・・・・・確かにあいつらは張三姉妹のファンだが・・・・・・隊長たちと会うのを協力させるのは酷じゃないか?

 

 

 

 

房都西部 新市場

【紫一刀turn】

 この都の東部にある市が手狭になってきた問題を解消するために、新たに設けた西部の市の視察が今回のメインだ。

「想像以上に活気が有るじゃないか。」

 今はまだ露店が中心だが店の建築もあちこちで行われ、行商人と大工、買い物客などで行き交う人の数はかなり多い。

 さっきの突発変態集会の熱気とはまた違う熱気が市から溢れていた。

「曹沖さま、孫登さま、劉禅さまがお生まれになって以降景気が更に上向きになりました。甘述さま、関平さまの時もそうでしたが、今月は程武さまがお生まれになり、街は祝賀に盛り上がっています。」

 インテリの説明をくすぐったい気持ちで聞いていた。

 自分の子供が生まれて景気が良くなるなんて思いもしなかったからなぁ。

 みんなで市の中を見て回り始めると俺たちに気付いた人たちが声を掛けてきた。

「北郷様!この度は程武様のご誕生おめでとうございます!」

「先月は厳顔様がご懐妊なさったそうで、おめでとうございます!」

「生まれてくるのが女の子ばかりで、なにか北郷様らしいですねぇ♪」

 声を掛けてくるのは東部の市で見た知った人達。

「皆さんこっちに移って来たんですね。」

「ああ、向こうには馴染みさんがいたけど店を広くしたくてね。悩んだけどこっちに引っ越したよ。」

「新しい客がつくか心配だったけど、姫様達がお生まれになったお蔭でお客は増える一方さ!」

 街の人から直接言われると更に気恥ずかしいな。

 それよりも仕事しないと。

「何か困ってる事とか、こうして欲しいみたいな事ってある?」

「そうだなあ・・・巡回の兵隊さんをもっと増やしてほしいな。」

「え!?もしかして治安が悪くなってる!?」

「新しい街じゃしょうがないさ。寿春や江陵の市に比べれば、大人しいモンだけどな。」

「心配しなさんな、陛下。こいつは自分のトコの飯を兵隊さんに食わせて売上伸ばそうって魂胆だからよ。」

「ありゃあ?バレてたか?でもよ、呂布将軍に加えて馬超将軍まで来てくださる回数が減ったからなあ。」

 街の人達には翠もそっちの組に入ってたのか・・・・・。

「ご懐妊なさった将軍で今まで通りいらっしゃるのは孫策様だけだしねぇ。」

「雪蓮ってそんなに頻繁に出てきてるの!?」

「あぁ、雪蓮ちゃんったらお腹が大きくなるのを見せびらかしたいみたいでさ♪ついでにノロケまでしていくよ。この幸せモンが♪」

 年配のおばちゃんに背中をバンバン叩かれるが、俺の照れ隠しにもなっているので笑って叩かれるままになっておく。

「そ、その雪蓮に・・・・・・酒は・・・」

「そりゃ心配無用だ。周瑜様からきっつーーーく言われてるからな!あっはっはっは!」

 さすが冥琳。雪蓮の行動を読んでるなぁ。

「おっと、お前らもそんな遠巻きに見てないで話に加われよ!」

 おやじさんの一人が周りに声を掛けた。

 見覚えがない顔ばかりだから、新しくこの房都に移住して来た人達なんだろう。

「遠慮なんかしないほうがこの型破りな皇帝陛下は嬉しいのさ!」

 このおやじさんの言う通り、俺たちは街の人達とこうして笑って暮らすために頑張って来たんだ。

「なにも取って食われたりしねえよ。」

「でも、女達は食われちまうかも知れないから気を付けな!」

 

「「「そんな事無いってっ!!」」」

 

「おや!それじゃああたしも気を付けないとねえ♪」

「なに言ってやがんだ。おめぇみてぇなババアじゃさすがの北郷様も相手にしねえって♪」

「なんだと!このクソジジイ!!」

 あはは!懐かしいな。この下町っぽい雰囲気。

 

「隊長!!やっと追いつきましたっ!!」

 

 え?この声、凪!?

 振り返ったその先に居たのは間違いなく凪だったが・・・・・。

「え?あれって楽進将軍か?」

「こりゃまたえらく可愛らしい格好だねぇ♪」

 そう、凪はいつもの服とは違い、タートルネックの白いセーターを着ていた。

 袖は指先が出るくらい、裾も太ももまであるワンピースセーター。

 足はいつもの黒に近い濃紫の吊りストッキングみたいなやつ・・・・・白いセーターとのコントラストがとても良い。

「そのセーター似合ってて可愛いぞ、凪♪」

「あ、ありがとうございます・・・・隊長・・・」

「城から追っかけて来たんだ。」

「なんか用事が有るみたいだったから遠慮したんだけど、出る前に声を掛ければ良かったな、ごめん。」

「そろそろいい時間だし、お昼にしようか?」

 俺たち三人が口々に話しかけるが、凪は恥ずかしそうに顔を赤らめてモジモジしていた。

「そ、その・・・・・隊長にお話が有りまして・・・・・」

 話?凪は十日前に診察を受けた筈だから懐妊報告って事はないだろう。

 元々今日の視察はみんなの診察が無い日を選んだんだから。

 他の報告なら凪が言い淀むなんて無いだろうし、これは本人の『お願い』と見るべきだろうか?

「取り敢えずお店に入って話を・・・」

 

「わ、私!か、懐妊しましたっ!!」

 

「「「・・・・・・・・・・」」」

 凪の不意打ちに絶句してしまった俺たちの代りに、街の人たちがざわめき始めた。

「お、おい・・・いま・・・」

「ああ・・・確かに・・・」

「おめでとうございます!楽進将軍♪」

 凪が俺の背中を叩いたおばちゃんに抱きしめられていた。

 そして凪と俺たち三人に対して、街の人達から祝辞攻めが始まった。

 

 

 

 

新市場 飯店内

【凪turn】

「街の人達はみんな戻ったッス」

「城にも使いを出しましたので、もう直このお祝いの品を運ぶ部隊が到着するでしょう。」

 店主の好意で置かせてもらっているその品々が店内を埋め尽くしていた。

「みんなすまない・・・・・私の所為で迷惑をかけて・・・・・」

「いえいえ、普段は厳しい楽進将軍のあんな可愛らしい姿が見られたので、この程度はどうという事は有りませんよ。」

「お、お前ら!」

 私が凄んで見せても彼等から微笑みは消えなかった。

 隊長たちも笑ってるし・・・・・。

「凪の方の事情も、ようやく分かったし・・・・・で、凪は懐妊確認の技の修行をこれから続けていくの?」

「はい。これからは時間が取れそうですから一日も早く会得できるよう頑張りたいと思います。」

「うん、でも無理はしないようにね。」

「はい!」

「さて、遅くなったけど・・・・・」

 隊長たちが私の手を握ってくれた。

 

「「「俺たちの子を懐妊してくれて、ありがとう。凪。」」」

 

 それは私が今まで隊長たちに褒められた中で、一番嬉しい言葉だった。

 

 

 

 

おまけ

凪の娘 楽綝(がくりん) 真名:(なみ)

五歳

本城 中庭               (時報:桂花 七人目 妊娠二ヶ月)

【紫一刀turn】

「ん~~~~!えいっ!」

 濤が気合を込めると五メートル程離れた所に置いた小石がポンと弾かれる様に動いた。

「おおっ!スゴイぞ、濤!媽媽みたいに気弾が使えるんだ!」

「えへへ♪」

 俺が頭を撫でてやると、濤はとても嬉しそうに笑った。

 凪からこの子がもう氣を操れると聞いていたので見せてもらったのだが、親の欲目を抜きにしても天才ではないかと思う。

 濤がお腹にいる頃に凪がした修行の影響、ある意味胎教になっていたのかも知れない。

「まるでサイヤ人みたいだな。」

「さいやじん?」

「あ、爸爸が知ってるお話に出てくる強い人達でね。濤や媽媽みたいに気弾を使うんだ。」

「へ~。」

「その人の技の一つにこう・・・・・」

 俺はかの有名な技のポーズをやってみせる。

「かめはめ波――――っ!!ってやるんだ。」

「うわあ♪カッコイイ!濤やってみる!」

 濤が俺を真似てポーズを取る。

「お!いいぞ!そうやって手に氣を貯めて・・・・・」

 俺も一緒になってポーズをもう一度・・・・・俺は氣を貯めるなんて出来ないけど。

 

「「かめはめ波――――――っ!!」」

 

 ドコーーーンっという音を響かせ二十メートル程離れた壁に穴があいた・・・・・。

 俺って実はサイヤ人だったのか!?

 なんてバカな事を考えている場合では無い!

 やったのは当然、濤だ!

「うわあ!スゴーイ♪」

 素直にはしゃぐ濤の才能に、思わず現実逃避してしまった。

 

「隊長!何やってるんですか!!」

 

 未だに俺の事を隊長と呼ぶのはただ一人。

「な、凪!これは・・・」

 

「こ、子供にか、亀・・・填め・・・・な、なんて言葉を教えるんですか!!」

 

「え?そっちなの?って、いや!別にそんなヒワイな話じゃ無くてだな・・・・・」

「おや?主。それは私が戦乱の頃にお贈りした『陽撃昇天破』の次なる技の名前ですかな?」

「おわ!星!いきなり現れるとビックリするからやめてくれっ!!それにその技こそ」

「爸爸、ようげきってなに?」

 俺のズボンを引っぱって問いかける濤に俺は無理矢理笑顔を作って答える。

「それは今度教えてあげるから。爸爸は今、媽媽達と大事なお話をしなくちゃいけなくなったんだ・・・・・失敗すると命に関わるくらい大事なお話が・・・・・」

「あ、後で教えるってどういう事ですかっ!?隊長!あなたは自分の娘に何を教える気ですかっ!?」

 濤に話すのに当たり障りのない答えを探す時間を稼いだだけなのに!

「ご、誤解だ、凪!そ、それよりもあ、あの壁!」

 そう!濤の才能がどれだけ凄いか凪なら判る筈!

「壁については華琳殿辺りが後で主とゆっくり話をしてくれましょう。それよりも今は亀のお話をしようではありませんか♪」

 ちょ、それだとただ単に壁を壊したのを俺が怒られるだけじゃないのか!?

「コオオォォォォォオ!」

 凪!それは同じジャンプマンガでも作品が違うぞ!!

「おわあ!凪!手が!手がスゴイ光ってるっ!!落ち着いて話を聞いてくれっ!!」

 

 みんな!俺に凪を説得する力を分けてくれえええええええええ!!

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

今回は『氣』『忠犬』『街の人達』をテーマにしました。

凪の忠犬らしさがもっと有っても良かったかな・・・・・。

 

北郷真変態

眞琳は優しい子なのでそんな事言いませんよ。

それにいくら街の人達に箝口令を出しても

桂花を筆頭にしたツンキャラ達が言いまくると思いますw

 

おまけについて

楽綝ですが三国志に詳しい方は

『がくちん』と読む方が多いと思います。

『がくりん』と読んでも間違いではないと資料に有ったのでこちらにしました。

『がくちん』だと桃井いちご様の付けるあだ名みたいな感じがするものでw

 

サイヤ人

一刀は死の淵から蘇る度に頑丈になっていく所だけ

サイヤ人並だと思いますwww

 

 

《次回のお話&現在の得票数》

 

☆七乃   18票

 

という事で次回は七乃に決定しました。

 

以下、現在の得票数です。

 

白蓮   16票

数え役満☆シスターズ15票

詠    14票

朱里+雛里13票

秋蘭   13票

月    13票

流琉   12票

ニャン蛮族12票

小蓮   12票

亞莎   11票

猪々子  11票

明命   10票

焔耶   10票

音々音  8票

穏    7票

二喬   7票

斗詩   6票

春蘭   5票

華雄   4票

璃々   3票

星    2票

稟    1票

真桜   1票

 

※「朱里と雛里」「美以と三猫」「数え役満☆シスターズ」は一つの話となりますのでセットとさせて頂きます。

 

リクエスト参戦順番→ 朱里+雛里 猪々子 穏 白蓮 亞莎 流琉 七乃 ニャン蛮族 小蓮 詠 焔耶 明命 数え役満☆シスターズ 秋蘭 月 斗詩 二喬 春蘭 音々音 華雄 稟 星 璃々 真桜

 

過去にメインになったキャラ

【魏】華琳 風 桂花 凪

【呉】雪蓮 冥琳 祭 思春 美羽 蓮華

【蜀】桃香 鈴々 愛紗 恋 紫苑 翠 蒲公英 麗羽 桔梗

 

引き続き、皆様からのリクエストを募集しております。

リクエストに制限は決めてありません。

何回でも、一度に何人でもご応募いただいても大丈夫です(´∀`)

よろしくお願い申し上げます。

 

 


 
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