<無視点>
一刀が言いたいだけ言って眠ってしまった後、華佗は諦めずに治療を再開した。
「絶対に治すからな、医者の誇りにかけて…」
その呟きは、誰に届くともなく消えていった。
その後、華佗は手元の狂いなどを生じさせない最低限度の睡眠をとって治療を続けた。
しかしまだ技術の発達していない時代。故に医療技術も同様…
意識が戻ってから3日後、弱まっていた一刀の脈が更に、更に弱まっていき…
そして、完全に止まってしまった。
華佗は一刀を救えなかった己の未熟さを嘆き、一刀の死を悲しんだ。そして将たちを呼び、治療をしたが助からなかった事を伝えた。
一刀と過ごした期間の差はあれど、皆、指導者であり仲間であった一刀の死を悲しみ、悼んだ。
そして一刀の死は漢全土を駆け巡り、国全体を上げて盛大に追悼式が行われた。
その翌日――
「…ここか。一刀の残した手紙の場所は…」
華佗は一刀の遺した言葉通りの場所を探し、手紙を見つけた。
華佗は自分宛のものを胸元にしまい、将たちにそれぞれ宛てられた手紙を渡していった。
全てを渡し終え、一刀を救えなかったあの部屋に戻り、手紙を開いた。
華佗 元化
この手紙を読んでいるってことは、俺はきっと死んでいるんだろう。
きっとお前は俺のために頑張って治療をしてくれたんだろう。だけど救えなかった。それを悔いているのならそれを糧に他の苦しむ人々を病から救って欲しい。
会って話したのはほんの僅かだったけど、最高に楽しい時間だった。
俺は、お前と友になれて心の底から感謝してる。ありがとう。
こんなことしか書けなくて済まないな。たとえ死に別れても、どんなに距離があっても、俺とお前の『友』と言う絆は永久に不滅だ!
北郷 一刀
<華佗視点>
俺は手紙を読んだそっと閉じ、胸元に再びしまい込む。気がつけば、勝手に目から涙が溢れていた。
「…一刀、お前ってやつは…」
俺はまた涙を流し、泣いた。声こそ出なかったが、見ている者がいれば間違い無くひどい顔をしていると言っただろう。だが俺は、そんなことも気にならなかった。
<???視点>
目を覚ますと、そこはあの場所。そう、飛ばされる前の俺の部屋。
「また、俺は助けられなかったのか…」
コンコン
「一刀、その様子だと何かあったようじゃの。くよくよ悩んでいたところで何も変わらない、とだけ言っておくぞ」
一瞬爺ちゃんが間を置いた。
「一刀、最後に…遅刻寸前じゃ。急ぎなさい」
「マジかよ!?もっと早くに起こせよ!」
「目覚まし時計は何のためのものじゃったか、考えてみなさい」
俺はやっぱりさっきの夢とも幻とも検討のつかない光景を思い浮かべながら、学校への道へ駆け出した。
後書きのコーナー
はい、これで完結いたしました。どうも不足しがちな感じが拭えませんが、これで完結という運びになりました。グダグダが最後まで続いてましたが、読破していただきありがとうございました。これでしばらくは執筆を休止…というか次の案が出るまで執筆は多分無いでしょう。
読んでくださった皆様、コメントを残してくださった皆様、支援してくださった皆様、
ありがとうございました!
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この作品の一刀はチートです。
また、少々オリジナルの要素が入っています。
投稿直後は付け足しがあります。
以上の点に注意してみていただければ幸いです。