No.535974

真・金姫†無双 #15

一郎太さん

1週間が終わった。

でも一郎太の早朝プレイは終わりが見えない。

という訳で、#15。

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2013-01-25 18:42:01 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:11564   閲覧ユーザー数:8318

 

 

 

#15

 

 

時は流れ、場所も変わり、やって来たのは冀州。各地で暴れ回っていた黄巾党も、諸侯に抑えられ、逃げ、最終的にこの地へと集合していた。

 

「壮観だな」

「こんなにたくさんの人、見た事ないです……」

「あわわわわ……」

 

そして下された、黄巾党討伐の勅。諸侯が集まり、巨大な古砦を囲う様に、それぞれ陣を敷いている。亞莎はその光景に目を丸くし、雛里は緊張からか2文字しか発する事ができないでいた。

 

「で、どーするの、冥琳ちゃん?」

「待機だってさ」

 

孫家の軍師に問えば、返したのは孫家の長。

 

「なんで?」

「どの軍も、乱の首謀者である張角の首を獲ろうと画策している。最初に動いたところから反撃を喰らい、その功の可能性が減る。よって、どこも動けないのさ」

「へー」

「私達が袁術から独立する為にも、軍功や風評は手に入れておきたいですしねぇ。何処かが動いてから、私達も状況を開始する予定です」

 

今度こそ軍師である冥琳ちゃんと穏ちゃんが答えた。なるほどね。

 

「という事は、時間はある訳だ」

「えぇ」

 

こうしちゃおれん。

 

「よし、行くぞ、亞莎!」

「へっ?」

「レッツ・商売だ!」

「はやっ!?はやややややや――――」

 

俺は亞莎を連れ、商売の準備に奔走する。

 

 

 

 

 

 

「えー、弁当ー、弁当はいらんかねー?」

「今なら飲み物もついてきまーす。疲れた身体に、爽やかな果汁飲料は如何でしょうかー」

 

駅弁よろしく籠を首にかけ、俺と亞莎は弁当行脚に乗り出していた。

 

「んー、なかなか売れないな」

「仕方がないですよ。みんな隊列を作ってますし」

「折角、袁術のところから食材をかっぱらって作ったんだけどなー」

 

だが、売れ行きはよくない。というか皆無。このままでは、無駄足に終わってしまう。

 

「待てよ?普通の兵卒が買えないなら、軍の重鎮のところに売りに行けばいいんじゃないか?」

「はやっ!?流石にそれは……」

「亞莎の許可も貰ったし、決行だ」

「してないですよ!?」

 

さて、どこに行こうかな?

 

「……どこが近い?」

「んー、ここからだと、袁紹さんですかね。ほら、あそこに牙門旗が」

「あー、袁紹か。雪蓮は、『袁術はただの馬鹿』って言ってたし、従姉の袁紹も同じくらい馬鹿なんじゃね?」

「酷い事言いますね、一刀さんも雪蓮様も……」

 

という訳で、やって来ました。袁紹軍本陣。

 

「えー、弁当ー、弁当はいらんかねー?」

「今なら飲み物もついてきまーす。疲れた身体に、爽やかな果汁飲料は如何でしょうかー」

 

お馴染みの掛け声をしていれば、3人の女が寄って来た。

 

「あらあら、こんな所でなんですの?」

「売り子ですね」

「へー、おもしろい形の容れ物に入れてんだな。お前ら、商人か?」

 

金髪ドリルにおかっぱにお転婆っぽい3人組。

 

「へぃ。人集まるところに金有り。こうでもしなきゃ、生き残れませんので」

「この辺りでは、珍しい料理ですよ。如何ですかー?」

 

さて、買ってくれるかね。

 

「中見てもいいか?」

「へぃ、どうぞ!」

 

お転婆娘が覗き込んできたので、蓋を開けて中を見せる。

 

「へー、確かに初めて見る料理だな。斗詩、これ買おうぜ!」

「ちょっと、一応軍事行動中だよ?駄目だよ、そんな事しちゃ」

「いいじゃねーか。姫だって、食べてみたいですよね!?」

「えぇ、よろしいですわよ、文醜さん」

「姫!?いつ黄巾党が出てくるかわからないのに、呑気に食事なんて……」

「よいではありませんか、顔良さん。賊如きの相手は、他の軍に任せていればいいんですのよ。この高貴な袁本初が、この場にいるだけでも素晴らしい状況ですのに、さらに戦わせようとするお馬鹿さんなんておりませんわ!おーっほっほっほっほ!」

 

袁本初?……袁紹か!

 

「流石は袁紹様です。その余裕のお姿、大変お美しい」

「あらあら、いち商人の方にも、この高貴さがお分かりになるのですね」

「いえいえ。高貴な御方は、その雰囲気でわかります。これでも商人ですんでね」

「気に入りましたわ!顔良さん!この商人さんの弁当とやらを、全部買い取ってあげなさいな」

「え、えぇっ!全部ですか!?」

「当然ですわ。袁家の者は、たかだか2~3個買うなどとみみっちい真似はしませんわ」

「姫ぇ…」

「いいじゃねーか、斗詩。このくらいなら、アタイが全部食ってやるぜ」

「そういう問題じゃ――」

「それでは商人さん。そのお弁当やらを全部くださいな」

 

なんというか、予想通りに馬鹿だったな、袁紹は。ま、全部捌けたから善しとするか。

 

「かしこかしこまりましたかしこー!」

 

 

 

 

 

 

袁紹の陣を離れ、またテクテクと歩く。

 

「弁当は完売だが、ジュースが残ってんな」

「あぅ、すみません……」

「いいさ。これから売っちまえばいいんだ」

 

そんな会話をしていると。

 

「そこの者、止まれっ!」

 

何やら呼び止められる。

 

「毎度!ジュースをお買い求めで?」

 

振り返れば、黒髪のお美しいサイドテール(?)の嬢ちゃん。……ちょっと怖い。

 

「ここは劉備様の陣地だぞ。勝手な商売などするな!」

「あぅぅ、すみません……」

 

その怒気にやられ、亞莎が謝罪をする。もっと堂々とすればいいのに。

 

「あいやすみません。ですが、商売をしてはいけないとも言われてなかったもので」

「常識的に考えればわかるだろう!今は黄巾党討伐の、最後の大戦なのだぞ?」

「しかし、こっちだって生活が懸かってますんでね。アンタらが戦って給料をもらうなら、ウチらは物売って金を得るんでさぁ」

「屁理屈を……」

 

おっと、さらに怒らせてしまったようだ。だが、こっちだっていきなり怒られたらいい気分はしないんだぜ?

サイド(仮)嬢ちゃんは右手に持っていた偃月刀を構えたかと思うと……って、え?

 

「さては、貴様ら黄巾党の間者だな!ここで成敗してくれるっ!」

「いやいやいやいや、待て待て待て待て――――」

 

ちょ、短気にも程がある。眼が本気と書いてマジなんですけど……って。

 

「ぎゃぁぁぁああああああああああああああっ!!!」

 

 

 

 

 

 

「このっ!クソッ!……当たらぬか!」

「いやいや、当たったら死んじゃうって!」

「はやややややや……」

 

サイド(偽)娘の攻撃を紙一重で躱す。躱す。躱し続ける。

 

「ちょちょちょちょっと、愛紗ちゃん!何やってるの!?」

「桃香様っ!」

 

そこへやって来ました、新たな登場人物。鳶色の髪をした、ほんわか、って感じの女の子だ。

 

「お下がりください、桃香様。こやつらは、物売りに扮した黄巾党の間者です。いま、成敗致しますので」

「待てって!俺らは本当に商売してんだよ!さっきも袁紹んトコで飯売ってきたんだから!」

「そのような言い訳を……」

「愛紗ちゃん!」

 

頭でっかちの頑固娘はいまだに俺達に殺気を向けていたが、ほんわかちゃんの一声で、ようやく武器を収めた。……もしかして、コイツが劉備か?

 

「あの、愛紗ちゃんがごめんなさいっ!真面目な子だから……許してください!」

「桃香様!そう簡単に頭を下げてはなりません!」

 

興奮冷めやらぬようだが、(推定)主の態度に、殺気もどこかへと霧散してしまった。

 

「ほんと、ごめんなさい」

「いえいえ、ウチらも誤解が解ければいいんで」

「ありがとうございます!それで、何を売っているんですか?」

「と、桃香様!?」

 

おっと、この子は袁紹とは違った意味で馬鹿らしい。まぁ、お客様だから丁重にもてなすがな。

 

「へぃ。今は果汁を使った甘い飲み物を売り歩いております。皆さん、長旅で疲れているでしょうから」

「へー、いくらなの?」

「なりません、桃香様!毒でも入っていたらどうするのですか!」

「何を仰います。ウチらだって商売人。信用がなくなれば生きていけません。売り物に関しては嘘はつきませんぜ?」

「ほら、愛紗ちゃんもそうカリカリしないの。じゃぁ、私と愛紗ちゃん、それと星ちゃん、鈴々ちゃんと、あと朱里ちゃんの分で5つくださいな」

「毎度!」

「桃香様!?」

 

5本売れた。

 

 

 

 

 

 

「わぁっ、美味しいよ、愛紗ちゃん!」

「……確かに、悪くはない」

 

へっへっへ。商品には自信を持ってんだぜ?

 

5本のうちの2本を2人で飲みながら、それぞれ感想を返してくれる。いやぁ、商人冥利に尽きるね。

そんな事をしていれば、また別の声が。

 

「桃香様ぁ、軍議を開きま……何をしてるんですか?」

 

やって来たのは、金髪ロリ。雛里と同い年くらいか。

 

「あぁ、朱里ちゃん。いまね、この商人さん達から、美味しい飲み物を買ったの。朱里ちゃんの分もあるよ」

「はわわっ!?そ、そんな危険な事しないでください!?」

「大丈夫だってー」

 

これまた独特の口癖だ。それにしてもデカいスカートだな。雛里が着ている服によく似て――――。

 

 

「なぁ、亞莎」

「はい?」

「そこのちっこい娘の服って、雛里の服に似てないか?」

「そう言われてみれば……色遣いは違いますけど、よく似てます。もしかして、雛里ちゃんが居たっていう塾の制服でしょうか?」

「もしかして、コイツが孔明なんじゃね?」

「えぇっ?」

 

コソコソと亞莎に問えば、肯定が返ってくる。そして、更なる推測の材料。試す価値はある。

 

「なぁ、そこのお嬢ちゃん」

「はわっ、私ですか!?」

 

やっぱり口癖が似てるな。

 

「その服、もしかして、水鏡塾の出かい?」

「はわわ、なんで分かったんですか?」

「いや、うちの妹も水鏡先生のところにお世話になってたんだよ。よく似た服を着ている」

「そうなんですか!?思わぬ縁ですね。差し支えなければ、妹さんのお名前を窺っても?」

「あぁ、鳳統だよ」

「雛里ちゃん!?」

 

ドンピシャ。

 

「おや、知ってるのかい?」

「あのあの、雛里ちゃんは今何処に!?」

「おっと待ちな。その前に、お嬢ちゃんのお名前を伺っても?」

「あ、はい。私は諸葛亮孔明と言い――――」

「孔明ゲットォォォォォオオオオオオオオ!!!!」

 

言い切るよりも早く俺はその少女を抱きかかえ、自陣へと遁走する。

 

「はやっ!?待ってください、一刀さんっ!」

「え、朱里ちゃん!?」

「朱里!」

 

後ろの声は気にしなーい。

 

「待ってろ我が妹よぉおおおおお!!」

「はわわわわわわわ――――」

 

 

 

 

 

 

自陣の中を、俺は亞莎を引き連れて駆け回る。何処だ。雛里は何処だ。

 

「朱里を返せぇ!」

「はぁ…はぁ……愛紗ちゃん、待ってぇ……」

 

サイド(っぽい)女が叫んでいるが、体力のない劉備がいる為、全力にはなりきれていない。その隙に、俺は妹の姿を探す。

 

「一刀さん、いました!あっちです!」

「でかした!愛してるぞ、亞莎!」

「はやややっ!?」

 

亞莎が指差す方を見れば、ピョコピョコと揺れる魔女帽子。

 

「雛里ぃぃいぃいいいいいい!」

「あわわっ、お兄ちゃん!?……って、朱里ちゃん!!」

「雛里ちゃぁん、助けてぇえええ!」

 

雛里もこちらに気づいたようだ。俺目掛けて、一目散に駆けてくる。

 

「雛里ぃいぃいごふっ!?」

「朱里ちゃぁあああん!」

「雛里ちゃぁあああん!」

 

抱き締めようと手を広げれば、雛里の体当たりが俺の鳩尾を打った。兄妹愛より、友情をとるのか……お兄ちゃんは哀しいです。

 

「よかった!よかったよぉ、雛里ちゃぁん!」

「朱里ちゃぁん……」

「大丈夫ですか、一刀さん?」

「ぜぇ…ふへぇ……も、無理ぃ……」

「桃香様ぁ!」

 

抱き合って涙を流す幼女2匹。その横で悶絶する俺。俺に声を掛ける妹。倒れ伏すほんわか。抱き留めようとして失敗するサイド(笑)。

 

あぁ、カオス。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

ポンポン進むよ!

 

 

という訳で、#15でした。

 

 

・袁紹たちは、やっぱ馬鹿でした。

・劉備ちゃんも馬鹿でした。

・愛紗ちゃんが怒りっぽいです。

・朱里りんも妹候補にしたいです。

 

こんな感じ。

 

 

ではまた明日。

 

 

バイバイ。

 

 

 


 
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