No.535262

真・金姫†無双 #13

一郎太さん

という訳で、#13。

一刀くんがお兄ちゃんです。

亞莎ちゃんが頑張りました。

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2013-01-23 19:03:39 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:9292   閲覧ユーザー数:7038

 

#13

 

 

「火だ!火が上がったぞぉ!」

「うわぁ!?燃え移りやがった!!」

 

混乱に乗じて、建物の間を俺は駆ける。月光に照らされた場所を賊たちが行き交い、蔵に注目が向かう。ギリギリまで裏手を走り、ようやく辿り着くは、砦の正門。部隊が待機している方角だ。

 

「さて、開けちまおうか」

 

門番の兵を斬り倒す。先ほどすべてを出し終えた為か、嘔吐感はあってもそれで立ち止まる事はない。

 

「――――っしゃぁ!!」

 

扉を開門すれば、月明かり下の大地に砂塵。

 

「居たぞ!捕まえろぉ!!」

 

見つかっちまったらしい。だが、もう詰んでんだよ。

 

「あと1分もしないうちに、騎馬隊が到着するぜ?」

 

再びクナイを逆手に構える。俺の仕事は、この開門を維持する事だ。

 

 

 

 

 

 

「クソっ!なんとかして門を閉めるんだ!」

「無理だ!すぐそこまで来てやがるっ!」

 

門前で戦うこと数十秒。吶喊の騎馬隊の先頭には、長妹の姿。

 

「突撃っ!門を確保してください!」

「おー、様になってるねぇ」

 

しっかりと指揮官を全うしている亞莎の姿に口笛を吹きながら、俺は後方へと向かう。少しもしないうちに歩兵部隊の先頭と合流した。

 

「脚を止めるな!奇襲はかけたが、前方は騎馬隊だけだ!てめぇらもさっさと追いつきやがれぇっ!!」

「「「「「応っ!!」」」」」

 

後続の歩兵に檄を飛ばせば、その速度も上がる。最初からそうしてろってんだ。

 

で、俺のもう1人の妹は、っと……いたいた。後方にて、砦の様子を見ている。

 

「あわわっ、お兄ちゃん!?」

「おう、兄貴だ。作戦は……見ての通りだな」

「はいっ、流石でしゅ!あわわ…」

 

最後の最後で噛んでしまうのは、ご愛嬌だ。

 

だが。

 

「穏、ここ任せていいか?」

「……意地悪なお兄ちゃんですね。なにも、初めての討伐でやらなくても」

 

問い掛ければ、哀しげな、そして非難めいた瞳。穏は、俺がこれから何をするかわかっているらしい。流石は周瑜ちゃんの弟子。いや、自身もそれを経験しているからか。

 

「今だからこそだ。それで折れるなら、居酒屋の店員に収まるしかない。逆を言えば――」

「あ、あのっ、お兄ちゃん?穏様?いったい何の話を……」

「おぉ、雛里。これからちょっと出かけるぞ」

「……へ?」

 

話についていけない雛里の乗る馬に飛び乗る。

 

「えと、その……」

「レッツゴー!」

「あわわわわわ……」

 

そして、馬を駆けらせた。腕の間で小さくなる雛里が可愛かったですマル。

 

 

 

 

 

 

そうしてやって来ました最前線。兵の怒号と剣戟の音が鳴り響く。

 

「なんでですかぁ!?」

「あー、安心しろ。雛里は俺が守ってやるから……命に代えてもなキリッ」

「あぅ…擬音を口で出さないでください……あわわっ!?」

 

そんな会話をしている間にも、飛んできた流れ矢をクナイで弾く。雛里が帽子を押さえてさらに縮こまった。

 

「そうしてろ」

「はいぃ…」

 

そのままさらに馬を進め、到着する。ひと際、炎の燃え盛る蔵の前に。

 

「顔を上げるんだ、雛里」

「……えっ?」

 

俺の声音に、ただならぬ雰囲気を感じ取ったのだろう。先ほどまでの怯えすら消えた表情で、雛里は顔を上げる。彼女の目の前には――――。

 

「あ゙あ゙あぁぁっ!!熱い、熱いぃぃいいいいいい!!!」

 

兵に弾き飛ばされ、蔵に突っ込んだであろう賊の1人。その身には炎。

 

「あ…」

「よく見ろ。これが、お前が取った選択肢の結果だ」

 

その光景を認識し、俺の両脚の間で雛里は小刻みに震え出す。

 

「そして理解するんだ。策を出すとは、どういう事かを。戦がどういうものなのかを」

「あ、あぁぁ……」

 

その震えは、徐々に大きくなる。

 

「ぃゃ…」

「目を逸らすな」

「いゃぁ…嫌だよぉ、お兄ちゃん……」

「見ろっ!」

「っ!」

 

馬上で振り返り、縋りついて来ようとする雛里の肩を押さえ、視界を固定する。燃えていた男は息絶えたようだ。地面に倒れ伏したままピクリとも動かず、火が燻ぶっている。それ以外にも、兵に斬られ、血を流し、苦痛の呻きを上げる賊たち。

 

「もうやだっ!やだよ、おにぃちゃぁん!」

「駄目だ」

 

轟く兵の怒号。響く剣戟の音。消えない断末魔の叫び。それを聞くまいと雛里は泣き叫ぶが、幼い少女の泣き声など微々たるものだ。腰のあたりから、異臭が漂ってくる。失禁してしまったらしい。

 

「もうやだ、やだよぉ……」

「……そっか」

 

さめざめと泣き出した雛里を見て、これ以上は本当に無理だと判断する。雛里の胸に腕を回して抱き上げ、自身の服が濡れる事も意に介さず、こちらを向かせる。途端、雛里が抱き着いてきた。

 

「ごめんな、雛里。穏のところに戻ろう」

「……」

 

もはや、声を出す事も出来ないのかもしれない。俺の腰にしがみついたまま頷くと、さらに強い力で抱き締めてきた。

 

「ごめん…」

 

もう1度だけ謝り、俺は馬を駆けらせる。

 

 

 

 

 

 

本陣まで戻れば、穏が伝令越しに指示を出している。

 

「あ、一刀さん!」

「穏、悪いが雛里を頼む」

「……はぃ」

 

俺の声に振り向いた穏は、むしゃぶりついたままの雛里の様子を見て、状況を察したようだ。さっきと同じような眼で俺を見るが、すぐに頷き、雛里を受け取ってくれた。

 

「じゃぁ、終わらせてくる」

「あの!」

「ん?」

 

再び馬首を翻せば、穏に引き留められた。

 

「一刀さんは…その、大丈夫なんですか?」

「……俺はもう、全部吐き出してきたよ。火を点ける前にな」

「そう、ですか…」

「行ってくる」

 

何やら言いたげな様子だったが、今はその時ではない。両脚に力を籠める。

 

次は亞莎の番だ。

 

 

 

 

 

 

再三砦に戻れば、もう戦いも終盤だった。賊は散り散りになり、それを追って兵がトドメを指す。もはや殲滅戦だった。

 

「亞莎は、っと……」

 

周囲を見渡せば、ちょうど亞莎が部下に指示を出しているところだった。

 

「お疲れ、亞莎」

「あ、一刀さん……」

 

部下が離れたところを見計らって声を掛ければ、ほっと一息をつきながら返事をしてくれる。

 

やっぱり、か。

 

「もう終わりのようだな」

「はい、いま組を分けて砦の中を調べさせてますが、おそらく敵もいないかと」

「そうか。だったら、ちょっといいか?」

「はい?」

 

首を傾げる亞莎を引き連れ、砦の奥へと向かう。

 

「あの、ここが何か……?」

「ここなら誰もいない」

「え?」

「気丈に振る舞う必要もない。亞莎はよくやったよ」

「あ…」

 

ぽむっ、と頭に手を置いてやれば、途端に亞莎の瞳が震え出す。

 

「おいで」

「……っ」

 

ひと声かければ、さっきの雛里のように俺に抱き着いてきた。雛里と対応が違い過ぎるが、そこは許して欲しい。何故なら。

 

「私、頑張りました…」

「うん」

 

この娘は、1人で乗り越えられたから。

 

「初めて、人を殺しました……気持ち悪くなりました…吐きそうになりました……逃げ出したくなりました……」

「わかるよ」

 

俺もそうだったから。

 

「それでも、頑張りました…私が弱かったら、みんなが危険だから、、頑張りました……」

「あぁ、知ってるよ」

「一刀さん…う、うぅぅ……」

 

静かに泣き出した亞莎が落ち着くまで、俺は彼女の頭を撫で続けた。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

そんなこんなで#13です。

 

 

雛里んが可哀相だけど、頑張って欲しいものです。

 

 

というか、ギャグに持っていけないorz

 

 

頑張って戻したいけど、#15まで戻せない。

 

 

ではまた次回。

 

 

バイバイ。

 

 

追記:

 

なんだよ、あのクソタイトル。

 

直しました。

 


 
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