No.535119

SAO~黒戦After story~ EP2 結城明日奈・後編

本郷 刃さん

EP2です。
明日奈達の前に現れた二人とは・・・。
この話しで明日奈のお話しは終わりです。

それでは、どうぞ・・・。

2013-01-23 09:49:46 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:17190   閲覧ユーザー数:15741

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

EP2 結城明日奈・後編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京子Side

 

現れた二人の女性。一人は肩まである濃い目の栗色の髪をしており、瞳は薄い茶色の美しい女性。

もう一人は艶のあるショートカットの黒髪に、薄めの黒い瞳をした毅然としている凛々しい女性。

二人とも松葉杖をついている。

 

「ティア、さん…? カノ、ン、さん…?」

 

「こんにちは、結城明日奈さん。私は朝霧(あさぎり) (しずく)です」

 

「あたしは井藤(いとう) (かなで)よ。それにしても、随分と物騒なことをしているわね」

 

「どう、して……お二人、が…」

 

どうやら彼女達は明日奈の知り合いのようだけど、まさかゲームで知り合ったのかしら?

 

「同じ病院だったのには驚きましたよ。まぁ、このような騒ぎになっているとは思いもしませんでしたが…」

 

「貴女が死ぬ必要なんてどこにもないわ……彼は、和人君は生きているもの…」

 

「ぅ、そ……」

 

明日奈は呆然とした様子で呟いた。

 

「嘘を吐く理由がないわね」

 

「明日奈さん、私の恋人はシャインですよ? 彼の生存くらいなら、確認できました」

 

奏と名乗った女性が言ったあとに、雫と名乗った女性がそう言った。

二人の言葉を聞いた明日奈は力が抜けたようで、破片を落とすとベッドから落ちそうになったがそれを夫が支える。

二人の女性は言葉を続けた。

 

「ですが、彼は未だに眠りについたままです…」

 

「っ…そ、そんな…。わたしの、せいだ……わたしが…」

 

「だからって、そのままでいるつもりなのかしら?」

 

「え…?」

 

彼というのが誰かは分からないけれど明日奈はショックを受けている。

しかし、奏という女性の言葉を聞いて俯かせていた顔を上げた。

 

「彼が目を覚ました時に、貴女はそんな状態で彼に心配を掛けたいの?」

 

「ぁ……」

 

先程まで眼に光が宿らずに生気が無かった明日奈だったけれど、今では少しずつ力が宿っていく。

 

「ご飯を食べてください、ほんの少しずつでいいのでリハビリをしてください、

 元気になって彼に会いに行ってあげてください」

 

「(ぐすっ)はいっ……」

 

雫という女性の言葉を受け止めたのか、明日奈は涙を浮かべながら返事をすると、

夫から離れてお粥をほんの少しずつだが食べ始めた。

まだ起きたばかりなので大した量は食べられないだろう。

けれど、それでも食べ進めていく。

その間に看護婦が割れた花瓶を片付けていく。

皆が明日奈に微笑みを向けている。

私も先程までのことを忘れて、彼女の様子に笑みを浮かべる。

この娘の今の姿こそが本当の明日奈だったのね。

明日奈は食事を終えると、ベッドに横になった。

疲労が溜まっていたのかそのまま眠りについてしまった。

 

 

 

「ありがとうございました。貴女達がいなければ、あの娘は…」

 

「本当に、ありがとうございました…」

 

「私達は大切な友達の為に、当然のことをしただけです」

 

「明日奈ちゃんの大切な人に、SAOから生還した私達全員が救われました。

 それなら、彼女が泣き続けないといけないなんて理不尽でしかありません」

 

夫と私が順番に礼を述べると朝霧さんと井藤さんは笑顔で受け止めてくれた。

私達夫婦には、あの世界で明日奈がどんな風に生きてきたのかは分からない。

けれど、良い人達に恵まれていたのは間違いないと思う。

 

「明日奈さんが目を覚ましたら、話しをしてあげてください」

 

「彼女もきっと、ご両親と話をしたいと思っているはずですから」

 

朝霧さんと井藤さんは私達にそう助言をしてくれた。

 

「分かりました」

 

「必ず…」

 

私達が答えると、朝霧さんと井藤さんは一礼してからこの部屋から去って行った。

 

 

 

時間は過ぎ、夕方になった。

私達は食事を取る以外では彼女の傍を離れずにずっと彼女の寝顔を見守っていた。

すると、明日奈が目を覚ました。

 

「ぁ……お父さん、お母さん…」

 

幼い頃などに呼んでいた呼ばれ方をした為に、二人揃って笑みを浮かべてしまった。

 

「ティア…えっと雫さんと、奏さんは…?」

 

「明日奈が眠ったあと、自分達の部屋に戻っていったよ」

 

訊ねた明日奈に夫が返答し、何かを思ったのか彼女は不安げな表情を浮かべた。

 

「そうなんだ……「(ぎゅっ)」お母さん…?」

 

「大丈夫よ、今は私達が一緒にいるわ」

 

「ぁ、うん…///」

 

不安そうな表情をした明日奈を優しく抱き締めた。

こんな風に彼女と接したのは2年、いや何年振りだろうか…。

親として、自分は失格なのではないかと思えてきた。

 

「明日奈、あのゲームの中は辛かったかしら?」

 

「辛いこと、たくさんあったよ……だけど、楽しいこともたくさんあって、大好きな人とも出会えたよ…」

 

私が訊ねると明日奈は一瞬辛そうな表情を浮かべたけれど、すぐに微かな笑顔になった。

 

「聞かせてくれるかい?」

 

「うん……最初はね……」

 

夫が話を聞きたがると明日奈は少し嬉しそうに語り始めた。

今目の前にいる彼女からは、ゲームを始める前のような毅然とした空気はない。

その代わり、年相応の女の子らしい雰囲気を出している。

明日奈の話しを私達は聞き続けた。

 

 

 

明日奈はあのゲームに閉じ込められて、最初に絶望して、死を覚悟したという。

それでも現実に戻る為に必死で頑張り、もがいて、苦しんで……その時、

自分を変えたという大切な男の子、桐ヶ谷和人君に出会ったといった。

その少年と出会い、恋をし、命を救われ、心を救われ、愛し合った。

彼との話しをする明日奈は今までに見た事もない笑顔で語り、私達にもその温かさを与えてくれた。

会ってみたい、娘を救い、娘を愛してくれた少年に。

そしてお礼を言おうと思う。

 

「ありがとう、桐ヶ谷和人君。貴方が目覚めることを、祈っているわ…」

 

私はふと窓の外の空に向かってそう告げた。

そして、リハビリに身を揮わせる明日奈の元へと歩み寄った。

 

京子Side Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

はい、ずばりティアこと雫とカノンこと奏の二人でした。

 

実は雫は財閥の令嬢という設定になっており、明日奈と自宅が近いんですw

 

雫も奏も東京在住で、シャインは東京の高校に進学していたということです。

 

とまぁそういうわけで、和人(キリト)はこの段階で結城夫妻に気に入られるようになりました。

 

須郷はジワジワと追い詰められる・・・(黒笑)。

 

それでは次回で・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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